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5 出張旅行編
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「というわけで、報告書を作ってくれ」
「ァア?」
私たちは例の部屋ではなく、第六師団の師団長室に移動した。
ラウまで来ると例の部屋では狭いのと、ラウも仕事が溜まっていて動けないのと、ラウが私とくっついて座りたいというのもあって、妥協した結果だという。
ラウファーストが過ぎる。
ラウを味方につけるつもりだろう、きっと。
そして今や、報告書を作る作らないの交渉は、ラウと塔長が行っていた。テラも塔長側で補足をしている。
テラは赤種のくせに、私じゃなくて塔長の肩を持つ。塔長の味方だ。師弟関係だとはいうけど、なんか、気にくわない。
そんなわけで、交渉はラウに任せ、私は無言で成り行きを見守っているところだった。
「四番目が嫌がって作らないんだ。ご褒美旅行なのに仕事させるのかって」
「それ、何か間違ってること、言ってるか?」
うん、ラウは私の味方だよね。
「それはそうなんだけどな」
「フィアの言ってることは間違ってないだろ」
そう言って、ラウは私の頭を撫で回す。
うん、頭くらいは撫でさせてあげよう。味方だもの。それに、頭を撫でられたって減るものじゃないし。
「そうは言っても最重要事項なんだよ、ラウゼルト」
「それはそっちの都合だろ」
そうだそうだ。
私はラウにくっつかれ、頭を撫で回された状態で、テラと塔長をちら見する。
二人とも呆れた顔でラウを見ているけど、注意はしない。
「あとな、問題はそれだけじゃない」
「報告書を作らなくていいって言わせようとして、片っ端から建物を壊そうとしてるんだよ」
実力行使というやつだ。
破壊の赤種が破壊の力を使って何が悪い。権能に従って行動することは、赤種の特権だったはず。やっぱり気にくわない。
「前から思ってたんだが、建物の作りが脆いんじゃないか?」
ラウがもっともな質問をしてくれる。
「さっき、実験場をつぶされた」
「は? あの実験場か?」
ラウの手がピタッと止まった。手は私の頭の上に乗ったまま。ラウの重みを感じる。
実験場は一番人の出入りが少なくて、建物にしか被害が出ない。つぶすのに一番都合がいい場所。
さっきつぶしたときだって、中にも外にも人がいないのはあそこだけだったから。
それ以外に深い理由はない。
「あぁ、あの実験場をつぶされた」
「竜種が暴れようが魔法陣や魔導具が暴走しようが、絶対に壊れない。って、確か、大口叩いてたよな」
「そうだよ。師匠にお願いして、さらに強化してもらっていたんだ。だから、つぶれるはずがないんだ」
塔長は、なのに、と小さくつぶやいて、私を見る。
「仕方ないよな、僕と四番目じゃ破壊力が違うしな」
テラも投げやり口調で言い切って、私を見る。
二人して見られてもな。つぶせたものはつぶせたんだし、後で修復しておけば問題ないじゃないの。
むぅ。
不満げを視線に込めて、二人を見返すと、私の隣で夫が変な声をあげた。
まさか。
「うぐっ。俺の奥さんが最強過ぎて心臓が痛い」
またか。
不満げ満々だった私から、ぷしゅーっと力が抜けた。
脇にいるラウを見なくても分かる。
顔を真っ赤にして心臓を押さえ、モジモジする最強竜種。
真正面から見ているテラは、苦いお茶を間違えて飲んでしまったような顔をした。塔長も同じ顔をしている。
「黒竜の心臓、弱すぎないか」
「私もそう思う」
ついてでた言葉も苦い。
私は思わず同意してしまった。
無言を通そうと思っていたのに。
「そこじゃないだろ、二人とも」
私とテラが同時に塔長を見る。
塔長は黙って、ラウを指差し、キッパリと言い切った。
「興奮するところがおかしいだろう」
私のテラが同時に頭を傾ける。
「そうか?」「いつも、こんなだけど?」
塔長は顔に手を当てて、さらに黙ってしまった。何か、マズいこと言ったかな?
そんな塔長にテラが止めをさす。
「諦めろ、舎弟。お前の馴染みは立派な変質者だ」
塔長がガクッと崩れ落ちた。
しかし、塔長の復活は予想以上に早かった。次の瞬間にはラウに向かってまくし立てるくらい、元気になっている。
「ともかく! 壊れない実験場を壊してしまうクロエル補佐官を押し止めて、レストスの報告書を出してくれ!」
まくし立てる内容がぜんぶ、私関係なのは気にしないでおこう。
もう、私の方は一切、見もしないしな。
「その前に」
ラウはうるさそうに、手をパタパタ振って、塔長の話を遮る。
今まで頭の上に乗ってた手がなくなり軽くなった。
と、安心するのはちょっと早かったようで、ラウがとんでもないことを言い放ったのだ。
「このまま、奥さんをベッドに連れ込みたい」
「はぁ? 何、バカなこと言ってるの?」
ラウの顔を見ると、思いっきり真顔。これは本気だ。嫌な汗が出てくる。
「報告書を作ったら、いくらでも連れ込んでいいぞ、ラウゼルト」
「はぁ?! 待って、私の許可!」
塔長はラウを変質者扱いすると決めたらしい。悟りを開いたような穏やかな視線をラウに向けている。
「興奮し過ぎて、身体が保たない」
「はぁぁ?! 待って、ラウ! 力が強い、苦しい、死ぬ」
抱きしめる力も、強くなってきていた。これはヤバい。嫌な汗がダラダラ出てくる。
「それなら、先に仮眠室で休憩してこい。二人で。報告書はその後でいいから」
「分かった、後で届ける」
「はぁぁぁ?! 待って待って、どういうこと?!」
私抜きで会話が進む。そして何かが決まってしまった。私抜きで。
その流れのまま、ひょいっとラウに抱え上げられた。
「今日の話し合いが穏便に終わったってことだな、四番目」
「そういうことだ。頑張れよ、クロエル補佐官」
「はぁぁぁぁぁぁぁ?!」
言い捨てて、テラと塔長は師団長室から、さっと逃げるように出ていってしまう。
後に残されたのは、私とラウの二人だけ。まぁ、師団長室はもともと私とラウの二人で仕事をする場所ではあるけど。
ラウは私を抱きかかえたまま、隣の執務室とは反対側に移動すると、トントンと壁を叩いた。
なんと現れたのは、
「隠し扉?!」
「仮眠室を作ったんだ」
あっさり言って、扉に手をかけると、扉もあっさり開いた。
「旅行に行く前はなかったよね?!」
「旅行中に作らせた」
部屋ってそんなに簡単に作れるものなんだろうか。しかも壁に穴を開けて、扉まで作っちゃってるし。
考え込んでいる隙に、私は仮眠室に連れ込まれ、ラウと二人で休憩するはめに。
酷く疲れる休憩だったとは、誰にも言えなかった。
「ァア?」
私たちは例の部屋ではなく、第六師団の師団長室に移動した。
ラウまで来ると例の部屋では狭いのと、ラウも仕事が溜まっていて動けないのと、ラウが私とくっついて座りたいというのもあって、妥協した結果だという。
ラウファーストが過ぎる。
ラウを味方につけるつもりだろう、きっと。
そして今や、報告書を作る作らないの交渉は、ラウと塔長が行っていた。テラも塔長側で補足をしている。
テラは赤種のくせに、私じゃなくて塔長の肩を持つ。塔長の味方だ。師弟関係だとはいうけど、なんか、気にくわない。
そんなわけで、交渉はラウに任せ、私は無言で成り行きを見守っているところだった。
「四番目が嫌がって作らないんだ。ご褒美旅行なのに仕事させるのかって」
「それ、何か間違ってること、言ってるか?」
うん、ラウは私の味方だよね。
「それはそうなんだけどな」
「フィアの言ってることは間違ってないだろ」
そう言って、ラウは私の頭を撫で回す。
うん、頭くらいは撫でさせてあげよう。味方だもの。それに、頭を撫でられたって減るものじゃないし。
「そうは言っても最重要事項なんだよ、ラウゼルト」
「それはそっちの都合だろ」
そうだそうだ。
私はラウにくっつかれ、頭を撫で回された状態で、テラと塔長をちら見する。
二人とも呆れた顔でラウを見ているけど、注意はしない。
「あとな、問題はそれだけじゃない」
「報告書を作らなくていいって言わせようとして、片っ端から建物を壊そうとしてるんだよ」
実力行使というやつだ。
破壊の赤種が破壊の力を使って何が悪い。権能に従って行動することは、赤種の特権だったはず。やっぱり気にくわない。
「前から思ってたんだが、建物の作りが脆いんじゃないか?」
ラウがもっともな質問をしてくれる。
「さっき、実験場をつぶされた」
「は? あの実験場か?」
ラウの手がピタッと止まった。手は私の頭の上に乗ったまま。ラウの重みを感じる。
実験場は一番人の出入りが少なくて、建物にしか被害が出ない。つぶすのに一番都合がいい場所。
さっきつぶしたときだって、中にも外にも人がいないのはあそこだけだったから。
それ以外に深い理由はない。
「あぁ、あの実験場をつぶされた」
「竜種が暴れようが魔法陣や魔導具が暴走しようが、絶対に壊れない。って、確か、大口叩いてたよな」
「そうだよ。師匠にお願いして、さらに強化してもらっていたんだ。だから、つぶれるはずがないんだ」
塔長は、なのに、と小さくつぶやいて、私を見る。
「仕方ないよな、僕と四番目じゃ破壊力が違うしな」
テラも投げやり口調で言い切って、私を見る。
二人して見られてもな。つぶせたものはつぶせたんだし、後で修復しておけば問題ないじゃないの。
むぅ。
不満げを視線に込めて、二人を見返すと、私の隣で夫が変な声をあげた。
まさか。
「うぐっ。俺の奥さんが最強過ぎて心臓が痛い」
またか。
不満げ満々だった私から、ぷしゅーっと力が抜けた。
脇にいるラウを見なくても分かる。
顔を真っ赤にして心臓を押さえ、モジモジする最強竜種。
真正面から見ているテラは、苦いお茶を間違えて飲んでしまったような顔をした。塔長も同じ顔をしている。
「黒竜の心臓、弱すぎないか」
「私もそう思う」
ついてでた言葉も苦い。
私は思わず同意してしまった。
無言を通そうと思っていたのに。
「そこじゃないだろ、二人とも」
私とテラが同時に塔長を見る。
塔長は黙って、ラウを指差し、キッパリと言い切った。
「興奮するところがおかしいだろう」
私のテラが同時に頭を傾ける。
「そうか?」「いつも、こんなだけど?」
塔長は顔に手を当てて、さらに黙ってしまった。何か、マズいこと言ったかな?
そんな塔長にテラが止めをさす。
「諦めろ、舎弟。お前の馴染みは立派な変質者だ」
塔長がガクッと崩れ落ちた。
しかし、塔長の復活は予想以上に早かった。次の瞬間にはラウに向かってまくし立てるくらい、元気になっている。
「ともかく! 壊れない実験場を壊してしまうクロエル補佐官を押し止めて、レストスの報告書を出してくれ!」
まくし立てる内容がぜんぶ、私関係なのは気にしないでおこう。
もう、私の方は一切、見もしないしな。
「その前に」
ラウはうるさそうに、手をパタパタ振って、塔長の話を遮る。
今まで頭の上に乗ってた手がなくなり軽くなった。
と、安心するのはちょっと早かったようで、ラウがとんでもないことを言い放ったのだ。
「このまま、奥さんをベッドに連れ込みたい」
「はぁ? 何、バカなこと言ってるの?」
ラウの顔を見ると、思いっきり真顔。これは本気だ。嫌な汗が出てくる。
「報告書を作ったら、いくらでも連れ込んでいいぞ、ラウゼルト」
「はぁ?! 待って、私の許可!」
塔長はラウを変質者扱いすると決めたらしい。悟りを開いたような穏やかな視線をラウに向けている。
「興奮し過ぎて、身体が保たない」
「はぁぁ?! 待って、ラウ! 力が強い、苦しい、死ぬ」
抱きしめる力も、強くなってきていた。これはヤバい。嫌な汗がダラダラ出てくる。
「それなら、先に仮眠室で休憩してこい。二人で。報告書はその後でいいから」
「分かった、後で届ける」
「はぁぁぁ?! 待って待って、どういうこと?!」
私抜きで会話が進む。そして何かが決まってしまった。私抜きで。
その流れのまま、ひょいっとラウに抱え上げられた。
「今日の話し合いが穏便に終わったってことだな、四番目」
「そういうことだ。頑張れよ、クロエル補佐官」
「はぁぁぁぁぁぁぁ?!」
言い捨てて、テラと塔長は師団長室から、さっと逃げるように出ていってしまう。
後に残されたのは、私とラウの二人だけ。まぁ、師団長室はもともと私とラウの二人で仕事をする場所ではあるけど。
ラウは私を抱きかかえたまま、隣の執務室とは反対側に移動すると、トントンと壁を叩いた。
なんと現れたのは、
「隠し扉?!」
「仮眠室を作ったんだ」
あっさり言って、扉に手をかけると、扉もあっさり開いた。
「旅行に行く前はなかったよね?!」
「旅行中に作らせた」
部屋ってそんなに簡単に作れるものなんだろうか。しかも壁に穴を開けて、扉まで作っちゃってるし。
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