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〈三〉
しおりを挟む「キスは?」
「し、たんですか、前任の赤ずきんちゃんと、キス」
「――した」
ほんとに?
狼というにはだいぶ育ちのよさそうな美顔面に無邪気な笑みが浮かんでいる。
しかたない。敵軍の将校とキスするのは抵抗があるがあとでひんひんいわせるのだ、初めてくらいくれてやれ。
「え、と……、キス、してください……」
もじもじと見上げると、ルシアンの顔が近づいてきた。蔓薔薇館の女将が丁寧に梳りつやつやに巻いてくれた髪に大きな手が差し込まれる。抱き寄せられ、唇が重なった。熱くて湿っていてやわらかいものがシーラの唇を包む。
不思議だ。
母国では魔狼と恐れられるルシアンとのキスは気持ちよかった。しかしなかなか唇を離してくれないので窒息しそうだ。シーラを抱きこむがっしりした腕をばんばん叩くがびくともしない。
「…………っ」
やっと解放されてぐったりするシーラをベッドに横たえるとルシアンが覆い被さってきた。至近距離で男が笑う。
「赤ずきんちゃん。キスをするときはね、鼻で呼吸するんだよ」
「だだだだって、鼻息がかかっちゃったらはず、恥ずかしい、から」
「かわいいなあ」
くすくす笑う男の吐息が肌を擽る。
「俺の息がかかると厭か?」
「やじゃない、です……」
「だろ? 俺もきみの息で擽られるの、厭じゃないよ。むしろ嬉しい」
互いの鼻の先がふれあう。こんなに顔が近づいているのに、唇が届かない。それが惜しいようなもどかしい気持ちになる。
「さあ、もう一回キスしよう。今度は鼻で呼吸してごらん」
「ん、……」
唇が重なった。
「ふぁ……」
「上手に呼吸できているね」
口づけが深まる。唇の隙間からルシアンの舌が忍びこんできた。ただやわらかいところとやわらかいところとがくっついてもにゅもにゅしているだけなのに気持ちいい。それだけではない。体のどこかから切なさともどかしさがにじんできて、快楽が甘くふくらんできている。
「や、……っ、ん」
「厭か?」
唇が離れた。
これ以上快楽にさらされたら体がどうなるか、想像もつかない。だから厭だ。でも、キスが終わってしまうのはもっと厭だった。
「厭、じゃない、です……」
「よかった」
微笑むルシアンの目に剣呑な欲望の色が兆しているのが見える。シーラはベッドに押しつけられ、赤いケープだけを残し服を剥ぎ取られ裸になった体にかぶりつくように口づけられた。唇から首すじ、鎖骨。乱暴ではないが快楽を教え込むように執拗に乳首が舐めしゃぶられる。ルシアンの唇が胸から腹へ移っても、赤く勃ちあがった乳首は元に戻ろうとしない。じんじんと心臓の鼓動と同期するように疼いた。
「そこは、駄目、ぇ」
「ん」
やさしいのに容赦ない手つきでシーラの脚を開くとルシアンは秘所にかぶりついた。
「ひ、ぁあ、ああっ」
やめて。――やめないで。もっと欲しい。――もうこれ以上はいらない。
自分の体にこんな――支離滅裂な気持ちにさせる場所が存在するなんて、思いもしなかった。ルシアンの唇と舌で吸い出されもみくちゃにされた陰核から生じる感覚はあまりに鋭く、鮮やかだった。びしょびしょに濡れた秘所に一本、指が入ってくる。
苦しい。でももっと欲しい。
痛みとは違う。でも、痛みに似ている。
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