精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった

SA

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6 討伐大会編

3-8

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 こうして、ルミアーナさんとナルフェブル補佐官がこの場を離れた。
 無事に離れることはできたけど、無事に着いたかどうかは、デュク様のみ知るところ。

 テラの力を使った魔導具を、鑑定技能士持ちの補佐官二人が使ったんだ。きっと、テラが何とかしてくれる。

 私はそう自分を信じ込ませた。うん、大丈夫だよね、テラなら。

 それより、私たちには他にやることがある。

「うーん、赤種の力はあまり使うなって、テラから言われてたしなー」

 火力歴代最強、神をも壊す破壊の赤種。

 なーんて言われていても、強大すぎて、けっきょくはいろいろ制限のあるこの力。

 制限なく思うままに力を振るえば、世界も壊せるし。周りに誰かがいれば、危なすぎて使えない。

 今回は混沌の樹林という場所が問題になった。

 破壊の赤種の力が、名もなき混乱と感情の神を刺激してしまう…………恐れがある。そんな理由で制限が加わった。

 まったくもって、面倒くさい。

 なので私は力を厳選する。

 詠唱魔法(無詠唱無魔法陣でいけるけど)は赤種の力と繋がっているので、なるべく使いたくない。

 となると。

「やっぱり、こっちかなー」

 右手をじっと見る。

 その手をぐっと握って、空に向かって突き出すと、破壊の大鎌が顕現した。

 さっき使ったばかりなので、出したり消したりで忙しい。
 ラウの双剣くらいの大きさなら、出しっぱなしにできるのに。私の大鎌はかなり大きいサイズなので、不要なときは顕現させないことにしている。

 さて、この破壊の大鎌は破壊の神器。これはデュク様の加護ではない。破壊の神の加護だ。

 デュク様たち一部の神様は加護という形で赤種、竜種、魔種を生み出した。
 それに対して、破壊の神と守護の神は神器を生み出し、加護という形で神器の主を選んだ。

 だから、神器自体は神様の力そのもの。

 私は現れた大鎌をくるりと振り回すと、柄の先を地面にトンと下ろした。

「うっ。破壊の神器を掲げるクロスフィアの姿が麗しすぎて、動悸がヤバい」

「もう掲げてないから」

「このまま心臓が止まりそうだ」

「ラウと同じようなことを言ってる」

 この姿で六翼まで顕現させたら、なんて言い出すのかな。

 最近は六翼を顕現させなくても、魔力コントロールが安定してきている。おかげで、翼なしの無翼でも四翼くらいの力を出せるようになってきた。

 もちろん、全力を出すとなると六翼をすべて解放する。これは他の赤種も同じだそうだ。

 三番目の『転換の輪』はこの前の対峙で十分に味わった。光り輝く腕輪のような物。腕にくっつく程度なので、見た目は違和感ない。
 私が見たときは、裸に薄い外套を着て輝く腕輪だったので、変人感が溢れていてヤバかった。

 テラの持つ『創造の種』はまだ見たことがない。名前からすると小さそうだ。どっちにしても目立たなさそう。

 で、私が持つのは『破壊の六翼』。背中に紅の翼が顕現するもの。
 なんで、私のだけ、こんなに大きいんだろう。目立ちすぎるんだよね。小さく顕現できないのかな?

 私がちょっとの間、黙り込んでいると、隣でイリニが悶えていた。

「見事なまでに艶めいた紅の魔力が、肌に突き刺さるこの感じ。このピリピリとした感覚がたまらないんだよな」

「魔種ヤバい」

 反応がラウに似ている。

「さて、クロスフィアの愛情がこもった魔力圧もたっぷり堪能できたし。俺はこっちで行くからな」

「魔力に愛情はこもらないから」

 イリニは私とは反対側の左手をぐっと引き寄せ、守護の大盾を顕現させた。

 私はというと、イリニのウィンクをさらっと避けて、当たり前の事実を告げてその場を凌ぐだけだった。はぁ。疲れる。




 私とイリニのやり取りを見て、カーシェイさんがずいっと一歩、前に出る。

 カーシェイさんは、破壊と守護の神器がそろっているのを確認し、眉をしかめていた。

 他の騎士たちはぼーっと眺めるだけ。
 動きからは、どれだけ自我が残っているのかも分からない。

「アルタル様、後ろにお下がりください。ここは俺たちが」

 神器を脅威とみなしたようで、カーシェイさんはピンクを背に庇う。

「ヴィッツ。わたくしを守るのではなく、破壊の赤種を捕らえるのよ」

「ですが、アルタル様」

 なのに、カーシェイさんの前に出てこようとするピンク。

 ピンクの顔色を見て、縋るような目をするカーシェイさん。あの顔、第六師団では見たことがない。

 エルヴェスさん辺りが見たら、おもしろがるか、気持ち悪がるかのどっちかだな。

「破壊の赤種さえ捕らえられれば、わたくしの身体も命も、どうにでもできるわ」

「俺の心が安まりません」

 かなりクズいことを言い放つピンク。対して、この世の終わりのような顔をして、ピンクの安否を気遣うカーシェイさん。

 だんだん、飽きてくるな、これ。

「それなら仕方ないわね。ヴィッツがわたくしの前を守って」

「はい、アルタル様」

 手を取り合う二人。

「アルタル様のお美しさが損なわれないよう、この俺が全力でお守りします」

「ありがとう、ヴィッツ」

 うん、これ、いつまで続くの?
 そしてこれ、いつまで見てないといけないの?




「竜種の夫婦にありがちな、バカップル状態だな」

 見飽きたのはイリニも同じようだった。

 マズいものでも食べたような、嫌ーな顔をしている。
 目の前のカーシェイさんとは正反対の表情だ。

 私が直接会ったことがある竜種の夫婦は金竜さんのところだけ。金竜さんはこんなだったっけ?

 レストスに行ったときのことを、思い出してみる。

「金竜さんのところは奥さんが弾けていて、強面で厳つい金竜さんが奥さんにムチャクチャデレデレだったよ」

 あの奥さんは凄かった。あんな小さな身体で金竜さんをはね飛ばすくらい凄かった。

「あぁ、上位竜種だからな」

「それで、奥さんに首を絞められて、金竜さんがうっとりしてた」

「黒竜だって同じだろ?」

「ラウはそんなことは………………って、そうだ。私に踏みつけられて喜んでた」

 うん、ラウも同じだった。絶対、金竜さんの性癖がラウに移ったんだと思う。

 まぁ、ヤバい夫だというのは分かっているから、いまさらだけどね。

 ところが。

 ラウ踏みつけ事件(?)の話を聞くやいなや、イリニが興奮した声をあげる。

「何?! 黒竜のやつ、クロスフィアのその麗しい足で踏みつけられたって?! なんて、羨ましい!」

「え?」

 思わず、イリニの方に顔を向けた。
 イリニも私の方に顔を向けていたので、二人で顔を見合わせる形になる。

「俺のことは短めのスカート姿で踏んでくれ。踏まれた上に、下から眺められるなんて、最高過ぎるだろう!」

「は?」 

 ダメだ。考えることがほぼラウといっしょだ、こいつ。

 固まる私に気を止めることもなく、イリニは勝手に話を進めていく。

「まず、先にあいつらをどうにかするか。踏まれるのはその後だ」

「踏むなんて、私、言ってないからね」

「じゃ、行くか」

 勝手にやる気になるイリニ。

 あーあ、もういいや、知らないや。
 とにかく、目の前の魔物とピンクをどうにかしよう。

 私も大鎌を構えなおして、前をぐっと見据えるのだった。
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