精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった

SA

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1 鑑定の儀編

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 それから二週間。
 俺は銀竜との赤の樹林の探索と浄化、通常業務に加え、金竜から距離の縮め方について教授され、共通の趣味や話題の開拓に勤しんだ。
 思ってた以上に忙しかった。しかし、これもそれも、彼女といっしょに暮らすため。

 共通の趣味や話題について、どうやって活用していけばいいのか、金竜から話を聞いた。

「相手の方が詳しけりゃ、それを理由にいろいろ教えてもらえるだろ。こっちが詳しければ、その逆だ」

「なるほどな。とにかく、彼女の興味をしっかり把握しとけばいいわけか」

 自分が詳しくなくても上手くなくてもいいのは安心だ。
 彼女の趣味なら、どんなことでも好きになる自信しかないが、上手いかは別の話だからな。

「ああ、そうだ。で、教えてもらう、教えてやる、てのを理由にして二人きりになるんだ。それとなくな」

「なるほど、それはいい誘い方だな」

「そうそう。二人きりになってしまえば、こっちのもの。遠慮なくイチャイチャできるぞ」

 金竜の話からすると、やはり共通の何かは重要そうだ。
 彼女とイチャイチャする自分を妄想しながら、毎日をしのぐ。

 そして、赤の樹林の閉鎖が完全に解除された。同時に大神殿での儀も再開される。
 
 今日は待ちに待った彼女の最後の鑑定の儀だ。儀が終わって、すぐ、彼女の元へ駆けつけたかったんだが……。
 会うのが二回目、会話もしたことがないどころか名前も名乗りあったことがない、実質ほぼ初対面の相手がいきなり現れて、求婚されても困惑されるだけ。

「下手したら、気持ち悪がられるわよー」

と言われて周りから押し止められた。
 別に気持ち悪がられようが嫌がられようが、本契約してしまえばこっちのものだし。と返せば、

「師団長、それはヤバいっす」

と、残念な目で見られるし。
 仕方なく、今日のところは大人しく仕事をすることにした。

 諜報によると、儀が終わってから本格的に婚姻先を見繕うらしい。第一候補はあのムカつく護衛だと。
 エルヴェス情報では、護衛本人はともかく、護衛の家門が彼女を気にかけていて、ぜひ嫁にと働きかけているらしい。
 これまで、ことごとく縁談の打診をつぶさせてきたが、あの家門はそれをかいくぐってきた難敵だ。

 とはいえ候補は候補。確定ではない。
 ここらへんでこちらから縁談の打診をするのもいいかもしれない。

 ちょうど今日呼ばれている会議には、彼女の父親、グランフレイム卿もやってくる。顔合わせをしておくのもいいだろう。

 そうして迎えた第八師団=精霊術士団の新人訓練会議。新人訓練の進捗状況の報告と訓練方法や内容の検討、それを踏まえての現行計画を見直すかを話し合う。
 他部門にとっても参考になるため、竜種を師団長に持つところはすべて参加している会議だ。
 現行計画の説明が終わったところで、新人教育も担当している師団顧問のグランフレイム卿がやってきた。

「すまないな、今日は卿のご息女たちの最終鑑定だというのに」

 第八師団長が申しわけなさそうに、グランフレイム卿に声をかけた。
 卿はとくに何も言わず、頷くだけで、黙って着席する。

「では、議事を再開する」

 グランフレイム卿から、新人訓練の進捗状況が報告されていった。
 第六師団に異動してくるやつは、新人教育より再教育が必要なやつばかりだが、それでも新人訓練の内容は参考にしたいものが多かった。

 そして、それは突然おきた。

 心臓がギュッと冷たい手で掴まれたような感覚。今にも鼓動が止まりそうで冷や汗が出てくる。
 と思ったら、今度はいきなり脈が速くなり身体全体が熱くなる。

 彼女に何かあったのか?

 仮とはいえ伴侶の契約をしているので、どこにいても、離れていても、彼女の状態は手に取るように分かる。
 命に別状はない。力が凄くみなぎった状態のようで、どんどん彼女の力が強くなっていくのを感じる。

 彼女に何があったんだ?

 考えても答えはない。

 会議も終盤に近づいた頃、足音と飛び交う声が室内に響いてきて、俺の疑問はかき消された。

「どうした? 会議中だぞ」

 議長の第八師団長のそばに、補佐がかけよった。一言二言、やり取りが交わされる。

「騒がしいな。なんかあったか?」

「伝令が来たようだ」

「伝達じゃなくて、伝令だと?」

 金竜と銀竜がこそこそ話し出したのをきっかけに、室内も興味と緊張でざわめき始めた。

「重大案件のようだな」

 俺もカーシェイも気を引き締める。
 第八師団長の指示で、室内に男が入ってきた。俺たちに向かって一礼する。服装からみて、本部所属の人間のようだ。

「伝達を」と第八師団長。

「ハッ、本部より伝達です」

 みんなの視線が伝令に集中し、静まり返る。伝令は再度、一礼してから、伝達文を緊張した面もちで読み上げた。

「先ほど、魔物の遭遇報告がありました。遭遇場所は赤の樹林。トカゲ型の魔物多数が確認されたとのこと。それを受け、緊急会議の開催を決定」

 いったん静かになった室内が、またざわめきだした。

「関係者が集まり次第、この場で緊急会議を開催します。第五、第六、第七の各師団長はこの場に残ってください。第六師団のみ補佐一名同席を認めます。それ以外は退席をお願いします」

「赤の樹林だと?!」

「え、冗談キツいな。あそこはがっつり浄化したけど」

「ああ、全域探索をしたばかりだぞ」

「遭遇報告は、グランフレイムのセルージュ殿からです」

「何っ?!」

 伝令が真っ青な顔で返答する。
 先ほどまでいっしょにいたであろう息子の名が出て、同じ顔色となるグランフレイム卿。
 室内のざわめきがさらに大きくなる。伝令はそのまま伝達を続ける。その先の内容は、最悪のものだった。

「大神殿から自館に戻る途中、赤の樹林を通過した際に、トカゲ型魔物三体に遭遇。
 襲撃され、車体一台大破して渓谷に転落。乗車していたネージュ・グランフレイム嬢が車体と共に渓谷に転落して死亡。
 同乗していたマリージュ・グランフレイム嬢は無事に救助され、外傷はないとのこと。
 なお渓谷には三体とは別に複数の魔物を確認。正確な数は不明。以上です」
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