死神見習いと過ごす最後の一年

小泉洸

文字の大きさ
11 / 21

選択肢

しおりを挟む
 夕ご飯は俺の当番だった。
焼き魚定食といった感じか。

昨日の残りのサリー特製煮物と一緒にいただく。

サリーは御飯のお代わりをする。良く喰うな。
そう言えば少しこいつ太った気がするな。

俺はサリーに言った。

「あのさ、お前、最近太ったんじゃね?」

少女の箸を持つ手が止まる。べそをかきそうな顔をする。

図星だなこりゃ。やれやれ、なんで死神の健康管理までせにゃならん。

大きく溜め息をついてから、サリーは再び食べ始める。そして言った。

「そうなのよね。部活始めてからお腹が空いて空いて。で、少し太った?!」

俺は言った。

「まあ、筋肉がついたためだろうから、体重増加は問題ないと思うよ。でも服とか大丈夫か?」

気を取り直したらしく、少し自慢そうにサリーは言った。

「背も伸びたからね。ちょっと制服の丈が短くなってきたかな」

制服の買い換えか。丈を伸ばせるかな?

うーん、いずれにしても物入りだな。

理由無く親からの仕送りを急に増やしてもらうわけにも行かないし、さてどうする。

学校へ行く道の途中にあるファミレスで、またバイトでもするか。


 ご馳走様でした。あのさ、片付けの後、相談があるんだけど、俺はサリーに声を掛ける。

「いいけど、なあに?」

スマホをいじりながら少女が答える。しかし完全に現代の女子高生だな、この死神は。

俺は言った。

「結構、ヘビーな話題だよ。俺にはどうしたらいいか全然わからない」

サリーはスマホの画面から顔を上げて、こちらを見て言った。

「なんかあったの?」

俺は答えた。

「ああ、色々あった。で、相談したい」

少女は小さく首をかしげてから、うん、わかったと言って、
またスマホの画面に目を落とした。

ちゃんと聞けよ。

俺は、今日起こったことの一部始終をサリーに話した。

「というわけだ。俺はどうしたらいい?それからこの現象は一体なんだ?」

と、聞いたところで俺は驚く。少女は半べそ状態だ。

大きな目がうるうるとしている。

「おい、どうした。サリー?!」

少女は、ポロポロ涙を流してグスグス鼻を言わせながら下を向く。

「大丈夫か?」

しばらく沈黙があった後、泣き止んだ少女は小声で言った。

「未来は変えられないかも」

え?ダンゴムシな未来?俺は聞き返した。

少女は、少し驚いたような顔をしてから、間を置いて、
うんうんと肯いて小声で言った。

「前、勇気に見せた未来が実現し始めている。少し形は違うけど。どうやってもそこに収束するのかも」

俺は、少女に言った。

「でも俺はあと一年もしないうちに、この世とおさらばするんだろ?サリーに見せてもらったあの未来は、実現しないんじゃないのか?」

少女は、またべそをかきそうな顔をする。

おい泣くなよ、俺が虐めてるみたいじゃないか。

泣きたいのは、もうすぐ死ぬ俺の方だろうが。

しばらくして少女は俺に言った。

「あのね、勇気が未来を選択するしかないのよ」

俺は溜め息をついて言った。

「俺に未来は無いぞ。一年もしないうちにあの世行きだろ。選択もなにも無い」

少女はまた涙目になる。

わかった、わかった。少し考えてみるよ、
それで未来とやらを俺が選択する、それでいいな?

少女は、小さくこっくりと肯いて、お風呂入って寝ると言って部屋を出て行った。

サリーのスマホが机の上に置き忘れられていた。
よっぽどショックだったのだろう。

風呂場に行くのを確かめてから、サリーの部屋にある机の上にスマホを置きに行く。

しかし、俺は一体なにを選択したらいいのだ?選択の余地なんか無いぞ??


 眠れない。当然だろう。

走馬燈に現れた野上先輩との未来を思い出してみる。

悪くない。平凡だが、なんだか幸せそうな未来だった。

変な話だけど野上先輩、美人だしな。

悪くないと言うより、実は極上と言って良い未来かも。

あれ以上、なにを望めると言うんだ?
で、その後はダンゴムシ?本当かどうかもわからない転生後の世界。

やれやれ。

 選択肢なんかあるのか?

野上先輩からの告白を振る未来を選択するということかな?
で、一年もしないうちに死ぬと。

でも前者は選択できないんだよな?
そうでもないのか?

選択できると仮定して、俺は野上先輩との未来を受け入れることができるのか、
そうするとすぐには死なないで済むのか?

 考えは堂々巡りをする。

今度はサリーのことを考えてみる。
彼女は俺を救いに来たと言っていたよな、サポートか。
で、寿命を宣言と。少しでもマシな転生のために早死にしろと。

これはまた、酷い未来だな。こっちを選択するバカはあんまりいないだろう、
というより皆無だよな。普通は考える余地無しだよな。でも・・・。

 夜が明けてきた。

俺の気持ちも落ち着いてきた。答えも出た。
俺はスマホにメッセージを入れた。

すぐ既読になった。野上先輩も眠れなかったのかな。

 サリーのテンションが異様に低い。朝は、いつも元気いっぱいなのに。どした?

少女はボソッと呟く。

「眠れなかった」

そうか、俺もだよ。一睡もできなかった。お前大丈夫か?少女は続けて言った。

「学校で寝る」

おい、神様がいいのか?それで??
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

【完結】終着駅のパッセージ

苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。 彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。 王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは振り返る。 夫と婚姻してから三年という長い時間。 その間に夫が帰宅したのは数えるほどだった。 ※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ化企画進行中「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 部屋にこもって絵ばかり描いていた私は、聖女の仕事を果たさない役立たずとして、王太子殿下に婚約破棄を言い渡されました。 絵を描くことは国王陛下の許可を得ていましたし、国中に結界を張る仕事はきちんとこなしていたのですが……。 王太子殿下は私の話に聞く耳を持たず、腹違い妹のミラに最高聖女の地位を与え、自身の婚約者になさいました。 最高聖女の地位を追われ無一文で追い出された私は、幼なじみを頼り海を越えて隣国へ。 私の描いた絵には神や精霊の加護が宿るようで、ハルシュタイン国は私の描いた絵の力で発展したようなのです。 えっ? 私がいなくなって精霊の加護がなくなった? 妹のミラでは魔力量が足りなくて国中に結界を張れない? 私は隣国の皇太子様に溺愛されているので今更そんなこと言われても困ります。 というより海が荒れて祖国との国交が途絶えたので、祖国が危機的状況にあることすら知りません。 小説家になろう、アルファポリス、pixivに投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 小説家になろうランキング、異世界恋愛/日間2位、日間総合2位。週間総合3位。 pixivオリジナル小説ウィークリーランキング5位に入った小説です。 【改稿版について】   コミカライズ化にあたり、作中の矛盾点などを修正しようと思い全文改稿しました。  ですが……改稿する必要はなかったようです。   おそらくコミカライズの「原作」は、改稿前のものになるんじゃないのかなぁ………多分。その辺良くわかりません。  なので、改稿版と差し替えではなく、改稿前のデータと、改稿後のデータを分けて投稿します。  小説家になろうさんに問い合わせたところ、改稿版をアップすることは問題ないようです。  よろしければこちらも読んでいただければ幸いです。   ※改稿版は以下の3人の名前を変更しています。 ・一人目(ヒロイン) ✕リーゼロッテ・ニクラス(変更前) ◯リアーナ・ニクラス(変更後) ・二人目(鍛冶屋) ✕デリー(変更前) ◯ドミニク(変更後) ・三人目(お針子) ✕ゲレ(変更前) ◯ゲルダ(変更後) ※下記二人の一人称を変更 へーウィットの一人称→✕僕◯俺 アルドリックの一人称→✕私◯僕 ※コミカライズ化がスタートする前に規約に従いこちらの先品は削除します。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...