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第一部 失踪と受難
01 失踪した妻
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疲れた体を引きずってようやく我が家のマンションに帰り着いた。
井倉は自分の鍵でドアを開けた。
玄関ホールの灯りをつけた。やはりそこに妻の靴はなかった。家の奥も、暗かった。
「中学の同窓会があるから」
結婚してまだ半年に満たない新婚の妻を郷里の実家へ送り出したのは昨日の朝のことだった。
「明日の昼すぎには帰ります」
そう言って出かけて行った妻からは通話もできずメールも返信がない。LINEにも既読が付かない。
いったいどうしたというのだろう。
事故か? まさか何かの事件にまきこまれたのだろうか?!
職業柄、井倉の想像はすぐにそんな方向へ行ってしまう。
井倉は弁護士だった。
だが自分の事務所は持っていない。
大手の弁護士事務所に勤務する、通称「イソーロー弁護士」。略してイソ弁。
それが彼の生業だった。
里子は貞淑で可愛い妻だった。
結婚してからというもの、毎朝チュッと、キスで送り出してくれていた。
「いってらっしゃい、あなた♡」
下らない依頼やろくでもない案件の処理に疲れて帰宅すると、
「お帰りなさい、あなた♡」
三つ指ついて出迎えてくれ、疲れが顔に出るようなほどひどい時には抱きしめてくれてもいた。
「こんなになるまで頑張ってくれたんですね、愛してます、あなた♡」
里子のやわらかな身体からはいつも上品でほのかな甘いコロンが香っていた。
ショートヘアの似合う、そのうなじから漂うかぐわしい香りを胸いっぱいに吸い込むと、日々の疲れも吹き飛んだ。
住まいの管理は行き届き、手料理は美味しく、そして床の中では恥じらいを忘れずにいながらも情熱的に井倉を迎えてくれていた。
もう四十にもなろうというのに女っ気の無い井倉の身を案じ、親戚が持ち込んでくれた縁談は願ってもないものだった。
歳は28。絶世の美女というほどではない。
だが、たおやかな気品を感じさせる風貌。そしてスレンダーだがグラマラスなボディーは上品な装いの写真からでもわかった。学歴だとかその他もろもろなんてもう、どうでもよかった。
「ぜひ、ぜひ、是非ともお願いします! 」
話を持ってきてくれた親戚に頭を床に擦り付けんばかりにして見合いに漕ぎつけた。
リアルの里子は写真以上に嫋やかで控えめで、そして美しく魅惑的な女性だった。
それまでの人生であまり女性との経験がなかったが、良縁であることは間違いないと確信した。
それからは何故かとんとん拍子に話が進み、華燭の宴をあげたのがつい今年の節分を過ぎたころだったのだ。
この半年の新婚生活は甘く、充実した日々だった。
仕事柄遠方のクライアントに出向くことも多い。その間里子はしっかり留守を守ってくれていた。たった一日でも離れると切なくて里子の豊満な身体を思い昂らせることもあった。
その、愛すべき妻が、いない・・・。
お盆の列車の混雑を避けたいと車で行かせたのも不安材料を増やしてしまう結果になっていた。
「車なら裏道知ってるし、田舎では車がある方がいろいろ便利なの! 」
中学の同窓会だから昨夜の宿泊先は里子の実家と聞いていた。
電話してみようかと何度も思い、その度に躊躇した。
「余計な気を回されるとイヤだから、実家へは電話しないで」
隣県の山間にあるその家もそれなりの門構えのある、井倉から見ればどこの山里にもありそうな普通の家だ。見合いと結納と結婚式で会ったご両親も地元のそれなりの人物らしく控えめだが立派な身なりのご夫婦だった。
それなのに、何故か妻は井倉が彼女の実家に必要以上に関わるのにいい顔をしなかった。
「だって、一人娘を貰ったわけだし、盆暮れの挨拶だけじゃ礼を欠くだろう。これでもいつも気にしているんだよ」
「ありがとう。あなたの気持ちはとても嬉しいの。
だけど、あまり実家と深く関わりたくないの。
わたし、あなたと結婚出来て初めて一人の人間になれたような気がするの」
そんな意味深な妻の言葉に、里子のそれまでの時間を思った。そこに、言葉に言い尽くせない何か辛いことがあったのかもしれないと察せられた。例えば厳しい躾とか。あるいは過干渉とかといったたぐいの。
「いつか自分の中で整理が出来たらあなたにもお話しします。それまで、待っていてくれませんか」
床の中でそう言って熱い唇を寄せて抱き着いてくる里子の気持ちを無碍には出来なかった。
そんな状況でも仕事は待ってはくれない。寝不足では複雑な案件の処理に支障をきたす。
久しぶりの郷里だ。それに久々に友達とも会ってハメを外し過ぎているのかもしれない・・・。
無理やりにそう思い込んで妻のいない冷たい寝床に入る。だがしかし、まんじりともできず、結局迎えてしまった朝になっても里子からは何も連絡が来ていなかった。
やっぱり電話してみようか。
里子の実家の電話番号を出してタップしようとしたその刹那、やはり、そのひと指が動かなかった。
「もし何事もなく里子が帰ってきたら大事になってしまうかも・・・」
そう考えるとそれ以上の操作が出来ず、スマホの画面を検索ソフトに切り替えた。
朝のニュースでもそれらしい事件や事故はない。里子の実家のある地方の名前を入れた検索でも何も引っかからなかった。
せめて連絡ぐらいくれてもいいのに。
やりきれない思いを強引に抑え込み、井倉は支度をしてマンションを出た。
悶々としながらも仕事をこなす井倉の元へ里子からのLINEが届いたのはその日の昼過ぎだった。
「あなた。心配かけてごめんなさい。同級生の女友達の相談に乗っていてつい話し込んでしまって、いろいろなこまごまとしたことに付き合うことになったものだから・・・。夕方には帰ります。だから、心配しないで。愛してます」
よかった・・・。
里子が無事なこと。先走って実家に電話しなくて済んだことを寿んだ。
その日の残りの業務は天にも昇りたい気持ちを抑えるのに苦労しながらいつもの三倍増しのスピードでこなし、定時には事務所を出た。
「イクラ。どうした、カミさん産気づきでもしたのか」
「ああ、そんなんじゃないスけど、まあ・・・」
上司の言葉にもあいまいに返し、とにかく家路を急いだ。
ピンポンを押すのももどかしく、カギで開けて、
「ただいま! サトコっ!」
大声で呼ばわった。
すると奥から息せき切ったという体の妻が走り出てきた。二日ぶりの愛妻の姿は眩しかった。だが何か奇妙な雰囲気を纏っていた。
「あなたっ! ごめんなさいっ! 」
いきなり抱き着いてきた里子の身体はいつものように柔らかかったが、その纏っている香りにはどこか言い表すことのできない隠微さが感じられ、その肌はいつにもなく、熱かった。
「抱いてっ! 今すぐ、あなたに抱いて欲しいの! 」
残暑の季節。まだ陽もある時間なのに、里子は強引とも言えるほどに井倉を寝室に誘い、ベッドに着いた。
「ごめんなさい。何も言わずに、わたしを抱いて・・・」
カーテンは遮光だから閉め切ってしまえば外の明かりは遮られる。寝室は真っ暗闇のままだった。
「いったいどうしたんだ。なんで連絡ぐらい・・・」
井倉の当然の詰問も里子には届かなかった。
部屋の明かりを点けようとした井倉を押し留め、物凄い勢いで夫の服を脱がし、自らも丸裸になって熱い身体を投げ出し抱き着いてきた。それまでの控えめな清楚な妻にはなかったあまりにも積極的な強引とも思える求めにたじろいだ。
「明かりは付けないで。一度真っ暗なところであなたに抱かれたいの。何も言わないで。抱いて。抱いてください・・・」
様々な思いはあった。だが、妻の異常なほどの勢いと蠱惑的な、悪魔的ともいえる隠微さとに負け、井倉は全てを押し包み、妻の、里子の、その熱い身体を掻き抱き、いつしか精を放っていた。
「ごめんなさい・・・。ごめんなさい、あなた・・・」
やっと帰宅した妻の突然の性欲。突然の衝動。
精を放ってなお不可解さは消えなかったが、井倉の精を胎内に受け、その肩に歯を立てる勢いでしがみつく妻を詰る気にはどうしてもなれなかった。
詰問しようとする井倉にその余裕を与えぬほどに里子の求めは激しかった。
里子の口と舌の巧みな技はそれまでになかったものだった。
男根を咥えては吐き出しながら同時に舌を蠢かせて亀頭の周りや竿の裏筋を刺激されるとたまらなかった。
いったいどこでこんな技を得てきたのか・・・。
その蠢く膣の中に精を放つたびに里子の口で蘇生され屹立を繰り返す男根。そうしてまた、と止めどなく妻の求めは続いた。
まあ、いい。こうして帰って来たのだから落ち着いたらじっくり訊いてみよう。
里子の求めるままに精を放ち続け攻撃本能を減衰されたのか、いつしか井倉の思いは軟化した。
今はただ、黙って愛しい妻の髪を撫で、その時を待つ優しい夫を演じるしかないように思えた・・・。
その翌朝。
目覚ましをセットしていたにもかかわらず、井倉はしばし寝過ごした。
慌てて飛び起きたが、いつも井倉の起きる前には起きて朝食や洗濯をしている妻はまだぐっすりと寝入っていた。シーツはお互いの体液で乱れ、微かな異臭さえ澱んでいた。
井倉は今朝ほどまで続いた爛れた時間を反芻しわずかに勃起を感じた。
疲れ切って熟睡している妻の安らかな寝顔にキスをしてシャワーを浴び支度をしてもう一度寝室の妻の寝姿を垣間見、家を出た。
だが、ようやく取り戻したと思った日常は再び搔き消された。
その夜遅くに帰宅した井倉は、寝乱れたベッドがきれいに整えられ夕食の支度もされているキッチンを見た。
しかし、その愛する妻、里子の姿だけがなかった。
そして今まで味わった以上に豪華な食事が並べられた食卓の脇に、妻の欄だけが記入された離婚届があり、結婚指輪が置いてあった。
--新しい生を生きることにしました。今までありがとうございました—
置手紙まで添えられていた。
里子は再び、井倉の前から姿を消した。
井倉は自分の鍵でドアを開けた。
玄関ホールの灯りをつけた。やはりそこに妻の靴はなかった。家の奥も、暗かった。
「中学の同窓会があるから」
結婚してまだ半年に満たない新婚の妻を郷里の実家へ送り出したのは昨日の朝のことだった。
「明日の昼すぎには帰ります」
そう言って出かけて行った妻からは通話もできずメールも返信がない。LINEにも既読が付かない。
いったいどうしたというのだろう。
事故か? まさか何かの事件にまきこまれたのだろうか?!
職業柄、井倉の想像はすぐにそんな方向へ行ってしまう。
井倉は弁護士だった。
だが自分の事務所は持っていない。
大手の弁護士事務所に勤務する、通称「イソーロー弁護士」。略してイソ弁。
それが彼の生業だった。
里子は貞淑で可愛い妻だった。
結婚してからというもの、毎朝チュッと、キスで送り出してくれていた。
「いってらっしゃい、あなた♡」
下らない依頼やろくでもない案件の処理に疲れて帰宅すると、
「お帰りなさい、あなた♡」
三つ指ついて出迎えてくれ、疲れが顔に出るようなほどひどい時には抱きしめてくれてもいた。
「こんなになるまで頑張ってくれたんですね、愛してます、あなた♡」
里子のやわらかな身体からはいつも上品でほのかな甘いコロンが香っていた。
ショートヘアの似合う、そのうなじから漂うかぐわしい香りを胸いっぱいに吸い込むと、日々の疲れも吹き飛んだ。
住まいの管理は行き届き、手料理は美味しく、そして床の中では恥じらいを忘れずにいながらも情熱的に井倉を迎えてくれていた。
もう四十にもなろうというのに女っ気の無い井倉の身を案じ、親戚が持ち込んでくれた縁談は願ってもないものだった。
歳は28。絶世の美女というほどではない。
だが、たおやかな気品を感じさせる風貌。そしてスレンダーだがグラマラスなボディーは上品な装いの写真からでもわかった。学歴だとかその他もろもろなんてもう、どうでもよかった。
「ぜひ、ぜひ、是非ともお願いします! 」
話を持ってきてくれた親戚に頭を床に擦り付けんばかりにして見合いに漕ぎつけた。
リアルの里子は写真以上に嫋やかで控えめで、そして美しく魅惑的な女性だった。
それまでの人生であまり女性との経験がなかったが、良縁であることは間違いないと確信した。
それからは何故かとんとん拍子に話が進み、華燭の宴をあげたのがつい今年の節分を過ぎたころだったのだ。
この半年の新婚生活は甘く、充実した日々だった。
仕事柄遠方のクライアントに出向くことも多い。その間里子はしっかり留守を守ってくれていた。たった一日でも離れると切なくて里子の豊満な身体を思い昂らせることもあった。
その、愛すべき妻が、いない・・・。
お盆の列車の混雑を避けたいと車で行かせたのも不安材料を増やしてしまう結果になっていた。
「車なら裏道知ってるし、田舎では車がある方がいろいろ便利なの! 」
中学の同窓会だから昨夜の宿泊先は里子の実家と聞いていた。
電話してみようかと何度も思い、その度に躊躇した。
「余計な気を回されるとイヤだから、実家へは電話しないで」
隣県の山間にあるその家もそれなりの門構えのある、井倉から見ればどこの山里にもありそうな普通の家だ。見合いと結納と結婚式で会ったご両親も地元のそれなりの人物らしく控えめだが立派な身なりのご夫婦だった。
それなのに、何故か妻は井倉が彼女の実家に必要以上に関わるのにいい顔をしなかった。
「だって、一人娘を貰ったわけだし、盆暮れの挨拶だけじゃ礼を欠くだろう。これでもいつも気にしているんだよ」
「ありがとう。あなたの気持ちはとても嬉しいの。
だけど、あまり実家と深く関わりたくないの。
わたし、あなたと結婚出来て初めて一人の人間になれたような気がするの」
そんな意味深な妻の言葉に、里子のそれまでの時間を思った。そこに、言葉に言い尽くせない何か辛いことがあったのかもしれないと察せられた。例えば厳しい躾とか。あるいは過干渉とかといったたぐいの。
「いつか自分の中で整理が出来たらあなたにもお話しします。それまで、待っていてくれませんか」
床の中でそう言って熱い唇を寄せて抱き着いてくる里子の気持ちを無碍には出来なかった。
そんな状況でも仕事は待ってはくれない。寝不足では複雑な案件の処理に支障をきたす。
久しぶりの郷里だ。それに久々に友達とも会ってハメを外し過ぎているのかもしれない・・・。
無理やりにそう思い込んで妻のいない冷たい寝床に入る。だがしかし、まんじりともできず、結局迎えてしまった朝になっても里子からは何も連絡が来ていなかった。
やっぱり電話してみようか。
里子の実家の電話番号を出してタップしようとしたその刹那、やはり、そのひと指が動かなかった。
「もし何事もなく里子が帰ってきたら大事になってしまうかも・・・」
そう考えるとそれ以上の操作が出来ず、スマホの画面を検索ソフトに切り替えた。
朝のニュースでもそれらしい事件や事故はない。里子の実家のある地方の名前を入れた検索でも何も引っかからなかった。
せめて連絡ぐらいくれてもいいのに。
やりきれない思いを強引に抑え込み、井倉は支度をしてマンションを出た。
悶々としながらも仕事をこなす井倉の元へ里子からのLINEが届いたのはその日の昼過ぎだった。
「あなた。心配かけてごめんなさい。同級生の女友達の相談に乗っていてつい話し込んでしまって、いろいろなこまごまとしたことに付き合うことになったものだから・・・。夕方には帰ります。だから、心配しないで。愛してます」
よかった・・・。
里子が無事なこと。先走って実家に電話しなくて済んだことを寿んだ。
その日の残りの業務は天にも昇りたい気持ちを抑えるのに苦労しながらいつもの三倍増しのスピードでこなし、定時には事務所を出た。
「イクラ。どうした、カミさん産気づきでもしたのか」
「ああ、そんなんじゃないスけど、まあ・・・」
上司の言葉にもあいまいに返し、とにかく家路を急いだ。
ピンポンを押すのももどかしく、カギで開けて、
「ただいま! サトコっ!」
大声で呼ばわった。
すると奥から息せき切ったという体の妻が走り出てきた。二日ぶりの愛妻の姿は眩しかった。だが何か奇妙な雰囲気を纏っていた。
「あなたっ! ごめんなさいっ! 」
いきなり抱き着いてきた里子の身体はいつものように柔らかかったが、その纏っている香りにはどこか言い表すことのできない隠微さが感じられ、その肌はいつにもなく、熱かった。
「抱いてっ! 今すぐ、あなたに抱いて欲しいの! 」
残暑の季節。まだ陽もある時間なのに、里子は強引とも言えるほどに井倉を寝室に誘い、ベッドに着いた。
「ごめんなさい。何も言わずに、わたしを抱いて・・・」
カーテンは遮光だから閉め切ってしまえば外の明かりは遮られる。寝室は真っ暗闇のままだった。
「いったいどうしたんだ。なんで連絡ぐらい・・・」
井倉の当然の詰問も里子には届かなかった。
部屋の明かりを点けようとした井倉を押し留め、物凄い勢いで夫の服を脱がし、自らも丸裸になって熱い身体を投げ出し抱き着いてきた。それまでの控えめな清楚な妻にはなかったあまりにも積極的な強引とも思える求めにたじろいだ。
「明かりは付けないで。一度真っ暗なところであなたに抱かれたいの。何も言わないで。抱いて。抱いてください・・・」
様々な思いはあった。だが、妻の異常なほどの勢いと蠱惑的な、悪魔的ともいえる隠微さとに負け、井倉は全てを押し包み、妻の、里子の、その熱い身体を掻き抱き、いつしか精を放っていた。
「ごめんなさい・・・。ごめんなさい、あなた・・・」
やっと帰宅した妻の突然の性欲。突然の衝動。
精を放ってなお不可解さは消えなかったが、井倉の精を胎内に受け、その肩に歯を立てる勢いでしがみつく妻を詰る気にはどうしてもなれなかった。
詰問しようとする井倉にその余裕を与えぬほどに里子の求めは激しかった。
里子の口と舌の巧みな技はそれまでになかったものだった。
男根を咥えては吐き出しながら同時に舌を蠢かせて亀頭の周りや竿の裏筋を刺激されるとたまらなかった。
いったいどこでこんな技を得てきたのか・・・。
その蠢く膣の中に精を放つたびに里子の口で蘇生され屹立を繰り返す男根。そうしてまた、と止めどなく妻の求めは続いた。
まあ、いい。こうして帰って来たのだから落ち着いたらじっくり訊いてみよう。
里子の求めるままに精を放ち続け攻撃本能を減衰されたのか、いつしか井倉の思いは軟化した。
今はただ、黙って愛しい妻の髪を撫で、その時を待つ優しい夫を演じるしかないように思えた・・・。
その翌朝。
目覚ましをセットしていたにもかかわらず、井倉はしばし寝過ごした。
慌てて飛び起きたが、いつも井倉の起きる前には起きて朝食や洗濯をしている妻はまだぐっすりと寝入っていた。シーツはお互いの体液で乱れ、微かな異臭さえ澱んでいた。
井倉は今朝ほどまで続いた爛れた時間を反芻しわずかに勃起を感じた。
疲れ切って熟睡している妻の安らかな寝顔にキスをしてシャワーを浴び支度をしてもう一度寝室の妻の寝姿を垣間見、家を出た。
だが、ようやく取り戻したと思った日常は再び搔き消された。
その夜遅くに帰宅した井倉は、寝乱れたベッドがきれいに整えられ夕食の支度もされているキッチンを見た。
しかし、その愛する妻、里子の姿だけがなかった。
そして今まで味わった以上に豪華な食事が並べられた食卓の脇に、妻の欄だけが記入された離婚届があり、結婚指輪が置いてあった。
--新しい生を生きることにしました。今までありがとうございました—
置手紙まで添えられていた。
里子は再び、井倉の前から姿を消した。
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