死神見習いと過ごす最後の一年

小泉洸

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選択肢

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 夕ご飯は俺の当番だった。
焼き魚定食といった感じか。

昨日の残りのサリー特製煮物と一緒にいただく。

サリーは御飯のお代わりをする。良く喰うな。
そう言えば少しこいつ太った気がするな。

俺はサリーに言った。

「あのさ、お前、最近太ったんじゃね?」

少女の箸を持つ手が止まる。べそをかきそうな顔をする。

図星だなこりゃ。やれやれ、なんで死神の健康管理までせにゃならん。

大きく溜め息をついてから、サリーは再び食べ始める。そして言った。

「そうなのよね。部活始めてからお腹が空いて空いて。で、少し太った?!」

俺は言った。

「まあ、筋肉がついたためだろうから、体重増加は問題ないと思うよ。でも服とか大丈夫か?」

気を取り直したらしく、少し自慢そうにサリーは言った。

「背も伸びたからね。ちょっと制服の丈が短くなってきたかな」

制服の買い換えか。丈を伸ばせるかな?

うーん、いずれにしても物入りだな。

理由無く親からの仕送りを急に増やしてもらうわけにも行かないし、さてどうする。

学校へ行く道の途中にあるファミレスで、またバイトでもするか。


 ご馳走様でした。あのさ、片付けの後、相談があるんだけど、俺はサリーに声を掛ける。

「いいけど、なあに?」

スマホをいじりながら少女が答える。しかし完全に現代の女子高生だな、この死神は。

俺は言った。

「結構、ヘビーな話題だよ。俺にはどうしたらいいか全然わからない」

サリーはスマホの画面から顔を上げて、こちらを見て言った。

「なんかあったの?」

俺は答えた。

「ああ、色々あった。で、相談したい」

少女は小さく首をかしげてから、うん、わかったと言って、
またスマホの画面に目を落とした。

ちゃんと聞けよ。

俺は、今日起こったことの一部始終をサリーに話した。

「というわけだ。俺はどうしたらいい?それからこの現象は一体なんだ?」

と、聞いたところで俺は驚く。少女は半べそ状態だ。

大きな目がうるうるとしている。

「おい、どうした。サリー?!」

少女は、ポロポロ涙を流してグスグス鼻を言わせながら下を向く。

「大丈夫か?」

しばらく沈黙があった後、泣き止んだ少女は小声で言った。

「未来は変えられないかも」

え?ダンゴムシな未来?俺は聞き返した。

少女は、少し驚いたような顔をしてから、間を置いて、
うんうんと肯いて小声で言った。

「前、勇気に見せた未来が実現し始めている。少し形は違うけど。どうやってもそこに収束するのかも」

俺は、少女に言った。

「でも俺はあと一年もしないうちに、この世とおさらばするんだろ?サリーに見せてもらったあの未来は、実現しないんじゃないのか?」

少女は、またべそをかきそうな顔をする。

おい泣くなよ、俺が虐めてるみたいじゃないか。

泣きたいのは、もうすぐ死ぬ俺の方だろうが。

しばらくして少女は俺に言った。

「あのね、勇気が未来を選択するしかないのよ」

俺は溜め息をついて言った。

「俺に未来は無いぞ。一年もしないうちにあの世行きだろ。選択もなにも無い」

少女はまた涙目になる。

わかった、わかった。少し考えてみるよ、
それで未来とやらを俺が選択する、それでいいな?

少女は、小さくこっくりと肯いて、お風呂入って寝ると言って部屋を出て行った。

サリーのスマホが机の上に置き忘れられていた。
よっぽどショックだったのだろう。

風呂場に行くのを確かめてから、サリーの部屋にある机の上にスマホを置きに行く。

しかし、俺は一体なにを選択したらいいのだ?選択の余地なんか無いぞ??


 眠れない。当然だろう。

走馬燈に現れた野上先輩との未来を思い出してみる。

悪くない。平凡だが、なんだか幸せそうな未来だった。

変な話だけど野上先輩、美人だしな。

悪くないと言うより、実は極上と言って良い未来かも。

あれ以上、なにを望めると言うんだ?
で、その後はダンゴムシ?本当かどうかもわからない転生後の世界。

やれやれ。

 選択肢なんかあるのか?

野上先輩からの告白を振る未来を選択するということかな?
で、一年もしないうちに死ぬと。

でも前者は選択できないんだよな?
そうでもないのか?

選択できると仮定して、俺は野上先輩との未来を受け入れることができるのか、
そうするとすぐには死なないで済むのか?

 考えは堂々巡りをする。

今度はサリーのことを考えてみる。
彼女は俺を救いに来たと言っていたよな、サポートか。
で、寿命を宣言と。少しでもマシな転生のために早死にしろと。

これはまた、酷い未来だな。こっちを選択するバカはあんまりいないだろう、
というより皆無だよな。普通は考える余地無しだよな。でも・・・。

 夜が明けてきた。

俺の気持ちも落ち着いてきた。答えも出た。
俺はスマホにメッセージを入れた。

すぐ既読になった。野上先輩も眠れなかったのかな。

 サリーのテンションが異様に低い。朝は、いつも元気いっぱいなのに。どした?

少女はボソッと呟く。

「眠れなかった」

そうか、俺もだよ。一睡もできなかった。お前大丈夫か?少女は続けて言った。

「学校で寝る」

おい、神様がいいのか?それで??
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