かみさまコネクト

辻 欽一

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3章 沖田畷の戦い

11 戦の後、そして……

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 ここまでの流れを私は歴史映画でも見るかのようにみていた。
ただ違っていたのは、鮮血の色、鉄砲で打ち抜かれれば、
まるで水風船が破裂したように真っ赤な血がはじけ飛び、
首を刎(は)ねられた者からはバケツをひっくり返したように
血が噴き出し地面を朱(あけ)に染める。

 そう、私が今見ているのは映画のようで、
四百年以上前にあった実際の戦なのだ。
私は少し気分が悪くなるが、まだ目覚めることが出来ない。

 その後、家久は首実検をし、隆信と重臣の討死を確認すると
陣を引き払い八代へ引き返した。島津軍の損害は討死数百、
家久を含め忠堅も軽傷をおった。
家久は戦勝を労(ねぎら)うため八代近郊の湯治場(とうじば)へ―――。
途中、忠堅は館に立ち寄りサクに無事を知らせている。
恐らく此の事態が縁の結び直しであろう。私が演じた実在しない侍大将、
川上久貞の役目は終わり、近いうちに現世へと戻ってくるはずであるが、
家久達との湯治は一緒に行ってしまった。

 そこで久貞は諸将達と酒宴を終えると一人で湯浴みへ―――。

 そして、しばらく湯に浸かっていると久貞から元の桃華の体に戻ってしまった。
と言うことは、そのうち時間が元に戻るはずである。が、その時予想外のことがおきる。

「ん………? 先約か……久貞か? 入るぞ、少し飲み直すとしよう」

 これは想定外、今私は女の桃華である。この状態で家久との対面は非常に不味い。
「あー、これはマズイな。小梅なんとかならぬか?」
「んー、これは無理じゃ。儂が思うに、ここで家久と主の対面が梨華と出会う条件じゃ、
 定めと思うて、諦めよ」

 其処へ家久が入ってくる。
「なっ……主は誰じゃ?」流石の家久も黒髪の女子が髪をほどいて
湯浴みをしていれば対応に困る。なので、桃華の方から家久に話しかけた。

「家久殿、ここは久貞が入っていたとお分かりかな?」
「うむ、そこへ主が居たからこうして難儀しておる」
「ふむ、では私が久貞だと言ったら如何かな?」
「うむ、久貞か……。儂のなかでは川上家に久貞なる者が居たかがどうも
 曖昧(あいまい)になっていてな。主は何かの術でも使いし者か?」

 どうやら、この時点で川上久貞なる架空の武将の存在は消えかかっているようだ。
ならば私が神の正体を明かして家久を説得すれば一件落着なのでは。と、私は思った。

「なんと言えばよいか、『竹取の翁』くらいに思ってくれればよいのだが分かるかな。
 私はとある事情でこの世にきた神様で、
 やることが終わったから主の記憶からも忘れられ元の世に帰る所だよ。
 まあ、その前に主と少し杯を交わすのが私の最後の役割らしいな……。
 だから私と酒を呑もう、私を神と思って酌をしてくれ―――そして語り合おう」

 家久は湯殿に立つ私を凝視すると、一言。
「主、恥ずかしくはないのか?」
「そうだな、恥じるような体はしていないつもりだ、見惚れても好いぞ」

 言われると家久は「酒を取ってくる」と言って湯殿を出て行き、
しばらくして酒を大徳利(とっくり)に用意してきた。

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