姫をやめて魔王様のメイドになりまーす!

アクアマリン

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第一部 アリア編

祝勝会

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「なんで今さら? てゆーか、じい様たちがしびれを切らしたんだよね。ぜったい」

「……ですかね」

「嬉しくないの?」

今日も魔王様の部屋でランギルがソファに寝転びクッキーをつまんでいる。
ポロポロと落ちるくずをすかさずミニ箒であつめながらアリアはため息をついた。

「私踊れないんです」

「へ?」

「ワルツとか踊ったこと無いんです」

「えー。だって仮にもお姫様だったんでしょ?」

「でも必要なかったんで」

そうなのだ。

アリアはワルツはおろかダンス全般、未経験だ。尖塔に閉じ込められパーティーの類いとは無縁の人生だったからだ。

「じゃあおれが教えてあげよっか」

「い、いいんですか!?」

「いーよー。いっつもおいしいクッキーいただいてるしねっ」



そんなこんなで迎えた祝勝会は、晩餐会と舞踏会をかねた豪華なパーティーだった。

おそれ多くも魔王様の隣席を賜り、恐悦至極のアリアは食べ物がろくに喉を通らず、ただただ横に座る美男にまごついていた。

朝起こすとき以外はろくに接しずにきたため、アリアは緊張のあまり心臓が爆発するかと思った。

「どうした。食べぬのか」

「は、いえ…」

「口に合わぬか」

「は、いえ…」

「百獣の王は」

「ハ、イエナ……じゃなくて! なんですかいきなり」

頬杖をついてこちらを見やる魔王に「くっ…顔面良すぎっ」とアリアは見悶えた。
このままでは半年ともたずに今この場で悶絶死してしまう。

「そなたの行動はまったくもって不可解だな」

「?」

「踊らぬのか」

晩餐会場の横はそのまま舞踏会場とつながっている。
そちらをあごで示し、魔王がつまらなさそうに聞いてきた。

「あまり自信がなくて。それに踊ってくれる相手がおりません」

「それはイヤミか」

「は?」

「そなたを誘わぬ私への怨みつらみか」

「そういうわけでは……。魔王様こそ踊らないのですか?」

いつもまわりを取り囲んでいる心酔者たちが今日はどうしたことか遠巻きに見るだけで誰も近寄っては来ない。

不思議に思ってよくよく見てみると、魔王とアリアの席だけ見えないシールドで覆われていた。
誰も干渉してこないようにか「隠匿」の効果がつけられている。

( ぼうっとしすぎて全然気づかなかった… )

食事は静かにとりたい主義の魔王が張ったのだろう。
ここから出ない限りは静かに過ごせるのだ。静寂を好む魔王様らしいとアリアは思った。

「そなたがどうしてもと言うなら踊ってやらなくもないが」

「いえ、けっこうです」

せっかくの魔王様の平穏が乱されるのはしのびない。

( いつまでもお邪魔してはいけないわ )

そろそろお暇しますと席を立とうとしたときだった。

魔王の冷たい手がアリアの手首を掴んできた。



「そなたはいったい、何を考えている……?」





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