寝取り寝取られ家内円満 ~最愛の妻をなんと親父に寝取られたのに幸せになっちゃう男の話~

kei

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09 人生の師、ミヤモト課長

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 会社に着いたのは7時過ぎでした。始業は9時ですから、当然まだ誰もいないと思っていました。ところが、開発のブースの明かりだけが既に点いていました。開発の後輩が不機嫌そうに詰ってきました。
「あ、ハセガワさーん。大変なことになってますよ。どうして電話出なかったんスか」
「え?」
 急いで社用の携帯をチェックしました。電源が入りませんでした。慌ててケーブルを繋いだら会社からのメールと通話着信が凄いことになってました。昨夜の修羅場で充電するのを忘れていたのです。
「ごめん。電池切れてた」
 その代り、マユからは、メールも通話も一切何もありませんでした。

 その日一日、入社してから四年半で下げた以上の回数頭を下げ、それまで口にした以上の回数お詫びをし、それまでに何度も落ち込んだ気分を全て足した以上に深く落ち込みました。
 俺が一昨日納入したファクトリー・オートメーションのシステム不具合の後始末に、新人の頃からの付き合いある取引先の不渡り、さらに失注が三件も重なり、その対応に翻弄されただけの一日でした。帰社してからも、課長と直属の上司である係長から考えられうるあらゆる罵詈雑言を浴び、始末書と報告書を書き終え提出しました。
「今日はもういいから、帰って休め」
 俺を一瞥した課長はそう言い、やっとその日が終わりました。
 帰れと言われても家には帰れません。
 オフィス街のそのコンビニエンスストアはよくしたもので、替えの下着や靴下を全て調達することが出来ました。それらをぶら下げて会社の隣のビジネスホテルに入っていきました。ボロきれをさらに泥で煮詰めてシュレッダーにかけた様になってホテルのベッドに倒れ込みました。
 倒れたらすぐ眠れそうだ。
 そう思っていたのに、まったく眠れませんでした。前夜一睡もしていませんでしたし体は消耗しきっているのに頭がどんどん冴えてくるのです。浮かんでくるのはその日の屈辱的なシーンばかりでした。
 ゼリーを容器に充填して密封するライン、その床一面に溢れ出た赤いゼリーの海。あんたの責任だよ。どうしてくれるんだ。担当者の冷たい蔑むような視線。いたたまれずにワイパーと長靴を借りてゼリーを片付ける。ヌルヌルの床の上に何度もコケてゼリー塗れになる自分。何とか片付け終わると、今度は取引先の不渡りの件。そして失注・・・。
 屈辱のシーンの合間にサブリミナル映像のようにマユとオヤジのセックスの場面がこれでもかと挿入され、気が狂いそうでした。
 このまま素粒子レベルまで分解されてベッドのマットレスの中に吸収されてしまえればいいのに。死にたいというのはこういうことなのか・・・。

 家に戻ると玄関は開けっ放しでした。中から女の嬌声が通りにまで漏れていました。
 居間に入ると、全裸のマユが床に這い、キッチンテーブルの足に両手で捕まって後ろから犯されていました。
「あん、あん、気持ちいい。お義父さん、気持ちいいよ~。もっと、もっと~」
「そうか。そんなに俺のがいいのか。こんなにヤラしいケツして」
 オヤジは言葉攻めをしながらマユの尻をぺちぺち叩き、腰を使い続けています。
「あーん。もっと、ブッて。もっと突いて。あーん、スゴい、スゴいよ、お義父さん!」
 オヤジが振り向きました。ニヤリと笑いながら、こう言いました。
「どうだ、タカシ。お前はこんなにできないだろ? もう、マユは俺なしでは生きられない体になった。あきらめろ。お前はそこでセンズリでもカイとけ」
 不思議なことにオヤジの傍らには同じく全裸のサツキがいてオヤジにキスしながら、
「ね~ん、次はあたしね~ん」と抱きついています。
 オヤジはラストスパートのようにより激しく打ち込み始めました。
 俺の手には何故か包丁が握られています。当然のようにオヤジの首に包丁を突き立てます。大量の血しぶきが上がり、オヤジは倒れました。返り血で真っ赤になった俺は、同じく血塗れになって後ずさりするマユとサツキに近づいてゆきました。
「落ち着いて、ハセガワ君。侮辱する気は無かったの。気持ちいいセックスがしたかっただけなの~」
「待って止めて、たー君。これはお芝居なの。ウソなの。夢なの。だから止めてお願い~」
「うるさい! みんな殺してやる。みんな、死ね~」
「きゃ~あ」
 すると、俺の前に裸のオフクロが立ちはだかり、両手を広げました。
「タカシ。ごめんね。お母さんが居なくなって寂しかった?」
「母さん。なんで居なくなっちゃったの? ボク、ずっと母さんに会いたかったよ」
 いつのまにか、俺は小学生になっていて、オフクロの胸に顔を埋めていました。
「もう、どこにも行かない。約束するわ。これからはいつも一緒だよ、たー君?」

 頬が濡れていました。シングルベッドのシーツがびしょびしょになるほどの大汗を掻いて、枕を抱きしめていました。
 なんつう夢だ・・・。
 オフクロが出て行ってしまってから、辛いことがあるとよくオフクロの夢を見たものでしたが、今回のは極め付けでした。最後の辺りは俺の願望なんだろうか。俺は潜在意識下でマユにオフクロの面影を投影しているという意味なのだろうか。精神的に限界に達していたのかもしれません。
 ヘッドボードの備え付けのデジタル時計を見ました。まだ一二時でした。気分転換にシャワーでも浴びて寝なおそうと浴室に入りかけた時、ドアがノックされました。こんな夜中に一体誰だろう。不審に思って覗き穴を覗くとドアの向こうにミヤモト課長が立っていました。
「おう、まだ起きてたか。ソープ行くぞ」

 課長と俺はオフィス街とは線路を挟んで反対側にある歓楽街への舗道を歩いていました。
「いや、残業しようと思ってコンビニ行ったらよぉ、お前がお泊りセット買ってホテルに入って行くのを見たんでな。今夜はミキちゃんが泊まりだったんで、部屋番号教えてもらったわけだ」
「ミキちゃん?」
 頭上を通る電車の騒音に負けない様に大声で怒鳴り合うのですが、それほどのエネルギーを費やしてまで喋るような内容の話ではありません。
「フロントに居たろ? おっぱいデカくて髪の長いイケイケっぽい女の子。あれがミキちゃんだ。オレ、一月位前から付き合ってるんだ。見た目の通りのスケベな姉ちゃんだぞ~。まだ二一だ。やっぱ若い女はいいなあ、オイ。良ければ一晩貸そうか?」
 若い女はいいなあ、という言葉の前に電車が通り過ぎてしまい、その大声がガード下に木霊しました。通りを歩いていた人たちからジロジロ見られてとても恥ずかしい思いをしました。
「はあ・・・」
 しかたなくそう相槌を打ちました。
 ミヤモト課長は三十台の半ばです。
 背が高く体つきもガッシリしていてしかもイケメン。仕事も出来てそこにいるだけで回りの人を爽やかな気分にする、まあ、俺とは正反対の、営業するために生まれてきたような人です。当然女にもモテます。離婚経験者です。
 俺はこの、上司というよりは兄貴のような課長を尊敬していました。
 きっと俺が消沈しているのを見て黙って居られなかったということなのでしょう。新入社員の頃、右も左も分からない俺を一から面倒みて下さり、課長に昇進してからもこうして何くれと目を掛けてくれるのです。大学でラグビーやってたくらいですからノリは完全に体育会のそれです。先輩の言うことは絶対。完全服従が基本です。だから、来いと言われればどこにでも付いて行かなくてはなりません。
 入社したての頃、
「ハセガワ、ソープでも行くか」
 本当にソープランドに連れていかれました。
 俺の相手をしてくれたのは三十代くらいの小柄でグラマーな可愛い感じの女性でした。課長の馴染みのひとらしく、ミヤモトさんから聞いてるわよ、と優しく、してくれようとしたのですが、案の定、気持ちが悪くなって吐いてしまいできませんでした。
 適当に体調のせいにして誤魔化しましたが、そのソープ嬢さんは恐縮して俺を気の毒に思ってくれたらしく、じゃあこういうのはどう? と、終わるまでの時間ずーっと俺の顔にその豊満な胸を押し付けて抱いていてくれました。
 課長は後で彼女からそれを聞いたらしく、もったいないことしやがって、と怒りましたが、次からはソープではなくてサウナにしてくれました。以来、課長の「ソープ行くぞ」はサウナのことで、時々相伴に与るわけです。
 温室で汗を流し風呂に入りマッサージまでしてもらい、心と体と脳が過去最大規模に弛緩しまくった後、安楽椅子がずらっと並ぶ休憩室で寝そべっていました。
 木曜日の、しかも深夜のことで客もまばら。ほぼ貸し切り状態で課長と二人、壁掛けのテレビでニュース番組を眺めていました。見ているけど何も見ていない。聞いているけど何も聞こえない。頭の働きが完全にストップしていて、真っ白、という状態でした。それまで何も言わず黙っていた課長がふいにつぶやきました
「コタニとケンカでもしたんか」
「コタニ」というのはマユの旧姓です。
 その言葉に、真っ白だった頭が突如昨日からの不快な場面の記憶で洪水のようになり、感情が制御できなくなってしまいました。不覚にも、泣いてしまいました。
「オイオイ・・・。図星かよ」
 安楽椅子に寝そべっていた課長はむっくり起き上がってサイドテーブルの上の生ビールを一口含みました。
「お前がここんとこ調子悪いのは別の原因かと思ったが、それだったのか」
「別の原因?」
「お前がタキガワのこと意識し過ぎなんじゃないかって、そう思ってたんだ」
 俺がアイツを意識?
 意外な指摘に言葉がありませんでした。課長は続けました。
「お前が調子悪くなってきたのはタキガワが俺の課に配属になってからだ」
「そう言われれば、そうかも知れません」
「そうだ」
 課長は俺の目は確かだと言わんばかりに睨んでいました。どうやってこの元気のない、世話の焼けるバカを盛り上げてやろうか、そんなことを考えてでもいるかのように。まったくもう、という溜息が聞こえてきそうなほどでした。
「もう二年目か、コタニと結婚して」
「・・・はい」
「コタニが退職して気負いもあったろう。養わなきゃならん、と思ったろうな」
「はい」
 なんでこう、痛いところを確実に刺してくるんだ、この人は。
 課長の下に四年も居て、いつも感じることでした。
「俺は、お前の、何だ?」
「師匠です」
「社長は、俺の、何だ?」
「師匠です」
「ということは、俺もお前も社長の弟子だ。俺の教えたやり方は社長から教わったやり方だ。俺らの営業は売ったらお終いじゃない。むしろ売ってからが本当の営業だ。システムなんてトラブルが付きもんだ。むしろトラブルがあった時こそ、営業の本当の力が問われるんだ」
「はい」
「今日、お前が帰ってから電話が三件あった。ゼリー屋と広告屋とネジ屋だ」
 またクレームか? 生唾を飲み込み、課長の次の言葉を待ちました。
「ゼリー屋は工場長の謝罪の電話だった。あそこの担当者、ラインの再稼働を焦ってお前にテストをさせなかったらしいな。日頃から工場長と接触してたのがよかったな。彼はお前がそんな軽率なミスをする筈がない、と担当を問い詰めたら判ったんだそうだ。ハセガワさんにくれぐれもよろしく、って言ってたぞ」
 課長は一旦言葉を切り、ビールのジョッキを煽り、傍をスタスタ歩いていた丈の短いスカートの制服を着たおっぱいの大きな店員さんに手を挙げて呼びお代わりを頼みました。店員さんは無表情に課長と俺を一瞥すると再びスタスタ行ってしまいました。
「広告屋のほうはお礼の電話だった。お前、チンピラから奥さんを守ってやったそうだな」
「ああ。ちょうど俺が奥さんと話をしてた時、倒産すると早とちりしたヤクザみたいなヤツが取り立てにきたんです。奥さんの話も聞かずに暴れようとしたんで、ちょっとモップで小突いただけですよ」
「電話は旦那さんからだった。奥さん、感激しちゃってそれから興奮しっ放しだったらしい。妻がハセガワさんに走っちゃうんじゃないかとドキドキしてます、って笑ってた。金策もできたらしい。二度目は絶対ないようにしますと言ってた。それから失注案件三件の内の一つ、ネジ屋の親父がな、注文取り消したけど、もう一度話をきかせてもらいたい、ってさ。明日来てくれと」
 横に課長の視線を感じながら、俺はまた目頭を熱くしていました。感情の抑制が効かなくなっていました。
「な? お前は俺の教えた通りのことをしているんだ。お前はちゃんとお前自身を客に売ってきている。だから、こうして結果が出ているんだ。だからお前は自信を持っていいんだ。タキガワなんて意識することはない。タキガワの勢いに追い抜かれるんじゃないかと焦り、結婚して責任を感じ、いつもの自分のペースを忘れ、悪循環に陥ってるだけだ。そうだろう?
 明日からは気持ちを入れ替えてまた頑張れ。明日正式に言うが、お前をリーダーから外す。捲土重来ってことだ。判るな?」
 そう言って課長は俺の肩をギュッと掴み、ポンポン叩きました。
「・・・はい」
 結果が全てですから仕方ありません。
「代わりにタキガワをリーダーにする。だがな、アイツは早晩躓くぞ」
 課長は意外なことを言い出しました。
「どうしてですか?」
「アイツは俺の若い頃ソックリだからだ。確かにアイツは優秀だが、営業をナメてるところがある。上司である係長の言うことも俺の言うことも聞かない。実績さえ出せばいいと思ってる。見てろ。今に天狗の鼻が折れるから」
 おっぱいの大きな店員さんがやってきて、生ビールのジョッキをそれぞれのサイドテーブルに置き腰にぶら下げた伝票にロッカー番号を書き入れながら下がっていきました。
 正直言ってタキガワのことなんてどうでもいいと思っていましたが、課長は多分降格される俺のショックを和らげようと気を使ってくれているんだなというのは感じました。そこまで自分を買ってくれている上司に恵まれ、俺は幸せなのかもしれません。
「ところで、ケンカの原因は何だ? 家にも帰らないなんて、それしかねえじゃねえか」
 俺はビールを一口飲みました。言いたくありませんでした。というより、言えませんでした。
「結婚して一年もすりゃ、そろそろお互いの粗みたいなもんが見えてきたり、隠してる物が出てきたりする頃か。夫婦なら、ケンカもするし諍いがあるのも当たり前だけどな」
 一般論としてそう言ったのでしょう。ただ「隠しているものが」云々の下りに俺が微妙に反応したのは気付かれてしまいました。
「やっぱそうか。もしかしてコタニの前カレがどうとかそう言う話か? よくあることだ、そんなもん」
 と、課長は言いました。
「なあ、ハセガワ。
 ほとんどの奴がパートナーの過去をあまり知らずに結婚する。そりゃあ、付合いの中でお互いに相手の過去は確認するさ、それなりにな。だが絶対に一〇〇%は知り得ない。それが当たり前だぞ。根堀り葉掘り過去に何人と付き合った、どういうセックスをした、セックスしてないときは何してた、一番感じた体位は何だ、一番チンコがデカかったのは俺か、俺じゃなきゃ誰だ、なんて余程の変人でもなければ聞かないだろ? 最近は処女だとかなんてあまり気にされなくなってるしな。元は赤の他人なんだから。
 だいたいよぉ、結婚してたって四六時中一緒にいる夫婦なんて店やってる夫婦ぐらいだろ。離れている間相手が何してるかなんて、一〇〇%わかるか?
 お前とコタニとの間で何があったのかは知らん。ただ、何だか知らんが、あんまり意固地になってると、全てを失っちまうこともあるぞ」
 言われなくてもそんなことはわかっています。しかし、俺のケースはレアなのです。そんじょそこらに転がっているような話ではないのです。それを言えないもどかしさからさらにジョッキを煽り悶々と飲むうちに、課長になら、と思いはじめ、口を開きました。
「課長」
 俺の目は多分座ってしまっていたでしょう。
「ちょっと訊いてもいいですか」
「おう」
「課長は、何で奥さんと別れたんですか」
 その話か。とでも言うように、課長は天井を仰いで額をゴシゴシ擦り、俺を見据えました。
「話してもいいけどよ・・・」
 課長は、まだ新婚の俺に話す話じゃないけどなと前置きしながらブツブツと喋り始めました。
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