10 / 21
思いがけない告白
しおりを挟む
新学期が始まって数日経った。
朝、登校して靴箱を開けると上履きの上に、ちょこんと封筒が置かれていた。
俺は固まってしまった。
このネット社会で、なんという古典的な。いたずらかな?
サリーが、こちらの妙な様子に気がついたようで尋ねてきた。
「勇気、どうしたの?なにかあった??」
俺は気を取り直し、素早く封筒をカバンの中に放り込み答えた。
「いや、なんでもない」
そう、なにも起こるはずがないよな。大方、佐々木あたりのいたずらに違いない。
休み時間、サリーが女子軍団と楽しそうに話しているのを確認してから、
俺はさりげなく教室の外に出た。
普段閉鎖されている屋上への階段の踊り場で、封筒を開けてみる。
便せんが一枚入っている。
開いてみると生真面目な女性らしい文字でこう書かれていた。
「江藤勇気様 突然のお手紙でごめんなさい。お話ししたいことがあります。今日の放課後、体育館の裏の用具小屋の前に来てもらえますか?」
署名は、野上亞紀、となっている。
野上先輩?2年生の、あの野上先輩??
女子バスケ部の次期主将。背がすらっと高くてボーイッシュな特上美人。
周囲にある他の高校も含めて、めちゃくちゃもてて、
告白されまくっているけど、全然男子と付き合おうとしないとの噂。
1年坊主の俺でもそのくらい知ってる有名人。
一度、話しかけられたな、転がってきたバスケのボールを投げてよこしてと。
雨の日の部活時に体育館でサーキットトレーニングをしていたときのことだ。
それ以外に接点は無い、はず。
俺になんの話だろう?見当もつかない。
なんか怒られるのかな。
イヤな予感しかしないけど、心当たりも無い。
便せんを封筒にしまいポケットに入れて、俺は教室に戻った。
どうしようもないな。会って話すか。
俺は、急いで身支度をして素早く教室を出る。
高橋さんと楽しそうに話しているサリーに一声掛けた。
「サリー、俺ちょっと用事があるから、先に部活行ってるぞ」
こちらも見ずに、サリーは片手をひらひらと振る。
随分扱いがぞんざいになってきたな。全力サポートが聞いて呆れる。
まあ今日は好都合だけど。
後ろから、あははと朗らかに笑うサリーの声が聞こえた。
人気の少ない体育館の裏に呼び出しというのは、なかなか剣呑だ。
野上先輩の手下かなんかに囲まれてボコボコにされたりして。
それはあり得ないとしても、一体何だろう。
用具小屋の前に人影があった。
野上先輩一人だな。ボコボコ、というわけではなさそうだ。
先輩がこちらに気がついて、片手を振る。こちらは会釈で返す。俺は言った。
「野上先輩、お手紙ありがとうございました。なんのお話でしょうか?」
相手は先輩だし丁寧語だよな、普通。
少し慌てた感じで、野上先輩は目を見開き、首を小刻みに小さく振ってから答えた。
「あのね、江藤君。あ、江藤君って呼んで良い?」
もちろんいいですよ、それで?
大きく深呼吸をしてから、野上先輩はこちらの目を睨み付けるような勢いで言った。
「江藤君のことが好きです。付き合ってください」
は?なんておっしゃいました??
それにまた随分男らしい告白だ。
俺は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていたに違いない。
慌てて真顔に戻して一息つく。どう対応したものか?
「あの、まだ野上先輩とは、まともにお話ししたこともないのですけど」
ああ、と先輩は溜め息を一つついて、少しうつむく。
しかし美人だな、そんなことを俺は思ってしまう。
先輩は気を取り直したらしく、すっと顔を上げて話し始めた。
「ひとめぼれ、っていうのかな。この一ヶ月、毎晩江藤君が夢に出てくるの」
え?なんで。俺は自分がイケメンじゃ無いのわかってるんですけど。モテる要素も無いですよ?
野上先輩は、真顔で俺に言った。
「江藤君と私は、将来結婚するの。それで平凡だけど本当に幸せな一生を送るの。そういう夢を毎晩見たら、それは意識するに決まってるじゃないの。で、確かめようと思って」
俺は唖然とした。あの走馬燈に現れたすらっとした美人は野上先輩なのか?
ぼんやりとした印象しかないけど。それに、なにを確かめるんだ??
「なにを確かめようって言うんですか?」
思わず口に出してしまった。野上先輩は、少し微笑んでから俺に答えた。
「私の気持ちが本当かどうか、会ったらわかるかなって」
俺は一つ大きく深呼吸をしてから、野上先輩に聞いてみた。
「それでどうでしたか?」
先輩は、こんどはにっこりと笑って答えた。
「確信したわ。私、江藤君となら幸せになれる」
それに、と野上先輩は付け加えた。
「私は、江藤君を絶対幸せにする」
俺もようやく正気を取り戻した。
こんな無茶な話は数ヶ月ぶりだ。
サリーの見せてくれた走馬燈が頭の中で蘇る。
俺は野上先輩に向かって思い切って言った。
「新婚旅行はメキシコで子供が二人。二人とも男の子で、孫は女の子。平凡だけど幸せに俺達家族は暮らす。それで俺は80歳くらいで死ぬって話、ですか?」
野上先輩は、虚を突かれたらしく大きく目を見開き、手を口元に持っていった。
しばらくの沈黙の後、先輩は小声で俺に言った。
「なんで私が毎晩見てる夢を知ってるの?」
俺は溜め息をついて、どう答えたものか思案した。ビンゴか。で、どうする?
良いアイディアは浮かばない。当然だよな。この場ですぐに解決できるはずも無い。ここは一旦、退却だな。
俺は答えた。
「なぜ俺がその夢を知っているかも含めて、今度、改めてじっくり話をしましょう。それでいかがでしょう?」
野上先輩は、うんうんと肯いてから言った。
「江藤君、私のこと、変人扱いしないでくれてありがとう。連絡先教えてもらえる?」
ああもちろん、と俺は答えた。IDを交換する。
俺、これから部活なんで失礼します。
野上先輩も気を取り直したらしく、自信に満ちた笑顔に戻って、
私も部活だわ、とつぶやいてから、片手を振って、またね、と言って颯爽と去って行った。
いつもの野上先輩だ。さて、どうしたものか。
とりあえず今晩サリーに相談してみるか。
早速、野上先輩からのメッセージが入っている。
「江藤君。さっきは、ごめんなさい。びっくりさせたと思う。私もびっくりした。でも私は本気だからね」
これは、返事のしようが無いな。
朝、登校して靴箱を開けると上履きの上に、ちょこんと封筒が置かれていた。
俺は固まってしまった。
このネット社会で、なんという古典的な。いたずらかな?
サリーが、こちらの妙な様子に気がついたようで尋ねてきた。
「勇気、どうしたの?なにかあった??」
俺は気を取り直し、素早く封筒をカバンの中に放り込み答えた。
「いや、なんでもない」
そう、なにも起こるはずがないよな。大方、佐々木あたりのいたずらに違いない。
休み時間、サリーが女子軍団と楽しそうに話しているのを確認してから、
俺はさりげなく教室の外に出た。
普段閉鎖されている屋上への階段の踊り場で、封筒を開けてみる。
便せんが一枚入っている。
開いてみると生真面目な女性らしい文字でこう書かれていた。
「江藤勇気様 突然のお手紙でごめんなさい。お話ししたいことがあります。今日の放課後、体育館の裏の用具小屋の前に来てもらえますか?」
署名は、野上亞紀、となっている。
野上先輩?2年生の、あの野上先輩??
女子バスケ部の次期主将。背がすらっと高くてボーイッシュな特上美人。
周囲にある他の高校も含めて、めちゃくちゃもてて、
告白されまくっているけど、全然男子と付き合おうとしないとの噂。
1年坊主の俺でもそのくらい知ってる有名人。
一度、話しかけられたな、転がってきたバスケのボールを投げてよこしてと。
雨の日の部活時に体育館でサーキットトレーニングをしていたときのことだ。
それ以外に接点は無い、はず。
俺になんの話だろう?見当もつかない。
なんか怒られるのかな。
イヤな予感しかしないけど、心当たりも無い。
便せんを封筒にしまいポケットに入れて、俺は教室に戻った。
どうしようもないな。会って話すか。
俺は、急いで身支度をして素早く教室を出る。
高橋さんと楽しそうに話しているサリーに一声掛けた。
「サリー、俺ちょっと用事があるから、先に部活行ってるぞ」
こちらも見ずに、サリーは片手をひらひらと振る。
随分扱いがぞんざいになってきたな。全力サポートが聞いて呆れる。
まあ今日は好都合だけど。
後ろから、あははと朗らかに笑うサリーの声が聞こえた。
人気の少ない体育館の裏に呼び出しというのは、なかなか剣呑だ。
野上先輩の手下かなんかに囲まれてボコボコにされたりして。
それはあり得ないとしても、一体何だろう。
用具小屋の前に人影があった。
野上先輩一人だな。ボコボコ、というわけではなさそうだ。
先輩がこちらに気がついて、片手を振る。こちらは会釈で返す。俺は言った。
「野上先輩、お手紙ありがとうございました。なんのお話でしょうか?」
相手は先輩だし丁寧語だよな、普通。
少し慌てた感じで、野上先輩は目を見開き、首を小刻みに小さく振ってから答えた。
「あのね、江藤君。あ、江藤君って呼んで良い?」
もちろんいいですよ、それで?
大きく深呼吸をしてから、野上先輩はこちらの目を睨み付けるような勢いで言った。
「江藤君のことが好きです。付き合ってください」
は?なんておっしゃいました??
それにまた随分男らしい告白だ。
俺は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていたに違いない。
慌てて真顔に戻して一息つく。どう対応したものか?
「あの、まだ野上先輩とは、まともにお話ししたこともないのですけど」
ああ、と先輩は溜め息を一つついて、少しうつむく。
しかし美人だな、そんなことを俺は思ってしまう。
先輩は気を取り直したらしく、すっと顔を上げて話し始めた。
「ひとめぼれ、っていうのかな。この一ヶ月、毎晩江藤君が夢に出てくるの」
え?なんで。俺は自分がイケメンじゃ無いのわかってるんですけど。モテる要素も無いですよ?
野上先輩は、真顔で俺に言った。
「江藤君と私は、将来結婚するの。それで平凡だけど本当に幸せな一生を送るの。そういう夢を毎晩見たら、それは意識するに決まってるじゃないの。で、確かめようと思って」
俺は唖然とした。あの走馬燈に現れたすらっとした美人は野上先輩なのか?
ぼんやりとした印象しかないけど。それに、なにを確かめるんだ??
「なにを確かめようって言うんですか?」
思わず口に出してしまった。野上先輩は、少し微笑んでから俺に答えた。
「私の気持ちが本当かどうか、会ったらわかるかなって」
俺は一つ大きく深呼吸をしてから、野上先輩に聞いてみた。
「それでどうでしたか?」
先輩は、こんどはにっこりと笑って答えた。
「確信したわ。私、江藤君となら幸せになれる」
それに、と野上先輩は付け加えた。
「私は、江藤君を絶対幸せにする」
俺もようやく正気を取り戻した。
こんな無茶な話は数ヶ月ぶりだ。
サリーの見せてくれた走馬燈が頭の中で蘇る。
俺は野上先輩に向かって思い切って言った。
「新婚旅行はメキシコで子供が二人。二人とも男の子で、孫は女の子。平凡だけど幸せに俺達家族は暮らす。それで俺は80歳くらいで死ぬって話、ですか?」
野上先輩は、虚を突かれたらしく大きく目を見開き、手を口元に持っていった。
しばらくの沈黙の後、先輩は小声で俺に言った。
「なんで私が毎晩見てる夢を知ってるの?」
俺は溜め息をついて、どう答えたものか思案した。ビンゴか。で、どうする?
良いアイディアは浮かばない。当然だよな。この場ですぐに解決できるはずも無い。ここは一旦、退却だな。
俺は答えた。
「なぜ俺がその夢を知っているかも含めて、今度、改めてじっくり話をしましょう。それでいかがでしょう?」
野上先輩は、うんうんと肯いてから言った。
「江藤君、私のこと、変人扱いしないでくれてありがとう。連絡先教えてもらえる?」
ああもちろん、と俺は答えた。IDを交換する。
俺、これから部活なんで失礼します。
野上先輩も気を取り直したらしく、自信に満ちた笑顔に戻って、
私も部活だわ、とつぶやいてから、片手を振って、またね、と言って颯爽と去って行った。
いつもの野上先輩だ。さて、どうしたものか。
とりあえず今晩サリーに相談してみるか。
早速、野上先輩からのメッセージが入っている。
「江藤君。さっきは、ごめんなさい。びっくりさせたと思う。私もびっくりした。でも私は本気だからね」
これは、返事のしようが無いな。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる