運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

SA

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7 王女殿下と木精編

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 それから半日。

 お昼休憩以外は休憩なしでデルティ殿下は頑張った。お茶の休憩もなしなのには驚いたけど。それほど、デルティ殿下は本気だったわけだ。

 とはいえ、頑張っても頑張ってもデルティ殿下は呼び出しが出来なかった。
 つまり、圧をかけて邪魔をしている私を超えられなかった、ということにはなるけど。重要なのはそういうことじゃない。

 デルティ殿下が、自分の魔力をしっかりと練り上げて、きっちりコントロール出来るようにすること。

 それが、今回の特訓の最終目標だ。

 もちろん、最終目標をクリアしたところで、終わりにならない。さらなる目標が追加される。

 王族なんてそんなものだし、なにせ、デルティ殿下は五強の主なんだから。

 私の目の前で、汗水垂らして、同じことを繰り返し繰り返しひたすら行っているデルティ殿下。

 いつもあんなに堂々と平然とした態度をしているのに。実は、周りからの期待に圧を感じ、期待に応えられないことを不安に思っていたとは。思いもしなかった。

 ふと、デルティ殿下に教えてあげたくなる。

 かつて、七歳の私が味わった挫折を。

 期待に応えようと頑張っても、頑張りを認められないこともある。頑張りがどうでもいいように扱われることもある。
 そもそも、頑張ってもどうにもならないこともある。

 デルティ殿下にも言いたいことはあるだろうけど、七歳の私よりも、恵まれているし幸せだし。問題にもならない。

 七歳の私だって、恵まれている方だったと思う。

 私が魔塔の孤児院ではなく、その辺の道ばたに捨てられていたら。私は今、生きていなかったかもしれない。
 こうしてデルティ殿下を特訓することなんて、なかっただろう。

 世の中は理不尽で過酷だ。

 デルティ殿下にも、その理不尽さと過酷さを分かってもらいたいけど、まだ、少し時期が早いだろう。
 少なくとも、特訓でひぃひぃしている間は。

 と、そこに、

「だいぶマシになってきたみたいだね」

 銀髪に赤銅色の瞳を持った十歳ほどの子どもが、突然、現れた。

「お帰り、クラヴィス」

 ケルビウスはいっしょではない模様。
 別行動をしているのか、はたまた、主の元に帰ったのか。

 フィリアもいないところからすると、クラヴィスが先に帰ってきた、というのが正解なような気がする。

 私はケルビウスやフィリアのことには触れずに、デルティ殿下の様子を話して聞かせた。

「最初からヘタレモードでね。どうしてくれようかと思ったんだけど、何とかなって良かったわ」

「なるほどねー」

 と言いながら、クラヴィスは私の隣にちょこんと座る。

 帰ってきたクラヴィスの様子に刺激されたのか、セラフィアスも顕現して、私の隣にちょこんと座った。

 おもしろいことに二人の位置はいつも決まっていて、右にセラフィアス、左にクラヴィス。

 二人で言い合いになるときは、必ず私を間に挟むので、ちょっと面倒くさい。

 同格の杖だというのは聞いている。

 それ以外のこと、例えばどんな過去を持っていて、どんな関係なのかについては聞いてもはぐらかされてしまって。教えてくれなかったのだ。

 杖の二人からすると、知らない方がいいこともある、ってことらしい。
 まぁ、これについては二人が話してくれるのを待つしかない。

 待っていられないのは、ルベル公爵邸での話の方。

「それで。お前の方はどうだったんだ?」

 待ちきれなくて、セラフィアスがまず、問いかけた。

「金冠、見つかったの?」

 続いて私も質問をする。

 訓練場でするような話題じゃないけど、今は少しでも早く話を聞きたい。

 特訓中のデルティ殿下には悪いけど、指を一ひねりして、私たちの周りに《遮音》の魔法を展開させた。
 これで、何か喋っていても、周りに会話の内容は伝わらなくなる。

 まぁまぁまぁまぁまぁ、と手をパタパタさせて、私とセラフィアスを抑えるクラヴィス。

「僕とケルビウスが二人で押し掛けたんだよ? 見つかりたくないなら、逃げるに決まってるだろ?」

 それは金冠に主がいれば、の話じゃないの? 主がいなければ金冠は寝てしまう。寝てしまえば逃げられないと思うけど。

 クラヴィスは、金冠に主がいて金冠が起きている前提で話をしているような気がして、私は首を傾げた。

 私だけでなく、セラフィアスも不思議に思ったようだ。

「何も見つからなかった、っていう顔はしてないぞ? 何か見つかったんだろ?」

「金冠は見つからなかったけど、おもしろいことが分かったんだよ」

「「おもしろいこと?」」

 私とセラフィアスの声が揃う。

 金冠の発見以上におもしろいことって何なんだろう。と思って先を促すと、クラヴィスはニタリと笑った。

「まず、ルベル公爵夫妻は金冠の主ではなかった」

「それがおもしろいこと?」

 王太子殿下との話で、すでにそういう結論に達していたので、それを裏付ける結果となる。でも、おもしろさは感じない。

 私がさらに聞き返すと、クラヴィスはまたもやニタリと笑う。

「おもしろいだろう? 主がいないのに、ルベル公爵家には、金冠の痕跡や気配が残っていたのだから」

「うん? どういうこと?」

「実はな」

 クラヴィスはルベル公爵邸でのことを、最初から話し始めた。
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