わからせ! もののけ生徒会の調教師1年生

水都 おこめ

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2章

09 案内

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教子 「わっ、わざわざ迎えに来てくれるなんて・・あはは、あは・・・」

アケミ「・・・・・・・」

アケミは無言のまま、先導するように教子の前を歩いている。




和美にアケミの来訪を告げられた時は、正直恐怖を感じた。

もうこの学校内には自分の逃げ場はないのか、と・・・




しかし、教子がクリッカーを構えながら恐る恐る廊下に出て、

アケミを見た時、その警戒心はすぐ雲散霧消してしまった。

アケミの"感情"が、教子の中にスッと入ってきたからだ。




”感情"を嗅ぎ分けることのできる力。

動物と四六時中触れ合う調教師が自然と身につけ始める、それこそ動物的な洞察力。

生き物の声や、匂いや、立ち振る舞いや、雰囲気で、その思考や体調までをも察する能力。

特にアケミは声を発さない分、ものすごくわかりやすい。



教子はアケミの長身を後ろから眺める。

ホントによくできた造形だ。

背丈は教子より2まわり、3まわりほど大きいのに、顔の大きさは同じくらいではないか。

そして胸の大きさは5まわり、6まわり・・・いや考えるのはやめとこう。




それよりも、教子がさっきから気になってること。


教子 「あの・・」

教子 「それ、スカーフの色、赤だよね・・?」

教子 「ということは、私たち同じ学年・・?アケミさん、も1年生なの・・?」

アケミ「・・・・・(コクリ)」

アケミがこっくりとうなずく。



・・・あっ、これ本当に一言も、なんにもしゃべらない感じなの?

一応、無視はしないみたいだけど。

アケミ「・・・・・」


しゃべらないならさっきどういう風に和美に私の事を伝えたのかしら?

アケミ「・・・・・」


それとも作者が楽をしてるのか。

ちゃんと書けよ。小説なんだから。





でも、新入生にこんな子いたかしら・・?

こんな超高校級、というかミス京王大学にも出ないような美人、女子校とはいえウワサになっててもおかしくないはずけれど・・今の今まで、教子は知らなかった。






階段を上がり、3階の角を曲がっても、依然としてアケミは無言のままだ。

なぜだろう、無言なのに気まずさは感じない。


いや、実は教子は、その理由がわかっている。

アケミと対面したときにすぐわかった感情。


そこには、少しの威圧も闘争心も感じなかった。

むしろ感じるのは・・・・・・・教子への申し訳なさ。





アケミは歩きながらたびたびチラッ、チラッ、と教子うしろを振り返る。

訓練された賢い盲導犬が飼い主を気遣いながら導くように。


156cmの教子よりも、15cmほど背が高いアケミ。

しかし、なぜかその視線はどこかしら上目遣いを感じさせる。


そう・・・アケミの正体は、「イヌ科のなにか」だ。

それも多分だけど犬の中でも・・・・・・・・・

でもどうして・・・・?









・・・・・いや、それにしても。

歩くたびに目の前のアケミのおっきなお尻がプリプリ揺れている。

大きいわりに形が上品で、上向きについていて、よく締まっている。

階段を上るときなぞ、目の前で悩ましげに揺れるので教子は思わず前かがみになって下から覗き込んでしまった。



・・・・あくまでその美貌の全容を解明するために。

いやらしい気持ちでなく。

いやホント。



しかし、もしも教子が中年サラリーマンで、横暴な上司と生意気な部下と仕事のストレスと営業ノルマと倦怠期の妻を抱えた状態で、ラッシュアワーの時間帯の通勤電車の中でこのようなものを見せびらかされたら、いくら社会的に肩書のある壮年男性と言えど、一時の劣情に身を任せその豊かな秘桃に下からの攻撃をくりだしてしまう事態になることはもはや避けることあたわず・・・・ってまたこの流れ?

私、そっちのケがあったのかしら?

確かに、今まで好きな男性ひとができたことはないけど。





動物愛と同性愛の二刀流選手としてメジャー初のMVPを受賞・・・

というドーデモよすぎるフレーズがチラリと教子の頭の中をかすめたとき。



ピタっ、といきなりアケミが歩を止めた。

生徒会室もくてきちに到着したのだ。

くるりんぱっ、と教子のほう、つまり後ろを振り返る。


アケミの視線が、さらに申し訳なさそうになっていた。






その時、教子に電流走る----------

さっきの疑問と、アケミの表情をみて、点と点が繋がり、一つの考えがまとまったのだ。







教子は急速に落ち着きを取り戻していた。



「・・・ふぅ」

一気にこわばっていた肩の力が抜けるのを覚える。

ついでにグリグリと首もまわしてほぐしておいた。




アケミ「・・・・・(チラ、チラ)」

教子 「・・・・・ふふっ、なに?」

教子 「・・・・・・大丈夫だよ。」

教子 「さ、中に入ろ?」

アケミ「・・・(コクリ)」




アケミが従順にうなずく。

ちょっと安心したような表情になっている。

そして、命令してもいないのに、腕を伸ばして、教子のためにドアを開けてくれた。

まったくよくできた忠犬だ。




それに比べ、あの会長には・・・・・

・・・・・・"お仕置き"が必要かもね。

心の中で不意に"調教師・教子"の部分が大きくなってくる。




生徒会室。

目の当たりにするとさすがに、昨日のトラウマがちょっぴり蘇ってくる。

昨日会長にたぐられたアンティークデスクの周りに、アケミ以外の4人いや4頭が固まっていた。

とりあえず、ドアの影から不意打ちはなさそう。




教子の顔は先ほどまでのおどおどした様子とは打って変わって、"調教師"の顔になっていた。

教子が気負いなくスッ、と中に入る。

アケミもその後に続く。


そして、古ぼけたドアがパタリ、と閉められた。

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