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一章
襲来
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さて、突然だが俺から質問をしようと思う。ある日毎日の仕事(学業)を終わらせ帰宅したとしよう。人間は何故自宅というものに帰るのか。それはこの世で最も安堵感に包まれる場所であるからだ。しかし、帰ってみるとそこには見たことがない女性が仁王立ちし
「わたしと一緒にくらさないかい!」
と突然言い放たれたらどうするのが正解だと言えるだろうか。そもそもここ俺の自宅だし。他人に暮らさないかと誘われるいわれもない。
この前代未聞の謎現象に俺。福島涼太は突然直面したのだった。
「……おい。」
「なんだい?」
俺はとりあえず仁王立ちしてニコニコと笑っているこの女に問いかけた。
なんだい?じゃねえーよ。驚いてはいるが平静を保ちつつ言った。
「出てけ」
「酷い!?」
いや、ひどくないから普通だから。そもそも他人の家に勝手に上がり込んでる方が異常だから。
出てけと言ったにもかかわらずこの女は出ていくそぶりすらも見えない。最早居直り強盗を超えている。
「…警察呼んでいいのか?」
「けーさつ?けーさつ…あッー!警察ね!ざ・ポリス!」
あ、こいつ絶対頭悪いわ。特に最後訳のわからない片言の英語をいう時点で頭の悪さが滲み出てる。しかも日本語の警察すらわかってない感じしてるし。
「だから、呼ぶけどいいのか?」
「え、ダメ」
「じゃあ出てけ」
「いやだ」
こんの女。大概にしぶとい。ここまで俺を困らせたのは妹以外におるまい。
ならばこうするしかあるまい。目には目を。歯に歯を。不法侵入者には制裁を。
俺は一旦玄関の扉を閉じ、部活で使っているバトミントンのラケットを握り締めた。そしてもう一度ドアを開け放ちー
「ねえ、なんでしめ「く た ば れ!!」
盛大に殴った。『スパーン』とスマッシュさながらの音が響き渡った。女を殴るとは何事かと非難されそうものならこの前代未聞の出来事を味わってから言って欲しい。道具は大切にするよ?今回だけ今回だけ。
とりあえず正当防衛ということでOKです。ちなみに割といい場所に入ってしまったらしくこの不法侵入者は1発で気絶した。
「さて、どうしたものか」
気絶させたのはいいもののどうすればいいのか扱いに困る。警察に突き出してもいいが骨が折れる。なんせ、疲れることはしたくない。少なくとも親が帰ってくる前にはなんとかしなくてはならない。玄関に放置しておくのもおかしな話だ。
「……部屋連れてくか」
確か使ってない押し入れがあったはずだからそこにガムテープか何かで簀巻きにしてから押し込んでおけばいい。
我ながら完璧。高校二年生にしては臨機応変に対応しているのではないだろうか。こうして大人に近づいていくのかと思うと感慨深いものがある。
俺はガムテープで手と足を巻きに巻いた。ふっふっふっ。これでもうこやつは動けまい。
仮に起きて暴れたとしても適当に「良いではないか良いではないか」と言いながら解いてやればいいだろう。
俺は自室までこの女を運び親が帰宅するまでの救済措置として押し入れへとぶち込んだのだった。
あれからどれほどの時間が経っただろうか。時計を見るとおおよそ2時間近く経っていた。彼女は目が覚めたのだろうか。てっきり起きた後暴れると思ったのだが。…死んでないよな?
あの時、割と本気で殴ってしまっているので少し不安になった。仮に正当防衛が認められても人を殺したとなると目覚めが悪い。なるほど。差し詰め今の俺は死体遺棄をした殺人犯(仮)というわけか。
ならば犯人は現場に戻るもの、とよく言われるので俺も戻ることにした。先人に倣えば割となんでもうまくいく。と思いたい。
さて、生きているか死んでいるか輪廻天才の輪に乗ってしまったかは定かではないが確かめるとしますか。最後の二つほぼ同じ意味じゃねえか。俺は自室のドアノブに手をかけてゆっくりと開けそのままの流れで押し入れの襖を開け放った。
そのにはガムテープで巻かれているにもかかわらず呑気に眠る女の姿があった。
寝顔がなんだか幸せそうで起こすのを躊躇うがこやつの言い分くらい聞いてやってもいいだろう。暇だし。
「おい、起きろ」
むにゃむにゃというだけで起きる気配なし。危機感なさすぎんか?こいつ。
「起きろって。」
もう一度声をかける。そうするとようやく目を開けた。
「…誰?」
「誰じゃねえよ。お前が不法侵入した家の家主の息子だ。」
こいつ寝ぼけてんのか。はたまた俺が殴ったせいか。
彼女は目を擦ろうとするがもちろんそれは超強固なガムテープによって阻まれた。そうしてようやく
「ん?なんだこれ。」
自分の状況を把握したのだった。
「女の子を縛り付けるとかどういうつもりなのか聞いてもよろしくて?」
とりあえず本人が害がないことを何度も主張してくるので手のガムテープだけ外してやった。感謝しろと言ったら蹴られた。意味わからん。
俺はなんとなく好奇心で警察紛いのことをしてこの女からどうして俺の家にいたのかを聞いた。そうするとようやくこの女は待ってましたとばかりに話し始めた。
「えーとね。気付いたらここにいた…らしい?」
何故疑問形。
「というと?」
「私、告白致しますと記憶がないのです。」
はぁ、そうきたか。俺は続きを促した。
「驚かないの?」
「驚くというより呆れてる」
どんなにたちの悪い犯罪者でも記憶がないとは言わない。いや、言うか。主に政治家が。
「記憶がないと言っても自分の名前とかは流石にわかるだろ。」
「名前?名前はわかるよ?私は宮城若葉。らしい?」
こいつ分かると言っておきながら何故また疑問形なのか。全くこいつがわからない。
「さっきから『らしい?』って言ってるけどそれはどうしてだ?」
「なんというか。自分でも曖昧なの。自己としての私は確立しているけど根本的なところがぼやけてると言うか…主に自分の生い立ちとかはもうほとんど覚えてない。」
なんというか割としっかりとした説明をされるものだからそういうものなのかと納得してしまった。
「ここにいる理由もわからないってことか?」
俺がそう尋ねると首を縦に振って肯定した。
「はぁ…本当になんなんだよ。お前…」
彼女は少しバツの悪そうな顔をした。確かに今の話を聞く限りこいつに落ち度は無い…と思う。
「ほかに何か覚えてることあるか?」
「んーとねー。あ!誰かを探しに来たんだよ!」
誰かとな。
「その誰かはわからないのか?」
「わかる訳ないじゃん」
うぜえ。真顔で即答してくるの。今すぐこの自室の窓から放り投げたい気分だ。
「そんな殺気だった顔しないでよ」
「怒ってない。」
そもそも怒るという行動自体面倒だ。
「最後に一つ。最初の言葉の真意はなんだ。」
「最初?」
こいつ覚えていないのか。あの突飛な発言を。んん?と悩んでいるのでこちらから言ってやった。
「一緒に暮らさないか?って言ったろ」
「あー、それね。あれ、口から出まかせ」
「ほぉ?」
彼女は必死に弁明してきた。要するにこうらしい。突然この家にいてどうすればいいかわからなく混乱している時に俺が帰ってきたものだから咄嗟に何か言わなければ!という気持ちから出てきたものらしい。
やはり意味は不明だった。
少しばかりの沈黙。
「ねえ、何か言ってよ。」
「君は本当にアホなんだな。」
「酷い!」
何か言えと言ったから言ったと言うのに自分勝手なやつだな。
「はあ。もういいや。早く家帰れ。」
もう疲れた俺は彼女に帰るよう促した。
「なに言ってるの?」
「は?だから帰れって。」
「私記憶ないんだよ?」
「だからどうしたって言うんだ。」
「家わからないに決まってるじゃん。」
イエガワカラナイ。それは要するに迷子ではないだろうか。まあ、迷子なんだが。でもこれでこいつが警察に厄介なる口実ができた。
「よし。なら尚更警察行け。なんなら連れてってやる。」
「え、なんで?」
「迷子なら交番行ってどうにかしてもらえ。最悪地図見れば何かしら思い出すだろ。」
ほらほらと俺は出口へと彼女を押していく。
「ねえ、ちょっ!やめてよ。」
「このまま居座られてたまるか!!」
「もう私この家に住むって決めたのぉ!!」
「誰が許可した!!」
「私!!!」
「ぶち殺すぞ!!!」
突然に暴れ出したこの女を止めるために彼女を俺は押さえつけた。
ギャーギャーと二人で言い争っていると家の玄関の鍵が開く音がした。そしてその足音はどんどんこちらに向かってくる。そうだ。忘れていたことがある。この家には両親以外にももう一人家族がいたのだと言う事を。バレたらまずい。
言うなれば世間的にまずい。
そしてそのことにこの女は気づいてない。
そして足音は部屋の前で止まって。それと同時にこの女もピクリと動かなくなった。
そして
「お兄うるさい。」
そう言いながら俺の部屋に入ってくる。
目があった。
あちらも俺を見る。
そして、俺が押さえつけているこの女を見た。
場が凍った。
「キモ」
妹のこの言葉によって俺は崩れ落ちた。
俺の妹の冬美はリビングのソファーで女帝の如く足を組み
「お兄。事情を説明して。じゃないと今から社会的に殺す。」
と言った。
おお。我が妹よ。なんて物騒になってしまったのか。
「信じてもらえないと思うけどかくかくしかじかで……」
俺が必死に弁明するのに三十分以上かかった。
それに対して冬美は。
「何言ってるのかワカラナイ」
おーっとそうきたか。まあ、そりゃそうだ。誰であれこんな話は信用しまい。
で、件の女といえば。
「あははははははははははははは!!」
こんな調子で笑っている。
この場にシャープペンシルでもあれば腹わたに突き刺すレベルである。
「もう嫌…」
もう泣きそうだ。
泣こうかな…。泣けばなんだかこの場が丸く収まる気がする。いや、無理だな。というか泣いたら絶対気持ち悪がられる。
「仮に若葉さんの言うことが本当なら別に家に居候させてもいいんじゃないの?」
「え?」
俺が嫌なんだけど。
「帰る家もないなら家に泊めてあげればいいんじゃないの?」
違う。俺の「え?」はそういう意味じゃない。けどそんなこと冬美はわかるはずがない。
「とりあえずお父さんとお母さん帰ってくるまで待と?ね?」
なぜ俺は急に窘められているのか。
でもまあ。
「わかったよ。」
仕方なく了承したのだった。
そして両親が帰ってきたら案の定驚いていたが何故か親もこの女が泊まることに了承したのだった。おまけにいつまでもいていいと。
この女がいつまで俺の家にいるかはわからないがとにかくとても面倒なことに巻き込まれたことに変わりはなさそうだ。
だけど。だけど。きっとこのつまらない日常を変えてくれるのではないかという期待もしていた。
「わたしと一緒にくらさないかい!」
と突然言い放たれたらどうするのが正解だと言えるだろうか。そもそもここ俺の自宅だし。他人に暮らさないかと誘われるいわれもない。
この前代未聞の謎現象に俺。福島涼太は突然直面したのだった。
「……おい。」
「なんだい?」
俺はとりあえず仁王立ちしてニコニコと笑っているこの女に問いかけた。
なんだい?じゃねえーよ。驚いてはいるが平静を保ちつつ言った。
「出てけ」
「酷い!?」
いや、ひどくないから普通だから。そもそも他人の家に勝手に上がり込んでる方が異常だから。
出てけと言ったにもかかわらずこの女は出ていくそぶりすらも見えない。最早居直り強盗を超えている。
「…警察呼んでいいのか?」
「けーさつ?けーさつ…あッー!警察ね!ざ・ポリス!」
あ、こいつ絶対頭悪いわ。特に最後訳のわからない片言の英語をいう時点で頭の悪さが滲み出てる。しかも日本語の警察すらわかってない感じしてるし。
「だから、呼ぶけどいいのか?」
「え、ダメ」
「じゃあ出てけ」
「いやだ」
こんの女。大概にしぶとい。ここまで俺を困らせたのは妹以外におるまい。
ならばこうするしかあるまい。目には目を。歯に歯を。不法侵入者には制裁を。
俺は一旦玄関の扉を閉じ、部活で使っているバトミントンのラケットを握り締めた。そしてもう一度ドアを開け放ちー
「ねえ、なんでしめ「く た ば れ!!」
盛大に殴った。『スパーン』とスマッシュさながらの音が響き渡った。女を殴るとは何事かと非難されそうものならこの前代未聞の出来事を味わってから言って欲しい。道具は大切にするよ?今回だけ今回だけ。
とりあえず正当防衛ということでOKです。ちなみに割といい場所に入ってしまったらしくこの不法侵入者は1発で気絶した。
「さて、どうしたものか」
気絶させたのはいいもののどうすればいいのか扱いに困る。警察に突き出してもいいが骨が折れる。なんせ、疲れることはしたくない。少なくとも親が帰ってくる前にはなんとかしなくてはならない。玄関に放置しておくのもおかしな話だ。
「……部屋連れてくか」
確か使ってない押し入れがあったはずだからそこにガムテープか何かで簀巻きにしてから押し込んでおけばいい。
我ながら完璧。高校二年生にしては臨機応変に対応しているのではないだろうか。こうして大人に近づいていくのかと思うと感慨深いものがある。
俺はガムテープで手と足を巻きに巻いた。ふっふっふっ。これでもうこやつは動けまい。
仮に起きて暴れたとしても適当に「良いではないか良いではないか」と言いながら解いてやればいいだろう。
俺は自室までこの女を運び親が帰宅するまでの救済措置として押し入れへとぶち込んだのだった。
あれからどれほどの時間が経っただろうか。時計を見るとおおよそ2時間近く経っていた。彼女は目が覚めたのだろうか。てっきり起きた後暴れると思ったのだが。…死んでないよな?
あの時、割と本気で殴ってしまっているので少し不安になった。仮に正当防衛が認められても人を殺したとなると目覚めが悪い。なるほど。差し詰め今の俺は死体遺棄をした殺人犯(仮)というわけか。
ならば犯人は現場に戻るもの、とよく言われるので俺も戻ることにした。先人に倣えば割となんでもうまくいく。と思いたい。
さて、生きているか死んでいるか輪廻天才の輪に乗ってしまったかは定かではないが確かめるとしますか。最後の二つほぼ同じ意味じゃねえか。俺は自室のドアノブに手をかけてゆっくりと開けそのままの流れで押し入れの襖を開け放った。
そのにはガムテープで巻かれているにもかかわらず呑気に眠る女の姿があった。
寝顔がなんだか幸せそうで起こすのを躊躇うがこやつの言い分くらい聞いてやってもいいだろう。暇だし。
「おい、起きろ」
むにゃむにゃというだけで起きる気配なし。危機感なさすぎんか?こいつ。
「起きろって。」
もう一度声をかける。そうするとようやく目を開けた。
「…誰?」
「誰じゃねえよ。お前が不法侵入した家の家主の息子だ。」
こいつ寝ぼけてんのか。はたまた俺が殴ったせいか。
彼女は目を擦ろうとするがもちろんそれは超強固なガムテープによって阻まれた。そうしてようやく
「ん?なんだこれ。」
自分の状況を把握したのだった。
「女の子を縛り付けるとかどういうつもりなのか聞いてもよろしくて?」
とりあえず本人が害がないことを何度も主張してくるので手のガムテープだけ外してやった。感謝しろと言ったら蹴られた。意味わからん。
俺はなんとなく好奇心で警察紛いのことをしてこの女からどうして俺の家にいたのかを聞いた。そうするとようやくこの女は待ってましたとばかりに話し始めた。
「えーとね。気付いたらここにいた…らしい?」
何故疑問形。
「というと?」
「私、告白致しますと記憶がないのです。」
はぁ、そうきたか。俺は続きを促した。
「驚かないの?」
「驚くというより呆れてる」
どんなにたちの悪い犯罪者でも記憶がないとは言わない。いや、言うか。主に政治家が。
「記憶がないと言っても自分の名前とかは流石にわかるだろ。」
「名前?名前はわかるよ?私は宮城若葉。らしい?」
こいつ分かると言っておきながら何故また疑問形なのか。全くこいつがわからない。
「さっきから『らしい?』って言ってるけどそれはどうしてだ?」
「なんというか。自分でも曖昧なの。自己としての私は確立しているけど根本的なところがぼやけてると言うか…主に自分の生い立ちとかはもうほとんど覚えてない。」
なんというか割としっかりとした説明をされるものだからそういうものなのかと納得してしまった。
「ここにいる理由もわからないってことか?」
俺がそう尋ねると首を縦に振って肯定した。
「はぁ…本当になんなんだよ。お前…」
彼女は少しバツの悪そうな顔をした。確かに今の話を聞く限りこいつに落ち度は無い…と思う。
「ほかに何か覚えてることあるか?」
「んーとねー。あ!誰かを探しに来たんだよ!」
誰かとな。
「その誰かはわからないのか?」
「わかる訳ないじゃん」
うぜえ。真顔で即答してくるの。今すぐこの自室の窓から放り投げたい気分だ。
「そんな殺気だった顔しないでよ」
「怒ってない。」
そもそも怒るという行動自体面倒だ。
「最後に一つ。最初の言葉の真意はなんだ。」
「最初?」
こいつ覚えていないのか。あの突飛な発言を。んん?と悩んでいるのでこちらから言ってやった。
「一緒に暮らさないか?って言ったろ」
「あー、それね。あれ、口から出まかせ」
「ほぉ?」
彼女は必死に弁明してきた。要するにこうらしい。突然この家にいてどうすればいいかわからなく混乱している時に俺が帰ってきたものだから咄嗟に何か言わなければ!という気持ちから出てきたものらしい。
やはり意味は不明だった。
少しばかりの沈黙。
「ねえ、何か言ってよ。」
「君は本当にアホなんだな。」
「酷い!」
何か言えと言ったから言ったと言うのに自分勝手なやつだな。
「はあ。もういいや。早く家帰れ。」
もう疲れた俺は彼女に帰るよう促した。
「なに言ってるの?」
「は?だから帰れって。」
「私記憶ないんだよ?」
「だからどうしたって言うんだ。」
「家わからないに決まってるじゃん。」
イエガワカラナイ。それは要するに迷子ではないだろうか。まあ、迷子なんだが。でもこれでこいつが警察に厄介なる口実ができた。
「よし。なら尚更警察行け。なんなら連れてってやる。」
「え、なんで?」
「迷子なら交番行ってどうにかしてもらえ。最悪地図見れば何かしら思い出すだろ。」
ほらほらと俺は出口へと彼女を押していく。
「ねえ、ちょっ!やめてよ。」
「このまま居座られてたまるか!!」
「もう私この家に住むって決めたのぉ!!」
「誰が許可した!!」
「私!!!」
「ぶち殺すぞ!!!」
突然に暴れ出したこの女を止めるために彼女を俺は押さえつけた。
ギャーギャーと二人で言い争っていると家の玄関の鍵が開く音がした。そしてその足音はどんどんこちらに向かってくる。そうだ。忘れていたことがある。この家には両親以外にももう一人家族がいたのだと言う事を。バレたらまずい。
言うなれば世間的にまずい。
そしてそのことにこの女は気づいてない。
そして足音は部屋の前で止まって。それと同時にこの女もピクリと動かなくなった。
そして
「お兄うるさい。」
そう言いながら俺の部屋に入ってくる。
目があった。
あちらも俺を見る。
そして、俺が押さえつけているこの女を見た。
場が凍った。
「キモ」
妹のこの言葉によって俺は崩れ落ちた。
俺の妹の冬美はリビングのソファーで女帝の如く足を組み
「お兄。事情を説明して。じゃないと今から社会的に殺す。」
と言った。
おお。我が妹よ。なんて物騒になってしまったのか。
「信じてもらえないと思うけどかくかくしかじかで……」
俺が必死に弁明するのに三十分以上かかった。
それに対して冬美は。
「何言ってるのかワカラナイ」
おーっとそうきたか。まあ、そりゃそうだ。誰であれこんな話は信用しまい。
で、件の女といえば。
「あははははははははははははは!!」
こんな調子で笑っている。
この場にシャープペンシルでもあれば腹わたに突き刺すレベルである。
「もう嫌…」
もう泣きそうだ。
泣こうかな…。泣けばなんだかこの場が丸く収まる気がする。いや、無理だな。というか泣いたら絶対気持ち悪がられる。
「仮に若葉さんの言うことが本当なら別に家に居候させてもいいんじゃないの?」
「え?」
俺が嫌なんだけど。
「帰る家もないなら家に泊めてあげればいいんじゃないの?」
違う。俺の「え?」はそういう意味じゃない。けどそんなこと冬美はわかるはずがない。
「とりあえずお父さんとお母さん帰ってくるまで待と?ね?」
なぜ俺は急に窘められているのか。
でもまあ。
「わかったよ。」
仕方なく了承したのだった。
そして両親が帰ってきたら案の定驚いていたが何故か親もこの女が泊まることに了承したのだった。おまけにいつまでもいていいと。
この女がいつまで俺の家にいるかはわからないがとにかくとても面倒なことに巻き込まれたことに変わりはなさそうだ。
だけど。だけど。きっとこのつまらない日常を変えてくれるのではないかという期待もしていた。
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