精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった

SA

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3 武道大会編

6-2 副官は狼狽える

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「あの、エレバウトさん。ちょっと質問があるんですが」

 俺、第六師団長付き副官のマディアス・カーネリウスは、俺付きのものすごく頼れる補佐官に質問してみました。

 エレバウトさん、高飛車で自信満々な部分はありますけど、なんでもできて、なんでも答える、まさに万能補佐官なんです!

「あら、なんでも質問してくださいませ。あたくし、たいていのことでしたら、お答えして差し上げますわ!」

 ほらほら。気がかりなことはこれで何でも解消。とはいえ、俺だってそれなりに頑張らないといけないわけなんですが。
 人智を超える疑問はエレバウトさんに訊くに限ります!

 それでですね。

「いったい、いつからここにいました?」

「あら、最初からいましたわよ!」

「ええ?! 最初から?!」

 俺が驚くのには訳があります。

 だって、この宴会。
 今は無き(不在という意味で)カーシェイさんの伴侶捕獲祝の宴会なので、参加者は竜種。

 もちろん、竜種でない人が混じってはいけないことはありません。

 現に、さっきまでクロエル補佐官だって、参加していたんですから。
 そして、普通竜種全員、手痛い負けを喫しました。戦闘でも負けて、飲み比べでも負けて。とほほですよ、とほほ。

 ていうか、クロエル補佐官。どんだけ強いんですかねぇ。戦闘も酒も。

 余計な考え事をして黙り込んだ俺を見て、エレバウトさんは隣の人物に話しかけました。

 どうやら、証人のようです。

「ですわよね、エルヴェス副官!」

「ウヘヘヘヘ」

「ええ?! エルヴェスさんまでいる?」

 なんでエルヴェスさんまで。

 さっきも言いましたが、この宴会。参加者は竜種。なので、宴会の連絡も竜種にしか回りません。
 竜種以外が参加しても問題ないけど、連絡が回らないので参加はほぼ不可能。

 お二人ともどこから聞きつけたんですか。

「超級隠密、ナメンナ。ウヘ」

「エルヴェスさんが紛れ込めるのは分かるけど、なんで、エレバウトさんまで」

「ショボクレはポンコツなのよ、ポンコツ」

 とほほ、と思いながら頭を抱える俺。

 まぁ、悩んでも仕方ないので、飲み直しますか。普通の酒で。
 俺は元気良く、マスターに注文を入れたのでした。




 そしてそれから。延々と女性お二人の話につき合わされること一時間。

 竜殺しにやられて伸びていた人たちも徐々に復活してきました。
 俺の横ではドラグゼルンさんが、ナッツをポリポリ摘みながら、ジュースを飲んでいます。
 さすがにもう酒は飲みませんよね。

「にしても、クロスフィアさんはさすがですわね!」

「ほわほわちゃん、マジヤバイ」

「竜種の皆様が可憐な女性に飲み負けるとは、見物でしたわ!」

 俺は竜殺しをラッパ飲みして、何本も空にしていたクロエル補佐官を思い起こしました。
 可憐て、かわいらしいとか、愛らしいって意味ですよね?
 俺の中で、可憐と竜殺しがケンカしてます。

「あれが可憐? 最近、可憐の意味って変わりました?」

「竜殺しを可憐に瓶飲みするお相手様。師団長、萌えそうだな」

「可憐の使い方、おかしくありません?」

 ドラグゼルンさん、まだ、酔いが覚めてないんですかね。

「にしても、師団長もさすがですわね!」

「ブアイソウも、マジヤバイ」

「往復するだけで三十分以上はかかるところを、打ち合わせ込みでキッチリ三十分で戻られましたわ!」

「「え?!」」

 飲み比べの発端は、総師団長に急用で呼ばれたため、宴会途中で師団長が席を外したこと。

 一時間くらいかかるだろう。
 その間に飲み比べでもやるか。
 なんていう気軽な話だったんです。最初は。

 気がついたら、竜殺しの飲み比べという恐ろしい事態に発展してしまいまして。
 何をどう間違ってしまったんでしょうか。

 そんなことより、師団長です。
 伴侶のためなら何でもできる、とはいえ、上位竜種にも限界はあります。あるはずです。

「師団長、戻りがすごく早かったですよね」

「いったい、どうやったんだ?」

「飛竜、呼んだんじゃないですか?」

「だとしても、スピード出し過ぎだろ?」

「えーっと、それなら、エレバウトさんに質問して答えを教えてもらいます!」

「バカだろ、お前。エレバウトはずっとここにいたって言ってただろ」

「あら、分かりますわよ!」

「マジか?!」

 ほらほら。気がかりなことはこれで何でも解消。でも、本気でなんでこんなことまでわかるんですかねぇ。

「転移魔法で戻られたんですわ!」

 いやいや、さすがに師団長は転移魔法なんて使えませんよ。
 エレバウトさん、意外と当てずっぽうなところもあるんですねー

 と思ったところに、とどめの一撃。

「バーミリオン様といっしょに」

 は?!

「「バーミリオン様?!」」

「あ? なんだ? 呼んだか?」

 なんで竜種の宴会に赤種の一番目、バーミリオン様がいるんです?!

 俺とドラグゼルンさんは、思わずお互いの顔を見合わせました。

「いるな」「いつの間に」

「失礼なやつらだな」

 ジロッと俺たちを睨む、バーミリオン様。
 バーミリオン様はエルヴェスさんの向こう側の席にちょこんと腰かけ、ジュースをもらって飲んでいました。

 睨みつける様は大人顔負けですけど、こうしてジュースを持つ姿は、年相応ですよね。

「オッサンとこで、いっしょに打ち合わせした後、ムリヤリ転移させられたんだよ」

「なるほど」

「謎がひとつ、なくなりましたね」

 あれ?

「てことは、師団長が戻ってから、ずっとバーミリオン様はここにいたんですか?」

「さっきからずっといただろ」

 あぁ、ダメだ俺。

 エレバウトさんやエルヴェスさんだけでなく、存在感の塊、バーミリオン様がいたのにも気づかないなんて。

 こんなんでは、黒竜さんの副官、勤まりませんよね。

 視線が手元のカップに落ちます。

「俺、自信なくしました」

「ショボクレがポンコツなのは、最初からダカラー」

 エルヴェスさん、抉らないでください。

「ノーテンキも能天気よねー」

「うっせぇ。俺もカーネリウスも飲み過ぎたんだよ」

 開き直るドラグゼルンさん。

 あ、ドラグゼルンさんも、この三人に気づいてなかったんでしたっけ。
 それなら、俺、まだまだ第六師団で頑張っていけるかな。

 シミジミとする俺の耳に、エレバウトさんの甲高い声が響いてきます。
 一ヶ月もこの声を聞いていると、慣れてきますね。このけたたましい声に、かわいらしさも感じるようになってきました。

「ならば、明日。エレバウト家特製ニガニガドリンクをご馳走いたしますわ! 深酒の翌日にピッタリ! どうぞ、ご期待くださいませ!」

 エレバウトさんの声に慣れすぎたせいか、はたまた、竜殺しの飲み過ぎの影響か。
 俺はこのときの会話を、あっさり聞き流しました。

 翌日。

 俺の机の上に置かれた毒々しい深緑色の液体を見て、記憶が蘇った俺。

 一気飲みを期待する目で見るエレバウトさんに、一気飲みを見物に来たエルヴェスさん。

 二人の目がいつまでもいつまでも、俺を見ているのでした。
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