寝取り寝取られ家内円満 ~最愛の妻をなんと親父に寝取られたのに幸せになっちゃう男の話~

kei

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20 母の手紙 母の暗黒の生い立ちとオヤジとの出会い

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 孝へ。
 元気にしていますか。

 ごめんなさい。

 私があなたに言える言葉はこれしかありません。
 私が理由も告げずに突然あなたの前からいなくなった後、あなたが今までどんな日々を送ったのだろうと思うと、今も胸が張り裂けそうになります。勝手に出て行っておきながら何を今更と、あなたは思うことでしょうね。

 私は今、あなたからとても遠く離れた所にいます。
 私が今いるところ。ここは主のしもべ達の家です。
 主に祈り、主の下僕として毎日を過ごす場所です。ここには女の人しかいません。皆、家族や友達、子供や親を捨て、主に縋って生きることを選んだ人達です。
 私は日々、祈りの中にいます。あなたとお父さんのために毎日祈っています。

 あなたがこの手紙を読んでいる今。
 あなたの失われた記憶が戻っていなかったとすれば、もしかするとあなたは私が居なくなったのはお父さんのせいだと誤解しているかも知れません。
 それは違います。どうかお父さんを責めないで下さい。
 私はお父さんに申し訳ない思いで一杯なのです。
 勝手にいなくなっておいてこんなことを言えた立場ではありませんが、私とあなたのことを一途に思い、守ってくれたお父さんに感謝してほしいのです。
 繰り返しますが、私は自分の意志であなたの前から去ったのです。そんな私をお父さんがずっと探してくれていたのを知っていました。申し訳ないと思いながら、それでも私はあなたの許へ戻るわけには行かなかったのです。

 ですが、せめてあなたには、私がどうしていなくなったのか、どうしてここにいるのか、そしてなぜあなたの許へ帰ることが出来ないのか。一体、何があったのか。
 それを伝えねばと思っていました。あなたには知る権利があると思っていました。それをあなたに伝えるのは私の義務なのではないか、と。
 だから、手紙を書くことにしました。
 この手紙を読むほどになったあなたなら、真実を知るべきだと思いました。
 本当のことを伝えるために、少し長くなりますが、私の生い立ちから書きます。


 私は江戸時代からと言われる、旧家の一人娘として生まれました。
 家勢を高め家名を守ることこそが家の構成員たる者の使命。そういう考え方の父であり、そういう教えを代々守っている家でした。私は厳格に育てられました。
「大きくなったら、かわいいお嫁さんになる」
 それが小さいころの夢でした。シンデレラとか眠り姫のお話を読むたびにその思いを強くしてゆきました。そしていつか素敵な王子様が現れて私をお嫁さんにしてくれる。そんな夢を持った、ありふれた、どこにでもいるような女の子でした。

 ですが、成長してゆくにつれ、その淡くて儚い夢は現実という砥石に削られてゆきました。

 小学校に上がると男の子と遊ぶことは禁止されました。相手の家に行ったり家に連れてくるなどもってのほか。学校でも話をしてはいけない、ときつく言い渡されました。
 当然のことながら、私はクラスの中で常に忘れられたようになりました。
 何かそういう子がいたような。名前なんていったっけ。
 席はあるのだけれど顔も名前も覚えてもらえない。そういう存在。それが私でした。
 それだけならばまだ良かったのですが、次第に気持ち悪がられ、男の子の中には私を虐めて面白がる子が出てくるようになりました。服に絵の具を付けられたり、唾を吐かれたり、叩かれたりしました。
 もちろん、私は何をされても黙っていました。
 でも、服を汚し顔を腫らし、髪の毛にガムを付けられて帰ってきても、父も母も何をしてくれるでもありませんでした。
「お前に隙があるから悪戯をされるんだ!」
 却って叱られました。
 さすがにランドセルを田んぼに落とされたときはその現場を見ていた父の知り合いが居たこともあり、外聞を気にした父が学校に抗議し、首謀者の男の子の家に怒鳴りこみ、その男の子がしばらくして転校していったことから、今度はクラス中から恐れられ、それからは一切無視されるようになりました。
 叩かれるよりはいい。私はただひたすら、耐えました。

 中学高校は通学時間が長い私立のミッション系の女子校に通わされました。
 部活動は禁止。電車に乗る前と降りた後、家に電話をしなければなりません。家に帰ると母が私からカバンを奪い、テーブルの上に全てを出され調べられます。
 父は地元の企業の役員をしていました。自分の息がかかった人に私の顔写真を見せ、
「娘に悪い虫が付かないように」
 密かに監視役を依頼することまでしていたのです。
 通学の途中にちょっと男の人から声を掛けられただけで、家のお使いの途中にちょっと道を尋ねられただけで、学校の文化祭で他校の男子生徒からちょっと話しかけられただけで、誰かが私のことを父に言いつけ、その都度父や母から三十分、いえ一時間以上も詰問責めにされました。
 知っている男か、どこに住んでいる男か、どこの学校か、何の仕事をしている男か、何を話しかけられた、何か約束したのか、何と答えた、その男をどう思ったか・・・。
 手を握ったのか、接吻したのか、まさかそれ以上のことはしていないだろうな、若い男はお前の体が目当てなんだ、お前が家名を傷つけるようなことをしたら許さん! そんな異常な破廉恥な娘に育てた覚えはない、二度と邪な考えを起こさないように懲らしめてやる・・・。
 私が男の子や男性と話をしたり一緒に居たのを知る度に、父は私を折檻しました。
 椅子に腹ばいにされ、お尻を竹の棒で打たれるのです。服や下着が傷むからと素肌を直接、何度も叩かれるのです。父は暴君以外の何物でもありませんでした。
 最初に折檻を受けた時、まだ小学三年生でした。
 あまりの痛さに大声で叫びました。助けて、と母を呼びました。母は父の下僕でした。父の言いなりでした。ですからどんなに叫ぼうが一切、助けてくれはしませんでした。
「ごめんなさい! もう許して!」
 私がどんなに懇願し泣き喚いても父は加減をしてはくれませんでした。
 お尻は真っ赤に腫れあがり、お風呂に入るときや椅子に座るときにも激痛を耐えなくてはなりませんでした。
 私は異常だと父は責めましたが、むしろ両親の方がよっぽど異常だと思いました。でも絶対に口には出しませんでした。出したが最後、どんなことになるのか、想像もつかなかったからです。折檻は度々行われ次第にエスカレートして行くのですが、そのことはもう少し後に書きます。
 まだ小学生のころからそのような日々を送っていた私は、いつしか男の人を見ただけで嫌悪感を持つようになり、吐き気すら感じるようになってしまったのです。
「かわいいお嫁さんになる」
 そんな幼くて淡い願望は無残に打ち砕かれ、男と女が出会い、愛し合い、その結果新しい命が生まれる、という自然の美しい輪廻は私には幻想となりました。
 父と母の言うことさえ聞いていれば、全てうまくいく。父母の言葉と勉強。それ以外のことは一切考えるな。女でも油断できない。外でどういう付き合いをするかわかったものではない。同性の友人すら持つことを許されませんでした。私はそういう暗黒の一二年間を過ごさなければなりませんでした。

 唯一の慰めは学校や市の図書館で本を読むことだけでした。家に借りて来さえしなければ、どんな本を読むかは一切詮索されませんでした。市の図書館なら寄り道が許されました。そこで私は読みたい本を無制限に読むことが出来ました。皆が部活動に勤しんでいる時間、私は本の世界に没入することが出来ました。

 高等部の二年生で愛子という子と同じクラスになりました。
 私は彼女が嫌いでした。
 彼女は何かにつけて私に関わろうとしてきました。
 他人と話すのは苦手でした。下手に関わればそのことで折檻を受けるのを恐れていたこともあり、他人とのコミュニケーションの不自由な人間になっていたのだろうと思います。
 クラスの中に彼女の取り巻きのような子が何人かいて、愛子はいつも彼女達と一緒でした。そして、いつも何やらいかがわしそうな話をしていました。
 コソコソ話すのならまだしも、いつも何故か私のすぐ傍でそれもかなり性的に大胆な内容の話をするのです。私が気分が悪くなって席を立とうとすると愛子はニヤリと笑いました。それは何度も繰り返されました。

 ある日のことです。
 放課後、学校の図書館で借りた読みかけの本が気になり、そのまま独り教室に残って読んでいました。部活をしていなかった私はなるべく家にいる時間を少なくしたかったので、あまり遅くならない程度に放課後の読書をするのが数少ない楽しみだったのです。
 そこに愛子がやってきて、私の前の椅子に座りました。そして無遠慮に私が読んでいた本の表紙を返しました。
「あれ? 今日は大人しい本なんだね」
 そう彼女は言いました。何のことかわからず私が戸惑っていると、
「この間、街の図書館であんたをみかけたよ」
 愛子は身を乗り出して私に耳打ちしてきました。
「あんた、顔に似合わずスゴい本読むんだね」
 彼女は私の後を尾行したのだと言いました。そして私が図書館で読んだ本をいく度かチェックしていたと言うのです。
「谷崎純一郎。三島由紀夫。渋沢龍彦。マルキ・ド・サド・・・」
 ゾッとして総毛立ち、震えが来ました。
「やめて!」
 そして恥ずかしさに顔が火照りました。脱兎のごとくという言葉の通り、そこから逃げ出そうと立ち上がりかけました。ところが、愛子は私の腕を掴んで放しませんでした。
「放して」
「いいじゃない。あんたはあたしと同じなんだから」
 愛子は妖しい目で私を見つめました。
 椅子に引き戻され、背後から抱きつかれました。急に同性の甘い体臭に抱きすくめられ頭がくらくらしました。「禁断の」という、小説の中のそのころの私にとってはセンセーショナル過ぎる言葉が現実になったような気がしたのです。私は小説の中に出てくるそんな言葉に鳥肌が立つような昂奮をし、興味をひかれていました。
「あんたは他の子とは違う。あんたのことが前から気になってたの」
 彼女が私の首筋にキスをし彼女の舌が私の耳を舐めました。背中に電気が走って力が抜けました。あまりの気持ちのよさに気が遠くなりそうでした。
「変態なんだよ、あたしたち」
 私はハッとして彼女を突き飛ばし、気が付いたら教室から飛び出していました。
 幸いなことに愛子とはそれきりでした。それから卒業するまで、愛子が私に近づいてくることはありませんでした。


 高校を卒業すると進学はさせてもらえず、家の中に軟禁されるように家事手伝いをしていました。花嫁修業として料理やお花、お茶の御稽古をやらされ、それ以外はかごの鳥の毎日でした。
 そんなある日、突然父が言いました。
「今度の日曜、見合いをさせるから準備しておけ」
 普通の家庭ならまず母親が訊くはずです。
 お相手は誰? 何と仰る方? 何をなさっている人? 家はどこ? どなたからのご紹介なんです?・・・と。。
 それなのに、母は何も言いませんでした。
 娘がかわいいなら当然お相手の素性ぐらい父に問いただす筈です。私の母はただ奴隷のように盲目的に父に従っているだけでした。
 そんな家でしたから私は全てを諦めていました。ですから母にも誰にも、もう何も期待はしていませんでした。
 ですから、普通ならお見合いの日を指折り数えてドキドキするような状況のはずですが、私の場合は、まったく違いました。まるで死刑執行日が迫るように感じ、恐怖で眠れない夜が続き、貧血で倒れたりしました。

「長谷川孝三です」
 お見合いの日。
 目の前に立った男の人はそう言って会釈しました。私よりずっと年上の、背の高い、ハンサムな男性でした。物心ついて初めて、男の人と同席をすることになりました。父や母の公認です。男の人と同席をしても責められず、告げ口もされない。あらかじめ伝えられていたこととはいえ、父や学校の教師以外の男の人とこんなに近い距離で面と向かっている。そんな日が現実に訪れるとは夢にも思っていなかったのです。まず、そのことに驚きました。
 しかも、動揺している私に父と母は、
「何故もっといろいろ話をしないのか」
 などと促しさえし、頭が混乱しそうでした。今まで雁字搦めに抑圧しておきながら、急にそんなことを言われてもできるわけがありません。
 彼を紹介した叔父夫妻があれこれと促すので、それに対して応える、まるで通訳を介しているような、もどかしい会話がしばらく続きました。
「じゃあ、後は若いお二人で」
 とホテルの園庭に追い出される・・・。
 後には当然のように、お見合いの典型的な段取りが用意されていました。
 初めて男の人と並んで歩きました。
 私はチラと父を顧みました。どうしても長年叩き込まれた恐怖が抜けなかったからです。父は心配そうな不安そうな面持ちで遠くから私を見ていました。
 落ち着いた佇まいの日本庭園。厳かな石灯籠。掃き清められた玉砂利の小路。水音をさせて美しく流れる小川や色鮮やかな錦鯉の泳ぐ池の風情。初めて接したそんな風雅な趣もまったく目に入らず、胸の動悸を抑えるのに懸命になっていました。
「洋子さんは、俺みたいなのは、嫌いですか?」
 何を話せばいいのかわからずにただ黙々と下を向いて歩を進めていた私。そんな私に彼が問いかけたとき、吃驚してその場に倒れそうなほどでした。
 今まで書いてきたような幼少期を送ったせいか、私は他人の目を見て話す事が出来ない人間になっていたのです。
 ところが、孝三さんはそんな私の心の扉を強引にこじ開けて入ってきました。
「洋子さん。俺の目を見て下さい。もしもあなたが俺を嫌いでも、これから少しずつ、好きになってくれるように努力します。だから、俺と結婚を前提として付き合っていただけませんか」
 その言葉が、雁字搦めの時間の中に幽閉されていた私を救い出すことになりました。
 俯いてばかりいた私は、恐るおそる、おずおずと顔を上げ、その背の高いハンサムな男の人を見上げました。

 


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