精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった

SA

文字の大きさ
313 / 384
6 討伐大会編

4-2

しおりを挟む
 そして迎えた討伐大会初日。

 混沌の樹林へは、エルメンティア側の入り口から入る。ここからすでに討伐大会だ。

 俺たちは、大神殿の神官から転送の魔導具を受け取ると、速やかに混沌の樹林を進んでいった。
 今日はただひたすら魔獣を狩りながら中央部を目指す。

『いいですか、黒竜。討伐大会初日は中央部に安全にたどり着くこと。それが第一目標です』

 どこからかカーシェイの声が聞こえた。

 俺が初めて討伐大会に参加したのは、十四のとき。まだ役付きになる前のただの騎士だった。

 ただの騎士とはいえ、俺は上位竜種最強の黒竜。その辺の騎士に負けるはずがない。
 だからこそ、十四のただの騎士にも関わらず、討伐メンバーに推薦され抜擢された。

 そんな俺も、初めての討伐大会は緊張の連続。

 カーシェイはそのとき、総師団長付きの副官で、緊張する俺にあれこれ教えてくれたっけな。

 それから何度もカーシェイとはいっしょに討伐大会に参加したが、そのたびにカーシェイの言葉を思い出すんだ。

『黒竜はパワータイプですが、必要最小限で魔獣は狩ります。体力は温存、力は出し惜しみしながらが、ここでの基本です』

 やたらめったら全力でいく俺を、カーシェイはいつも窘めていたよな。
 まぁ、俺だけじゃなく他のメンバーもあれこれ注意はされていたけどな。

「ラウ。楽しいことでもあったの?」

 昔を思い出して、思わずニタニタしていたようだ。俺は首を小さく縦に動かし、フィアに答えた。

「初参加のときのことを思い出していたんだ。緊張して注意されてな」

「へー。ラウでも緊張したんだね」

 そういえば、今回はカーシェイがメンバーにいない初めての討伐大会だ。

 あの口うるさいカーシェイがいない分、俺がしっかりチームをまとめないとな。

 俺は改めて気を引き締めた。

 


 はずだったのに。

 フィアを運んでいる最中、フィアの良い香りにムラムラしてしまい、現在に至る。

 下半身に力が入っているのが自分でも分かる。これはマズい。

 魔狼の襲撃されたときに、うっかりフィアを押し倒してしまってから、さらに状態が悪化した。

 現在、フィアを抱き上げての移動は諦め、別々に移動はしているんだが。
 途中、草むらの中にフィアを連れ込みたい気持ちになる。マズい。

 こんなところで、本当に草むらに連れ込んだら、フィアに軽蔑される。それだけは避けないと。

 俺は溢れるムラムラをすべて魔獣にぶつけながら、道なき道を進んだ。ただひたすら。狩って進む。この繰り返し。

「師団長、マジヤバいな」

 途中、ドラグゼルンが俺を見て、ボソッとつぶやく。
 ドラグゼルンも魔獣を斬り伏せながら進んでいるので、凄い様相だ。

 が、視線が低い。

 おい。どこ見てヤバいとか言ってるんだよ。仕方ないだろ、生理現象だ。

「気合い、入ってますねー」

 今度はカーネリウスだ。
 やっぱり視線が低い。

「これぞ、リアル黒竜録」

 デルストームまで視線が低い。
 俺のアレを見てリアル黒竜録とか言うな。黒竜録は全年齢対象だ。

「ラウ。ここじゃダメだからね」

 フィアまで…………って、フィアに見てもらう分にはぜんぜん問題ないな。

 存分に俺のアレを見てくれ。

「ラウ。見せびらかさなくていいから」

「そうだな、フィア。夜にたっぷり見てくれ」

「だから、そういうのはいらないから!」


 ドゴォォォォォォン


 俺は恥ずかしそうに顔を赤らめるフィアによって、吹き飛ばされた。樹林に激突する。痛い。痛いけど、恥ずかしそうにするフィアがかわいくてかわいくて悶絶する。

「痛くて気持ちいい」

 思わずつぶやいた。

「師団長、マジヤバいな」

 ドラグゼルンの声が遠くで聞こえた。

 いかんいかん。こういうときはカーシェイの小言でも思い出さないと。

 思い出してもなお、俺のアレは元気なままで、フィアの目をごまかしながら進んだ。




 そんな絶頂を迎えるような気分だった討伐大会初日は、思わぬ事態を迎える。

「クロスフィア。あなたを国に連れて帰りたい。俺と結婚してくれ」

 その言葉を聞き俺は戦闘態勢に入った。

 くっそ。なんだ、こいつ。

 フィアの夫である俺の前で、堂々と求婚だと?!
 フィアが大好きなのは、フィアの夫の俺と俺のアレだ!

 俺はフィアを取られまいと、背後からフィアに抱きつく。
 フィアの良い香りを包むような感じとなり、俺のアレも戦闘態勢だ。

 そんな俺に対して、フィアがこっそり囁く。

「ラウ。お願いだから。アレはおとなしくさせといて」

 無理を言うな、フィア。生理現象だ。

「だから、冷気と殺気が漏れてるって」

 なんだ、フィアの言うアレはこっちじゃなくて、そっちのことだったか。

 俺のアレは一瞬で静かになる。

 とはいえ、目の前の男は気に入らない。
 俺は殺気を抑えるのを止め、目の前の男を睨みつけるのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

処理中です...