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真実

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秋も終わりを告げ、次第に寒さが厳しくなって来た。
去年の今頃ちょうど、梨沙に弁当を貰いそれがきっかけで付き合い始めた。短い間だったが、利久にとってはかけがえのない思い出だ。

二人の記念日、つまりクリスマスイブに利久の携帯に知らない番号から電話があった。

利久「もしもし。」

利久は仕事の電話かなと思い応答する。

「もしもし、山下です。」

山下?梨沙が好きになった利久の取引先の社長からだった。

利久「お世話になっております。〇〇会社の和田です。先程は名乗らず失礼いたしました。」

山下「いやいや、、実は少し和田君と話がしたくてね。時間は取らせないから、今からうちの会社に来てくれないか?」

利久は嫌な予感がした。しかし、仕事の件もあるので了承し、会社には外出届けを出し山下の会社に向かった。

利久「恐れ入ります。〇〇会社の和田と申します。山下社長とアポイントメントがあり、伺いました。」

利久は受付に伝えると受付から

受付「伺っております。こちらにどうぞ。」

受付についていくと応接室に通されて、すでに山下社長は座って待っていた。

利久「遅れてしまい申し訳ありません。」

山下「いやいいんだ。どうぞ掛けてください。」

座るよう促され素直に座る。受付はお茶を用意し、退出をした。

山下「和田君、こうして話すのは初めてだね。」

利久「そうですね。ちなみにご用件は何でしょうか?」

利久は一刻も早く退出したかった。それは、少なからず、梨沙を誑かし、自分の人生を狂わせた張本人が目の前にいるのだ。
本来なら殴り飛ばしてやりたいくらいだった。

山下「うん。率直いう。すまなかった。」

山下は言い終わるや否や土下座をして来た。

利久「梨沙、、の件ですか、、」

利久は冷たく凍りつくような声でそれだけ伝えた。

山下「そうだ。ほんとは言い訳にしか聞こえないから伝えるべきか迷ったんだが、、聞いてくれ」

利久「梨沙はあなたを選んだ。私ではなく、あなたを、それ以外にあるんですか?」

山下のこの後言うことを、利久は大体勘ぐっていた。しかし、山下の言葉は利久の考えとは全く違っていた。

山下「実は梨沙さんに頼まれて行ったことなんだ。」

利久の頭は混乱した。なぜ?なんのために?としかし山下続けて話した。

山下「梨沙さんは今大病戦っている。エイズだ。」

エイズ。利久の中で何かが繋がった。それは梨沙の言動がおかしくなったあの日、いや、それ以前の言動から不可解な点はあったからだ。

山下「実は和田先生はうちの顧問弁護士でな。和田先生から相談があったんだ。」

山下「梨沙さんの生い立ちはもちろん知ってるよな。梨沙さんはそんな環境の中、生きるために、13から数え切れないほどの行為無理矢理させられた。親の遊び金の為に。その中の誰かがエイズを持っていたのだろう。エイズは潜伏期間が長い上に症状がほとんどない。今になって母親と不倫相手がエイズかかった事を数ヶ月前に和田先生に報告して来たんだそうだ。同情をさせてあわよくば金を毟り取ろうとしたんだろう。そして、盆前に梨沙さんも一応検査させたら、、」

利久「かん、、せんしてい、、た」

山下「そうだ。梨沙さんはその前から君との子を望んでいたが、トラウマで行為が怖くてまだ出来ないでいた。それが高じて君には感染しなかったんだが、これから君との子を望めない。君を悲しませたくないと、和田先生に言って、好きな人が出来たから分かれてほしいと言うことにした。その際、ある程度の金と権力を持ってる人になびいたとなれば、梨沙さんは軽蔑され捨てて貰えると考えた。そこで、先生に一芝居打ってくれと頼まれたんだ。」

山下「君には謝っても謝り切れないが、どうしても梨沙さんのそばにいて欲しい。梨沙さんはこれで良かったと言っているが、入院先で毎日1人いつ来るかわからない死と孤独に戦っている。あんな優しい子を1人にしちゃダメだ。頼む。」

山下は終始土下座で話を進めていた。

山下「和田君。梨沙さんは君を一度も裏切ったりなどしていない。そんな健気な梨沙さんを見ていたら私も、梨沙さんを助けたいと思い今は最新の設備が整っている亀田病院に転院してもらった。そこの先生の話では、エイズは非常に完治が難しい。だけど決して不治の病ではない。適切な処置と処方をすれば何十年も生きられるんだ。どうか、どうか、梨沙さんと、、一緒に、、、歩んでくれ。」

山下が最後力なく発した言葉。それはつまり、利久に子供とこれからの性生活を諦めそれでも一緒にいてくれと言う意味も込めてだ。

利久「山下社長。ありがとうございます。そっか、梨沙は僕を、、裏切って、、な、いんですね。まだ、僕は、、梨沙を愛して、言い、、んですね。」

利久は涙をこらえながら、自分頬を自ら拳で殴った。

山下「そうだ。君は梨沙さんを愛していいんだ。金銭的な不安は任せろ。だから一刻も早く梨沙さんのそばに。」

利久「はい。ありがとうございます。」

そう言うなり、利久は立ち上がり動き出した。しかし、どうしても気になることがあり去り際、山下に質問した。

利久「なぜ、山下社長はそこまで梨沙のこと庇ってくれたんですか?」

当然の疑問だ。見ず知らずの、なんの関係もない人間に、最新医療の行き届いた病院に転院、高額な医療費まで負担してなんのメリットあるのだろうか。

山下「、、私も昔、君と同じことがあってね。僕は感染しなかったんだが、将来を誓った彼女は旅立った。こんな悲劇はもう二度とごめんだ。俺の周りで困ってる人は必ず助けると決めたんだ。もちろん全員ではないが、梨沙さんは必ず助けたい。」

最後につけた言葉おそらく梨沙の実母と不倫相手のことだろう。

利久「本当にありがうございます。」

利久は心から感謝した。そしてもう一つ聞きたいことがあったが、それは後に聞くとして今はとにかく、梨沙に会いたい。梨沙を抱きしめたいと言う一心で、タクシーを捕まえ病院まで急いだ。
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