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2章
21話
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あれから私はレックス殿下、ロイ、アスファと共に食堂へ向かっていた。
バダムはゲオルグに報告すると言って去っていき、アスファは私達の前を歩いている。
食堂に向かっている中、ロイが話を始めていた。
「リリアンさんが魔力切れになることは危惧していたけど……来て三日で倒れるとは思わなかったよ」
「えっ?」
そう言われて……レックス殿下も頷き、私は今までのことを思い返す。
今思うと聖堂に行くと言ってから……レックス殿下とロイは、私が聖堂に来るべきではないと考えていた気がする。
あれは聖堂で魔力が増加するから、私がやらかすことを確信していたのかもしれない。
ロイの発言を聞きながら、レックス殿下は頷いて。
「バダムがネーゼの知り合いと言うから安心していたが、期待しすぎていたようだ」
「いや……あれに関しては、何度か失敗したけど数時間ぐらいで成功させたリリアンさんが、おかしいと思う」
レックス殿下が怒り、ロイは困惑した様子で呟く。
確かに……いきなり教わった魔法をすぐに扱えるようになったのは、私でも異常だと思ってしまう。
困惑しているロイに対して、私はすぐ使えるようになった理由を話す。
「私が使える聖魔法の応用だと理解したら、失敗せず使えるようになっていました」
「使える聖魔法って……ああ、それなら、バダムさんが忠告しなかったのは仕方ないんじゃないかな」
回復魔法という点を伏せながら話したけど、ロイは納得してくれた様子だ。
「っっ……なるほど、そういえばそうだったな」
そしてレックス殿下も気づいたみたいで、複雑そうな表情を浮かべている。
納得できたからか、レックス殿下はロイに目をやって。
「は、話は変わるがロイよ……今日はどうだった?」
「色んな聖魔法が僕でも扱えて楽しかったよ。カレンさんの方が凄かったけど、参考になった」
そうロイが言って――ゲームではカレンの魔法を、ロイがずっと見学していたことを思い出す。
そして休日となる明日、魔力を使いすぎて魔法が使えないゲームの主役カレンはロイと魔法について話をしたりして、二人で過ごしていたはず。
ゲーム通りならロイはカレンの傍にいるはず……私の意識が失っている間は、ゲーム通りになっていたと考えるべきでしょう。
意識が戻ったからロイが私の元に来て、そこはゲームと違うけど……その程度なら大丈夫のはず。
「カレンは、どうでしたか?」
「聖魔力の素質があるから、バダムさんも驚いていたよ……試練もあるし、カレンさんとは更に差ができてしまいそうかな」
どうやら今日の授業を経て、ロイは聖魔力と魔法に関してカレンには敵わないと考えていそう。
私としてはロイがこうして聖堂で魔法を学んでいることに対して、驚くしかない。
それでも少し落ち込んでいるロイを、私は眺めて話す。
「私と聖魔力に優れているカレンさんが飛び抜けているだけで、ロイ様も凄いと思っています」
「リリアンの言う通り、魔法学園でトップの成績なのだから、ロイは自信を持つべきだ」
私がロイを励ますと、レックス殿下も賛同してくれる。
「リリアンさん、レックス君……そうだね」
ロイは自信を取り戻したようで、私達は食堂に到着していた。
◇◆◇
食事を終えて、私とカレンは部屋に戻っていた。
食堂で再会したカレンは今日、魔力がほとんど尽きるまで魔法を使ったようで、明日はロイと共に休むらしい。
私が意識が戻ってから食堂に来るまでの話をすると、カレンは羨ましそうな表情を浮かべて。
「レックス殿下とロイが話しているところは、見たかったかな」
「それは……いつものことだと思うのですけど」
変わっている部分は、ロイを励ましたぐらいな気がする。
そう考えていると、カレンは楽しそうな表情を浮かべて。
「ゲームだと聖堂はロイだけしかいないイベントなのよ。そこにレックス殿下とリリアンがいる時点で、ゲームとは全然違って楽しそうよ」
確かに……聖堂でレックス殿下が会話をしていることが、ゲームを知っている私とカレンからするとおかしい。
それにしてもカレンは一学期までとは違って、夏休みの今はどこか余裕がありそうな気がする。
顔に出ていたのか、カレンが私を見て呟く。
「流石に今回は、何も問題は起きなさそうだからね」
「そうですね。ゲームで何も起きなかった以上、大丈夫のはずです」
この夏休みで問題があるとすれば試練ぐらいだけど、大賢者ゲオルグが抑えてくれる。
カレンは何も起きないと確信している様子で、私は今までの出来事を思い返す。
――全てゲームで起こった出来事が変化しただけで、ほとんどゲームと変わっていない。
それなら夏休みの間は何も問題が起きないはずだから……私が心配性なだけなのかもしれない。
カレンが何も起きないと考えているのは、聖堂の力を体感しているからでしょう。
「ロウデス教が私を捕らえようと考えていたとしても……ここが邪神の力と相性が悪いのは、間違いありません」
聖魔力は闇魔力の対となる力で、邪神ロウデスの力とは相性が悪い。
ここには大賢者ゲオルグ、そしてネーゼの知り合いであるバダムがいる。
私の発言に賛同するように、カレンが頷いて。
「ゲームでもこの聖堂内ではロウデス教と一切関わらなかったし、優秀な魔法士や騎士も多く滞在している。ここでリリアンを捕らえようとするのは不可能よ」
「そうですね」
私よりもゲームについて遙かに詳しいカレンだからこそ、聖堂内が安全だと理解しているに違いない。
カレンの発言は正しいと思うけど……それでも、私は何か起こるのではないかと不安になってしまう。
この不安を取り除くために、私は気になっていることをカレンに聞く。
「……アスファがこれからどう行動するのか、教えてください」
カレンからこれから何が起こるのかは聞いているけど、アスファのことは詳しく聞いていなかった。
ゲームではカレンの護衛をしていたアスファが今、私の護衛をしていることが、気になってしまう。
それに、ネーゼの知り合いとして登場したけど、バダムのこともよくわかっていない。
ゲーム内のアスファについて、そして私が意識を失って戻るまでのバダムの行動について……私は、カレンから聞くことにしていた。
バダムはゲオルグに報告すると言って去っていき、アスファは私達の前を歩いている。
食堂に向かっている中、ロイが話を始めていた。
「リリアンさんが魔力切れになることは危惧していたけど……来て三日で倒れるとは思わなかったよ」
「えっ?」
そう言われて……レックス殿下も頷き、私は今までのことを思い返す。
今思うと聖堂に行くと言ってから……レックス殿下とロイは、私が聖堂に来るべきではないと考えていた気がする。
あれは聖堂で魔力が増加するから、私がやらかすことを確信していたのかもしれない。
ロイの発言を聞きながら、レックス殿下は頷いて。
「バダムがネーゼの知り合いと言うから安心していたが、期待しすぎていたようだ」
「いや……あれに関しては、何度か失敗したけど数時間ぐらいで成功させたリリアンさんが、おかしいと思う」
レックス殿下が怒り、ロイは困惑した様子で呟く。
確かに……いきなり教わった魔法をすぐに扱えるようになったのは、私でも異常だと思ってしまう。
困惑しているロイに対して、私はすぐ使えるようになった理由を話す。
「私が使える聖魔法の応用だと理解したら、失敗せず使えるようになっていました」
「使える聖魔法って……ああ、それなら、バダムさんが忠告しなかったのは仕方ないんじゃないかな」
回復魔法という点を伏せながら話したけど、ロイは納得してくれた様子だ。
「っっ……なるほど、そういえばそうだったな」
そしてレックス殿下も気づいたみたいで、複雑そうな表情を浮かべている。
納得できたからか、レックス殿下はロイに目をやって。
「は、話は変わるがロイよ……今日はどうだった?」
「色んな聖魔法が僕でも扱えて楽しかったよ。カレンさんの方が凄かったけど、参考になった」
そうロイが言って――ゲームではカレンの魔法を、ロイがずっと見学していたことを思い出す。
そして休日となる明日、魔力を使いすぎて魔法が使えないゲームの主役カレンはロイと魔法について話をしたりして、二人で過ごしていたはず。
ゲーム通りならロイはカレンの傍にいるはず……私の意識が失っている間は、ゲーム通りになっていたと考えるべきでしょう。
意識が戻ったからロイが私の元に来て、そこはゲームと違うけど……その程度なら大丈夫のはず。
「カレンは、どうでしたか?」
「聖魔力の素質があるから、バダムさんも驚いていたよ……試練もあるし、カレンさんとは更に差ができてしまいそうかな」
どうやら今日の授業を経て、ロイは聖魔力と魔法に関してカレンには敵わないと考えていそう。
私としてはロイがこうして聖堂で魔法を学んでいることに対して、驚くしかない。
それでも少し落ち込んでいるロイを、私は眺めて話す。
「私と聖魔力に優れているカレンさんが飛び抜けているだけで、ロイ様も凄いと思っています」
「リリアンの言う通り、魔法学園でトップの成績なのだから、ロイは自信を持つべきだ」
私がロイを励ますと、レックス殿下も賛同してくれる。
「リリアンさん、レックス君……そうだね」
ロイは自信を取り戻したようで、私達は食堂に到着していた。
◇◆◇
食事を終えて、私とカレンは部屋に戻っていた。
食堂で再会したカレンは今日、魔力がほとんど尽きるまで魔法を使ったようで、明日はロイと共に休むらしい。
私が意識が戻ってから食堂に来るまでの話をすると、カレンは羨ましそうな表情を浮かべて。
「レックス殿下とロイが話しているところは、見たかったかな」
「それは……いつものことだと思うのですけど」
変わっている部分は、ロイを励ましたぐらいな気がする。
そう考えていると、カレンは楽しそうな表情を浮かべて。
「ゲームだと聖堂はロイだけしかいないイベントなのよ。そこにレックス殿下とリリアンがいる時点で、ゲームとは全然違って楽しそうよ」
確かに……聖堂でレックス殿下が会話をしていることが、ゲームを知っている私とカレンからするとおかしい。
それにしてもカレンは一学期までとは違って、夏休みの今はどこか余裕がありそうな気がする。
顔に出ていたのか、カレンが私を見て呟く。
「流石に今回は、何も問題は起きなさそうだからね」
「そうですね。ゲームで何も起きなかった以上、大丈夫のはずです」
この夏休みで問題があるとすれば試練ぐらいだけど、大賢者ゲオルグが抑えてくれる。
カレンは何も起きないと確信している様子で、私は今までの出来事を思い返す。
――全てゲームで起こった出来事が変化しただけで、ほとんどゲームと変わっていない。
それなら夏休みの間は何も問題が起きないはずだから……私が心配性なだけなのかもしれない。
カレンが何も起きないと考えているのは、聖堂の力を体感しているからでしょう。
「ロウデス教が私を捕らえようと考えていたとしても……ここが邪神の力と相性が悪いのは、間違いありません」
聖魔力は闇魔力の対となる力で、邪神ロウデスの力とは相性が悪い。
ここには大賢者ゲオルグ、そしてネーゼの知り合いであるバダムがいる。
私の発言に賛同するように、カレンが頷いて。
「ゲームでもこの聖堂内ではロウデス教と一切関わらなかったし、優秀な魔法士や騎士も多く滞在している。ここでリリアンを捕らえようとするのは不可能よ」
「そうですね」
私よりもゲームについて遙かに詳しいカレンだからこそ、聖堂内が安全だと理解しているに違いない。
カレンの発言は正しいと思うけど……それでも、私は何か起こるのではないかと不安になってしまう。
この不安を取り除くために、私は気になっていることをカレンに聞く。
「……アスファがこれからどう行動するのか、教えてください」
カレンからこれから何が起こるのかは聞いているけど、アスファのことは詳しく聞いていなかった。
ゲームではカレンの護衛をしていたアスファが今、私の護衛をしていることが、気になってしまう。
それに、ネーゼの知り合いとして登場したけど、バダムのこともよくわかっていない。
ゲーム内のアスファについて、そして私が意識を失って戻るまでのバダムの行動について……私は、カレンから聞くことにしていた。
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