運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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7 王女殿下と木精編

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 フィリアに同行する形でついていったクラヴィスとケルビウスは、ルベル公爵邸の中に通されると、自然と違和感を感じた。

《この邸宅、おかしくない?》

 魔導語、しかもお互いに聞こえる程度の大きさでしか発してないので、誰かに盗み聞きされる心配もない。

 フィリアからあまり離れないように、後を付き従って歩いていく。とはいえ、クラヴィスもケルビウスも、姿を隠して出歩くのが得意な杖。誰かに見られる心配はない。

 周りからしたら、フィリアが一人であるいているだけ。フィリア自身も魔力はあって使えはしても、杖の言葉を理解できるほどではない。
 体よく杖に使われている形となっていた。

 なので、フィリアを気にすることなく、杖たちの会話は続く。

《そうねぇ、異常なほど地盤の魔力が活性化してるわね》

 クラヴィスの疑問に、ケルビウスの方も首を傾げて答えた。
 地盤の魔力が活性化していたり、魔力溜まりになっている場所にはある特徴がある。

 強力な遺物があることだ。

 実際は、そんな場所に強力な遺物を配置した、というのが正解だろう。

 三聖の展示室も転移魔法陣も、魔力溜まりを考えて作られているようで、遙か昔から地盤の魔力の流れや魔力溜まりが、知られていたことが推察される。

 転移魔法陣は東西南北に一つずつ。南を治めるルベル公爵家もその一つだったはず。

《これってあれかな。転移門の影響かな》

 なので、地盤の魔力が他の場所と異なることを気づいたクラヴィスは、まずは転移魔法陣との関係を疑った。

《転移門って。あなた、古いわねぇ。今は転移魔法陣や転送魔法陣と呼ぶのよ》

《うるさいな。年増だからって偉ぶって》

《ふん。お子さまは黙ってなさい。わたくしが年増なら、セラフィアスはどうなのよ》

《ジジイだよね。でも、さすが、ジジイ。勘が鋭いな》

《なんですって?》

《これ、転移門…………転移魔法陣だけの影響じゃない。他に何か、魔導具の力が働いているね》




「クラヴィスは転移関係が専門だもんね」

 クラヴィスの話の合間に、私は感心して思わず口を挟んでしまった。

 私のもう一つの杖、鍵穴のクラヴィス。
 空間に穴を開け、別の空間に繋げる個有能力を持つ。転移や移動はお手の物。
 今回も、転移魔法陣によるものか、そうでないかを見破れたのは、クラヴィスの力。

 私はそう思って感心したのに、肝心のクラヴィスは少し渋い顔。

「主、鍵穴の力は単なる『転移』じゃないんだよね」

「え?」

「まぁ、追々、説明するよ。それでその後なんだけど」

 そして、クラヴィスの話はさらに続いた。




 邸宅の中に通されて応接室で待っていると、すぐさま、ルベル公爵夫妻が現れる。

「バルシアス・エンデバートです。お会いできて光栄に思います、ルベル公爵閣下」

「こちらこそ。エンデバート卿」

 エンデバート卿が縁戚のルベル公爵家を訪問するという形を取ってはいたので、挨拶はエンデバート卿から。けど、本当の中心はメッサリーナ殿だ。

 メッサリーナ殿は聖魔術師なので、クラヴィスやケルビウスに気付くのではないかと、私はヒヤヒヤしていたのに、

《離れて静かにしてれば、問題なさそうだわね》

 とケルビウスが評したように、メッサリーナ殿は二つの杖の気配にまるで気がつかなかったそうだったし。
 回復魔法を扱う聖魔術師として以外は、それほど凄い魔術師ではないと聞かされて、少しホッとする。

 その頃、クラヴィスとケルビウスの方は、メッサリーナ殿ではなく、ルベル公爵夫妻に注目していた。

《外れだね》

《ええ、そうでしょう? どちらも外れなのよ》

 何が外れなのかは言うまでもない。

 ルベル公爵夫妻はどちらも金冠の主ではないから、外れだと杖たちは言っていたのだ。

 まぁ、外れだなんて、言い方が失礼なので聞こえてたらマズいけど。公爵夫妻も杖の言葉を聞く力はないようで、またもや私はホッとしたのだ。

 潜入捜査って、本当にヒヤヒヤする。
 私が潜入しているわけでもないのに。

 エンデバート卿がルベル公爵夫妻に挨拶した後、同行者を紹介し始めたので、杖たちはまたおとなしくなった。

 単に見つからないように、だけではなく、メッサリーナ殿の動向を監視するために。

「こちらが聖魔術師長のメッサリーナ殿です」

「お会いするお時間をいただきまして、ありがとうございます」

「あと、事前に連絡しました、ルベラス嬢と親しい間柄の騎士、ロード卿です」

 あれ?

 引っかかるものを感じて、私はクラヴィスの話を遮った。




「ちょっと待って。フィリアって、最初から計画的に連れていかれたわけ?」

 クラヴィスは先にこちらに戻ってきたようで、フィリアはまだだった。

 フィリアのいない場でフィリアについてのことを尋ねるのは、複雑な気持ちになるけど。そうも言っていられない。

 なんだろう、この引っかかりは。

「うん、まぁ。後で分かることなんだけど、主が気にしてるようだから、先に話しておこうか」

 クラヴィスは少し間をおいて、種明かしのような話し始めた。

「ルベル公爵家は訪問に条件をつけてたみたいなんだよ」

「条件? 遠い親戚が訪問するっていうのに?」

 と口に出してから、私はあっと思った。

 私のお母さまは、ルベル公爵夫妻にとっては一人娘に当たる。
 そのお母さまが夭逝してから、ルベル公爵家は公の場から姿を消していた。社交界からも政界からも。

 傍系の子息が養子に入り、次期公爵として活躍はしているので、完全に社会から切り離されてはいないけど。

 領地に引きこもって、誰とも接しず、関わらず生きていた人たち。
 そして、魔塔に捨てられた七歳の私を見捨てたかもしれない人たち。

「主、忘れたのか。出かける前にあいつが言ってただろ。主と知り合いだと言ったら、訪問が許可されたって」

「そうだっけ?」

 私を十年近くも放置しておいた人たちが、いまさら、私の名前を聞いて懐かしくでも思ったんだろうか。気分が悪くなる。

 クラヴィスは、私の嫌な気分をさらに増幅するような話をし始めた。

「けっきょく、ルベル公爵家は主に会いたがってたのさ。主が無理なら、主をよく知る人物も連れてきてほしい、そう条件をつけてたんだよ」

「何でまた、そんなことを?」

「とにかく、話は最後まで聞いてくれ」

 私は嫌な気分のまま、クラヴィスの話の続きを聞くことになった。
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