運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

SA

文字の大きさ
432 / 591
7 王女殿下と木精編

4-5

 それから半日。

 お昼休憩以外は休憩なしでデルティ殿下は頑張った。お茶の休憩もなしなのには驚いたけど。それほど、デルティ殿下は本気だったわけだ。

 とはいえ、頑張っても頑張ってもデルティ殿下は呼び出しが出来なかった。
 つまり、圧をかけて邪魔をしている私を超えられなかった、ということにはなるけど。重要なのはそういうことじゃない。

 デルティ殿下が、自分の魔力をしっかりと練り上げて、きっちりコントロール出来るようにすること。

 それが、今回の特訓の最終目標だ。

 もちろん、最終目標をクリアしたところで、終わりにならない。さらなる目標が追加される。

 王族なんてそんなものだし、なにせ、デルティ殿下は五強の主なんだから。

 私の目の前で、汗水垂らして、同じことを繰り返し繰り返しひたすら行っているデルティ殿下。

 いつもあんなに堂々と平然とした態度をしているのに。実は、周りからの期待に圧を感じ、期待に応えられないことを不安に思っていたとは。思いもしなかった。

 ふと、デルティ殿下に教えてあげたくなる。

 かつて、七歳の私が味わった挫折を。

 期待に応えようと頑張っても、頑張りを認められないこともある。頑張りがどうでもいいように扱われることもある。
 そもそも、頑張ってもどうにもならないこともある。

 デルティ殿下にも言いたいことはあるだろうけど、七歳の私よりも、恵まれているし幸せだし。問題にもならない。

 七歳の私だって、恵まれている方だったと思う。

 私が魔塔の孤児院ではなく、その辺の道ばたに捨てられていたら。私は今、生きていなかったかもしれない。
 こうしてデルティ殿下を特訓することなんて、なかっただろう。

 世の中は理不尽で過酷だ。

 デルティ殿下にも、その理不尽さと過酷さを分かってもらいたいけど、まだ、少し時期が早いだろう。
 少なくとも、特訓でひぃひぃしている間は。

 と、そこに、

「だいぶマシになってきたみたいだね」

 銀髪に赤銅色の瞳を持った十歳ほどの子どもが、突然、現れた。

「お帰り、クラヴィス」

 ケルビウスはいっしょではない模様。
 別行動をしているのか、はたまた、主の元に帰ったのか。

 フィリアもいないところからすると、クラヴィスが先に帰ってきた、というのが正解なような気がする。

 私はケルビウスやフィリアのことには触れずに、デルティ殿下の様子を話して聞かせた。

「最初からヘタレモードでね。どうしてくれようかと思ったんだけど、何とかなって良かったわ」

「なるほどねー」

 と言いながら、クラヴィスは私の隣にちょこんと座る。

 帰ってきたクラヴィスの様子に刺激されたのか、セラフィアスも顕現して、私の隣にちょこんと座った。

 おもしろいことに二人の位置はいつも決まっていて、右にセラフィアス、左にクラヴィス。

 二人で言い合いになるときは、必ず私を間に挟むので、ちょっと面倒くさい。

 同格の杖だというのは聞いている。

 それ以外のこと、例えばどんな過去を持っていて、どんな関係なのかについては聞いてもはぐらかされてしまって。教えてくれなかったのだ。

 杖の二人からすると、知らない方がいいこともある、ってことらしい。
 まぁ、これについては二人が話してくれるのを待つしかない。

 待っていられないのは、ルベル公爵邸での話の方。

「それで。お前の方はどうだったんだ?」

 待ちきれなくて、セラフィアスがまず、問いかけた。

「金冠、見つかったの?」

 続いて私も質問をする。

 訓練場でするような話題じゃないけど、今は少しでも早く話を聞きたい。

 特訓中のデルティ殿下には悪いけど、指を一ひねりして、私たちの周りに《遮音》の魔法を展開させた。
 これで、何か喋っていても、周りに会話の内容は伝わらなくなる。

 まぁまぁまぁまぁまぁ、と手をパタパタさせて、私とセラフィアスを抑えるクラヴィス。

「僕とケルビウスが二人で押し掛けたんだよ? 見つかりたくないなら、逃げるに決まってるだろ?」

 それは金冠に主がいれば、の話じゃないの? 主がいなければ金冠は寝てしまう。寝てしまえば逃げられないと思うけど。

 クラヴィスは、金冠に主がいて金冠が起きている前提で話をしているような気がして、私は首を傾げた。

 私だけでなく、セラフィアスも不思議に思ったようだ。

「何も見つからなかった、っていう顔はしてないぞ? 何か見つかったんだろ?」

「金冠は見つからなかったけど、おもしろいことが分かったんだよ」

「「おもしろいこと?」」

 私とセラフィアスの声が揃う。

 金冠の発見以上におもしろいことって何なんだろう。と思って先を促すと、クラヴィスはニタリと笑った。

「まず、ルベル公爵夫妻は金冠の主ではなかった」

「それがおもしろいこと?」

 王太子殿下との話で、すでにそういう結論に達していたので、それを裏付ける結果となる。でも、おもしろさは感じない。

 私がさらに聞き返すと、クラヴィスはまたもやニタリと笑う。

「おもしろいだろう? 主がいないのに、ルベル公爵家には、金冠の痕跡や気配が残っていたのだから」

「うん? どういうこと?」

「実はな」

 クラヴィスはルベル公爵邸でのことを、最初から話し始めた。
感想 2

あなたにおすすめの小説

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

【完結】ハーレム構成員とその婚約者

里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。 彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。 そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。 異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。 わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。 婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。 なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。 周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。 コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

学園は悪役令嬢に乗っ取られた!

こもろう
恋愛
王立魔法学園。その学園祭の初日の開会式で、事件は起こった。 第一王子アレクシスとその側近たち、そして彼らにエスコートされた男爵令嬢が壇上に立ち、高々とアレクシス王子と侯爵令嬢ユーフェミアの婚約を破棄すると告げたのだ。ユーフェミアを断罪しはじめる彼ら。しかしユーフェミアの方が上手だった? 悪役にされた令嬢が、王子たちにひたすらざまあ返しをするイベントが、今始まる。 登場人物に真っ当な人間はなし。ご都合主義展開。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

⚪︎
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった

Blue
恋愛
 王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。 「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」 シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。 アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。