悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓

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2章

55話

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 その後――中間試験の初日が終わったけど、筆記試験だから何も問題はない。
 間違いなく満点で、レックス殿下はやる気に満ちている。

「さて……俺は、明日の試験に備えるとしよう」

 そう言って、レックス殿下は教室から出ていた。
 いつもなら一緒に馬車の元まで行くけど、明日の試験に備えたかったのかもしれない。

 私はルートに馬車まで送ってもらいながら、明日以降のことを考える。
 明日の筆記試験、明後日の実技試験は何も問題ないはず。
 ゲーム通りイベントが発生するのなら、三日後のダンジョン探索の実技試験で仕掛けてくる。
 まだ大丈夫だと考えていると……ルートの声が聞こえた。

「リリアン様」

「な、なんですか?」

 かなり集中していたようで、動揺しながら返事をしてしまった。
 ルートは、そんな私を気にせず話す。

「話したいことがあります。少し、よろしいでしょうか?」

「はい。いいですよ」

「ありがとうございます……ここだと誰が聞いているのかわかりませんから、場所を変えましょう」

 ルートの様子がおかしいことは、気になっていたことでもある。
 特に用事もないから頷いて、私はルートの後ろを着いていく。
 また何か迷走するのかもしれないし、話したいことがあるのなら聞いておきたい。

 明日は筆記試験だから、変な学習方法でも考えたのだろうか?
 そんなことを考えながら歩いていると……木々が生い茂るコロシアムの裏に到着して、驚いてしまう。
 ゲームのイベントであった気がして、私は思わず尋ねる。

「えっと……ルート様?」

 この時期とこの場所で――確か、ゲームで主役カレンがルートから告白を受けていた。
 思い出して動揺していると、ルートが真剣な眼差しで話した。

「私はレックス様の護衛ですが――リリアン様のことが、好きになってしまいました」

「それ、は……」

 ルートの発言を聞いて、私は驚くしかない。
 ゲームの発言と似たルートの告白だけど……ルートが、私に対してそんなことを言うことが信じられなかった。

 これは――ゲームの力が働いている?
 いいえ。
 ここまで違うのは明らかにおかしい。

「――リリアン様。失礼致します」

 そして――動揺していた隙を突くように、ルートが私の手首に触れた。
 私が思わず魔力を籠めてルートを弾いたのは、引き寄せようとして反射的に動いたというのもある。

 抱きしめようとしたことに抵抗した。
 それもあるけど――実際はルートに触れた瞬間、闇の魔力を感じ取ったからだ。
 後ろに飛び退いたルートは驚きながらも、私を眺めて話す。

「完璧だと思ったのですが……流石はリリアン様です」
 
 そう言って……体のどこかに着けている魔道具の影響か、ルートの体内を闇の魔力が巡る。
 変貌したルートを見て、私はロウデス教に操られているのだと理解した。

「まさか、ルートが操られるとは……すぐ正気に戻してみせます!」

 操られているのなら、聖魔力を流すことで元に戻せるはず。
 杖を取り出して聖魔力の閃光を繰り出すけど、闇魔力が消えたと同時に発生した。

「――えっ!?」

 魔法を繰り出したことで、私は隙ができている。
 魔道具の力で無効化されたことに動揺して動くことができず、操られたルートが迫る。

 一学期を思い返すと、ロウデス教は攻略キャラのロイも手駒にしようとしていた。
 私達の違いにルートが追い詰められているのなら、取り込まれてもおかしくはない。
 ルートは剣で私の意識を奪い攫うようで、この間合いだと対処できない。

 思わず目を閉じた時――剣と剣が交わる音が響く。

「――リリアン!?」

 音と声を聞いて、私は目を開ける。
 聞こえた声はルートではなく……私とルートの間に入り、剣の攻撃を剣で受けたレックス殿下のものだった。

 テスト試験に集中するため、私の護衛をルートに任せて帰ったはず。
 どうやらルートも予想外の様子で、後方に跳び距離をとって叫ぶ。

「そんな……レックス殿下が、どうしてこの場に!?」
 
「ルートの様子がおかしいとカレンから聞いてな……悪いが、俺達は遠くで見させてもらった」

 私は時々女子寮のカレンの部屋に行くことはレックス殿下とロイも知っているけど、話内容は知らない。
 女子同士話したいことがあると言えば、それ以上追及されることもなかった。
 カレンはルートを警戒していたから、二人きりになるのを避けようとしてくれたのでしょう。
 そしてカレンとロイも姿を見せて……カレンが話す。

「……ルート様がロウデス教に操られている可能性があると、私がレックス殿下とロイ様に話していました」

「えっ?」

 カレンの発言に私が驚くと、ロイが詳しく説明してくれる。

「もしロウデス教に操られているなら、リリアンさんと二人きりにしたら行動を起こすと考えていたんだよ」

 ロイが尋ねると、ルートは頷いた。

「そうです。中間試験の間にリリアン様と二人きりになる機会があれば、捕えるよう命令を受けていました」

 人の心を操る魔法道具は本人の意思があり、抵抗することができるらしい。
 ルートの意思による抵抗によるものか、嘘はつけていないようだ。
 とにかく今は――ルートを正気に戻すことだけを考えよう。
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