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第八話『旅の準備』
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明けて翌朝、日が昇る前に宿を出た俺達は近くの森にクレセントベアー狩りに出掛けた。
森を歩き回り、足跡や木の爪痕などの熊の痕跡を辿って、クレセントベアーを探し、見つけて、狩る――。
「うおぉぉ、マジかぁ」
結果、倒すことはできた。
しかし、持っていた剣が折れてしまった……。
見つけたクレセントベアーは体長2メートル程、黒い毛皮、胸元の白い三日月模様――ちょっとデカいツキノワグマだ。
熊は俺を見るなり立ち上がり、両前足を上げて威嚇してきた。
だが、怖さは感じず、ジッと見つめていたら向こうから焦れたように襲いかかって来た。
俺も剣を抜いて反撃――しかし毛皮や肉が分厚かったか、あと俺の剣の使い方が悪かったか……熊の首を刎ねようと付け根辺りを斬りつけたところ、首が3分の2ほど斬れたところでポッキリ逝った……。
武器無しになってしまった……どうしよう?
「じ、ジロウ殿、私の剣を……!」
「ん~……いや、いい。何とかする」
ゴードンが大剣を渡そうとしてきたが、遠慮した。
何となく、その剣も折れそうな気がする。
この体は力が強過ぎる様だ。
剣だと、振る側の力と斬られる側の抵抗を一身に受けるから、力任せに扱うと折れやすいのだろう。
剣は格好いいが技術が要る……何か別の武器を考えた方がいいかも知れない。
一先ず今は、素手で何とか倒す方向で頑張ってみよう。
「ところでゴードン。クレセントベアーって美味いのか?」
「いや、不味いな。肉が臭い上に筋張っていて、顎の弱い者では噛みきれない事もある」
「そんな不味い肉を依頼出して集めるのか?」
「不味いが、食えない事もないしな。それに毛皮や、肝が薬の材料になるので、そちらが主な理由なのだろう」
なるほど、肉はオマケか。
かと言ってグチャグチャにした熊を持って行ったらきっと二束三文で買い叩かれるに違いない。
となると、素手で倒すとしたら……。
「グワァァーー!!」
お、出た。
「ジロウ殿!」
「下がってろ、2人とも。俺がやる」
ゴードン達を制して、熊の前に進み出る。
熊は興奮状態なのか、鼻息荒く、牙と歯茎を剥き出しにして唸っている。
「グルルルゥゥ……!!」
睨み合いの内に考える。
打撃――ダメか、肝心の肝を傷つけたら値段が下がりそうだ。
投げ――多分ダメそう、結局叩きつけた時に衝撃で肉や肝が荒れそう。
ならば――!
「グゲェッ!?」
絞め技しかないよな!
素早く背後に回って両腕で熊の首を締め上げる――所謂チョークスリーパーってヤツだ!
「ふんっ!」
ゴキ
「カッ……」
鈍い音が腕から伝わり、直後、熊が崩れ落ちた。
プロレス技っていうのは、ガチでやればほぼ全てが殺人技なのだ。
「よし、これならいけるな」
「「…………」」
なんか視界の端に、青ざめてドン引き顔のゴードンとカサンドラが見えるが、気にしたら負けだ。
その後、日が傾き始めるまで森を探索し、最終的に6頭のクレセントベアーを狩ることに成功した――。
まあ、運ぶのは少し骨が折れたが……。
「急げ2人とも。門が閉まる前に運び込まないと、この臭い熊の死体と一緒に野宿だぞ」
「わ、分かっている……!」
「は、はいぃ……!」
運んだ内訳は俺が4頭、ゴードンが1頭、カサンドラが1頭――俺は両肩に1頭ずつ担ぎ、縄で繋いで2頭引き摺り、ゴードンは背に担ぎ、カサンドラは縄で繋いで引っ張って運んだ。
で、何とか日が暮れて門が閉まる前に、ギルドまでクレセントベアーを運び込む事に成功した。
仕留めた魔獣は、ギルド裏の解体場に持ち込んで解体職員に解体を頼む。
「く、クレセントベアーを6頭か。な、中々やるじゃないか。よ、よし!では預かろう!明日の昼過ぎにまた来てくれ。依頼者に確認して、報酬を渡す」
髭面の解体職員に熊を任せて、俺達は引き上げた。
俺の武器は、暫く無しでいく。
技術のない俺は、どうしても力任せに使う事になるから、大抵の武器は耐えられず折れてしまうか、そうでなくてもすぐに傷んで使えなくなってしまうだろう。
そうしてその都度買い直していたら不経済にも程がある。
ので、当面は徒手空拳で何とかする。
格闘技なんてやった事はないが、まあ、何とかする。
今日は他にも用事もなかったので、早々に宿に戻った。
体を拭いて晩酌――と、一階に降りたところで帰宅した守備隊の隊長殿に鉢合わせた。
「おお、ジロウじゃないか」
「これは隊長殿、お疲れ様です」
その場の流れで、晩酌を共にする事になった。
丁度いいので、俺はどこか稼げる街を知らないか隊長殿に尋ねてみた。
「守備隊で稼ぐのはどうだ?」
「隊長殿……」
「冗談だ、半分な」
半分は本気か~なんて突っ込まんぞ。
「そうだな、稼げるというと一番はやはり王都だろうな。仕事は山程あるはずだ」
王都か、国の中心なら街の規模も大きいだろうし、比例して人も多いから依頼も多いか。
「王都までは遠いですか?」
「ああ、幾つか村や都市を経由する事になる。ここから馬車を乗り継いで、半月というところか」
半月……結構掛かるな。
「王都までの途中に『マーセン』という都市がある。そこも冒険者で賑わっているぞ。何しろ『ダンジョン』があるからな」
「ダンジョン、ですか?」
ファンタジーの定番の単語が出た。
「ああ、王国の貴重な資源産出地の1つだ。国のあちこちから集まる冒険者を目当てに、商人や職人も集まっているから、物も豊富だ。国が管理下に置いて軍を常駐させているから治安も良い。おかげでマーセンは王都に次いで大きく発展したんだ」
ほほう、治安がいいのは良いな。
ダンジョンの詳細は追々調べるとして、稼げるというなら行かない手はない。
決めた、そのマーセンとやらに行こう。
「ありがとうございます、隊長殿」
「このくらい構わんさ」
隊長殿に礼を言い、残った料理と酒を腹に入れて部屋に引き上げ、ゴードン達と話し合う。
「隊長殿が言っていたマーセンに行く。明日、熊の報酬を受け取ったら旅支度だ。異論は?」
「ない」
「私もありません」
「よし」
話し合い、というほどでもなかったな。
パパッと決めて就寝した。
そして翌日――
「これがクレセントベアーの報酬だ」
昼頃、解体場に行くと昨日の解体職員のオッサンから金の入った袋を渡された。
中を確認……。
「……」ジロ
「……っ」フイ
このオヤジ、目ぇ逸らしやがって……。
袋の中身は、金貨2枚と銀貨6枚と銅貨3枚……満額の半分未満……。
「……」
「も、文句があるなら依頼主に言えよ!首がもげてるだとか、毛皮だの肉だのが傷んでるとか、難癖付けてきたのは向こうなんだ!これでも精一杯交渉したんだぞ!?」
「……はぁ、分かったよ。これでいい」
ガッカリだが、ゴネるのも面倒くさい。
不景気なんだろう、て事でサッサと諦める。
しかし、もうクレセントベアー狩りは請け負わない。
割に合わない。
剣が折れてから格闘で仕留めて経費0だが、今の俺に幾ら怪力があっても一度に運べる量には限りがある訳で……いや、そもそもゲームじゃないんだから、ちょっと歩けばエンカウント~なんてあり得ない。
だから、山程狩って儲け~とはならないと知った。
効率よく稼ぐには、掛かる労力や経費、それに必要時間なども考えなければいけない……。
稼ぐってのは、簡単じゃない。
「さて、じゃあ買い物行くぞ」
報酬を手に入れてギルドを出た俺達は、街の商店を巡る。
旅に必要な物は、ゴードンやカサンドラから意見を貰って買い揃える。
しかし、予算は限られているし、何よりやたらに買い込むのは悪手、荷物は少ないに越したことはない。
「何がいると思う?」
この質問に答えたのはゴードン。
「そうだな……木製のカップと皿、それに小さめで底のやや深い鉄鍋などあれば便利だ」
「ほう、その理由は?」
「カップと皿については軽さを優先、鍋は底が深めであれば、炒める他に湯を沸かすのにも使える。道中、活用できる」
「なるほど、採用」
という訳で人数分の木製カップと皿、そして手頃な大きさと深さの鉄鍋、ついでにフォークも買った。
「毛布とかいるかな?」
次いで答えたのはカサンドラ。
「有ってもいいかとは思いますが、マントで代用も可能です」
「それもそうだな」
荷物を減らす為、マントで代用する方向にする。
俺はもう持ってるから、2人の分を買った。
食事用の食器と鍋、寝袋代わりのマント……テントは嵩張るから止めておくとして、そしたら後は食料と水か。
あ、あと、あれば薬も買うか。
「日持ちのする食料というと、やっぱり干し肉とか?」
「そうだな。他にも干した魚や果物、そして固めに焼かれたパンが一般的だろう」
日本で言うところの乾パンに近いものかな?
しかし、俄知識だがこういう文明の発達していない世界の保存食は、保存期間を優先して、味は二の次っていうのがセオリーだ……。
干し肉や干し魚にしろ、乾パンにしろ、硬くて噛みきれないとか、塩っ辛くて不味いとか……なんとなく想像がつく。
ならば茹でてスープみたく――するには少なくない水が必要……。
旅において水は貴重品、食い物がなくても水さえあれば数日は命を保たせられる、とどこかで聞いた。
日本と違って道の途中にコンビニやスーパーがある訳もなく、また川や池があるかも分からない以上、水は節約するのが基本だろう。
魔法で出せたら話は別だが……あ、魔法か。
「ゴードン、カサンドラ、水を出す魔法ってあるか?」
「あるぞ」
「ありますね」
あるとは思ったが、確認が取れた。
「俺は魔法についてよく知らないんだが、他にどんなのがあるんだ?」
「そうだな。先ず基本の基本が『無属性魔法』、【身体強化魔法】もそのひとつだ。そこに土・水・風・火の『基本四属性魔法』が乗る。帝国軍の軍人は皆、基本四属性魔法までは最低限使える様、訓練されている。恐らく、王国軍も同じだろう。野営において基本四属性魔法は非常に有用だ。野営地の整地、水の確保、空気の浄化、火起こし、等々幅広く利用されている」
「はあ、なるほどな」
ゴードンの台詞から推察するに、この世界では魔法は便利な道具程度の扱いで、神聖視したりする風潮は無さそうだ。
それに俺がこの世界に来て初めて使った気配を探る魔法も、多分無属性魔法かな。
旅の間にでも、色々練習してみよう。
ともあれ、これなら水の心配はしなくて良さそうだ。
それに重い水を持ち歩かなくていいのも大きい。
なら、あとは食料と薬類を買えば終わりかな。
「2人とも、他に何か必要な物は思い付くか?」
「そうだな、あとは……」
その後もゴードン、カサンドラの2人から意見を貰いつつ、旅に必要そうな物を財布と相談しつつ買い込んでいった。
明日はいよいよ旅立ちだ。
ダンジョン、ちょっとワクワクするな。
森を歩き回り、足跡や木の爪痕などの熊の痕跡を辿って、クレセントベアーを探し、見つけて、狩る――。
「うおぉぉ、マジかぁ」
結果、倒すことはできた。
しかし、持っていた剣が折れてしまった……。
見つけたクレセントベアーは体長2メートル程、黒い毛皮、胸元の白い三日月模様――ちょっとデカいツキノワグマだ。
熊は俺を見るなり立ち上がり、両前足を上げて威嚇してきた。
だが、怖さは感じず、ジッと見つめていたら向こうから焦れたように襲いかかって来た。
俺も剣を抜いて反撃――しかし毛皮や肉が分厚かったか、あと俺の剣の使い方が悪かったか……熊の首を刎ねようと付け根辺りを斬りつけたところ、首が3分の2ほど斬れたところでポッキリ逝った……。
武器無しになってしまった……どうしよう?
「じ、ジロウ殿、私の剣を……!」
「ん~……いや、いい。何とかする」
ゴードンが大剣を渡そうとしてきたが、遠慮した。
何となく、その剣も折れそうな気がする。
この体は力が強過ぎる様だ。
剣だと、振る側の力と斬られる側の抵抗を一身に受けるから、力任せに扱うと折れやすいのだろう。
剣は格好いいが技術が要る……何か別の武器を考えた方がいいかも知れない。
一先ず今は、素手で何とか倒す方向で頑張ってみよう。
「ところでゴードン。クレセントベアーって美味いのか?」
「いや、不味いな。肉が臭い上に筋張っていて、顎の弱い者では噛みきれない事もある」
「そんな不味い肉を依頼出して集めるのか?」
「不味いが、食えない事もないしな。それに毛皮や、肝が薬の材料になるので、そちらが主な理由なのだろう」
なるほど、肉はオマケか。
かと言ってグチャグチャにした熊を持って行ったらきっと二束三文で買い叩かれるに違いない。
となると、素手で倒すとしたら……。
「グワァァーー!!」
お、出た。
「ジロウ殿!」
「下がってろ、2人とも。俺がやる」
ゴードン達を制して、熊の前に進み出る。
熊は興奮状態なのか、鼻息荒く、牙と歯茎を剥き出しにして唸っている。
「グルルルゥゥ……!!」
睨み合いの内に考える。
打撃――ダメか、肝心の肝を傷つけたら値段が下がりそうだ。
投げ――多分ダメそう、結局叩きつけた時に衝撃で肉や肝が荒れそう。
ならば――!
「グゲェッ!?」
絞め技しかないよな!
素早く背後に回って両腕で熊の首を締め上げる――所謂チョークスリーパーってヤツだ!
「ふんっ!」
ゴキ
「カッ……」
鈍い音が腕から伝わり、直後、熊が崩れ落ちた。
プロレス技っていうのは、ガチでやればほぼ全てが殺人技なのだ。
「よし、これならいけるな」
「「…………」」
なんか視界の端に、青ざめてドン引き顔のゴードンとカサンドラが見えるが、気にしたら負けだ。
その後、日が傾き始めるまで森を探索し、最終的に6頭のクレセントベアーを狩ることに成功した――。
まあ、運ぶのは少し骨が折れたが……。
「急げ2人とも。門が閉まる前に運び込まないと、この臭い熊の死体と一緒に野宿だぞ」
「わ、分かっている……!」
「は、はいぃ……!」
運んだ内訳は俺が4頭、ゴードンが1頭、カサンドラが1頭――俺は両肩に1頭ずつ担ぎ、縄で繋いで2頭引き摺り、ゴードンは背に担ぎ、カサンドラは縄で繋いで引っ張って運んだ。
で、何とか日が暮れて門が閉まる前に、ギルドまでクレセントベアーを運び込む事に成功した。
仕留めた魔獣は、ギルド裏の解体場に持ち込んで解体職員に解体を頼む。
「く、クレセントベアーを6頭か。な、中々やるじゃないか。よ、よし!では預かろう!明日の昼過ぎにまた来てくれ。依頼者に確認して、報酬を渡す」
髭面の解体職員に熊を任せて、俺達は引き上げた。
俺の武器は、暫く無しでいく。
技術のない俺は、どうしても力任せに使う事になるから、大抵の武器は耐えられず折れてしまうか、そうでなくてもすぐに傷んで使えなくなってしまうだろう。
そうしてその都度買い直していたら不経済にも程がある。
ので、当面は徒手空拳で何とかする。
格闘技なんてやった事はないが、まあ、何とかする。
今日は他にも用事もなかったので、早々に宿に戻った。
体を拭いて晩酌――と、一階に降りたところで帰宅した守備隊の隊長殿に鉢合わせた。
「おお、ジロウじゃないか」
「これは隊長殿、お疲れ様です」
その場の流れで、晩酌を共にする事になった。
丁度いいので、俺はどこか稼げる街を知らないか隊長殿に尋ねてみた。
「守備隊で稼ぐのはどうだ?」
「隊長殿……」
「冗談だ、半分な」
半分は本気か~なんて突っ込まんぞ。
「そうだな、稼げるというと一番はやはり王都だろうな。仕事は山程あるはずだ」
王都か、国の中心なら街の規模も大きいだろうし、比例して人も多いから依頼も多いか。
「王都までは遠いですか?」
「ああ、幾つか村や都市を経由する事になる。ここから馬車を乗り継いで、半月というところか」
半月……結構掛かるな。
「王都までの途中に『マーセン』という都市がある。そこも冒険者で賑わっているぞ。何しろ『ダンジョン』があるからな」
「ダンジョン、ですか?」
ファンタジーの定番の単語が出た。
「ああ、王国の貴重な資源産出地の1つだ。国のあちこちから集まる冒険者を目当てに、商人や職人も集まっているから、物も豊富だ。国が管理下に置いて軍を常駐させているから治安も良い。おかげでマーセンは王都に次いで大きく発展したんだ」
ほほう、治安がいいのは良いな。
ダンジョンの詳細は追々調べるとして、稼げるというなら行かない手はない。
決めた、そのマーセンとやらに行こう。
「ありがとうございます、隊長殿」
「このくらい構わんさ」
隊長殿に礼を言い、残った料理と酒を腹に入れて部屋に引き上げ、ゴードン達と話し合う。
「隊長殿が言っていたマーセンに行く。明日、熊の報酬を受け取ったら旅支度だ。異論は?」
「ない」
「私もありません」
「よし」
話し合い、というほどでもなかったな。
パパッと決めて就寝した。
そして翌日――
「これがクレセントベアーの報酬だ」
昼頃、解体場に行くと昨日の解体職員のオッサンから金の入った袋を渡された。
中を確認……。
「……」ジロ
「……っ」フイ
このオヤジ、目ぇ逸らしやがって……。
袋の中身は、金貨2枚と銀貨6枚と銅貨3枚……満額の半分未満……。
「……」
「も、文句があるなら依頼主に言えよ!首がもげてるだとか、毛皮だの肉だのが傷んでるとか、難癖付けてきたのは向こうなんだ!これでも精一杯交渉したんだぞ!?」
「……はぁ、分かったよ。これでいい」
ガッカリだが、ゴネるのも面倒くさい。
不景気なんだろう、て事でサッサと諦める。
しかし、もうクレセントベアー狩りは請け負わない。
割に合わない。
剣が折れてから格闘で仕留めて経費0だが、今の俺に幾ら怪力があっても一度に運べる量には限りがある訳で……いや、そもそもゲームじゃないんだから、ちょっと歩けばエンカウント~なんてあり得ない。
だから、山程狩って儲け~とはならないと知った。
効率よく稼ぐには、掛かる労力や経費、それに必要時間なども考えなければいけない……。
稼ぐってのは、簡単じゃない。
「さて、じゃあ買い物行くぞ」
報酬を手に入れてギルドを出た俺達は、街の商店を巡る。
旅に必要な物は、ゴードンやカサンドラから意見を貰って買い揃える。
しかし、予算は限られているし、何よりやたらに買い込むのは悪手、荷物は少ないに越したことはない。
「何がいると思う?」
この質問に答えたのはゴードン。
「そうだな……木製のカップと皿、それに小さめで底のやや深い鉄鍋などあれば便利だ」
「ほう、その理由は?」
「カップと皿については軽さを優先、鍋は底が深めであれば、炒める他に湯を沸かすのにも使える。道中、活用できる」
「なるほど、採用」
という訳で人数分の木製カップと皿、そして手頃な大きさと深さの鉄鍋、ついでにフォークも買った。
「毛布とかいるかな?」
次いで答えたのはカサンドラ。
「有ってもいいかとは思いますが、マントで代用も可能です」
「それもそうだな」
荷物を減らす為、マントで代用する方向にする。
俺はもう持ってるから、2人の分を買った。
食事用の食器と鍋、寝袋代わりのマント……テントは嵩張るから止めておくとして、そしたら後は食料と水か。
あ、あと、あれば薬も買うか。
「日持ちのする食料というと、やっぱり干し肉とか?」
「そうだな。他にも干した魚や果物、そして固めに焼かれたパンが一般的だろう」
日本で言うところの乾パンに近いものかな?
しかし、俄知識だがこういう文明の発達していない世界の保存食は、保存期間を優先して、味は二の次っていうのがセオリーだ……。
干し肉や干し魚にしろ、乾パンにしろ、硬くて噛みきれないとか、塩っ辛くて不味いとか……なんとなく想像がつく。
ならば茹でてスープみたく――するには少なくない水が必要……。
旅において水は貴重品、食い物がなくても水さえあれば数日は命を保たせられる、とどこかで聞いた。
日本と違って道の途中にコンビニやスーパーがある訳もなく、また川や池があるかも分からない以上、水は節約するのが基本だろう。
魔法で出せたら話は別だが……あ、魔法か。
「ゴードン、カサンドラ、水を出す魔法ってあるか?」
「あるぞ」
「ありますね」
あるとは思ったが、確認が取れた。
「俺は魔法についてよく知らないんだが、他にどんなのがあるんだ?」
「そうだな。先ず基本の基本が『無属性魔法』、【身体強化魔法】もそのひとつだ。そこに土・水・風・火の『基本四属性魔法』が乗る。帝国軍の軍人は皆、基本四属性魔法までは最低限使える様、訓練されている。恐らく、王国軍も同じだろう。野営において基本四属性魔法は非常に有用だ。野営地の整地、水の確保、空気の浄化、火起こし、等々幅広く利用されている」
「はあ、なるほどな」
ゴードンの台詞から推察するに、この世界では魔法は便利な道具程度の扱いで、神聖視したりする風潮は無さそうだ。
それに俺がこの世界に来て初めて使った気配を探る魔法も、多分無属性魔法かな。
旅の間にでも、色々練習してみよう。
ともあれ、これなら水の心配はしなくて良さそうだ。
それに重い水を持ち歩かなくていいのも大きい。
なら、あとは食料と薬類を買えば終わりかな。
「2人とも、他に何か必要な物は思い付くか?」
「そうだな、あとは……」
その後もゴードン、カサンドラの2人から意見を貰いつつ、旅に必要そうな物を財布と相談しつつ買い込んでいった。
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