精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった

SA

文字の大きさ
167 / 384
4 騎士と破壊のお姫さま編

1-0 竜はお姫さまを連れ去って

しおりを挟む
 私の目の前に胡散臭い占い師がいる。

 私と占い師は、水盤を乗せた小さいテーブルを挟んで、イスに座って対峙していた。

 占い師は、黒いローブを頭からスッポリと被っていて、口元しか見えない。
 男性なのか女性なのか、髪の色や目の色も不明だ。

 いつまでもじーっと占い師を見つめる私に向かって、水盤に手をかざした占い師が声をかけてきた。

「何を占いましょうか?」

 若そうな男の声だ。聞き覚えはない。
 初対面で間違いないんだろうけど、なんか、引っかかりを覚える。

「何ができるの?」

「何でもできますよ」

「へー」

 占い師は自信満々に答えた。かなり実力があるようだ。

 ま、ルミアーナさんも、良く当たると人気の占い師だ、と言ってたよな。

 私は職場の同僚であるクリンクリンとした金髪の女性を思い浮かべた。
 ルミアーナ・エレバウトさんは、私と同じ第六師団で働いている、情報通の補佐官だ。

 恋人がいない割に、デートコースに詳しかったり、人気スポットに詳しかったり。
 いったいどこ情報かも分からないものを毎回毎回、事あるごとに教えてくれる。
 そして、それが意外と役に立つ。
 ルミアーナさんは不思議が尽きない。

 私は夫のラウに配属されている補佐官なのに対して、ルミアーナさんは第六師団配属で副官のカーネリウスさん付き補佐官。

 ま、普通はルミアーナさんのように、師団配属なんだけど。

 第六師団でラウと働きたい、そう伝えたはずが。ラウに就職したい、と盛大に勘違いされ、まさかの個人配属となったという。

 誰だよ、許可した人。

 私がラウ以外に所属するのを、ラウが嫌がったという事情もあるとは思うけど。
 許可した人の頭の中身を疑いたくもなってくるわ。

 それで、占いだ。

 占いといえば、運命と宿命の神バルナ様が司る。
 赤種の鑑定眼も根幹はバルナ様の力なので、鑑定眼と占い技能は似たところがあるのだ。

「未来が視えるの?」

「いいえ、占いです」

「未来を視るのとは違うの?」

「占いは、その人が持って生まれた運から未来の可能性を診断するんです」

 確実な未来ってわけじゃないってことか。それにしても、あやふやというか、はっきりしないな。

 なのに、よく当たるってどういうことだろう?

「鑑定とは違うの?」

「鑑定は過去の歴史や現在の状態を判断するものでしょう?」

「うん、そうだね」

 赤種の鑑定眼や時空眼は人や物の過去や現在を視る。現在より先の未来は視えない。

「占いはその先、未来の推測です」

「推測なんだ」

「未来は変わりますから」

「へー」

 それは努力次第で変わってくるってことなのかな。自分の力で未来を作るって良いよね。

 で、そんな感じなのに、よく当たるってどういうことだろう?

「それで、何を占いましょうか?」

「それじゃ、ぜんぶ!」

 私は思い切った。ぜんぶだ。
 ひとつになんて絞れないし。ひとつ聞いて、あれも聞いておけば良かった!なんて、後で思いたくない。

「ぜんぶ?」

 占い師は驚いたそぶりをみせ、ゆったりとした口調で、私の言葉を繰り返す。

「そう、よく占いするもの、ぜんぶで!」

「ひとつずつでは、ないんですね」

 水盤の表面を撫でるように手を動かしながら、占い師が確認する。

「次、いつ外出できるか分からないし。また、ここに来れるか分からないから」

「なるほど」

 目まで隠れているので、占い師の視線はよく分からないが、どうやら私の頭の上あたりを見やったらしい。

 そう。さっきから私と占い師しか言葉を発していないけど、この占い部屋と呼ばれる空間には、三人いる。

 無言の三人目は、イスに座り、私を膝の上に座らせ、ガッシリと後ろから私を抱きしめていた。

 ちょっと暑い。

 そう。私の夫だ。暑苦しい夫が私の背後にぴったりくっついている。

 静かにしている代わりに、後ろからの抱きしめ許可を出したので、暑苦しい上に重苦しい夫になっていた。

 占い師の人、これを見ていろいろ悟ったんだろうな。さすが未来を推測する占い師、悟りが早いな。

 なるほど、って言っただけで、何ひとつ聞いてこないよ。
 背後のラウのことだって、一切、触れてこないし。
 私もあえて説明してないけど。

「私もいつまでもここにいるとは、限りませんからね」

「だから、ぜんぶで」

「いいでしょう」

 よし、希望は通った。

 占い師は何やらつぶやきながら、水盤に手をかざす。

 詠唱魔法でもないし、ましてや精霊魔法でもない。占い魔法なんて聞いたことないしな。

 何の魔法か見極めようと前のめりになったとたん、目の前が暗くなる。視えない。

「ラウ」

 そう。私の夫だ。夫の大きくて温かい手が私の目を覆っていた。

「視えないんだけど」

「フィアが、俺以外を熱心に見るなんて耐えられない」

「占いを視ようとしてただけだけど」

「フィアは、俺より占いの方が好きなのか?」

 占いに嫉妬しないでくれるかなー?

「俺は占いに負けたくない」

 うん。それって、どういう争い?

「勝って、フィアを独り占めするのはこの俺だ」

 うん。ラウの独り勝ちでいいから。

「ラウ。後ろから抱きしめていいから、その代わり静かにしてるって約束だったよね」

「うっ」

 ようやく、目を覆った手をどかしてもらうと、占い師は手を水盤の横に置いて、静かにこっちを眺めているようだった。

 口元をにっこりさせる占い師。

 近くの紙の束から一枚を手にとり、おもむろに話し始めた。

「それではまずは、」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

処理中です...