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4 騎士と破壊のお姫さま編
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次の瞬間。
完璧に制御された紅の魔力が、私の身体と魔法陣からゆらりと溢れ、煌めきを放つ。
でも、それだけだった。
「え? 壊れてない」
「息苦しさもありませんね」
きょとんとした声があがる。
魔法陣以外の場所には魔力が漏れだしてないから、当然と言えば当然だよね。
「なんだ、塔長。脅かさないでくれよ」
「いやいや、前は本当にヤバかったんだ。なぁ、フィールズ補佐官」
「はい、事実です」
グリモさんのホッとしたような声と、言い訳するような塔長とフィールズさんの声。
直接、私の魔力を浴びてないんだし、問題あるはずがない。
「魔力操作も魔力制御も、だいぶ、上手くなったんですよ」
ノルンガルスさん含めた四人に私は声をかけた。
「そ、そうか」
「魔力制限した状態で、効率良く魔力を動かしてますね」
「あぁ、見事だな」
「キレイです。吸い込まれそう。紅の魔力がキラキラしてます」
私の訓練の成果に魅入る三人とは別に、魔法陣のひとつひとつを指差して、塔長が曇った表情を浮かべた。
「でもなぁ。そこだけ、恐ろしく魔力が濃縮していないか?」
ほほぅ。さすが鑑定技能超級の塔長。
私の特訓の成果をよく見てくれている。
塔長の質問に私は元気よく答えた。
「はい、範囲をここだけに絞りました」
「絞った?」
「実験場でメダルの鑑定をしたときは、魔力操作が未熟だったので、範囲を絞れなかったんです」
魔法陣の作りこみも勉強したり特訓したけど。とくに頑張ったのはこっち。魔力制御と魔力操作だ。
おかげで、無翼でも六翼に近い状態を維持できるようになった。かなりの進歩だと思う。
「いや、まさかとは思うけど、その恐ろしく魔力が濃縮したものが、」
「はい、実験場全体がこんな状態でした」
正直、実験場全体に魔力を溢れさせるより、ピンポイントで魔力を注ぎ込む方が効率もいいし節約にもなる。
「冗談だろう?」
「よく生きてましたね、わたくしたち」
私の特訓の成果を呆然と眺めながら、顔を青くする塔長とフィールズさん。
「そんなに凄いのかい?」
「上級はこれが分からないのか。幸せなやつだな」
「塔長、酷くないかい?」
「ナルフェブルを見ろよ。悲鳴すら上げられないくらい固まってるだろ」
ナルフェブル補佐官、いたっけ?
いたいた。
最初からずっと無言のままだったから、存在を忘れてた。
ナルフェブル補佐官は第二塔と兼務なので、今回の第四師団とは関わりないし、第二塔の仕事をこっちに持ち込んでいるので、行ったり来たりもない。
休みもほとんど取らないし、出張でいない以外はほぼ自分の机にいるんだった。
自分の机に積み上がったデータの山の陰に、隠れるようにして仕事をしているので、よくよく見ないとよく分からない。
ナルフェブル補佐官はデータの山の間から青い顔を覗かせ、胃の辺りを抑えていた。
呻いているような気がしなくもないけど、きっと気のせいだ。気にするのは止めよう。
「ともかく、メダルの鑑定は全部できましたよ」
「あぁ、それでどうだ?」
塔長の質問に答える代わりに、私は魔法陣をもうひとつ展開させた。
私の魔力に応じるように、私が視るそのままのものが具現化する。
「《視覚化》ですね」
「これまた凄いことをするな」
「この方が分かりやすいので」
「さっそく解説してくれ」
塔長の言葉に私は小さく頷いた。
そんな私を見て、フィールズさんがメモを取り出す。どうやら、鑑定内容を書き留めてくれるようだ。
「メダルそのものはすべて同じ組成です。製作時期はこれだけ数年前、それ以外は同じです」
私はメダルのひとつを指し示す。
「それは最初に作られた試作品だな。試作品以外はここ半年以内にまとめて作られたってことか」
それからわたしは解説を続けた。
「スヴェートのものも、居住先で見つかったものも、魔法陣が刻まれています」
「構成は同じなんだな」
「はい」
開発者の試作品も、自然公園のものも、スヴェートのものも、居住先でみつかったものも、すべて魔法陣の構成は同じだった。
魔法陣は製作者によって癖がある。
その癖もまったく同じ。
魔法陣の構成は、《防御》と《増幅》で核となる魔法陣を挟んでいて、それぞれ核が異なっていた。
試作品は《光輝》、自然公園は《混沌獣の召喚》、そしてスヴェートと居住先のものは同じもの。
「これの核となる魔法陣はなんなんだ?」
塔長が訊いてきた。
「《混乱》です」
そう。スヴェート騎士の持っていたメダルも、開発者の居住先で見つかったメダルも、《混乱》だったのだ。
武道大会の会場で発動された混乱魔法。あの発動を促した小さいメダルも、おそらくは同じ物。
「つまり、開発者が《混乱》のメダルも作ったとみて、間違いないということか」
「はい」
「他に特筆すべきことは?」
「製作時期は絞り込めませんが、《混乱》のメダルが一番、新しいようですね。以上です」
締めくくって、私はすべての魔法陣を解除した。
紅の魔力が宙に霧散する様を見て、ノルンガルスさんだけが赤紫色の瞳をキラキラさせている。
シーーーーーン
そして沈黙が重苦しい。
「やはり矛盾するよな」
しばらくして、前々から指摘していた問題点を、塔長がポツリとこぼした。
「特級が超級を超える魔道具を製作した」
ありえない。
特級の魔道具師や詠唱魔術師が製作できるのは特級まで。
メダルはどう視ても超級以上。
「あと、どうやって、《混沌獣の召喚》や《混乱》の魔法陣を知ったか」
これも知り得ること自体が通常ではありえない。
《混沌獣の召喚》も《混乱》もどちらも、名もなき混乱と感情の神の力を基にした魔法だ。
「協力者がいるとみて間違いない」
塔長が断言する。
「これまでの流れから推測するなら、スヴェートが協力者だろうな。そう考えるとすべてのつじつまが合う」
さらに塔長は断言する。
一番、濃厚な推測だと私も思う。
スヴェート皇帝は名もなき混乱と感情の神と繋がりがあるのは間違いない。
ただ、メダル開発者とスヴェート皇帝がどう繋がっているのか、まだ分からないことが多すぎる。
それに。
メダル開発者と『三番目』も繋がりがあるはずだ。
きっと、テラは何か知っている。
穏やかな世界の維持を願うテラと、変化を好む三番目。利害が一致するとも思えない。
「テラからは、関わらないよう言われちゃったからな」
思わず、考えが口から漏れたのを、塔長に聞かれてしまって、
「クロエル補佐官、何か言ったか?」
私はとっさに誤魔化した。
「あ、テラは何か知らないかなー、と思って」
「師匠は多くを語らないんだ」
私の言葉に、塔長は残念そうな、苦しそうな、なんとも言えない複雑な表情をして下を向く。
そうだろうな。でも、テラもすべてを語れないんだろう。赤種が関わっているだなんてね。
「でも、スヴェート皇女については、師匠に調べてもらっているから」
塔長は吹っ切るように顔をあげた。
「僕らができるのは、メダル開発者の足取りを追い、鑑定をすることだ」
皆を見回して、大きく頷く。
「さぁ、僕らは僕らで、できることをやるとしようか」
完璧に制御された紅の魔力が、私の身体と魔法陣からゆらりと溢れ、煌めきを放つ。
でも、それだけだった。
「え? 壊れてない」
「息苦しさもありませんね」
きょとんとした声があがる。
魔法陣以外の場所には魔力が漏れだしてないから、当然と言えば当然だよね。
「なんだ、塔長。脅かさないでくれよ」
「いやいや、前は本当にヤバかったんだ。なぁ、フィールズ補佐官」
「はい、事実です」
グリモさんのホッとしたような声と、言い訳するような塔長とフィールズさんの声。
直接、私の魔力を浴びてないんだし、問題あるはずがない。
「魔力操作も魔力制御も、だいぶ、上手くなったんですよ」
ノルンガルスさん含めた四人に私は声をかけた。
「そ、そうか」
「魔力制限した状態で、効率良く魔力を動かしてますね」
「あぁ、見事だな」
「キレイです。吸い込まれそう。紅の魔力がキラキラしてます」
私の訓練の成果に魅入る三人とは別に、魔法陣のひとつひとつを指差して、塔長が曇った表情を浮かべた。
「でもなぁ。そこだけ、恐ろしく魔力が濃縮していないか?」
ほほぅ。さすが鑑定技能超級の塔長。
私の特訓の成果をよく見てくれている。
塔長の質問に私は元気よく答えた。
「はい、範囲をここだけに絞りました」
「絞った?」
「実験場でメダルの鑑定をしたときは、魔力操作が未熟だったので、範囲を絞れなかったんです」
魔法陣の作りこみも勉強したり特訓したけど。とくに頑張ったのはこっち。魔力制御と魔力操作だ。
おかげで、無翼でも六翼に近い状態を維持できるようになった。かなりの進歩だと思う。
「いや、まさかとは思うけど、その恐ろしく魔力が濃縮したものが、」
「はい、実験場全体がこんな状態でした」
正直、実験場全体に魔力を溢れさせるより、ピンポイントで魔力を注ぎ込む方が効率もいいし節約にもなる。
「冗談だろう?」
「よく生きてましたね、わたくしたち」
私の特訓の成果を呆然と眺めながら、顔を青くする塔長とフィールズさん。
「そんなに凄いのかい?」
「上級はこれが分からないのか。幸せなやつだな」
「塔長、酷くないかい?」
「ナルフェブルを見ろよ。悲鳴すら上げられないくらい固まってるだろ」
ナルフェブル補佐官、いたっけ?
いたいた。
最初からずっと無言のままだったから、存在を忘れてた。
ナルフェブル補佐官は第二塔と兼務なので、今回の第四師団とは関わりないし、第二塔の仕事をこっちに持ち込んでいるので、行ったり来たりもない。
休みもほとんど取らないし、出張でいない以外はほぼ自分の机にいるんだった。
自分の机に積み上がったデータの山の陰に、隠れるようにして仕事をしているので、よくよく見ないとよく分からない。
ナルフェブル補佐官はデータの山の間から青い顔を覗かせ、胃の辺りを抑えていた。
呻いているような気がしなくもないけど、きっと気のせいだ。気にするのは止めよう。
「ともかく、メダルの鑑定は全部できましたよ」
「あぁ、それでどうだ?」
塔長の質問に答える代わりに、私は魔法陣をもうひとつ展開させた。
私の魔力に応じるように、私が視るそのままのものが具現化する。
「《視覚化》ですね」
「これまた凄いことをするな」
「この方が分かりやすいので」
「さっそく解説してくれ」
塔長の言葉に私は小さく頷いた。
そんな私を見て、フィールズさんがメモを取り出す。どうやら、鑑定内容を書き留めてくれるようだ。
「メダルそのものはすべて同じ組成です。製作時期はこれだけ数年前、それ以外は同じです」
私はメダルのひとつを指し示す。
「それは最初に作られた試作品だな。試作品以外はここ半年以内にまとめて作られたってことか」
それからわたしは解説を続けた。
「スヴェートのものも、居住先で見つかったものも、魔法陣が刻まれています」
「構成は同じなんだな」
「はい」
開発者の試作品も、自然公園のものも、スヴェートのものも、居住先でみつかったものも、すべて魔法陣の構成は同じだった。
魔法陣は製作者によって癖がある。
その癖もまったく同じ。
魔法陣の構成は、《防御》と《増幅》で核となる魔法陣を挟んでいて、それぞれ核が異なっていた。
試作品は《光輝》、自然公園は《混沌獣の召喚》、そしてスヴェートと居住先のものは同じもの。
「これの核となる魔法陣はなんなんだ?」
塔長が訊いてきた。
「《混乱》です」
そう。スヴェート騎士の持っていたメダルも、開発者の居住先で見つかったメダルも、《混乱》だったのだ。
武道大会の会場で発動された混乱魔法。あの発動を促した小さいメダルも、おそらくは同じ物。
「つまり、開発者が《混乱》のメダルも作ったとみて、間違いないということか」
「はい」
「他に特筆すべきことは?」
「製作時期は絞り込めませんが、《混乱》のメダルが一番、新しいようですね。以上です」
締めくくって、私はすべての魔法陣を解除した。
紅の魔力が宙に霧散する様を見て、ノルンガルスさんだけが赤紫色の瞳をキラキラさせている。
シーーーーーン
そして沈黙が重苦しい。
「やはり矛盾するよな」
しばらくして、前々から指摘していた問題点を、塔長がポツリとこぼした。
「特級が超級を超える魔道具を製作した」
ありえない。
特級の魔道具師や詠唱魔術師が製作できるのは特級まで。
メダルはどう視ても超級以上。
「あと、どうやって、《混沌獣の召喚》や《混乱》の魔法陣を知ったか」
これも知り得ること自体が通常ではありえない。
《混沌獣の召喚》も《混乱》もどちらも、名もなき混乱と感情の神の力を基にした魔法だ。
「協力者がいるとみて間違いない」
塔長が断言する。
「これまでの流れから推測するなら、スヴェートが協力者だろうな。そう考えるとすべてのつじつまが合う」
さらに塔長は断言する。
一番、濃厚な推測だと私も思う。
スヴェート皇帝は名もなき混乱と感情の神と繋がりがあるのは間違いない。
ただ、メダル開発者とスヴェート皇帝がどう繋がっているのか、まだ分からないことが多すぎる。
それに。
メダル開発者と『三番目』も繋がりがあるはずだ。
きっと、テラは何か知っている。
穏やかな世界の維持を願うテラと、変化を好む三番目。利害が一致するとも思えない。
「テラからは、関わらないよう言われちゃったからな」
思わず、考えが口から漏れたのを、塔長に聞かれてしまって、
「クロエル補佐官、何か言ったか?」
私はとっさに誤魔化した。
「あ、テラは何か知らないかなー、と思って」
「師匠は多くを語らないんだ」
私の言葉に、塔長は残念そうな、苦しそうな、なんとも言えない複雑な表情をして下を向く。
そうだろうな。でも、テラもすべてを語れないんだろう。赤種が関わっているだなんてね。
「でも、スヴェート皇女については、師匠に調べてもらっているから」
塔長は吹っ切るように顔をあげた。
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