落ちこぼれ兵士の僕が女子高生の幽霊に助けてもらうのはダメですか?

エリーゼ

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国立魔法兵士学園編

第8話 強者 ツワモノ

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「待てって!————待てよ!龍平!」

 両手に爆炎を纏い、ハルクに向かって怒涛のラッシュを仕掛けるのは学園に悪名轟く男。鈴鹿龍平だった。

「何で待つ必要があんだよ!?テメェは俺の敵だろ?だったら俺がテメェを殺すのは至極当然の事だろうが」

「いやこれただの模擬試合だから!!お前の敵になった覚えないから!!」

 一方のハルクはというと鈴鹿と戦うことを放棄して全力逃亡を続けていた。それはもう相手に背中を向けながら無様な姿だ。

「おいハルク‥テメェいい加減にしろよ?あそこでラムは他クラスの連中とやりあってるってのによぉ。お前はなんだ?誰と戦うんだアァ?」

「少なくともお前が相手じゃなかったら誰とでも戦ってたっつの!!」

「————ッチ。じゃあもういい。死ねよ」

絶え間なく続けていた拳の乱打を収め、一息つくと同時に鈴鹿は右手を広げて前方に向かって逃走するハルク向かって突き出した。

「フレイムバズ————ッ!!」

「そこまでにしろ」

 その場に現れた黒髪の男に発射寸前で右手を掴み上げられると、鈴鹿の炎は天井へと放たれた。あたりを包む轟音が響き渡ると共に会場に悲鳴が湧き上がった。

「またテメェか‥‥邪魔するんじゃねぇよモブが」

「邪魔するに決まっている。自分の立場を弁えていないようだから話しておくが貴様は大将だ。大将がやられたらこの模擬試合は終わる。そしてそれは敗北を意味するのだ。貴様をそれを理解しているのか?」

「知らねぇよ。てかそれは俺が負けたらの話だろ?俺は負けねぇ」

「確かに貴様は他の訓練生に比べて秀でているかも知れない。ただ所詮井の中の蛙。貴様の強さが通用する場などクラスメイトの中だけの話だ」

 鈴鹿の気に触れたのか掴まれていた右手をそのまま払い上げると拘束を解いた。

「さっきから偉そうによぉ‥‥だったらいいぜ。この場を丸く収める簡単な方法を思いついた。要はなんだ?俺が後方布陣に引っ込んで大将らしく待機してろってテメェは言いたいんだろ?なら——やってみろよ!!」

鈴鹿は不意に左手を黒髪の男の前に向けるとそのまま火炎放射を解き放った。

「ク—————ッ!!!」

 男は瞬時に両腕を使って顔面の火傷を防ぐも、その代償に腕が焼けるというダメージを負う。

「貴様‥‥自分が何をしているのかわかっているのか?」

「わかってるさ。俺は前線に行って残りの残ったモブ共を蹴散らしたい。だがテメェはそんな俺を後ろに引っ込ませておきたいんだろ?意見が食い違ったんだ。なら無理矢理にでも俺をここで黙らせて後ろにでも縛ればいいだろうが」

「これは健全な模擬試合だ。大将であるお前が味方である兵士に攻撃してなんになる!?」

「あー、なるほどな。テメェは戦うのにも正当な理由がねぇとダメとかいうお堅い騎士気取りの兵士ってわけだ。いるんだよなぁ~たまによ。正義気取った偽善者やろうがよぉ。ならいいさ、テメェはそこでゴミらしくただ俺に殴られて死んどけよ」

 流石に鈴鹿の1発を体に直接叩き込まれるわけにはいかないため、黒髪の男は腰から木刀を引き抜き防御に徹する。それでも飛び散る火花や体にかかる負担が彼を間接的に弱らせる。

「そういやテメェ。今あっちで俺のクラスメイトを率いて大将やってるレオナって奴とよくくっついて学園内を歩いてるよなぁ?」

「はぁはぁはぁ———それが、どうした?」

「あのレオナって女。ペンドラゴン家の跡取り娘だろ?俺の祖先と一緒で英雄の傑族、カーネ・ペンドラゴンの末裔。てこたぁテメェは従者ってところか?」

「なるほど‥な。馬鹿でもそれくらいの知識はあるようだ。そう、あの方こそ真の英雄の血を引く者。貴様のような力の使い方も知らない出来損ないのとは格が違う」

 黒髪の男が嘲るような笑った瞬間、鈴鹿はこれまでとは比にならない火力で火炎をぶっ放す。今まで致命傷を避けていた防御では収まりきれず、全ての炎をその身に受ける。

「ガッッッハ————ッ」

「うるせぇ‥‥黙れ。剣もろくに振るえねぇカスが喚いてんじゃねぇぞ」

 地面で苦痛に悶絶している男に向かって歩き始めると右手の炎を収め、腰に携えた木刀を引き抜いた。そしてそのまま木刀を振り上げトドメの一撃を男の脇腹目掛けて振り下ろすと、男の意識は完全に削がれてその場に朽ちた。

「これでもう俺を止める奴はいねぇな。おいハルク!そんな影で見てねぇでよぉ。俺とやろうぜ?なぁ?」

「嘘だろ?味方まで‥‥やっぱ狂ってるあいつ」

 左手と右手で火炎を噴出し、瞬時にハルクとの距離を縮めると。左拳を握ってモーションを殴り殺すモーションを取った。

「ちょこまかちょこまかと、逃げ足だけは大した奴だったぜ?」

 その瞬間、膝から崩れ落ちて脱力しきったハルクの目の前に一筋の銀光が走る—————

「あ?」

ギリギリと耳障りに響く鋼鉄音は数秒間続くと、攻撃を受けていないそのことに気づいたハルクはハッと顔を上げた。

「立てる?」

「え?あ‥え?」

 動揺し切ったハルクを目横にレオナは木刀で鈴鹿の拳を払う。

「なんだぁ、兵士を守るのも大将の役目だってか?お姫さんよぉ」

「籠手なんて随分昔の武器を使うんだね」

「俺は剣より殴るほうが好きだからな。古典的だがどの武器よりも直接相手の弱点を抉ることができる」

 鈴鹿は一旦後方へ距離を取ると、右手には火炎を纏い始めた。1番確実に、そして最適な攻撃手段で相手と戦う。ただの戦闘狂でないことはレオナの目からも明らかだった。

「ここは危ないから離れたほうがいいよ。あそこに君と同じクラスメイトの子がいるから貴方もそこにいて」

それはこの場についていけず、憔悴しきったハルクに向かっての言葉だった。そしてハルクはおぼつかない動きでその場から離れる。

「テメェ俺の兵士も全員やってきたのかよ」

気づくと電子掲示板の表示は4-1に切り替わっておいた。

「1人は赤髪の子が倒したよ。あとの2人は私がやったけど‥‥もう1人の黒髪の子知らない?君より少し背の高い子なんだけど」

鈴鹿は言葉を発せず目線だけ後ろに寄せると、そこには無残に焦がされた1人の男が倒れていた。

「まさか君が?」

「あぁ、俺に戦うなと命じてくるもんだから黙らせてやった。まぁ当の本人は戦う意思なんてなかったらしくただのサンドバックだったけどなぁ」

レオナは一度目を閉じ、木刀を構えると鋭い眼差しで鈴鹿を睨むみつけた。

「怒ったか?それともテメェの従者がやられて悔しいか?」

「ううん。アルトが負けたのは彼の未熟さ。それに私がどうこう言う権利はない。でも、自分の従者が負けたならかたきは取らないとって思って」

 すると地面を踏み締め、戦闘態勢に入る。それを確認した鈴鹿は熱していた右手を構えてレオナと向き合った。


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