死神見習いと過ごす最後の一年

小泉洸

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選択した未来

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 次の日の放課後、隣の駅から少し離れたところにあるファミレスで、
野上先輩と会うことにした。

俺と二人っきりで会っているのを誰かに見られて、変な噂でも立ったら悪いからな。

「待たせちゃった?」

背後から野上先輩の明るい声が掛かる。

いや、今、着いたところです。

俺はコーヒーを頼む。私はカフェオレね。

俺はコーヒーを一口飲んでから、背筋を伸ばして一呼吸を置いて、野上先輩に言った。

「俺、先輩との未来を知っていました。俺も同じように夢で見たんです」

野上先輩の目が大きく見開かれる。俺は続けた。

「幸せそうな生涯でした。先輩も幸せそうでした。あれ以上、なにを望むのか、とも思います」

野上先輩が小さく肯く。俺は一旦目をそらして、
コーヒーをまた口に含んでから思い切って言った。

「でも決められた未来を行くのは、ワクワクしないです。俺は未来を自力で築きたいです」

ああ。言っちゃった。

野上先輩はうつむいて唇をかんだ。

沈黙。

しばらくして、うんうんと肯いてから、顔を上げ、
こちらの目をじっと見て野上先輩は言った。

「江藤君は、そう言うだろうなって思ってた」

そしてにっこりと笑ってから続けた。

「私、振られちゃったね」

俺は慌てて言った。

「野上先輩は美人だし素敵です。振るなんてありえないです。あの未来だって素晴らしかった。幸せだった。それがイヤだとか、そういうのじゃなくて」

野上先輩は、俺の言葉を遮って言った。

「わかってるよ。定められた運命みたいなものに全部身を任せるのはシャクだものね」

そうして、野上先輩はカフェオレをぐいっと飲んでから、朗らかに笑って言った。

「あんまり、未来の私が幸せそうだったから、うっかりそれに身を任せようと思っちゃったんだ。私も別の道を探してみるよ」

正直、俺はぐらっと来た。

野上先輩は本当に素敵な人だな。

この人となら一緒にまた別の未来を築けるかも。

しかしここで、べそをかくサリーの顔が浮かんでしまった。
くそ、泣くなよ。俺が虐めているみたいじゃないか。

俺は深呼吸をしてから言った。

「すみません。我が儘で」

野上先輩は、吹っ切れたようにケタケタ笑って言った。

「なに謝ってるの?謝らなきゃ行けないのは私の方よ。ごめんね、変な話して。もう忘れてね。私も忘れることにする」

じゃあまた学校でね、そう言うと、さっと立ち上がって、
先輩はファミレスを後にした。

残された俺は、グズグズと、その後一時間くらい考え込んでしまった。
こんな選択で良かったのかな?

 玄関の錠を開けると、サリーが扉の前に立ち尽くしていた。

え?そこでずっと待ってたのか?

うん、少女は肯くと、俺に心配そうに半分泣き顔で尋ねた。

「勇気は、結局どうしたの?」

俺は、ふうっと息をついてからサリーの目を真っ直ぐに見て答えた。

「俺は好きな道を選んだよ」

少女は、ぽかんとした顔をしてから、小さな声で言った。

「どんな道?」

俺は答えた。

「俺自身が築く道だよ。幸せに決められた未来じゃなくて、一年間無くても自分で切り開く未来だよ」

そして、サリーの肩をぽんと叩いて言った。

「夕ご飯にしよう。サリー、今日はなにが食べたい?」

ぱあっと花が咲くように少女は笑って言った。

「私、今日は何にも食べられなくてお腹空いてるから、なんでも美味しいよ、きっと!」

よし、俺様が腕によりを掛けた料理を作ろう。

「私も、一緒に作るよ!」

俺は華奢な少女と肩をならべて、部屋の中に向かった。
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