わからせ! もののけ生徒会の調教師1年生

水都 おこめ

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2章

24 使命

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その日の深夜。

紫苑とカオルと別れて、家に帰ったあと。

いつも通り、不思議ちゃんな父と無感動な母と挨拶をかわし、シャワーを浴びて、歯を磨いて、ベッドの中。



教子は、なぜか眠れないでいた。



今日、自分を襲った危機のせいではない。

あの事件は、自分でも不思議なくらい、ココロにわだかまって・・・・・・はいなかった。

少なくとも、いわゆるトラウマ、なんてモノにはなりそうもない。

まぁ、紫苑会長をはじめとした生徒会の強力な仲間の存在もあるからかもしれないが。



でも、そういうことではなく・・。

もっと・・・気にかかっていることがあったから。



この2,3日での生徒会のメンバーとのふれあい。

ハプニングも多いけど、本当に楽しい。

私がクリックの能力を持っていたから、他の人間とは違って受け入れてくれたんだろう。

それは間違いがない。

会うべくして、引き寄せあったような気もしてくる。



3日前の、初めて生徒会室に入った時の出来事を思い出す。

心の底にこびりついた人間に対する恐怖。

その裏返しである、敵意、憎悪。

それは、すごいものがあった。

でも、それさえキレイさっぱり流しきってしまえば・・・。



紫苑の、ボスとしての覚悟と威厳に満ちた気高い精神。

カオルの、優しさにあふれた知性。

こずえの持つ、底抜けに明るいエネルギー。

瑞穂の、しなやかで奥ゆかしくて美しい、優雅さ。

そして、アケミのどこまでも純粋で清らかなハート。



みんな、素晴らしいモノを、持っている。



それが、なにかがまかり間違って、ああいうコトになっていた。

やり直せる。

そして、そのために自分はこの生徒会にやってきたのだ。



ーーーーーー使命。



教子は、同世代の女子高生があまり使わなさそうな言葉を、思い浮かべた。

でも、この言葉以外にしっくりくるものはない。



私がこの世でなすべき使命、なんだ。

あの獣人もののけ達に、人間の素晴らしさを理解してもらう。

私が、この生徒会に入って、獣人もののけ達と出会ったのも。

神様がつかわした使命なんだろう。

そう、に違いない。

ちょっと前までの、灰色だった自分の人生が一気にキラキラと輝き始めた。

ワクワクする。

こんな気分生まれて初めてじゃなかろうか・・。



それに加えて、もうちょっと違う想い。



アケミ・・・。

アケミの事を思うと、ドキドキする。

今まで、こんな感情を抱いたことが無かった。

自分には、どことなく、父譲りの浮世離れした感じと、母譲りの他者への無関心さがあって・・

ずっとずっと動物が友達だった、ということも理由としてあると思うのだけれど。

親友と呼べるものを、作ったことが無かった。

恋人なんて、なおさら。

男に興味を抱いたことすらない。



私、女の子どうせいが好きだったのかな・・。



まぁ、それは、それで。

意外なほどにすんなりと受け入れてしまっている自分がいる。

今はジェンダーフリーの時代だから。

それに・・あんな美人なんだし。

アケミはもちろん。先輩たちみんな。

美人しかいない生徒会。

明日から、毎日一緒だ。

ありがとう、神様・・・。

生徒会のみんなと引き合わせてくれて・・・。

私は、生徒会のみんなの、力になりたい。

最高の、仲間になりたい。

きっと、なれる。










でも・・・。

カオルさんが能力を使って会長を探していた時。

昨日の、瑞穂さんとの電車内でのアクシデント。




"超"聴覚を持っているカオルさん。

もし、私が本気でクリックを仕込んだら・・カオルさんはどうなってしまうだろうか。

優しい、お母さんのようなカオルさん。

クリックでおかしくなってしまう姿を、見てみたい気がする。



瑞穂さん。

真面目で堅物、優等生そのものな瑞穂さん。

クリックを覚えさせたら、グチャグチャに乱れてしまうのではないだろうか。



紫苑会長なんて、1回のクリックであんな風になってしまっていた。

今日、あのタイミングでもう1度ヤってたら、どうなってただろうか・・。

こずえさんなんて、もっとチョロい・・・・だろう。



そして。

アケミ・・。

アケミはどうだろう。

アケミを私の・・私だけの、忠犬にする。

ペットにする。

クリックでいいなりにして、私の思い通りに・・・。



教子の脳裏に、2日前の、アケミに生徒会に案内された時の事が思い出された。

ぷりぷりとお尻を振りながら歩いてた、アケミ。

すごく、スタイルの良いアケミ。

並みのモデルじゃ歯が立たない。

グラビアアイドルも。



そんなアケミが、四つん這いになって、私の足元にすがりついて、おねだりする。

「くぅん・・・♥」

上目遣いで、クリックをください、ください、って。

その後ろには、同じように私にかしづく・・・・、生徒会のみんな。



紫苑会長、カオルさん、こずえさん、瑞穂さん。



みんな、それぞれ私のことをうるんだ瞳でみて、ご主人様ー!って感じで・・。

私は、足を組んで、イスに座っていて。

そんな美女たち5人を睥睨へいげいしながら・・・。

手で、クリッカーを、勿体もったいぶるようにもてあそぶ。



「・・・そんなに、欲しいの?」

「欲しかったら・・私の足を、お舐め」

「そう、一本、一本・・丁寧に」



それを聞いたみんなは、四つん這いのまま、はいはい・・・・しながら。

私に向かってきて、我先に・・・。



紫苑 「私が最初してもらうのよ!♥」

カオル「もう、我慢できないんです!♥」

こずえ「アタシにもくれよぉ!頼むよぉ!♥」

瑞穂 「お願いします!なんでもするからぁ!♥」

アケミ「わぅん!わぅん!♥」



・・・・。





・・・な、なに?

・・・いま、一体なにを考えていたの私は・・?



教子は、自分で自分が恐ろしくなった。

さっきまでの使命感に満ちた自分とは真逆の、悪魔のような思考。

自分のなかにある、サディスティックな感情。

美女の獣人たちを屈服させたいという欲望。



いけない。

いけない。

絶対だめ。



昨日の瑞穂の言葉。

「約束して」

「絶対に、この力を」

「簡単に、私たちを弄ぶように使わないって」

そう、約束したんだ。

私は誓ったのだ。

真剣に接していく。この獣人もののけたちに。

クリックの能力で、強引に支配するようなことは、絶対にしないと。



汚らしい欲望なら、抑えられる。

私は異常者のサディストではないから。

アケミとは、もちろん、親密になりたい。

でも、そんな手を使うのは、絶対に、イヤ。



でも・・・少し、不安には、なる。

もし、今日のハンバーガーショップでの紫苑会長みたいに、あっちから迫られたら。

獣人もののけ自身がクリックの快楽に夢中になり、尻尾をふって、縋りついて、おねだりしてきたら・・

私は耐えられるだろうか、その誘惑に・・。






教子は、ふと、思った。

人間は動物をペットにするが、それは合意の上なのだろうか?

確かに、優しくしてくれて、ご飯をくれて、可愛がってくれるご主人様に対して、動物が反抗する道理はない。

ペットの側からしてみれば、他に行き場所もない。

その家に買われた。そこで住むことを決められた。

そのような定めになってしまった。

ペットショップで生まれた時から、人間のペットになるよう・・そのように人間に造られた。

そして、引き取られた。

ペットに、拒否権はない。



じゃあ、それでは野生は‥?

野生の動物と、人間の付き合い方はどういう風になるべきなのだろう。



教子にはわからない。

考えても、問題が大きすぎて、答えにたどり着かない。

そして多分、仮に答えにたどり着いたとしても・・・実現できるものかどうかわからない。

なにもわからない。



・・・・寝よう。



教子は、明日からのタノシイ毎日だけに意識を集中することに決めて、眠る。

ガンバって、それ以外、何も考えずに、眠る・・。



(第2章・終)
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