精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった

SA

文字の大きさ
375 / 384
7 帝国動乱編

5-3

しおりを挟む
 テラが手にした若木を振った。

「僕の力は新たに作り出す力」

 初めて目にするけど、あの若木が創造の種だ。

 赤種として覚醒した当初にテラから教わった。創造の種、進化の希石、転換の輪、破壊の六翼、終末の時計。この五つの加護を持つのが赤種だと。

 創造の種というわりには、種ではなく、木の形をしている。

 よくよく見ると、若木の枝に実のような種のようなものがくっついていた。

 まさか、あのちっさいのが創造の種とか? いや、まさか。

 私が余計なことを考えているうちに、テラは朱色の魔力を広げていた。

「今の封印が弱くなっているなら、もっと力強い封印を新たに作り出せばいい」

 朱色が舞台の中央に押し寄せ、皇配の周りに集まると、徐々に魔法陣の形に変わっていった。
 魔法陣は、皇配を中心に複雑な模様となる。

 それほど大きくはないのに、魔力がうねり、しっかりと舞台の石の奥深くまで、魔力が浸透していた。

「次は僕か」

 次に二番目が口を開いた。

 二番目の姿はキラキラを纏っていて、とても派手に見える。

 あのキラキラの一つ一つが進化の希石のようだった。ラウに渡していたのも、あのキラキラのうちの一つなんだろう。

「僕の力はさらに発展させる力」

 二番目から鮮やかな赤い魔力が漏れだし、波のように舞台に押し寄せる。
 周りのキラキラはよりいっそう煌めいて、星のようにキレイだった。

「新たに作り出した封印に、さらに力を与えよう。二度と封印が緩まぬように」

 二番目が力強く言い切ると、鮮赤色が朱色の魔法陣にさらに模様を加える。

 赤種二人の魔力を重ね掛けした、二重魔法陣だ。


「グルァァァァァァァァァァ」



 皇配、いやもうすでに皇配の身体は原型を留めてないから、感情の神と言うべきだよね。
 その感情の神は、苦しげに魔物のような咆哮をあげる。

「無駄なことを。いくら頑張ったところで、変化の赤種はいない。封印は仕上がらない」

 最後の悪あがきだろうか。

 こっちを挑発するような口振り。焦りを誘って隙をつこうとしている。

「だから、私がいるんじゃないの」

「やめろ」

 私はずいっと、感情の神に近づいた。

 右手を上に伸ばし何かを捕まえるような仕草をすると、バチンと音がする。

 破壊の大鎌がバチバチと火花のような音を立てて顕現した。
 うん、六翼を出していて、私の魔力も最大。大鎌も魔力全開ってところだ。

 大鎌を感情の神に突きつけて、私は淡々と言葉を発した。

「私の力は破壊の力」

 何を言えばいいのかは分からないのに、自然と口から言葉が出てくる。

「その力を使ったら、お前の身体も魂も消える。消えたくはないだろう? せっかく覚醒したというのに」

 感情の神の誘うような言葉は、私の心に何も響かなかった。

 覚醒したら消える運命。

 ラウを残して消えるのが嫌なだけ。

 だからラウは連れていこうと思ってる。
 だから消えるのは怖くない。悩みもない。
 どうやって連れていくかは、神様たちに相談すればいいや。

 デュク様は私の意志を尊重するって言ってくれたんだから。

「破壊の赤種は神をも壊す」

「そんな力と運命を与えた神が憎いだろう」

 いや、別に。

 心の中で感情の神に反論しながら、私は魔力を身体の外へと放った。

 身体から魔力を溢れさせるのではなく、意図して魔力を放つ。初めて行うことだけど、上手くできている。

 私の紅色の魔力は舞台全体に広がり、朱色と鮮赤色の魔法陣を埋め尽くした。

「悪しきものが封印から逃げられないよう、悪しき力を破壊する」

 言葉を言い切ると同時に、舞台全体の紅色がサーッと魔法陣に集まる。

 そして大鎌にも、私の紅色が流れ込んだ。
 刀身が紅色に染まる大鎌を私は振りかぶる。

「ヤメロォォォォォォ」

 迷うことなく、私は大鎌を振り切った。

 ベシャッと音がして、皇配の身体が二つになって舞台の床に落ちる。

 私が斬ったのは、身体だけではない。
 皇配の身体とともに、感情の神の思念も破壊した。

「ア……………………」

 床に埋もれた身体から呻きが聞こえる。

「我ハ、人ガ本来…………、自由ニ、持ツベキ感情ヲ、解放…………シタ、ダケ…………ダ」

 声は弱々しく、途切れ途切れ。

 私の破壊の力はちゃんと感情の神に届いたようだ。

 よし。後は封印を完成させるだけ。




「離れろ、四番目!」

「え?」

 テラの声に驚き、バッとテラの方を向いてしまう。
 思えば、ここで余計な動きをしないで、離れれば良かったのに。

 感情の神から視線をそらしてしまったその瞬間、何かが絡みついてきて、慌てて、大鎌を振るう。

 まさか。まだ、力が?

 大鎌を振るいながら、感情の神の方に視線を向けると、黒い塊から、黒く細長い縄のようなものが何本も飛び出している。

 しまった、油断した。

 破壊、仕切ったと思ったのに。

「ドウセ……、消エルノナラ…………、最期ハ……我トトモニ、来イ…………」

 感情の神が声を漏らす。
 同時に黒い縄が私に向かって一斉に襲いかかってきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

処理中です...