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第九話『出発したらまた盗賊』
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「それでは、お世話になりました」
「はい、ご利用いただき、ありがとうございました。旅の無事をお祈りしています」
早朝、女将さんに見送られながら、宿を出る。
さあ、出発だ――目指すはダンジョン都市『マーセン』。
レーネックから東、通常なら馬車を乗り継ぎ、途中4つの村と町を経由して、およそ2週間前後、徒歩ならその2倍掛かる行程と聞いた。
ちなみに馬を走らせ、途中で交換すれば2・3日でも行けるらしい。
当然、馬を買う金なんか無いから、取れない選択肢だがな。
これが俺1人なら、チート脚力とチート体力で時間短縮も可能なんだが……いや、今更だ、止めよう。
歩きの旅も楽しいかも知れない。
という訳で、歩いて城門を抜け、東に向かって道を歩く。
実はゴードンから、ギルドで東に向かう誰某の護衛依頼を受けてはどうかと提案されたが、俺は旅は自分の気ままに行きたい派なので却下した。
費用削減より自由を優先したい、とも言う。
今回の道中は、引っ張っていく連中がいないから楽だ。
さて、どんな旅になるかな?
と思いながら道を歩いていたが、何に起こらないまま2日が過ぎ、最初の休憩地の村に辿り着いてしまった。
しまった、というと語弊があるかも知れないが、本当に平和で平穏、ただ景色を見ながら歩くだけの2日間だった。
精々、俺が基本四属性魔法を使える様になったぐらいだ。
これは思ったより簡単な旅になるかもな。
なんて思ったのがフラグだったとでもいうのか……。
「ぼ、冒険者の方!ど、どうか!お助けください!報酬はなんとかお支払いします!!どうか!」
村に入った途端、村人に見つけられて、あっという間に集まってきて、集団で頭を下げられた……。
外から見た時から、何やら妙な感じはしていた。
村が荒れているというか、建物や地面に破壊された跡があったのだ。
「あの、とりあえず頭を上げでもらえますか……一体、何があったんです?」
「実は、昨日、村が盗賊に襲われ……」
あー、そういう……。
進み出てきた白髪と顎髭の爺さん――村長さんに話を聞いてみると、昨日突然盗賊に襲撃され、村の家屋や畑をいくつか壊された。
村は徴兵によって若い男手がなく、年寄りと女子供だけで、荒くれ者の盗賊に抵抗できず、若い女と子供を全員、そして奴らが持てるだけの食料と金品を奪われてしまう。
そして奴らは、残りの食料と金品を明日――つまり今日取りに来るから、死にたくなければ村の前に集めておけと告げて去って行ったらしい。
「「…………」」
話を聞く内に沈痛な面持ちになるゴードンとカサンドラ。
多分、自分達が以前していた事を客観的に見て落ち込んでいるんだろう。
まあ、そこはあの二人の問題なので放っておくとして……。
これは、助けるしかないな。
見捨てると寝覚めが悪い。
それに、その盗賊どもが気に食わない。
強盗、暴行、破壊、人攫い……どれか一つでも不愉快だ。
是非とも捻り潰して、悲鳴を上げさせたい……ククク。
という訳で――
「分かりました。俺達が何とかしましょう」
「おお!あ、ありがとうございますっ!!」
「それで、盗賊は何人ぐらいいましたか?」
「多分20人ほどかと……数えられた訳ではないので、正確とは言えませんが……」
「なるほど……」
その倍の40人と見積もって……一応、全員がゴードンクラスの戦闘力があるとして……。
先ず、真正面から戦うなんて下策だな。
それなら、シンプルに罠を張るか。
「村長さん、少し手伝ってもらえますか?」
「わしらにできる事なら、何でも……!」
村長さん以下村人達の手を借りて、罠を準備する。
といってもそんな大層な仕掛けをする訳じゃない。
だから、準備はすぐに整う――。
「では、皆さんはしっかり隠れていてください」
「分かりました、よろしくお願いします……」
村人達は村長さんの家に集まって隠れていてもらう。
「ゴードン、カサンドラ、お前らも配置につけ」
「承知」
「分かりました」
ゴードン達は村の入り口が見渡せる民家の陰に待機――といっても、作戦が上手くいけば2人に仕事はない。
さて、俺も隠れよう。
ゴードン達とは別の家の陰に身を隠す。
そして、気配探知魔法を発動――範囲を広げ、村を中心に広範囲を探っていく。
すると、少し離れた場所から複数の人間の気配が近づいてくるのを感知した。
数は……1、2、3…………24。
村長さんの話に近い数、多分これが盗賊の気配だろう。
気配を捉えつつ、奴らが来るのを待つ……。
そして10分ぐらい待っていると、遂に盗賊の姿が見えた。
ゴードン達から教わった【遠見魔法】でズームアップ――人相の悪い男ばかりの集団、各自武装している。
なるほど、村長さん達じゃ抵抗できないはずだ。
さておき……他に盗賊らしき気配は、無い。
範囲を結構広げたが、村人達や盗賊ども以外に人間の気配は感知できない。
なら、略奪に来た盗賊はあれで全部と考えてよさそうだ。
様子を伺っていると、やがて奴らが村の入り口前までやって来た――。
「頭!あれ見てください!食糧が積んでありますぜ!」
盗賊の1人が、用意した食料を指差して叫ぶ。
すると、先頭にいたバンダナを巻いた長髪の男が口を開く。
「大人しく差し出す気になったか。面倒がなくていいぜ。おい、運べ」
「「「へい!」」」
下っ端らしき数名が動き出す。
バラける前に――魔法発動!
ボコッ!!
『ッ!?』
瞬間、盗賊どもの足元に大穴が開き、奴らは全員その中に落ちた。
『うわあぁぁぁ~~!!??』
ドサドサと、奴らが底に激突した音が聞こえてくる。
魔法でいきなり落とし穴作戦、成功――俺が土魔法を使い、奴らを一気に落とせるほどの大穴を、奴らが逃げられない速さで開けて一網打尽にする……実に単純な作戦だ。
「まさか、本当に出来てしまうとは……」
隠れていたゴードンが出てきて言う。
「こんな大穴を一瞬で……信じられない魔力と制御力だわ……!」
カサンドラも驚いている。
まあ、俺は神様からチートを貰ったからな――秘密だ。
さて、それでは盗賊どもをシメるとしようか。
先に、奴らが逃げられない様に穴の上を鉄格子で塞いでおく。
そして、奴らにこっちの姿を見せる。
すると、すぐに俺に気づいた奴らが怒声を上げてくる。
「おいコラァッ!こりゃあテメェの仕業か!?」
「だったらどうだって言うんだ?」
「舐めた真似しやがって!!」
「出しやがれ!」
「降りて来いッ!!」
「ブッ殺してやる!!」
ギャーギャーワーワー、喧しい事だ……。
口汚くて耳障りだ、イライラする……。
何も言わず水魔法で巨大な水球を作り、穴に落としてやる。
「「「ぎゃあああぁぁぁぁ!!??」」」
盗賊どもが悲鳴を上げる。
穴の中は半分ほど水没し、奴らは立ち泳ぎをしなければ息が出来なくなった。
もう一発同じ水球を用意する。
これを落としてやれば、奴らは完全に沈む……何せ鉄格子で上を塞いであるから逃げられない。
「少しは自分達の立場を理解したか?」
「「「…………!?」」」
俺を見上げ顔を青くした盗賊どもが黙り込む。
静かになったので、問いただしていくか。
「おい、盗賊の頭。質問に答えろ、攫った女の人達と子供達は無事か?」
「っ……ああ、無事だ」
盗賊の頭が答える。
「本当だな?乱暴な真似してねえだろうな?」
「ああ……!」
「ふぅん……」
盗賊が、攫った女に何もしてない……ねえ……。
そう簡単には信じられないな……。
どれ、カマでも掛けてみるか。
「へえ~?」
「っ、本当だ!本当に女達もガキ達も!傷つけちゃいないっ!」
「……そうかい。しかし、お前の子分の何人かが目を泳がせた気がしたが?」
「「!?」」
盗賊の頭が後ろを振り返ると、下っ端が2人目を逸らした……。
いや、おい、マジか……!?
「ッ!?お、お前ら……まさか……!?」
「ち、違うんだ頭!い、言い出たのはコイツでッ!」
「ふ、ふざけんじゃねえ!!てめえこそ乗り気だっただろうがッ!」
「うるせえ!俺はてめえみた――グゴボッ!?」
「ボゴガッ!?」
「もういい黙れ死ね」
カス2匹の頭を水で覆った――どんなに藻掻いても、絶対に顔から離れない水だ。
こいつらの言葉なんか一言たりとも聞きたくない。
捕まった女達と子供達のことがなければさっさと皆殺しにしているところだ……。
ああ、腹立つ……!
「……で?盗賊の頭……何か言いたい事はあるか?」
「……何も、ねえ」
沈痛な面持ちで目を瞑る盗賊の頭。
言い訳も謝罪もしないとは……盗賊にしては殊勝な態度だ。
勿論、だからって許しやしないが。
「……上がってこい」
土魔法で鉄格子を変形――盗賊の頭を円柱状に囲い、奴1人が上がれる様に鉄格子の上面を開ける。
ついでに上がって出て来れる様に、穴の側面に梯子状の凹凸を付けておく。
「え……な、何故……?」
「攫った女の人達と子供達を返してもらう。案内しろ……妙な気を起こしたら、そこのカス2匹とは比べ物にならんほどの地獄を見せるからな」
ちなみにそのカスどもは、目を剥いた壮絶な形相で水底に沈んでいる……。
「ッ……わかった」
盗賊の頭が鉄格子を登って来る。
「か、頭ぁ!?」
「お、俺も出してくれぇ~!」
また盗賊どもが騒ぎ始める。
出してたまるか――盗賊の頭が穴から這い上がってきたところで、上に待機させていた大水球を穴に落とす。
「ッ!?」
盗賊の頭が慌てて振り返る。
穴は完全に水没、鉄格子の下で残りの盗賊どもが口から泡を漏らしながら、必死の形相で藻掻いている。
「お、おい!?」
「案内役はお前1人いれば事足りる」
「そ、そんな……うっ」
俺は盗賊の頭の胸倉を掴み上げる。
「お前らも、こうやって暴力で他人から命や生きる糧を奪ってきたんだろうが。それが今、お前らに番が回ってきたんだよ」
それが因果応報というものだ。
俺は突き放す様に、胸倉を掴んでいた手を離す。
「さっさと攫った人達の所に案内しろ。その人達の状態によってはお前も覚悟しろよ……」
「っ……分かった」
俯きながら言う盗賊の頭。
その胸中に興味はない。
「……お前、もしや、ヴィンセントか?」
「っ!?」
ゴードンの言葉に、盗賊の頭が肩を振るわせ、顔を上げた。
「何故俺の名前をっ、まさか……貴方は、ゴードン卿!!」
「やはり!」
どうもゴードンと盗賊の頭は知り合いだった様だ。
「はい、ご利用いただき、ありがとうございました。旅の無事をお祈りしています」
早朝、女将さんに見送られながら、宿を出る。
さあ、出発だ――目指すはダンジョン都市『マーセン』。
レーネックから東、通常なら馬車を乗り継ぎ、途中4つの村と町を経由して、およそ2週間前後、徒歩ならその2倍掛かる行程と聞いた。
ちなみに馬を走らせ、途中で交換すれば2・3日でも行けるらしい。
当然、馬を買う金なんか無いから、取れない選択肢だがな。
これが俺1人なら、チート脚力とチート体力で時間短縮も可能なんだが……いや、今更だ、止めよう。
歩きの旅も楽しいかも知れない。
という訳で、歩いて城門を抜け、東に向かって道を歩く。
実はゴードンから、ギルドで東に向かう誰某の護衛依頼を受けてはどうかと提案されたが、俺は旅は自分の気ままに行きたい派なので却下した。
費用削減より自由を優先したい、とも言う。
今回の道中は、引っ張っていく連中がいないから楽だ。
さて、どんな旅になるかな?
と思いながら道を歩いていたが、何に起こらないまま2日が過ぎ、最初の休憩地の村に辿り着いてしまった。
しまった、というと語弊があるかも知れないが、本当に平和で平穏、ただ景色を見ながら歩くだけの2日間だった。
精々、俺が基本四属性魔法を使える様になったぐらいだ。
これは思ったより簡単な旅になるかもな。
なんて思ったのがフラグだったとでもいうのか……。
「ぼ、冒険者の方!ど、どうか!お助けください!報酬はなんとかお支払いします!!どうか!」
村に入った途端、村人に見つけられて、あっという間に集まってきて、集団で頭を下げられた……。
外から見た時から、何やら妙な感じはしていた。
村が荒れているというか、建物や地面に破壊された跡があったのだ。
「あの、とりあえず頭を上げでもらえますか……一体、何があったんです?」
「実は、昨日、村が盗賊に襲われ……」
あー、そういう……。
進み出てきた白髪と顎髭の爺さん――村長さんに話を聞いてみると、昨日突然盗賊に襲撃され、村の家屋や畑をいくつか壊された。
村は徴兵によって若い男手がなく、年寄りと女子供だけで、荒くれ者の盗賊に抵抗できず、若い女と子供を全員、そして奴らが持てるだけの食料と金品を奪われてしまう。
そして奴らは、残りの食料と金品を明日――つまり今日取りに来るから、死にたくなければ村の前に集めておけと告げて去って行ったらしい。
「「…………」」
話を聞く内に沈痛な面持ちになるゴードンとカサンドラ。
多分、自分達が以前していた事を客観的に見て落ち込んでいるんだろう。
まあ、そこはあの二人の問題なので放っておくとして……。
これは、助けるしかないな。
見捨てると寝覚めが悪い。
それに、その盗賊どもが気に食わない。
強盗、暴行、破壊、人攫い……どれか一つでも不愉快だ。
是非とも捻り潰して、悲鳴を上げさせたい……ククク。
という訳で――
「分かりました。俺達が何とかしましょう」
「おお!あ、ありがとうございますっ!!」
「それで、盗賊は何人ぐらいいましたか?」
「多分20人ほどかと……数えられた訳ではないので、正確とは言えませんが……」
「なるほど……」
その倍の40人と見積もって……一応、全員がゴードンクラスの戦闘力があるとして……。
先ず、真正面から戦うなんて下策だな。
それなら、シンプルに罠を張るか。
「村長さん、少し手伝ってもらえますか?」
「わしらにできる事なら、何でも……!」
村長さん以下村人達の手を借りて、罠を準備する。
といってもそんな大層な仕掛けをする訳じゃない。
だから、準備はすぐに整う――。
「では、皆さんはしっかり隠れていてください」
「分かりました、よろしくお願いします……」
村人達は村長さんの家に集まって隠れていてもらう。
「ゴードン、カサンドラ、お前らも配置につけ」
「承知」
「分かりました」
ゴードン達は村の入り口が見渡せる民家の陰に待機――といっても、作戦が上手くいけば2人に仕事はない。
さて、俺も隠れよう。
ゴードン達とは別の家の陰に身を隠す。
そして、気配探知魔法を発動――範囲を広げ、村を中心に広範囲を探っていく。
すると、少し離れた場所から複数の人間の気配が近づいてくるのを感知した。
数は……1、2、3…………24。
村長さんの話に近い数、多分これが盗賊の気配だろう。
気配を捉えつつ、奴らが来るのを待つ……。
そして10分ぐらい待っていると、遂に盗賊の姿が見えた。
ゴードン達から教わった【遠見魔法】でズームアップ――人相の悪い男ばかりの集団、各自武装している。
なるほど、村長さん達じゃ抵抗できないはずだ。
さておき……他に盗賊らしき気配は、無い。
範囲を結構広げたが、村人達や盗賊ども以外に人間の気配は感知できない。
なら、略奪に来た盗賊はあれで全部と考えてよさそうだ。
様子を伺っていると、やがて奴らが村の入り口前までやって来た――。
「頭!あれ見てください!食糧が積んでありますぜ!」
盗賊の1人が、用意した食料を指差して叫ぶ。
すると、先頭にいたバンダナを巻いた長髪の男が口を開く。
「大人しく差し出す気になったか。面倒がなくていいぜ。おい、運べ」
「「「へい!」」」
下っ端らしき数名が動き出す。
バラける前に――魔法発動!
ボコッ!!
『ッ!?』
瞬間、盗賊どもの足元に大穴が開き、奴らは全員その中に落ちた。
『うわあぁぁぁ~~!!??』
ドサドサと、奴らが底に激突した音が聞こえてくる。
魔法でいきなり落とし穴作戦、成功――俺が土魔法を使い、奴らを一気に落とせるほどの大穴を、奴らが逃げられない速さで開けて一網打尽にする……実に単純な作戦だ。
「まさか、本当に出来てしまうとは……」
隠れていたゴードンが出てきて言う。
「こんな大穴を一瞬で……信じられない魔力と制御力だわ……!」
カサンドラも驚いている。
まあ、俺は神様からチートを貰ったからな――秘密だ。
さて、それでは盗賊どもをシメるとしようか。
先に、奴らが逃げられない様に穴の上を鉄格子で塞いでおく。
そして、奴らにこっちの姿を見せる。
すると、すぐに俺に気づいた奴らが怒声を上げてくる。
「おいコラァッ!こりゃあテメェの仕業か!?」
「だったらどうだって言うんだ?」
「舐めた真似しやがって!!」
「出しやがれ!」
「降りて来いッ!!」
「ブッ殺してやる!!」
ギャーギャーワーワー、喧しい事だ……。
口汚くて耳障りだ、イライラする……。
何も言わず水魔法で巨大な水球を作り、穴に落としてやる。
「「「ぎゃあああぁぁぁぁ!!??」」」
盗賊どもが悲鳴を上げる。
穴の中は半分ほど水没し、奴らは立ち泳ぎをしなければ息が出来なくなった。
もう一発同じ水球を用意する。
これを落としてやれば、奴らは完全に沈む……何せ鉄格子で上を塞いであるから逃げられない。
「少しは自分達の立場を理解したか?」
「「「…………!?」」」
俺を見上げ顔を青くした盗賊どもが黙り込む。
静かになったので、問いただしていくか。
「おい、盗賊の頭。質問に答えろ、攫った女の人達と子供達は無事か?」
「っ……ああ、無事だ」
盗賊の頭が答える。
「本当だな?乱暴な真似してねえだろうな?」
「ああ……!」
「ふぅん……」
盗賊が、攫った女に何もしてない……ねえ……。
そう簡単には信じられないな……。
どれ、カマでも掛けてみるか。
「へえ~?」
「っ、本当だ!本当に女達もガキ達も!傷つけちゃいないっ!」
「……そうかい。しかし、お前の子分の何人かが目を泳がせた気がしたが?」
「「!?」」
盗賊の頭が後ろを振り返ると、下っ端が2人目を逸らした……。
いや、おい、マジか……!?
「ッ!?お、お前ら……まさか……!?」
「ち、違うんだ頭!い、言い出たのはコイツでッ!」
「ふ、ふざけんじゃねえ!!てめえこそ乗り気だっただろうがッ!」
「うるせえ!俺はてめえみた――グゴボッ!?」
「ボゴガッ!?」
「もういい黙れ死ね」
カス2匹の頭を水で覆った――どんなに藻掻いても、絶対に顔から離れない水だ。
こいつらの言葉なんか一言たりとも聞きたくない。
捕まった女達と子供達のことがなければさっさと皆殺しにしているところだ……。
ああ、腹立つ……!
「……で?盗賊の頭……何か言いたい事はあるか?」
「……何も、ねえ」
沈痛な面持ちで目を瞑る盗賊の頭。
言い訳も謝罪もしないとは……盗賊にしては殊勝な態度だ。
勿論、だからって許しやしないが。
「……上がってこい」
土魔法で鉄格子を変形――盗賊の頭を円柱状に囲い、奴1人が上がれる様に鉄格子の上面を開ける。
ついでに上がって出て来れる様に、穴の側面に梯子状の凹凸を付けておく。
「え……な、何故……?」
「攫った女の人達と子供達を返してもらう。案内しろ……妙な気を起こしたら、そこのカス2匹とは比べ物にならんほどの地獄を見せるからな」
ちなみにそのカスどもは、目を剥いた壮絶な形相で水底に沈んでいる……。
「ッ……わかった」
盗賊の頭が鉄格子を登って来る。
「か、頭ぁ!?」
「お、俺も出してくれぇ~!」
また盗賊どもが騒ぎ始める。
出してたまるか――盗賊の頭が穴から這い上がってきたところで、上に待機させていた大水球を穴に落とす。
「ッ!?」
盗賊の頭が慌てて振り返る。
穴は完全に水没、鉄格子の下で残りの盗賊どもが口から泡を漏らしながら、必死の形相で藻掻いている。
「お、おい!?」
「案内役はお前1人いれば事足りる」
「そ、そんな……うっ」
俺は盗賊の頭の胸倉を掴み上げる。
「お前らも、こうやって暴力で他人から命や生きる糧を奪ってきたんだろうが。それが今、お前らに番が回ってきたんだよ」
それが因果応報というものだ。
俺は突き放す様に、胸倉を掴んでいた手を離す。
「さっさと攫った人達の所に案内しろ。その人達の状態によってはお前も覚悟しろよ……」
「っ……分かった」
俯きながら言う盗賊の頭。
その胸中に興味はない。
「……お前、もしや、ヴィンセントか?」
「っ!?」
ゴードンの言葉に、盗賊の頭が肩を振るわせ、顔を上げた。
「何故俺の名前をっ、まさか……貴方は、ゴードン卿!!」
「やはり!」
どうもゴードンと盗賊の頭は知り合いだった様だ。
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