【完結】竜と悪役令嬢だった魔女

六花さくら

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エピローグ

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 私たちは約束通り、海辺に小さな屋敷を買った。

 カンパネラの子を身ごもって、不安に思ったことがある。

 竜の子だから卵で出るのかなと思っていたけれど、人間と同じ様にお腹で育った。

 取り上げる医者はホーエンハイムだった。

 私は『絶対にホーエンハイムにとりあげてほしくない!』と拒否したのに、カンパネラが『絶対にホーエンハイムさんじゃないと駄目です!』と強く語ってきて、めんどくさくて折れた。

 陣痛は12時間続いた。カンパネラはあたふたしながら協力してくれた。

「アーさん、アーさん! 大丈夫ですか!?」
 背中を撫でたり、汗を拭ってくれたり、献身的に尽くしてくれた。

「今は痛みが引いてるから大丈夫よ」
 陣痛の感覚は短くなっているけれど、波が引いた時は息を吐くことができた。

「……アーさん、めっちゃ冷静」
 カンパネラはそう言って、私の背中をさすってくれる。
 その間にまた陣痛が来て――

「――あっ、痛い! 痛い! どうにかしなさいよ! ホーエンハイムぅ!」

「無茶言うなよ。耐えろ」

「麻酔かけて!」

「残念ながら、この国に無痛分娩の技術はまだないんだよなぁ」

「くっ……もっと医療機関にお金をかけておくべきだったわ!」

 そんなこんなで痛みに耐えて生まれた子は、男の子と女の子の双子だった。

 頭に二本の角が生えていて、おまけに尻尾もついていた。
 真っ赤な身体の赤ちゃんを見て、カンパネラのダイヤモンド色の瞳は更にきらきらと輝いていた。

「あ……あぁ……」
「産湯につけるか?」

「は、はい……」

 カンパネラはゆっくりと、赤ちゃんを産湯につけた。
 そして、身体中の垢を落とす。それを二人分。

 男の子の赤ちゃんは「ふぇええ……」と小さく泣き、女の子の赤ちゃんは「ほんぎゃぁ! ほんぎゃあ!」と大きく泣いた。

 これは女の子のほうが気の強い子になるかもね。と、私は深く息を吐いた。

「お疲れ様です。アーさん。そして、ありがとう、ございま、すっ」

「こら、カンパネラ。お父さんになったんだから簡単に泣かないで」

「今日くらい良いじゃないですか。だって、とてもめでたい日なんですよ」

「……そうね」

 新しい生命の誕生。
 それに二人いるなら、彼らが一人になることは、きっとない。

 私はたくさんの死を看取ってきた。

 600年間、死を追い求めていた私が子どもを産むなんて。
 でも私の心の中は、この瞬間にあったのかもしれないと思うくらい、私の心は幸福感で満たされていた。

 この子たちはどんな子になるだろう。
 どんな子に育ってくれるだろう。

 どうか幸せな未来を歩んでほしい。
 変な男や変な女に捕まらないでほしい。

「ねぇ、カンパネラ。……私はちょっと寝るわ。疲れたから。でもすぐ起きるから、だから――側にいて」

「はい。もちろん」

 カンパネラは私の手を掴んでくれた。

「病める時も健やかなる時も、俺はアーさんと共にいます」

「ふふ、そういえば、結婚式を挙げてなかったわね。今は子育てで大変だと思うから、落ち着いたら式を挙げましょう。私と貴方とこの子たちの4人で」

「俺はいれてくれないのかい?」
 ホーエンハイムが言う。

「気が向いたらね」
 私はそう返した。

 こうして、私は600年間止まっていた自分の時を動かすことが出来た。
 これからも生きて、生きて、生き続けて、カンパネラと私は人生を謳歌して、寿命を迎える少し前に、はじめてキスをする。
 そうして、私達は一緒に余生を送り、笑って息を引き取る。

 それでも私と彼の間には、ちゃんと愛がある。

「カンパネラ」

「なんです?」

「愛してるわ」

「俺もです」

 彼が微笑んだ。私も微笑んだ。

 キスのないラブストーリーなんてお笑いものだけど。

 どうか、最期の言葉が幸せな言葉であるといい。

 楽しい人生だったとか。
 貴方に出会えてよかったとか。
 この人生に、万歳とか。

 貴方のために私の一生を捧げる。
 永い永い人生が、どうか幸福でありますように。

 こうして、王子様と魔女と呼ばれた女の子は結ばれて、ずっとずっと幸せに暮しましたとさ。

 めでたしめでたし。

 おしまい。
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みんなの感想(1件)

おゆう
2021.10.27 おゆう

17と18って、タイトル違うけど、内容が重複してる気がするんですけど(゚A゚;)。

2021.10.27 六花さくら

ご指摘ありがとうございます!ご指摘の通り、内容が重複しておりました!
こちらの確認ミスです。申し訳ございません!そして報告ありがとうございました!
修正完了しておりますので、また読んで頂けると嬉しいです!

解除

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