Children Of The God's

鈴木ヨイチ

文字の大きさ
51 / 52
第2章

真実は突然に

しおりを挟む
「おまたせ、これくらいでいいよね?」
「十分でしょ、ありがとう」
「ありがとー、いただきまーす」

 ウルも椅子に座り、切って来てくれたフルーツ、俺とウルはリンゴを、フルールさんさんはメロンを1口食べた。

「甘くて美味しいね!」
「確かに甘いな」
「うん、美味しい」

 その後も、ブドウやパイナップルにイチゴを一通り食べ、フルーツの話に花を咲かせた。

「で、ノーマくん。話ってなんなのよっ」
「あぁ……うん。その……言っていいよな?」

「うん……ノーマから言う? あたしからにする?」
「いや、俺から言うよ」

 俺は体をフルールさんに向き直し、言う覚悟を決めた。

「なになに?」
「ウルと付き合ってます。その報告も兼ねて来ました」

 俺はフルールさんの顔を見れず、流れた沈黙の時間が、とても長く感じた。

「反対です」

「え……?」
「え……?」

 俺はフルールさんの言葉に耳を疑い、思わず顔を上げてフルールさんを見た。

 正直、完全に予想外だった。様々な反応を予想していたけど、反対されるのはまさかすぎた。

 ウルも同様に予想外だったのか、俺と全く同じ反応を示していた。

「反対……」
「ちょ……ママ、なんで? 理由は?」

 ウルの問いかけに対し、フルールさんは俯き、再び病室が沈黙に包まれた。

「うーそでーす……! 反対なんてする訳ないじゃない……!」

 完全に騙された。でもそんな事よりも、フルールさんの目に浮かぶ、今にも零れ落ちそうな涙が気になった。

「フルールさん……?」
「ママ……」
「ウル……良かったね……!」

 フルールさんは涙を流し、それを見たウルも、一緒に泣き出した。

 俺もそんな2人を見て、何故か泣きそうになったけど、必死に泣かないように耐えた。別に泣いてもいいのに。

 俺は2人が落ち着くのを、フルーツを食べながら待った。

 フルーツが無くなった為、キッチンへ行きフルーツを切って、再び椅子に座った。

 そのフルーツを食べながら、2人が落ち着くのを待ち、食べ終わってしまった為、お皿を下げにキッチンへ向かった。

 どうせ待っているだけならと、お皿を洗おうとすると、2人の笑い声が聞こえてきた。

 キッチンに来る少し前まで、確実に泣いていたはずの2人が、こんなに早く笑っている筈が無い。

 俺は疑いながら、お皿を洗い終え2人の元に戻ると、笑顔で話す2人の姿があった。

「ノーマくん、とりあえず座って!」
「ほら、ノーマ早くっ」

 すっかり元気になった2人に、促されるがまま、とりあえず椅子に座った。

「ノーマくん、ウルを頼むね!」
「任せてよ。ウルもフルールさんも俺が守るし、二度とあんな目には合わせないからさ」

 格好つけて口走ってしまったけど、言ったからには必ず守ると、今この瞬間心に決めた。

「言ったからには、ちゃんと守ってよね」
「じゃあ私も守られちゃおっ! でもあんな目って、サイキョーくんの事?」

「え? そうだけど、サイキョーくんってどういう事?」
「ママ、サイキョーの事知ってるの?」

「当たり前じゃない、ガンジョウさんの弟子なんだから!」

 言われてみればそうだ。サイキョーはガン爺の弟子で、フルールさんもガン爺の所にいた事を、すっかり忘れていた。

「じゃあなんでサイキョーは2人を?」

「あれはね、ウルの勘違いなの。サイキョーくんは私を守ってくれていただけ」

 ウルは、初めて参加した夜間闘技で、サイキョーと闘い負けている。

 フルールさんは、何故サイキョーがいたのか、ウルが闘う事になったのか、真実を話してくれた。

 ―――― 4年前






 天気は良好、気温は最適、体調は絶好調のウルは、夜間闘技に参加しようとしていた。

「誕生日早いのずるいよな」
「ノーマもすぐじゃん」

「そうだけどさ。じゃあ、また明日感想聞かせろよ」
「おっけー、じゃあ、また明日ね」

「うん、気をつけろよ。じゃあな」
「ありがとう、じゃあね」

 ノーマとウルは、フルールが入院する病院の前で別れた。

 ウルは夜間闘技の前に、フルールに参加する事を伝えに来ていた。

「ママー、いよいよだよ」
「あら、ウル。珍しく緊張してる?」

「するに決まってるじゃん。1人だし」
「そうだよね……ノーマくん居ないと心細いよね……」

「ノーマは関係無いでしょ! もう行くね」
「気をつけてね。ウルは強いから平気か!」
「当たり前。じゃあ、またね」

 ウルは病室に行くなり、フルールといつも通りの他愛もない話をし、病室を後にした。

「あ、マーザさん。何してるの?」
「ウルちゃん! フルールに用があってね。居る?」

「そうなんだ、病室に居るよ」
「よかった。ウルちゃんはもう行くの? 夜間闘技に出るんでしょ?」

「うん。そのために、帰って着替えようかなって」
「そっか。気をつけて、頑張ってね。また報告も兼ねて遊び来てね!」

「ありがとう、また行かせてもらうね!」

 病院を出た所で、偶然マーザに会ったウルは、他愛もない話をして、ウルの祖母ハナが住む家へと向かった。

「ハナちゃん、ただいまー」
「あら、おかえりなさい。ウル、ご飯は?」

「まだ食べてないよ。ある?」
「当たり前じゃないかぁ。今日は夜闘だろう? 腕を振るったよ」

「ありがとう! 先に着替えて来るね」
「うん、行ってらっしゃい」

 ウルはハナに帰宅した報告を済ませ、1度部屋に戻り、制服から動きやすい服に着替えた。

「ハナちゃーん、お腹空いたー」
「ちょっとそこ座っときな。今持ってくから」

 居間に戻ったウルは、ハナが腕を振るったという料理を、寝転がりながら待った。

「はい、お姫様。どうぞ召し上がれ」
「出来た? 美味しそう、いただきまーす」
「美味しそうじゃないよ、美味しいんだよ」

 ハナが腕によりをかけた料理、カミミールにある食材をふんだんに使った料理、カミミール丼なるものを食べ始めた。

「ふぅ……お腹いっぱい……すごい美味しかったよ」
「そうかい、それなら頑張れるんじゃないか」

「頑張りまくれるよ」
「そうだ。よいしょと」

「あ、自分で下げるよ」
「ゆっくりしときな」

 ハナはおもむろに立ち上がり、食器を持ち部屋から出て行くのを、ウルは寝転がりながら見送った。

 食器を下げに行っただけにしては、戻って来るのが遅い事を、ウルは気にしたのかしていないのか、少ししてハナが戻って来た。

「あーありがとう、ハナちゃん」
「こもってないねぇ、まったく。ウル、一旦起きな」

「なに?」
 ウルは1度体を起こした。

「これ使いな。あたしが昔使ってたやつだけどね」
「ハナちゃんの刀? なんであたしに?」

「ウルが夜闘に出るって言うから、ガンジョウのとこから持ってきたのさ」

「ガンジョウも分からないし、刀の使い方も分からないよ」

 ハナはウルにと、自分が昔使っていた刀を用意したが、ウルは刀を使った事が無い為、喜ばしく無さそうにしている。

「気にせんと、護身用にでも持っときな。お守りだよ」
「そういう事なら……なら、一応ありがとう……」

「そろそろじゃないか。気をつけて行っといで」
「もうそんな時間かぁ……よし、行きますか!」

「無理するんじゃないよ。これも着ていきな」
「え、なにこれ……ダサすぎない?」

 いよいよ夜間闘技の開始時刻が近づき、家を出ようとした時、玄関でハナが渡した黒い羽織。

 白字で背の部分いっぱいに『死』とだけ書かれた羽織を受け取ったウルは、思わず本音を漏らしてしまったに違いない。

「それはね、背中に死を背負う。後ろを見ず前だけ見ていれば、決して死なないという意味があるのさ。ダサかろうが、着ていきな」

「ちゃんと意味があるんだ。じゃあさ、ハナちゃんがそれ着ててよ。あたしが帰って来るまで」

「あたしが着ても意味が無いだろう」
「あるよ。ハナちゃんがあたしの無事を祈っててくれれば、あたしはハナちゃんを後ろに感じられる。でしょ?」

「しょうがない子だねぇ。あたしも、今日は後ろ向けないね」

「いいじゃん、一緒に前だけ見ようよ! 約束ね。じゃあ行ってきまーす」

 ウルは羽織をハナに返し刀だけ持って、勢いよく玄関を開け飛び出した。

「まったく……」
 羽織を返されたハナは、静かに1人笑みを浮かべながら、羽織に袖を通した。

「背中が痒くなってきちまったよ」
 ハナは背中の痒みを、後ろを振り向かないように我慢した。今のハナは、脱ぐという行為を忘れてしまっているようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

処理中です...