婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません

黒木 楓

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29話 カルス視点

 カルスがパトリシアを戻そうとするも失敗してから1ヶ月が経ち――ルジャス領は大混乱に陥っていた。
 
 今までと違い、パトリシアが居なくなり完璧の成果が出せなくなくなったことで取引は激減し、領民は離れていく。

 エバンドが言うには、今の成果はパトリシアが来る前よりも減少しているらしい。

 今までやる気のなかった領民がやる気を出し、パトリシアが居なくなったことでルジャス領を見限り、新たな場所に向かうと言って去った者達は多く、それは大きな損失だった。

 カルスは自分の部屋でエバンドから今までの報告を聞いて、頭を抱えながら嘆く。

「僅か1ヶ月でここまでの事態になるとは……俺がパトリシアを連れ戻せていれば……」

「パトリシア様は自分の凄さに気付いていたとなれば、戻ってくる可能性は低いので仕方がありません」

 エバンドにパトリシアを連れ戻せなかったと報告した時、諦めた様子ながら余裕があってカルスは安堵していた。

 どうやらエバンドは前に戻ったとしても、忙しかった日々が終わる程度にしか考えているようで……エバンドは信頼できる部下だ。

 まだ1ヶ月しか経っていないから、パトリシアは戻ってくると言って誤魔化しているが……誤魔化すのも限度がある

 パトリシアが居なくなって1ヶ月しか経っていないことから、今は問題の先送りで済ませている。

 取引先の反応を見ると、もう1ヶ月は持たないのがエバンドの推測で……どうすべきか悩み、眠れない日々を送っていた。

 パトリシアが戻ってくると何度も言っているも、1ヶ月経っても戻らない辺り――大半の領民は察しているのかもしれない。

 それでもパトリシアが戻ってくると僅かな希望を抱く者と、変化を望まない者しか残っていない。

 後1ヶ月もすれば、僅かに残っているパトリシアが戻ってくると信じている者達も見限るに違いない……カルスはこれからのことを考え、恐怖するしかなかった。

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