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2章
23 帰路
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ムクダナルズでの夕食会は、一部でハプニングは勃発したものの、全体的にはつつがなく終わり、解散の時間になった。
あとは、"ポンキ"で買った荷物をどうするかだけ。
カオル「本当は今日中に持って帰りたかったけれど、もうこんな時間だから・・ロッカーに預けておいて、また明日取りに来ましょう」
教子 「そうですよね~!もう暗いですし、ひったくりとかに遭ったら大変ですよね~!」
紫苑 「あら、そんなこと許さないわよ。今日中に生徒会室に搬入しておいて」
教子 「ぎょっ!?マジですか?」
こ、この量の荷物を抱えて帰るの???
しかも学園の3階の生徒会室まで・・。
教子 「うぅ・・新人はつらいよ・・」
カオル「あの、会長・・教子ひとりだと大変だと思うので、私もいっしょに・・」
紫苑 「やーねぇ、冗談に決まってるじゃない」
紫苑 「さすがにそんな無理言うわけないでしょ・・・もうちょっと常識的に考えなさいな」
教子 「・・・・」
カオル「・・・・」
紫苑 「今夜のところは、ここに預けときましょ。どうせお金ならあるんだし。汚い金だけど」
部下にとっては精神的なストレスと不快感しか生まないパワハラでも、上司にとってみれば軽いノリのジョークなんだなぁ・・。
しかも、パワハラジョークとパワハラ突っ込みの2段構え。
こちらに一切の勝ち目を与えない。
生徒会活動は社会勉強になる。本当に。
来た時と同じように、ナンパ野郎どもを躱しつつ、駅までの道のりをゆく3人。
荷物はないので、足取りは軽やかだ。
教子 「お二人は、どちらに帰られるんですか?」
紫苑 「霜北」
カオル「私たち、いっしょに住んでるの」
教子 「ルームシェアですか?いいなー♪楽しそー♪」
紫苑 「そんなにいいモンじゃないわ・・カオルは私がいないと、ゴキブリの退治もN●Kの退治も出来ないんだもの。二人暮らしって結構大変よ」
カオル「・・・・」
教子 「・・・・」
多分それ以外の家事は、というか、基本生活のすべての雑事はカオルさんの担当なんだろうな・・。
カオルさんの精神的なタフネスは本当にすごい。
いくら会長やこずえさんの腕っぷしが強いと言っても、生徒会で一番強い人は、カオルさんだ。
なぜなら、人間の本当の強さは腕力なんかじゃなくて"どれだけ人にやさしく出来るか"なのだから・・。
私だったら、紫苑会長と1日同棲しただけで胃に穴をあけて、血反吐をまき散らしながらのたうち回って死んでいるだろう。
カオルさんがんばれ。超がんばれ。
・・・それにしても。
会長とカオルさん、一緒に住んでるんだ。
"長い付き合い"なんだろうということは、見るからに、わかる。
こずえさんと瑞穂さんの関係と同じように、この2人にも特別な絆を感じる。
心の底で、お互いを信頼し合っているんだろう。
会長とカオルさんのペア。
こずえさんと瑞穂さんのペア。
となると、アケミは・・?
アケミは、どうなんだろう。
教子 「・・そういえば、他の先輩方はどちらにお住まいなんですか?」
カオル「瑞穂とこずえは、九我山ね。学園からは、冥大前乗り換えかな」
紫苑 「いいところよね。支部谷も吉畳寺も近いし」
教子 「へー、いいですね♪」
教子 「・・・そういえば、アケミはどこに住んでるですか?」
できるだけ自然な流れで、同学年の生徒会員について教子が質問する。
・・・すると。
紫苑 「・・・」
カオル「・・・」
アケミに話題が及ぶと、なんだか紫苑とカオルの温度が少し下がった気がした。
紫苑 「・・・」
カオル「アケミは・・」
教子 「・・・?」
なぜか、ちょっと不穏な空気になる。
紫苑 「・・・」
カオル「・・・実は、アケミがどこに住んでるかは、私たちも知らないの」
教子 「えっ!?」
カオル「アケミは、あなたと同じように、この生徒会に入ったばかりなのよ」
教子 「は、入ったばかりというと・・私と同じように4月からですか・・?」
カオル「もうちょっと前ね・・今年の年明けくらいに・・・」
紫苑 「・・・いいでしょう、あんなバカ犬のことなんか・・」
教子 「むっ・・」
やはり、紫苑はアケミに対しては、かなり辛辣だ。
しかし、アケミの紫苑に対する、あの反抗的な態度を考えると、それも致し方ないのか・・
・・・いや、待てよ。
紫苑がこんな風に、高圧的な態度をとっているから、アケミが反発したのでは?
・・・いや、それもちょっと違う気がする。
アケミは、基本的に忠犬だ。
まあ、ネコ科の紫苑とイヌ科のアケミじゃ折り合いが悪そう、というのはわかる。
でも、そんな単純なことだろうか?
少なくとも紫苑会長は、群れのボスとしての、威厳と風格と覚悟と実力といった資質を、間違いなく持ち合わせている。
・・・性格はかなり難ありとはいえ。
それは、短い付き合いの教子でさえ、わかる。
そんな、ちゃんとしたリーダーに、アケミがあんな風にワケもなく反発するだろうか?
それに、この生徒会以外に、この世界にまったく頼れる人がいないのだとしたら・・。
群れに所属しているなら、ちゃんと下っ端としての役割をこなすだろう。
・・・考えられる理由が一つある。
紫苑のやっていた、こと。
新人イジメ。
・・・私も、あまり思い出したくはないけれど。
そのことに、アケミは反抗し、反発していたのではないだろうか・・。
紫苑のクツを持ってくる時も、とても不服そうにしていた。
そして、あの"不良のアケミ"は、偽りのアケミだと、今なら確信できる。
だって、根はあんなにいい子なんだもの。
しかし、今日の一連の出来事で、紫苑にも事情があることは、いや、あったのだということは、十分にわかる。
人間存在への、暗い気持ち、暗い過去。
むむむ・・・。
・・・ああ、それにしても、アケミに無性に会いたい。
まだ、知り合って、正味2日なのに。
まだ、別れて、数時間しか経ってないのに。
もう、アケミロスだ・・
教子 「ちなみに、先輩方とアケミの出会いって・・」
紫苑 「・・・着いたわ」
教子 「あ・・」
会話しながら考えごとをしていたら、あっという間に駅に到着してしまった。
紫苑 「それじゃね。気を付けて帰るのよ。また明日の放課後」
カオル「さようなら、教子。また明日ね」
教子 「あっ・・・はい!お疲れ様でした!失礼しまーす!」
見事に質問のタイミングを外されてしまった。
まあ、これからもまた、機会はたくさんあるのだから・・。
焦らない、焦らない。
教子は、新人らしく最後にペコっと一礼すると、先輩たちと別れて、家路についた。
あとは、"ポンキ"で買った荷物をどうするかだけ。
カオル「本当は今日中に持って帰りたかったけれど、もうこんな時間だから・・ロッカーに預けておいて、また明日取りに来ましょう」
教子 「そうですよね~!もう暗いですし、ひったくりとかに遭ったら大変ですよね~!」
紫苑 「あら、そんなこと許さないわよ。今日中に生徒会室に搬入しておいて」
教子 「ぎょっ!?マジですか?」
こ、この量の荷物を抱えて帰るの???
しかも学園の3階の生徒会室まで・・。
教子 「うぅ・・新人はつらいよ・・」
カオル「あの、会長・・教子ひとりだと大変だと思うので、私もいっしょに・・」
紫苑 「やーねぇ、冗談に決まってるじゃない」
紫苑 「さすがにそんな無理言うわけないでしょ・・・もうちょっと常識的に考えなさいな」
教子 「・・・・」
カオル「・・・・」
紫苑 「今夜のところは、ここに預けときましょ。どうせお金ならあるんだし。汚い金だけど」
部下にとっては精神的なストレスと不快感しか生まないパワハラでも、上司にとってみれば軽いノリのジョークなんだなぁ・・。
しかも、パワハラジョークとパワハラ突っ込みの2段構え。
こちらに一切の勝ち目を与えない。
生徒会活動は社会勉強になる。本当に。
来た時と同じように、ナンパ野郎どもを躱しつつ、駅までの道のりをゆく3人。
荷物はないので、足取りは軽やかだ。
教子 「お二人は、どちらに帰られるんですか?」
紫苑 「霜北」
カオル「私たち、いっしょに住んでるの」
教子 「ルームシェアですか?いいなー♪楽しそー♪」
紫苑 「そんなにいいモンじゃないわ・・カオルは私がいないと、ゴキブリの退治もN●Kの退治も出来ないんだもの。二人暮らしって結構大変よ」
カオル「・・・・」
教子 「・・・・」
多分それ以外の家事は、というか、基本生活のすべての雑事はカオルさんの担当なんだろうな・・。
カオルさんの精神的なタフネスは本当にすごい。
いくら会長やこずえさんの腕っぷしが強いと言っても、生徒会で一番強い人は、カオルさんだ。
なぜなら、人間の本当の強さは腕力なんかじゃなくて"どれだけ人にやさしく出来るか"なのだから・・。
私だったら、紫苑会長と1日同棲しただけで胃に穴をあけて、血反吐をまき散らしながらのたうち回って死んでいるだろう。
カオルさんがんばれ。超がんばれ。
・・・それにしても。
会長とカオルさん、一緒に住んでるんだ。
"長い付き合い"なんだろうということは、見るからに、わかる。
こずえさんと瑞穂さんの関係と同じように、この2人にも特別な絆を感じる。
心の底で、お互いを信頼し合っているんだろう。
会長とカオルさんのペア。
こずえさんと瑞穂さんのペア。
となると、アケミは・・?
アケミは、どうなんだろう。
教子 「・・そういえば、他の先輩方はどちらにお住まいなんですか?」
カオル「瑞穂とこずえは、九我山ね。学園からは、冥大前乗り換えかな」
紫苑 「いいところよね。支部谷も吉畳寺も近いし」
教子 「へー、いいですね♪」
教子 「・・・そういえば、アケミはどこに住んでるですか?」
できるだけ自然な流れで、同学年の生徒会員について教子が質問する。
・・・すると。
紫苑 「・・・」
カオル「・・・」
アケミに話題が及ぶと、なんだか紫苑とカオルの温度が少し下がった気がした。
紫苑 「・・・」
カオル「アケミは・・」
教子 「・・・?」
なぜか、ちょっと不穏な空気になる。
紫苑 「・・・」
カオル「・・・実は、アケミがどこに住んでるかは、私たちも知らないの」
教子 「えっ!?」
カオル「アケミは、あなたと同じように、この生徒会に入ったばかりなのよ」
教子 「は、入ったばかりというと・・私と同じように4月からですか・・?」
カオル「もうちょっと前ね・・今年の年明けくらいに・・・」
紫苑 「・・・いいでしょう、あんなバカ犬のことなんか・・」
教子 「むっ・・」
やはり、紫苑はアケミに対しては、かなり辛辣だ。
しかし、アケミの紫苑に対する、あの反抗的な態度を考えると、それも致し方ないのか・・
・・・いや、待てよ。
紫苑がこんな風に、高圧的な態度をとっているから、アケミが反発したのでは?
・・・いや、それもちょっと違う気がする。
アケミは、基本的に忠犬だ。
まあ、ネコ科の紫苑とイヌ科のアケミじゃ折り合いが悪そう、というのはわかる。
でも、そんな単純なことだろうか?
少なくとも紫苑会長は、群れのボスとしての、威厳と風格と覚悟と実力といった資質を、間違いなく持ち合わせている。
・・・性格はかなり難ありとはいえ。
それは、短い付き合いの教子でさえ、わかる。
そんな、ちゃんとしたリーダーに、アケミがあんな風にワケもなく反発するだろうか?
それに、この生徒会以外に、この世界にまったく頼れる人がいないのだとしたら・・。
群れに所属しているなら、ちゃんと下っ端としての役割をこなすだろう。
・・・考えられる理由が一つある。
紫苑のやっていた、こと。
新人イジメ。
・・・私も、あまり思い出したくはないけれど。
そのことに、アケミは反抗し、反発していたのではないだろうか・・。
紫苑のクツを持ってくる時も、とても不服そうにしていた。
そして、あの"不良のアケミ"は、偽りのアケミだと、今なら確信できる。
だって、根はあんなにいい子なんだもの。
しかし、今日の一連の出来事で、紫苑にも事情があることは、いや、あったのだということは、十分にわかる。
人間存在への、暗い気持ち、暗い過去。
むむむ・・・。
・・・ああ、それにしても、アケミに無性に会いたい。
まだ、知り合って、正味2日なのに。
まだ、別れて、数時間しか経ってないのに。
もう、アケミロスだ・・
教子 「ちなみに、先輩方とアケミの出会いって・・」
紫苑 「・・・着いたわ」
教子 「あ・・」
会話しながら考えごとをしていたら、あっという間に駅に到着してしまった。
紫苑 「それじゃね。気を付けて帰るのよ。また明日の放課後」
カオル「さようなら、教子。また明日ね」
教子 「あっ・・・はい!お疲れ様でした!失礼しまーす!」
見事に質問のタイミングを外されてしまった。
まあ、これからもまた、機会はたくさんあるのだから・・。
焦らない、焦らない。
教子は、新人らしく最後にペコっと一礼すると、先輩たちと別れて、家路についた。
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