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第一章 『誰が為の異世界』
15 『炎を司る魔法使い』
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‹ごめん!本当にごめん!アイナがこの子たちに言い聞かせなかったらこんなことに……›
木人に吹き飛ばされた私。
そのおかげというべきか気が付くと彼女に膝枕をしてもらい介抱されていた。
木人が殴ってくるなんて、流石はファンタジー世界。常識は捨てるべきか……。
とりあえず謝り倒しているアイナに笑いかけ、大丈夫であることを伝える。
アイナはまだ申し訳なそうに口をもにゅもにゅしているが、私の意を汲み謝ることをやめてくれた。
それにしてもあの吹っ飛び具合といい、打ちどころが良かったとは言い難かたいはずなのに不思議と痛みが残っていなかった。
手足もちゃんと動く。
まさか生まれて初めて経験した膝枕に異世界では回復効果が!?
そんな馬鹿げたことを考えながら私は横たわりつつも首を動かして、不思議そうに身体を眺める。
そんな私の気持ちを察してくれたアイナは手に持っていた草について解説してくれた。
‹これは薬草よ、 これであなたの傷を治療したの›
それはRPGによく出てくるような回復効果を持つ薬草だった。
こんなゲームのゲの字も無い異世界でも回復手段として役に立つとは、薬草先輩さすがである。
頭上を照らす太陽の傾き具合からして、あれからそんなに時間が経過していないのにこの効力とは。
いつか必ず役に立つ時が訪れると被異世界召喚者の勘が言っている。
今度詳しく聞いてみよう。
‹もう痛くない? 大丈夫?›
「……うん、ありが、とう」
習いたての感謝の言葉を使いつつ、名残惜しい膝枕から脱出する。
立ち上がる際に軽い立ちくらみは覚えたものの、健康状態は木人にフルスイングされる前となんら変化はなかった。
薬草ってすごい。
‹みんな木人は危ないってちゃんと説明しないと駄目でしょ! イブキに謝りなさい›
事の大きさ故、流石に反省したのか子供たちは口々にごめんなさいと告げる。
そんな様子の子供達一人一人と握手で仲直りしていく。
二十五歳ともなれば子供との接し方もお手の物である。
まぁ流石に半身不随を患いでもしていたらこの態度も多少は変わっていたかもしれないけど。
仲直りの時間も無事に終え、アイナは私をここに呼んだ理由を話す。
‹イブキってさ、この大陸の記憶を失ってるでしょ?›
「うん」
アイナ達集落の人間の私に対しての認識は記憶を失った人間という形式を取っている。
勿論本当はこの世界のどこでもない別の世界から召喚されたのだが、そう伝える手段を持ち合わせていない身の上の人間にとっては、そう思ってくれた方が幸いであった。
それにたとえ言葉が通じていたとしても上手く説明できる自信が無い。
自分自身を彼女たちの立場と置き換えてもそれははっきり理解できた。
だって仮に私が住んでたあの世界で、ある日突然出会った人間が真面目な口調で真剣に異世界から来たなどと仰るのであれば、それはまぁ電波だなぁとか病院を紹介したりするなどの措置を取るだろう。
実際のところ、その辺の異世界に来たことを信じさせる説明はどうすれば良いのでしょうかね。
是非に教えて頂きたいものである。
そんなくだらないことを考えている内にアイナは続きを述べる。
‹もっとこう強い印象を与えることが出来れば何か思い出すかなーって思って……あ!違うのよ!?また木人に殴られたりする訳じゃなくてね!?›
アイナは私の血の気が引いた顔を見て慌てて訂正している。
もう痛いのは勘弁して欲しいです。ええ本当に。
‹ごほん! だからもっと凄いのをあなたに見せてあげようかなぁって思ってね›
よく見ると彼女の両手には今まで見た事の無いような赤い結晶のようなものが握られている。
あれは一体……?
そんな私の疑問を払拭するように彼女は高らかに呪文のようなものを唱える。
‹我の名前はアイナ! 全ての者へ平等に降り注ぐ汝の力をここに借りんとする!›
‹弱き我らの光明となり、強き者を燃やし滅ぼさんとする憧憬の姿をここに想像せり!›
詠唱を唱え始めるにつれ赤い結晶は輝きを増していく。
結晶核から溢れ出る力の奔流はやがて、その標的を見定め――
‹無何有の理に従い、その力は現出する――いでよっ!ガベルっ!›
その瞬間――
木人は燃え盛る炎に包まれた。
その熱気は離れていても流れる風を伝い肌に直接浴びせられる。
その影響を受け、私はようやくこれが現実のものであると認識した。
‹すごーい!!›
‹アイナ姉ちゃんの魔法詠唱はやっぱり一味違うですよ!›
‹俺も早く使いてーなー›
「かっけええええええええええ!!」
二十五歳男性、子供に混じって大はしゃぎである。
しかし待って欲しい。世の男子諸君ならこのはしゃぎよう理解できるはずである!
ファンタジーの王道!これぞファンタジー!
生で魔法が使える世界に来て嬉しくない人間がいようか!いやいない!!
まさかこの異世界に魔法が存在していたなんて!来てよかった!
私がよく知る詠唱よりもこちらの世界の詠唱はかなり長い。
しかしそれがかえって剣と魔法の世界に自身がいることを強く実感できるきっかけになった。
私のかつてないほどのテンションの上りように成功を確信したのか。
もじもじとしながら頬を赤く染め照れた様子を見せるアイナ。可愛いです。
発動した炎は次第に勢いを弱め、炎が燃え尽きる頃には灰が残るのみとなった。
‹あ、ありがとう……›
そんな乙女な様子のアイナを茶化す子供たち。また怒られるのに懲りないなぁ。
‹と、ともかくこれが魔法と呼ばれる力なの、私たちはこの結晶核と呼ばれる特別な石を媒体として圧倒的な自然現象を操り起こすことが出来るの、そして――›
まだちょっと頬が赤いアイナ先生の魔法講座は、属性について触れる。
‹私たち無何有の民が扱うことが出来る魔法の属性は、ずばり炎! 古来より人が友として生活の一部を任せている火を様々な方法で扱うことが可能になるの›
ふんすと自身満々に答えるアイナ先生の講義を熱心に受講するイブキ受講生。
火の魔法はやっぱり定番だと思う。
私は以前から火の魔法が一番好きだった。
見た目もカッコイイことさることながら、なんといってもその応用力は目を瞠るものがある。
木人相手に使用した時みたいに相手を炎上させ苦しめる使い方や、炎が持つ持続力を活かしたである炎の壁の生成、また先程のアイナの言葉にもあるように夜間を照らす光源にもなるし食べ物を燃やすことも出来る。
実際のところ、この異世界で私が考えるような使い方が出来るかどうかはまだ分からない。
しかしそういった工夫次第で使用方法が多岐に渡るとなると考え深いものだ。
ただ、一つの属性しか使えないのはちょっと残念だけど。
選り好みしても仕方ない。
それに、一つの属性を極める魔法使いというのもちょっと憧れるし。
‹ちなみに噂だとミアスは風を、モーデは雷を扱うことが出来るそうです›
雷って……めちゃくちゃ強そうじゃないか。
きっと一撃は強いが連発出来ないみたいな制約があるに違いない。
そうに決まってる。
じゃないと鞍替えしたくなっちゃうじゃないか……。
敵国だけど……。
風もなかなか応用力が効く魔法だと思うので、いつかこの目で見てみたいものである。
敵国……。
‹そして、そんなとっても便利な魔法にも弱点が存在します›
一人もやもやしている私を余所に、アイナは魔法使いとして生きようと思っていた私にとって聞き逃せない重要なことを語りだす。
‹イブキも感じたかもしれないけど魔法を発動する際には呪文を詠唱する必要があるの›
‹この呪文って炎を出すような同じことをしているように見えても、人によって結構違うんだよね、ただ呪文の単語は違っても呪文の長さは大体おんなじものになるの、だから実際の魔物との戦闘の場合、複数で戦う時ならまだしも一対一の戦いだと、とってもも不向きなの›
つまり詠唱時間がネックになるということか。
確かに先程の詠唱文は言いまわしなんかはかっこよかったけど、アイナが言うようにかなりの長文だ。
いつぞのRPGのように敵がこちらの攻撃を待ってくれたりなんかしない。
早さと精密さが物を言う戦いにおいて、確かにこれは致命的な問題だ。
‹……と、魔法については大体こんな感じです、どう? 何か思い出した?›
貴重な魔法講義を終え、アイナは心配そうな表情で問い掛ける。
だが残念なことに記憶が戻ることもないし、記憶を失ったりはしていない。
いつかきちんとした形で伝えるようにしないと。
‹そっか……うーん、じゃあさこれ! 結晶核! もしかしたら何か思い出すかもしれないし›
首を横に振る私を見てもアイナは諦めずに次の手を考えてくれている。
その健気な姿から本当に私のことを気遣ってくれているのがとても嬉しかった。
そんな彼女の好意を無下にすることなど出来るわけもなく、私は結晶核を受け取る。
「(思ったよりは、軽いかな)」
見た目は普通で軽い。そんな印象しか抱けないほどの何の変哲もない鉱石のような物体。
それでもこうして魔法の触媒を持っていると考えるとどうしてもテンションが上がるのは避けられない。
‹どう? どう!?›
「うーん……」
こ、答えづらい……。
流石にここまで期待させている中で、失望させるのは悪い気もしてきた……。
しかしすぐばれる嘘をついても仕方ないし……。
追い詰められた私は苦肉の策として詠唱をでっちあげる
えーとなんだったっけな……全ての者へ平等に降り注ぐーとかだった気もするけど……。
私は日本語で件の詠唱呪文を唱える。
「わ、我の名前はイブキ。全ての者へ平等に降り注ぐ炎よ!答えよ!」
いざ唱えてみると結構恥ずかしいだとか、日本語で唱えてしまっても意味ないんじゃないか、炎が降り注いだらまずいだろうなどといったような思考が止めどなく溢れだすものの、それを遮断。
目をギュッと瞑り、先程見た景色、呪文を思い浮かべることに意識を集中する。
「強き者を燃やし滅ぼさ――え?」
何かがおかしいと感じた私は思わず詠唱を中断する。
最初に抱いた違和感は頬を焦がすような熱だ。
それはまるでアイナが発現した魔法と同じ熱量、匂い。
周囲に動揺が広がる声、音。
そして胸の内から湧き上がるこの興奮!!
「発動した……!」
‹イブキ……あなたって一体……?›
恐る恐る目を開けた私の視界には燃え盛る木人が映り込んでいた。
みんな信じられないものを見たかのような表情で固まっている。
詠唱時間の短縮……。
じゃ、弱点克服しちゃいました……。
木人に吹き飛ばされた私。
そのおかげというべきか気が付くと彼女に膝枕をしてもらい介抱されていた。
木人が殴ってくるなんて、流石はファンタジー世界。常識は捨てるべきか……。
とりあえず謝り倒しているアイナに笑いかけ、大丈夫であることを伝える。
アイナはまだ申し訳なそうに口をもにゅもにゅしているが、私の意を汲み謝ることをやめてくれた。
それにしてもあの吹っ飛び具合といい、打ちどころが良かったとは言い難かたいはずなのに不思議と痛みが残っていなかった。
手足もちゃんと動く。
まさか生まれて初めて経験した膝枕に異世界では回復効果が!?
そんな馬鹿げたことを考えながら私は横たわりつつも首を動かして、不思議そうに身体を眺める。
そんな私の気持ちを察してくれたアイナは手に持っていた草について解説してくれた。
‹これは薬草よ、 これであなたの傷を治療したの›
それはRPGによく出てくるような回復効果を持つ薬草だった。
こんなゲームのゲの字も無い異世界でも回復手段として役に立つとは、薬草先輩さすがである。
頭上を照らす太陽の傾き具合からして、あれからそんなに時間が経過していないのにこの効力とは。
いつか必ず役に立つ時が訪れると被異世界召喚者の勘が言っている。
今度詳しく聞いてみよう。
‹もう痛くない? 大丈夫?›
「……うん、ありが、とう」
習いたての感謝の言葉を使いつつ、名残惜しい膝枕から脱出する。
立ち上がる際に軽い立ちくらみは覚えたものの、健康状態は木人にフルスイングされる前となんら変化はなかった。
薬草ってすごい。
‹みんな木人は危ないってちゃんと説明しないと駄目でしょ! イブキに謝りなさい›
事の大きさ故、流石に反省したのか子供たちは口々にごめんなさいと告げる。
そんな様子の子供達一人一人と握手で仲直りしていく。
二十五歳ともなれば子供との接し方もお手の物である。
まぁ流石に半身不随を患いでもしていたらこの態度も多少は変わっていたかもしれないけど。
仲直りの時間も無事に終え、アイナは私をここに呼んだ理由を話す。
‹イブキってさ、この大陸の記憶を失ってるでしょ?›
「うん」
アイナ達集落の人間の私に対しての認識は記憶を失った人間という形式を取っている。
勿論本当はこの世界のどこでもない別の世界から召喚されたのだが、そう伝える手段を持ち合わせていない身の上の人間にとっては、そう思ってくれた方が幸いであった。
それにたとえ言葉が通じていたとしても上手く説明できる自信が無い。
自分自身を彼女たちの立場と置き換えてもそれははっきり理解できた。
だって仮に私が住んでたあの世界で、ある日突然出会った人間が真面目な口調で真剣に異世界から来たなどと仰るのであれば、それはまぁ電波だなぁとか病院を紹介したりするなどの措置を取るだろう。
実際のところ、その辺の異世界に来たことを信じさせる説明はどうすれば良いのでしょうかね。
是非に教えて頂きたいものである。
そんなくだらないことを考えている内にアイナは続きを述べる。
‹もっとこう強い印象を与えることが出来れば何か思い出すかなーって思って……あ!違うのよ!?また木人に殴られたりする訳じゃなくてね!?›
アイナは私の血の気が引いた顔を見て慌てて訂正している。
もう痛いのは勘弁して欲しいです。ええ本当に。
‹ごほん! だからもっと凄いのをあなたに見せてあげようかなぁって思ってね›
よく見ると彼女の両手には今まで見た事の無いような赤い結晶のようなものが握られている。
あれは一体……?
そんな私の疑問を払拭するように彼女は高らかに呪文のようなものを唱える。
‹我の名前はアイナ! 全ての者へ平等に降り注ぐ汝の力をここに借りんとする!›
‹弱き我らの光明となり、強き者を燃やし滅ぼさんとする憧憬の姿をここに想像せり!›
詠唱を唱え始めるにつれ赤い結晶は輝きを増していく。
結晶核から溢れ出る力の奔流はやがて、その標的を見定め――
‹無何有の理に従い、その力は現出する――いでよっ!ガベルっ!›
その瞬間――
木人は燃え盛る炎に包まれた。
その熱気は離れていても流れる風を伝い肌に直接浴びせられる。
その影響を受け、私はようやくこれが現実のものであると認識した。
‹すごーい!!›
‹アイナ姉ちゃんの魔法詠唱はやっぱり一味違うですよ!›
‹俺も早く使いてーなー›
「かっけええええええええええ!!」
二十五歳男性、子供に混じって大はしゃぎである。
しかし待って欲しい。世の男子諸君ならこのはしゃぎよう理解できるはずである!
ファンタジーの王道!これぞファンタジー!
生で魔法が使える世界に来て嬉しくない人間がいようか!いやいない!!
まさかこの異世界に魔法が存在していたなんて!来てよかった!
私がよく知る詠唱よりもこちらの世界の詠唱はかなり長い。
しかしそれがかえって剣と魔法の世界に自身がいることを強く実感できるきっかけになった。
私のかつてないほどのテンションの上りように成功を確信したのか。
もじもじとしながら頬を赤く染め照れた様子を見せるアイナ。可愛いです。
発動した炎は次第に勢いを弱め、炎が燃え尽きる頃には灰が残るのみとなった。
‹あ、ありがとう……›
そんな乙女な様子のアイナを茶化す子供たち。また怒られるのに懲りないなぁ。
‹と、ともかくこれが魔法と呼ばれる力なの、私たちはこの結晶核と呼ばれる特別な石を媒体として圧倒的な自然現象を操り起こすことが出来るの、そして――›
まだちょっと頬が赤いアイナ先生の魔法講座は、属性について触れる。
‹私たち無何有の民が扱うことが出来る魔法の属性は、ずばり炎! 古来より人が友として生活の一部を任せている火を様々な方法で扱うことが可能になるの›
ふんすと自身満々に答えるアイナ先生の講義を熱心に受講するイブキ受講生。
火の魔法はやっぱり定番だと思う。
私は以前から火の魔法が一番好きだった。
見た目もカッコイイことさることながら、なんといってもその応用力は目を瞠るものがある。
木人相手に使用した時みたいに相手を炎上させ苦しめる使い方や、炎が持つ持続力を活かしたである炎の壁の生成、また先程のアイナの言葉にもあるように夜間を照らす光源にもなるし食べ物を燃やすことも出来る。
実際のところ、この異世界で私が考えるような使い方が出来るかどうかはまだ分からない。
しかしそういった工夫次第で使用方法が多岐に渡るとなると考え深いものだ。
ただ、一つの属性しか使えないのはちょっと残念だけど。
選り好みしても仕方ない。
それに、一つの属性を極める魔法使いというのもちょっと憧れるし。
‹ちなみに噂だとミアスは風を、モーデは雷を扱うことが出来るそうです›
雷って……めちゃくちゃ強そうじゃないか。
きっと一撃は強いが連発出来ないみたいな制約があるに違いない。
そうに決まってる。
じゃないと鞍替えしたくなっちゃうじゃないか……。
敵国だけど……。
風もなかなか応用力が効く魔法だと思うので、いつかこの目で見てみたいものである。
敵国……。
‹そして、そんなとっても便利な魔法にも弱点が存在します›
一人もやもやしている私を余所に、アイナは魔法使いとして生きようと思っていた私にとって聞き逃せない重要なことを語りだす。
‹イブキも感じたかもしれないけど魔法を発動する際には呪文を詠唱する必要があるの›
‹この呪文って炎を出すような同じことをしているように見えても、人によって結構違うんだよね、ただ呪文の単語は違っても呪文の長さは大体おんなじものになるの、だから実際の魔物との戦闘の場合、複数で戦う時ならまだしも一対一の戦いだと、とってもも不向きなの›
つまり詠唱時間がネックになるということか。
確かに先程の詠唱文は言いまわしなんかはかっこよかったけど、アイナが言うようにかなりの長文だ。
いつぞのRPGのように敵がこちらの攻撃を待ってくれたりなんかしない。
早さと精密さが物を言う戦いにおいて、確かにこれは致命的な問題だ。
‹……と、魔法については大体こんな感じです、どう? 何か思い出した?›
貴重な魔法講義を終え、アイナは心配そうな表情で問い掛ける。
だが残念なことに記憶が戻ることもないし、記憶を失ったりはしていない。
いつかきちんとした形で伝えるようにしないと。
‹そっか……うーん、じゃあさこれ! 結晶核! もしかしたら何か思い出すかもしれないし›
首を横に振る私を見てもアイナは諦めずに次の手を考えてくれている。
その健気な姿から本当に私のことを気遣ってくれているのがとても嬉しかった。
そんな彼女の好意を無下にすることなど出来るわけもなく、私は結晶核を受け取る。
「(思ったよりは、軽いかな)」
見た目は普通で軽い。そんな印象しか抱けないほどの何の変哲もない鉱石のような物体。
それでもこうして魔法の触媒を持っていると考えるとどうしてもテンションが上がるのは避けられない。
‹どう? どう!?›
「うーん……」
こ、答えづらい……。
流石にここまで期待させている中で、失望させるのは悪い気もしてきた……。
しかしすぐばれる嘘をついても仕方ないし……。
追い詰められた私は苦肉の策として詠唱をでっちあげる
えーとなんだったっけな……全ての者へ平等に降り注ぐーとかだった気もするけど……。
私は日本語で件の詠唱呪文を唱える。
「わ、我の名前はイブキ。全ての者へ平等に降り注ぐ炎よ!答えよ!」
いざ唱えてみると結構恥ずかしいだとか、日本語で唱えてしまっても意味ないんじゃないか、炎が降り注いだらまずいだろうなどといったような思考が止めどなく溢れだすものの、それを遮断。
目をギュッと瞑り、先程見た景色、呪文を思い浮かべることに意識を集中する。
「強き者を燃やし滅ぼさ――え?」
何かがおかしいと感じた私は思わず詠唱を中断する。
最初に抱いた違和感は頬を焦がすような熱だ。
それはまるでアイナが発現した魔法と同じ熱量、匂い。
周囲に動揺が広がる声、音。
そして胸の内から湧き上がるこの興奮!!
「発動した……!」
‹イブキ……あなたって一体……?›
恐る恐る目を開けた私の視界には燃え盛る木人が映り込んでいた。
みんな信じられないものを見たかのような表情で固まっている。
詠唱時間の短縮……。
じゃ、弱点克服しちゃいました……。
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