命の罪を数えて

オルタンシア

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2.遠い記憶(side 篤志)

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『気持ちわりぃな、お前』
やめてくれ。そうじゃないんだ。

『お前みたいなの誰が好きになるんだ』
もう、やめろ!

篤志は苦しかった。目を覚ますたびに感じる焦燥感と激しい動悸が。
あんなの自分じゃない。そう思いたかった。でも、言葉を紡ぐのは、前世の自分に間違いなかった。
幼稚園の頃から、数えきれないくらい同じ夢を見た。
いい加減、忘れられればいいのに。

「篤志ー、起きなさい。お祈りの時間に遅刻するわよ」
「……今起きる」

篤志は重たい体を引きずるようにして起き上がった。親父の言うことは碌に聞かないが、母親の言うことは聞かないといけないと思う。前世の罪はこうしてまとわりつく。

祈りの言葉を唱えながら篤志は欠伸をかみ殺した。
熱心に祈りの言葉を唱えるクラスメイト達を観察する。
正直、祈りに何かの力があるとも思えない。それに、善行を重ねたって自分の罪が償えるとも思っていない。まず、篤志自身がそんなこと許さないからだ。…この罪は一生背負うべきなんだ。

それはそうと、今日はあいつはいないのか。
目障りで仕方ないのに、いつも探してしまう。それほどあいつを妬んでいる自分が惨めだということも分かっているのに。
前世を覚えていなかったら、どれほど生きやすかっただろう。
何のしがらみもない世界は、どれほど息がしやすいだろう。

『篤志くん』
あいつに出会ったのは幼稚園の時だった。
俺はまだ前世のことなんて何一つ覚えていない幸せな時だった。
あいつは誰よりも体が小さくて、誰よりも怖がりで泣き虫だったけど、話しかけると楽しそうに笑った。俺はそれが誇らしくて、あいつのことをよく遊びに誘った。

俺が前世を思い出したとき、あいつは目から大粒の涙を流していた。
俺はそれがなぜかものすごく腹立たしくて、そこからあいつを避けるようになった。

そして、あいつが前世を思い出さないということを聞いて余計に怒りは募っていき、いつしか憎しみとなってしまった。

 あいつが悪くないことはわかっている。でも、あいつを前にすると心の奥が妬みで熱く燃え上がるんだ。どうしようもないほどに。
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