死神見習いと過ごす最後の一年

小泉洸

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最後の日の朝

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 今日が最後の一日か。

その割に、昨日はよく眠れた、と俺は思った。

天気はまあまあ、雲が少しあるかな。暑くも無く寒くも無し、

逝くにはちょうどいいお日和と言うことだ。


朝食の支度をしてサリーを待つ。

あれ?起きてこないな?珍しいな寝坊か?

最終日に寝坊とは、頼りにならんな。

俺は、サリーの部屋のドアをノックしてから、入るぞと声を掛けて中に入った。

 サリーはまだベッドの中で目を瞑っていた。

おかしい。寝坊していても俺が部屋の中に入ると目を覚ますのが普通だったのに。

俺はベッドに近づいた。

少しサリーの息が荒いのに気がついた。

熱でもあるのか?

俺は少女の額に手を当ててみた。

熱い、やっぱり熱がある。俺は声を掛けた。

「大丈夫か?苦しいのか?風邪でも引いたか?」

少女は小さく肯いて目を開けて言った。

「ごめんなさい。体調が悪いみたい」

俺は溜息をついて言った。

「朝ご飯は、ここで食べるか?それとも起き上がれる?」

少女は小さな声で答えた。

「ちょっと、食べるの無理っぽい」

食いしん坊のサリーが食べたくないというのは、かなりしんどいと言うことだな。

俺は言った。

「少し待ってろよ」

俺は台所に戻り、冷凍庫から氷嚢を取り出してタオルを巻き、

水を汲んで風邪薬を持ってサリーの部屋に引き返した。

背中を支えて少し少女を起こし、薬を飲ませてから寝かしつけ、額に氷嚢を当てた。

少女は小さな声で言った。

「勇気、ありがと。少し楽になった」

俺は言った。

「体温を測ってみようか?」

少女は、首を小さく振って言った。

「大丈夫」

俺は言った。

「そうか。じゃあ、おとなしく寝てろよ。俺が学校には連絡しておくから」

少女は大きく目を見開いて言った。

「勇気、学校へ行くの?」

俺は笑って言った。

「今日は平日だぞ。授業は普通にある。それから」

続けて言った。

「机の中とか全部片付けてこないといけないからな。今日は俺の最終日だけど、だからこそ普通に過ごすつもりだ。サリーはゆっくり休んでろよ、部活は休んで、早めに帰るからさ」

少女の目から涙がぽろぽろとあふれ出す。

俺は、少女の手をぎゅっと両手で握った。サリーも握り返す。

沈黙。

俺は言った。

「俺も休んで、サリーを看病した方が良いか?」

うん、うん、と少女が肯いた。

そうか。一日くらい、ずる休みしたっていいよな。俺の最後の一日だし。

俺はサリーに言った。

「わかった。今日は俺も風邪だってことにして休むよ。ずっと家にいる。最後の日の過ごし方としては、悪くないさ」

続けて俺は笑って言った。

「好きな子とずっと一緒に最後の日を過ごすのは、うん、悪くない」

また少女の目から涙がぽろぽろとあふれ出した。よしよし、と頭をなでる。

しばらくして少女は寝息になった、泣き疲れて眠ったようだった。

俺は静かにサリーの部屋を出て、朝食を取った。

最後の朝飯だ。今日のスクランブルエッグも美味くできた。

朝食を終えて、片付けた後、自分の部屋に行って、

俺は静かに最後の手紙を家族に宛てて書き始めた。父親へ、母親へ、そして妹へ。

書き終えた後、そっとサリーの部屋に行く。まだ眠っているようだ。

ベッド脇の椅子に座って、本を読む。これが最後の読書になるのか。終わりまで読めるかな?


 お昼時になったが、俺は昼飯を食う気にはならなかった。

さすがに死の恐怖って奴が押し寄せてくる。

あと9時間くらいか。

死刑囚は最後に出された飯を食べられないと聞いたことがある。

そりゃそうだ。平気で食べられる方がおかしい。食欲なんて湧くはずもない。

俺は静かに読書を続けた。厳密に言えば、中身はちっとも頭に入らず、活字を目で追うだけだったが。
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