風と、海と、太陽と。 ~ Feel the Wind ~

清野 星弥

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第2章 ―始まり・・・そして終わり―

第1話 体育館デート

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 高校生活が始まり、治希は毎日の授業についていくことに
追われていた。

 部活では全く未経験のバスケットボールに苦戦を強いられ、
ドリブルでさえまともに出来ず、全体練習が終わった後も
居残りでドリブルやシュートフォームの確立、レイアップ・シュート
などの基礎練習をひたすら行い、毎日があっという間に過ぎていった。

 その日も全体練習が終わった誰もいない体育館のバスケットボール
コートに、治希とバレーボル部の練習を終えた美奈だけがいた。

 ふたりはバスケットボールコートの3ポイントライン頂点付近に座り
話していた。
 「ごめんな、美奈。また一緒に残ってもらって」
 「ううん。治希の頑張ってる姿を見るの、好きだよ」
 そう言って美奈は、両手でボールをパスした。
 「ありがとう。でもさ、バスケなんかやんない方が良かったのかな・・・。
オレ、センスないのかも」
 治希は左手の人差し指でボールを回しながら言った。
 バスケットボールのプレーは上達が遅かったが、こういったプレーに
関係のないことは上達が早かった。
 「仕方ないよ。みんなそうやって、中学時代は基礎練習やってきたんだから。
治希はバスケを始めてから、まだ1カ月ちょっとしか経ってないんだよ。
そう簡単にみんなと同じようになんてできないよ」
 美奈は子供に諭すようにゆっくりと話した。
 「そうだな。早くまともに練習についていけるように、
居残り練習するしかないってことか。美奈、それまでこうやって
付き合ってくれる?」
 「うん。喜んで!」
 美奈はそう言ってすくっと立ち上がり、治希の左人差し指の上で回っていた
バスケットボールを奪い、レイアップ・シュートをして見せた。

 静かな体育館に「ダンッ、ダンッ」とドリブルでボールをつく音が響き、
左足での軽やかなジャンプと同時に、高く上げた右手から離れたボールが
赤いリングを通過し、「サシュッ」とネットを揺らす音が鳴った。
 美奈はネットから真下に落ちて、床に転がったボールを拾い上げ、
治希の方向に振り向いてから 笑顔でピースサインをした。

 「やっぱり美奈はすごいな。なんでも簡単にこなせるもんな」
 「小学校の時、少しだけバスケやってたんだ。すぐ辞めちゃったけどね」
 それでも、少なくとも3年以上あるブランクを感じさせないシュートフォーム
だった。しかも、今使ったボールは男子用のもので、女子用のボールよりも
一周り大きい。

 その時、突然大きな声が聞こえた。
 「お前達、体育館閉めるぞ!もう今日は終われ!」
  体育教官室にいた男性教師だった。
 「すみません!すぐ帰ります!」
 ふたりは声を合わせて言った。

 高校生になってからは、こうやって一緒に練習をする“体育館デート”が、
ふたりの定番となった。
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