307 / 384
6 討伐大会編
3-8
しおりを挟む
こうして、ルミアーナさんとナルフェブル補佐官がこの場を離れた。
無事に離れることはできたけど、無事に着いたかどうかは、デュク様のみ知るところ。
テラの力を使った魔導具を、鑑定技能士持ちの補佐官二人が使ったんだ。きっと、テラが何とかしてくれる。
私はそう自分を信じ込ませた。うん、大丈夫だよね、テラなら。
それより、私たちには他にやることがある。
「うーん、赤種の力はあまり使うなって、テラから言われてたしなー」
火力歴代最強、神をも壊す破壊の赤種。
なーんて言われていても、強大すぎて、けっきょくはいろいろ制限のあるこの力。
制限なく思うままに力を振るえば、世界も壊せるし。周りに誰かがいれば、危なすぎて使えない。
今回は混沌の樹林という場所が問題になった。
破壊の赤種の力が、名もなき混乱と感情の神を刺激してしまう…………恐れがある。そんな理由で制限が加わった。
まったくもって、面倒くさい。
なので私は力を厳選する。
詠唱魔法(無詠唱無魔法陣でいけるけど)は赤種の力と繋がっているので、なるべく使いたくない。
となると。
「やっぱり、こっちかなー」
右手をじっと見る。
その手をぐっと握って、空に向かって突き出すと、破壊の大鎌が顕現した。
さっき使ったばかりなので、出したり消したりで忙しい。
ラウの双剣くらいの大きさなら、出しっぱなしにできるのに。私の大鎌はかなり大きいサイズなので、不要なときは顕現させないことにしている。
さて、この破壊の大鎌は破壊の神器。これはデュク様の加護ではない。破壊の神の加護だ。
デュク様たち一部の神様は加護という形で赤種、竜種、魔種を生み出した。
それに対して、破壊の神と守護の神は神器を生み出し、加護という形で神器の主を選んだ。
だから、神器自体は神様の力そのもの。
私は現れた大鎌をくるりと振り回すと、柄の先を地面にトンと下ろした。
「うっ。破壊の神器を掲げるクロスフィアの姿が麗しすぎて、動悸がヤバい」
「もう掲げてないから」
「このまま心臓が止まりそうだ」
「ラウと同じようなことを言ってる」
この姿で六翼まで顕現させたら、なんて言い出すのかな。
最近は六翼を顕現させなくても、魔力コントロールが安定してきている。おかげで、翼なしの無翼でも四翼くらいの力を出せるようになってきた。
もちろん、全力を出すとなると六翼をすべて解放する。これは他の赤種も同じだそうだ。
三番目の『転換の輪』はこの前の対峙で十分に味わった。光り輝く腕輪のような物。腕にくっつく程度なので、見た目は違和感ない。
私が見たときは、裸に薄い外套を着て輝く腕輪だったので、変人感が溢れていてヤバかった。
テラの持つ『創造の種』はまだ見たことがない。名前からすると小さそうだ。どっちにしても目立たなさそう。
で、私が持つのは『破壊の六翼』。背中に紅の翼が顕現するもの。
なんで、私のだけ、こんなに大きいんだろう。目立ちすぎるんだよね。小さく顕現できないのかな?
私がちょっとの間、黙り込んでいると、隣でイリニが悶えていた。
「見事なまでに艶めいた紅の魔力が、肌に突き刺さるこの感じ。このピリピリとした感覚がたまらないんだよな」
「魔種ヤバい」
反応がラウに似ている。
「さて、クロスフィアの愛情がこもった魔力圧もたっぷり堪能できたし。俺はこっちで行くからな」
「魔力に愛情はこもらないから」
イリニは私とは反対側の左手をぐっと引き寄せ、守護の大盾を顕現させた。
私はというと、イリニのウィンクをさらっと避けて、当たり前の事実を告げてその場を凌ぐだけだった。はぁ。疲れる。
私とイリニのやり取りを見て、カーシェイさんがずいっと一歩、前に出る。
カーシェイさんは、破壊と守護の神器がそろっているのを確認し、眉をしかめていた。
他の騎士たちはぼーっと眺めるだけ。
動きからは、どれだけ自我が残っているのかも分からない。
「アルタル様、後ろにお下がりください。ここは俺たちが」
神器を脅威とみなしたようで、カーシェイさんはピンクを背に庇う。
「ヴィッツ。わたくしを守るのではなく、破壊の赤種を捕らえるのよ」
「ですが、アルタル様」
なのに、カーシェイさんの前に出てこようとするピンク。
ピンクの顔色を見て、縋るような目をするカーシェイさん。あの顔、第六師団では見たことがない。
エルヴェスさん辺りが見たら、おもしろがるか、気持ち悪がるかのどっちかだな。
「破壊の赤種さえ捕らえられれば、わたくしの身体も命も、どうにでもできるわ」
「俺の心が安まりません」
かなりクズいことを言い放つピンク。対して、この世の終わりのような顔をして、ピンクの安否を気遣うカーシェイさん。
だんだん、飽きてくるな、これ。
「それなら仕方ないわね。ヴィッツがわたくしの前を守って」
「はい、アルタル様」
手を取り合う二人。
「アルタル様のお美しさが損なわれないよう、この俺が全力でお守りします」
「ありがとう、ヴィッツ」
うん、これ、いつまで続くの?
そしてこれ、いつまで見てないといけないの?
「竜種の夫婦にありがちな、バカップル状態だな」
見飽きたのはイリニも同じようだった。
マズいものでも食べたような、嫌ーな顔をしている。
目の前のカーシェイさんとは正反対の表情だ。
私が直接会ったことがある竜種の夫婦は金竜さんのところだけ。金竜さんはこんなだったっけ?
レストスに行ったときのことを、思い出してみる。
「金竜さんのところは奥さんが弾けていて、強面で厳つい金竜さんが奥さんにムチャクチャデレデレだったよ」
あの奥さんは凄かった。あんな小さな身体で金竜さんをはね飛ばすくらい凄かった。
「あぁ、上位竜種だからな」
「それで、奥さんに首を絞められて、金竜さんがうっとりしてた」
「黒竜だって同じだろ?」
「ラウはそんなことは………………って、そうだ。私に踏みつけられて喜んでた」
うん、ラウも同じだった。絶対、金竜さんの性癖がラウに移ったんだと思う。
まぁ、ヤバい夫だというのは分かっているから、いまさらだけどね。
ところが。
ラウ踏みつけ事件(?)の話を聞くやいなや、イリニが興奮した声をあげる。
「何?! 黒竜のやつ、クロスフィアのその麗しい足で踏みつけられたって?! なんて、羨ましい!」
「え?」
思わず、イリニの方に顔を向けた。
イリニも私の方に顔を向けていたので、二人で顔を見合わせる形になる。
「俺のことは短めのスカート姿で踏んでくれ。踏まれた上に、下から眺められるなんて、最高過ぎるだろう!」
「は?」
ダメだ。考えることがほぼラウといっしょだ、こいつ。
固まる私に気を止めることもなく、イリニは勝手に話を進めていく。
「まず、先にあいつらをどうにかするか。踏まれるのはその後だ」
「踏むなんて、私、言ってないからね」
「じゃ、行くか」
勝手にやる気になるイリニ。
あーあ、もういいや、知らないや。
とにかく、目の前の魔物とピンクをどうにかしよう。
私も大鎌を構えなおして、前をぐっと見据えるのだった。
無事に離れることはできたけど、無事に着いたかどうかは、デュク様のみ知るところ。
テラの力を使った魔導具を、鑑定技能士持ちの補佐官二人が使ったんだ。きっと、テラが何とかしてくれる。
私はそう自分を信じ込ませた。うん、大丈夫だよね、テラなら。
それより、私たちには他にやることがある。
「うーん、赤種の力はあまり使うなって、テラから言われてたしなー」
火力歴代最強、神をも壊す破壊の赤種。
なーんて言われていても、強大すぎて、けっきょくはいろいろ制限のあるこの力。
制限なく思うままに力を振るえば、世界も壊せるし。周りに誰かがいれば、危なすぎて使えない。
今回は混沌の樹林という場所が問題になった。
破壊の赤種の力が、名もなき混乱と感情の神を刺激してしまう…………恐れがある。そんな理由で制限が加わった。
まったくもって、面倒くさい。
なので私は力を厳選する。
詠唱魔法(無詠唱無魔法陣でいけるけど)は赤種の力と繋がっているので、なるべく使いたくない。
となると。
「やっぱり、こっちかなー」
右手をじっと見る。
その手をぐっと握って、空に向かって突き出すと、破壊の大鎌が顕現した。
さっき使ったばかりなので、出したり消したりで忙しい。
ラウの双剣くらいの大きさなら、出しっぱなしにできるのに。私の大鎌はかなり大きいサイズなので、不要なときは顕現させないことにしている。
さて、この破壊の大鎌は破壊の神器。これはデュク様の加護ではない。破壊の神の加護だ。
デュク様たち一部の神様は加護という形で赤種、竜種、魔種を生み出した。
それに対して、破壊の神と守護の神は神器を生み出し、加護という形で神器の主を選んだ。
だから、神器自体は神様の力そのもの。
私は現れた大鎌をくるりと振り回すと、柄の先を地面にトンと下ろした。
「うっ。破壊の神器を掲げるクロスフィアの姿が麗しすぎて、動悸がヤバい」
「もう掲げてないから」
「このまま心臓が止まりそうだ」
「ラウと同じようなことを言ってる」
この姿で六翼まで顕現させたら、なんて言い出すのかな。
最近は六翼を顕現させなくても、魔力コントロールが安定してきている。おかげで、翼なしの無翼でも四翼くらいの力を出せるようになってきた。
もちろん、全力を出すとなると六翼をすべて解放する。これは他の赤種も同じだそうだ。
三番目の『転換の輪』はこの前の対峙で十分に味わった。光り輝く腕輪のような物。腕にくっつく程度なので、見た目は違和感ない。
私が見たときは、裸に薄い外套を着て輝く腕輪だったので、変人感が溢れていてヤバかった。
テラの持つ『創造の種』はまだ見たことがない。名前からすると小さそうだ。どっちにしても目立たなさそう。
で、私が持つのは『破壊の六翼』。背中に紅の翼が顕現するもの。
なんで、私のだけ、こんなに大きいんだろう。目立ちすぎるんだよね。小さく顕現できないのかな?
私がちょっとの間、黙り込んでいると、隣でイリニが悶えていた。
「見事なまでに艶めいた紅の魔力が、肌に突き刺さるこの感じ。このピリピリとした感覚がたまらないんだよな」
「魔種ヤバい」
反応がラウに似ている。
「さて、クロスフィアの愛情がこもった魔力圧もたっぷり堪能できたし。俺はこっちで行くからな」
「魔力に愛情はこもらないから」
イリニは私とは反対側の左手をぐっと引き寄せ、守護の大盾を顕現させた。
私はというと、イリニのウィンクをさらっと避けて、当たり前の事実を告げてその場を凌ぐだけだった。はぁ。疲れる。
私とイリニのやり取りを見て、カーシェイさんがずいっと一歩、前に出る。
カーシェイさんは、破壊と守護の神器がそろっているのを確認し、眉をしかめていた。
他の騎士たちはぼーっと眺めるだけ。
動きからは、どれだけ自我が残っているのかも分からない。
「アルタル様、後ろにお下がりください。ここは俺たちが」
神器を脅威とみなしたようで、カーシェイさんはピンクを背に庇う。
「ヴィッツ。わたくしを守るのではなく、破壊の赤種を捕らえるのよ」
「ですが、アルタル様」
なのに、カーシェイさんの前に出てこようとするピンク。
ピンクの顔色を見て、縋るような目をするカーシェイさん。あの顔、第六師団では見たことがない。
エルヴェスさん辺りが見たら、おもしろがるか、気持ち悪がるかのどっちかだな。
「破壊の赤種さえ捕らえられれば、わたくしの身体も命も、どうにでもできるわ」
「俺の心が安まりません」
かなりクズいことを言い放つピンク。対して、この世の終わりのような顔をして、ピンクの安否を気遣うカーシェイさん。
だんだん、飽きてくるな、これ。
「それなら仕方ないわね。ヴィッツがわたくしの前を守って」
「はい、アルタル様」
手を取り合う二人。
「アルタル様のお美しさが損なわれないよう、この俺が全力でお守りします」
「ありがとう、ヴィッツ」
うん、これ、いつまで続くの?
そしてこれ、いつまで見てないといけないの?
「竜種の夫婦にありがちな、バカップル状態だな」
見飽きたのはイリニも同じようだった。
マズいものでも食べたような、嫌ーな顔をしている。
目の前のカーシェイさんとは正反対の表情だ。
私が直接会ったことがある竜種の夫婦は金竜さんのところだけ。金竜さんはこんなだったっけ?
レストスに行ったときのことを、思い出してみる。
「金竜さんのところは奥さんが弾けていて、強面で厳つい金竜さんが奥さんにムチャクチャデレデレだったよ」
あの奥さんは凄かった。あんな小さな身体で金竜さんをはね飛ばすくらい凄かった。
「あぁ、上位竜種だからな」
「それで、奥さんに首を絞められて、金竜さんがうっとりしてた」
「黒竜だって同じだろ?」
「ラウはそんなことは………………って、そうだ。私に踏みつけられて喜んでた」
うん、ラウも同じだった。絶対、金竜さんの性癖がラウに移ったんだと思う。
まぁ、ヤバい夫だというのは分かっているから、いまさらだけどね。
ところが。
ラウ踏みつけ事件(?)の話を聞くやいなや、イリニが興奮した声をあげる。
「何?! 黒竜のやつ、クロスフィアのその麗しい足で踏みつけられたって?! なんて、羨ましい!」
「え?」
思わず、イリニの方に顔を向けた。
イリニも私の方に顔を向けていたので、二人で顔を見合わせる形になる。
「俺のことは短めのスカート姿で踏んでくれ。踏まれた上に、下から眺められるなんて、最高過ぎるだろう!」
「は?」
ダメだ。考えることがほぼラウといっしょだ、こいつ。
固まる私に気を止めることもなく、イリニは勝手に話を進めていく。
「まず、先にあいつらをどうにかするか。踏まれるのはその後だ」
「踏むなんて、私、言ってないからね」
「じゃ、行くか」
勝手にやる気になるイリニ。
あーあ、もういいや、知らないや。
とにかく、目の前の魔物とピンクをどうにかしよう。
私も大鎌を構えなおして、前をぐっと見据えるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる