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【第三章】竜を想いし永遠に
22.竜を想いし永遠に(3)
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久しぶりに見た観劇は、心を思いっきり揺さぶってきた。
演劇とは、こんなに人の心に直接訴えてくるものだったのだろうか。
内容は女の竜に愛した男性のお話。
男性は竜と共に生きるために古今東西を歩き回るけれど、寿命を伸ばす方法は見つからず。
しかしある日、禁断の桃を見つける。
東洋で、桃は不老長寿の食べ物だと言われていたからだ。
しかしそれは罠だった。
禁断の場所に入り込んだ青年は、死神と出会う。
そして死神を説得するために、どうか生きる時間を伸ばすために、会話を続ける。死神の気を引く会話を。
そして気づけば男性は青年から老人へと変わり、寿命の最後に竜と再会する。
竜は美しい姿のままで、老人になった彼を出迎えた。
結局彼は竜と一緒に生きることは出来ず、彼は竜に抱かれて、その命を失う。
そんな悲劇の物語だった。
◆
カーテンが降り、観客たちの拍手でカーテンが再び幕上がる。
そこには手を取り合った主演たちがいて、舞台の上で役者陣が涙を流している。そこには先程の女性が涙を流していた。
きっと、ここで彼女の役者人生は一旦幕を下げる。
しかし男型という選択もあるのだ。まだまだ彼女の役者人生は終わらないだろう。
私はできる限り、この感動をうまく表現したくて、たくさん拍手をした。手が引きちぎれてしまいそうなほど、強く拍手をした。
カンパネラも、ぱちぱちとたくさん手を叩いていた。
そうしてカーテンが下がり、舞台は終わった。ぞろぞろと観客が劇場から出ていく。
「私達も出ましょうか」
「はい。アーさん。人が多いから、手は繋いだままで」
今度はカンパネラが手を差し伸べてくれた。
私はその手をとって、共に外へ出た。
流石貴族用の舞台。
沢山の馬車が入り口に用意されている。
その中で特にきらめいていたのは、金銀の宝石を散りばめた、豪華絢爛な馬車だった。
「あー、たいくつだった。なにが竜よ、長寿よ。ばからしいわぁ」
「まぁ、所詮庶民の娯楽だよ。目くじら立てても仕方ない。庶民は俺達と違うんだから」
聞き覚えのある声が聞こえて、肌が粟だった。
甘ったるい砂糖菓子のような女性声。
低く、はっきりとした喋り方をする男性の声。
豪華絢爛な馬車のなかにいるのは――間違いない。ソフィアとエドアルトだった。
――アナスタシア・ユーリヤ・シャターリア。お前との婚約をここで破棄させてもらう。
大勢の貴族の前で言われた暴言。
証拠のない罪の数々。そして、貶められた私をニヤリと笑ったソフィアの顔。
「――ぁっ」
動悸が止まらない。
「……アーさん?」
すぐに気づいたのは、カンパネラだった。
「大丈夫ですか? ここは人が多いから、少し離れたところに行きましょう」
そう言って、カンパネラは私を抱き上げた。――けれどそれが悪手に出てしまった。
「おい、そこの男と小娘」
エドアルト王子――いや国王が私たちを見た。そして声をかけた。
「男はどうでもいい。だが、女はアイツによく似ている。……アナスタシアに……」
だからなんというのだ。
捨てた女のことなんて、とっとと忘れてしまえと思った。けれど口にしない。
王子この呪いの身体のことがバレてしまったら、人並みの生活など送れないだろう。
「カンパネラ、降ろして」
「で、でも」
「……大丈夫よ」
抱きかかえてくれていたカンパネラに降ろしてもらって、スカートの端をつかみ、お辞儀をした。
「お初にお目にかかります。殿下」
「ほう、俺のことを名乗らずともわかったのか」
「えぇ。この国の王様ですから。そして息子様のジークフリード様ともよく交流させていただいているので、一度お顔を拝見したいと思っておりました」
「……ジークフリード? ……うーむ」
「エドアルト様、あの子ですよ。一番最初に産んだ」
「あぁ、あの弱い王子か。まぁあれは弱いなりに第一王子だからな。これからも奴を助けてやってくれると助かる」
……ちょっとまって。
王子、今……ジークフリード王子のことを忘れていた?
どれだけ自分の子どもに興味がないんだ。
ソフィアも伝え方が酷い。
最初に産んだなんて。まるで物のように扱って。
6歳だった彼が打ち明けた本当の言葉を思い出す。
――ぜんぶです。こんなのおかしいって言っても、父上は聞いてくれない。母上は、ぼくに会ってもくれない。
あの言葉は本当のことだったんだ。
心の底から湧いたのは怒りと、悲しみ。
自分の子すら愛せない奴らが、国を民を愛せるわけがない。
けれど、私にはもうエドアルトとソフィアなんて関係ない。
ジークフリード殿下に早々と国王になってもらって、この国を立て直すしか無い。
「アーさん。帰りましょう」
カンパネラは言う。
けれど目上の人が話を切る前に、こちらから話を区切るのは無礼に値する。
「か、カンパネラ」
「人にとって無礼でも、竜には関係ありませんので」
カンパネラはそう言ってのけた。私はちょっと面白くて、くすっと笑ってしまった。
たしかにそうよね。
だって、カンパネラは竜だもん。
王とか貴族とか市民とか、人間の世界とは全く関係ない生き物。それが竜なのだから。
後ろから王子の罵倒が聞こえる。けれど私はそれを無視して、カンパネラと一緒に屋敷戻った。
カンパネラがいると馬車いらずだ。
透明化してくれるおかげで、空を飛んで家に帰ることができる。
私の身体は透明にならないから、高度高めで飛んでくれるからありがたい。
しかし、久しぶりに見たエドアルト、太ってたなぁ。
10代の頃の美貌は何処にいった。
そしてソフィアは相変わらず露出度の高い服を着ていた。
大きなスリットの入った服を着ていて、エドアルトがひたすら彼女の太ももを揉んでいたのも気に食わなかった。
私はあの人と結婚しようとしていた。
いや、あの人も相手が違えば、指摘してくれる人がいれば、ちゃんとした国王になれたのかもしれない。
「……カンパネラ、今日は一緒に寝てくれない?」
「はい。竜の姿がいいですか? 人の姿がいいですか?」
「手を握っていたいから……人の姿で……」
まだ心臓がドキドキする。
まさかあんなところで会うなんて思わなかったから。
私が眠りにつくまで、カンパネラはずっと手を握ってくれていた。
彼は夜行性だから、夜は動きたくてたまらないはずなのに。
それでも、私のそばにいてくれて――本当に嬉しかった。
幸せを切り取りたい。
一瞬を閉じ込めたい。
そういうのは、こういうときに使う言葉なのだろう。
私はそっと目を閉じた。どうかエドアルトとソフィアの夢は見ないように――そう祈りながら……。
演劇とは、こんなに人の心に直接訴えてくるものだったのだろうか。
内容は女の竜に愛した男性のお話。
男性は竜と共に生きるために古今東西を歩き回るけれど、寿命を伸ばす方法は見つからず。
しかしある日、禁断の桃を見つける。
東洋で、桃は不老長寿の食べ物だと言われていたからだ。
しかしそれは罠だった。
禁断の場所に入り込んだ青年は、死神と出会う。
そして死神を説得するために、どうか生きる時間を伸ばすために、会話を続ける。死神の気を引く会話を。
そして気づけば男性は青年から老人へと変わり、寿命の最後に竜と再会する。
竜は美しい姿のままで、老人になった彼を出迎えた。
結局彼は竜と一緒に生きることは出来ず、彼は竜に抱かれて、その命を失う。
そんな悲劇の物語だった。
◆
カーテンが降り、観客たちの拍手でカーテンが再び幕上がる。
そこには手を取り合った主演たちがいて、舞台の上で役者陣が涙を流している。そこには先程の女性が涙を流していた。
きっと、ここで彼女の役者人生は一旦幕を下げる。
しかし男型という選択もあるのだ。まだまだ彼女の役者人生は終わらないだろう。
私はできる限り、この感動をうまく表現したくて、たくさん拍手をした。手が引きちぎれてしまいそうなほど、強く拍手をした。
カンパネラも、ぱちぱちとたくさん手を叩いていた。
そうしてカーテンが下がり、舞台は終わった。ぞろぞろと観客が劇場から出ていく。
「私達も出ましょうか」
「はい。アーさん。人が多いから、手は繋いだままで」
今度はカンパネラが手を差し伸べてくれた。
私はその手をとって、共に外へ出た。
流石貴族用の舞台。
沢山の馬車が入り口に用意されている。
その中で特にきらめいていたのは、金銀の宝石を散りばめた、豪華絢爛な馬車だった。
「あー、たいくつだった。なにが竜よ、長寿よ。ばからしいわぁ」
「まぁ、所詮庶民の娯楽だよ。目くじら立てても仕方ない。庶民は俺達と違うんだから」
聞き覚えのある声が聞こえて、肌が粟だった。
甘ったるい砂糖菓子のような女性声。
低く、はっきりとした喋り方をする男性の声。
豪華絢爛な馬車のなかにいるのは――間違いない。ソフィアとエドアルトだった。
――アナスタシア・ユーリヤ・シャターリア。お前との婚約をここで破棄させてもらう。
大勢の貴族の前で言われた暴言。
証拠のない罪の数々。そして、貶められた私をニヤリと笑ったソフィアの顔。
「――ぁっ」
動悸が止まらない。
「……アーさん?」
すぐに気づいたのは、カンパネラだった。
「大丈夫ですか? ここは人が多いから、少し離れたところに行きましょう」
そう言って、カンパネラは私を抱き上げた。――けれどそれが悪手に出てしまった。
「おい、そこの男と小娘」
エドアルト王子――いや国王が私たちを見た。そして声をかけた。
「男はどうでもいい。だが、女はアイツによく似ている。……アナスタシアに……」
だからなんというのだ。
捨てた女のことなんて、とっとと忘れてしまえと思った。けれど口にしない。
王子この呪いの身体のことがバレてしまったら、人並みの生活など送れないだろう。
「カンパネラ、降ろして」
「で、でも」
「……大丈夫よ」
抱きかかえてくれていたカンパネラに降ろしてもらって、スカートの端をつかみ、お辞儀をした。
「お初にお目にかかります。殿下」
「ほう、俺のことを名乗らずともわかったのか」
「えぇ。この国の王様ですから。そして息子様のジークフリード様ともよく交流させていただいているので、一度お顔を拝見したいと思っておりました」
「……ジークフリード? ……うーむ」
「エドアルト様、あの子ですよ。一番最初に産んだ」
「あぁ、あの弱い王子か。まぁあれは弱いなりに第一王子だからな。これからも奴を助けてやってくれると助かる」
……ちょっとまって。
王子、今……ジークフリード王子のことを忘れていた?
どれだけ自分の子どもに興味がないんだ。
ソフィアも伝え方が酷い。
最初に産んだなんて。まるで物のように扱って。
6歳だった彼が打ち明けた本当の言葉を思い出す。
――ぜんぶです。こんなのおかしいって言っても、父上は聞いてくれない。母上は、ぼくに会ってもくれない。
あの言葉は本当のことだったんだ。
心の底から湧いたのは怒りと、悲しみ。
自分の子すら愛せない奴らが、国を民を愛せるわけがない。
けれど、私にはもうエドアルトとソフィアなんて関係ない。
ジークフリード殿下に早々と国王になってもらって、この国を立て直すしか無い。
「アーさん。帰りましょう」
カンパネラは言う。
けれど目上の人が話を切る前に、こちらから話を区切るのは無礼に値する。
「か、カンパネラ」
「人にとって無礼でも、竜には関係ありませんので」
カンパネラはそう言ってのけた。私はちょっと面白くて、くすっと笑ってしまった。
たしかにそうよね。
だって、カンパネラは竜だもん。
王とか貴族とか市民とか、人間の世界とは全く関係ない生き物。それが竜なのだから。
後ろから王子の罵倒が聞こえる。けれど私はそれを無視して、カンパネラと一緒に屋敷戻った。
カンパネラがいると馬車いらずだ。
透明化してくれるおかげで、空を飛んで家に帰ることができる。
私の身体は透明にならないから、高度高めで飛んでくれるからありがたい。
しかし、久しぶりに見たエドアルト、太ってたなぁ。
10代の頃の美貌は何処にいった。
そしてソフィアは相変わらず露出度の高い服を着ていた。
大きなスリットの入った服を着ていて、エドアルトがひたすら彼女の太ももを揉んでいたのも気に食わなかった。
私はあの人と結婚しようとしていた。
いや、あの人も相手が違えば、指摘してくれる人がいれば、ちゃんとした国王になれたのかもしれない。
「……カンパネラ、今日は一緒に寝てくれない?」
「はい。竜の姿がいいですか? 人の姿がいいですか?」
「手を握っていたいから……人の姿で……」
まだ心臓がドキドキする。
まさかあんなところで会うなんて思わなかったから。
私が眠りにつくまで、カンパネラはずっと手を握ってくれていた。
彼は夜行性だから、夜は動きたくてたまらないはずなのに。
それでも、私のそばにいてくれて――本当に嬉しかった。
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