死神見習いと過ごす最後の一年

小泉洸

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出会い

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呼び鈴が鳴った。ゲーム、いいところなのにな。

あわててデータをセーブしてインターホンの画面を見に行く。

見覚えのない小柄な少女がカメラを見上げていた。

「どちら様でしょうか?」

「えと、江藤勇気さんのお宅でしょうか?」

「はい、そうですが」

なんかの宗教の勧誘か?

「うーんと、ちょっとお話があって参りました」

なんか売りつける気かな。

少し尖った声を出して俺は言った

「なにかの勧誘とかですか、それなら結構です。すみませんけどお引き取りください」

少女は、眼をぱちくりさせて慌てて言った。

「違います、違います。お知らせがあって来ました」

なんだよ、めんどくさいな。俺は言った。

「インターホン越しじゃダメなの?」

少女は画面の中でブンブンと首を横に振って言った。

「ダメです。直にあってお知らせするように言い遣ってきたのです」

俺は溜め息をついて少女に言った。

「誰からの知らせ?町内会??」

少女は真面目な顔をして言った。

「直接会ってからじゃないと言えないです」

やれやれ。

「じゃあ、ちょっと待ってて」

少女は画面の中であからさまにホッとした様子を見せていた。

 玄関のドアを開けた。
そこには金色の縁取りが施された白いガウンのような衣装を着た少女が立っていた。

俺より少し年下かな。
それよりなんのコスプレだ?

黒い缶バッジみたいなものが付いている白い帽子を被って杖のようなものを左手に持っている。
脇にはピンク色の小さなスーツケースが置かれている。
これは間違いなく宗教の勧誘だな。

「で、なんの用?宗教関係とか訪問販売なら話は聞かないよ。パンフレットとかあるなら置いてって」

目を大きく見開いた少女は、慌てた様子で首を振って言った。

「宗教じゃないです、物売りでもないです。江藤さんにお知らせにきたんです」

なんなんだよ。俺は言った。

「じゃあ、手短に話して。今、俺忙しいからさ」

はい、と少女は返事をしてから、一つ大きく深呼吸をしてから俺に言った。

「江藤勇気さんの寿命をお知らせに来ました!」

は? なにいってるんだこいつは?

少女は、わざとらしくコホンと小さな咳払いをしてから言った。

「あと364日後の、来年6月24日の午後9時17分に、江藤勇気さんがお亡くなりになることをお知らせに参りました!」

縁起でも無いし、冗談にもほどがある。
だいたい俺はまだ高校1年生だ。
そんなに簡単に死ぬもんかよ。

俺はムッとしながら少女に言った。

「話はそれだけか?用件は聞いたから出て行ってもらえる?」

わたわたしながら少女は、言った。

「えとえと、まだお話があります。とっても重要なお話です」

なんなんだよ、やっぱり宗教か?俺は皮肉をこめて少女に言った。

「壺でも買えば、寿命が延びるとかか?」

少女は首を振って、小さく笑みを浮かべながら言った。

「あなたの転生先もお知らせするように言われてきてます」

「ほう、なんだ?大スターかなにかに生まれ変わるのか?」

いいえ。少女はキッパリと断言した。

「ダンゴムシです」

ちょっと待った、ダンゴムシ?俺はオウム返しに答えた。

少女は快活に答えた。

「はい、次はダンゴムシです」

あの石の裏とかのじめじめしたところにいる足がいっぱい生えてる黒い丸くなる奴か?

「はい!そのタンゴムシです!」

「お前、頭おかしいんじゃない?せっかくですけどお引き取りください」

俺は扉の外を指さして少女に言った。

冗談じゃない、頭がおかしいのを玄関内に入れてしまった。失敗した。


少女は半泣きになりながら、首をぷるぷると横に振りながら懸命に訴えてきた。

「絶対、江藤さんに悪いようにはしません。私、頭もおかしくないです」

べそをかかれてはこちらも困る。少し落ち着かせてから帰そうか。

やれやれ。

俺は少女に言った。

「じゃあ、ちょっとだけ上がっていきな。で、落ち着いたら帰れよ」

少女はぺこぺこと頭を下げながら、ありがとうございます、

ああ良かったなどとつぶやきながら家にあがった。


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