必要ないと言われたので、元の日常に戻ります

黒木 楓

文字の大きさ
71 / 72

71話

 ハロルドが魔道具を駆使して、私とウォルフが協力する。

 それによって――ハロルドの力によって、ライオスの杖による攻撃を受け流していた。

 膨大な魔力による白い柱は消え――敷地に傷一つつかなかったことに、ライオスは呆然としながら叫ぶ。

「ば、馬鹿な……この杖の、この力に勝てる者など存在しない!!」

 侵入遮断の結界は解除しているから、接近したウォルフがライオスの首を掴む。

「ライオス様に何を!?」

 賢者ラーゴアが杖を向けた瞬間――ワイバーンを討伐し、落下したズビアがラーゴアの息の根を止めていた。

「それは私が言いたい……流石にさっきの杖による攻撃は、私でも死を悟った……ハロルドには感謝するしかないな」

 ウォルフ首を掴んで持ち上げることで、ライオスは思考を乱されて魔法が使えなくなっている。

 持ち上げられながらも、私を睨んでライオスが再び叫ぶ。

「ば、馬鹿な……国を1つ落とせるほどの戦力を駆使して、なぜ崩せぬ!?」

 ワイバーンは全力で森を焼き尽くそうとしていたから、ズビアの奇襲に為す術もなく仕留められている。

 どうやらライオスは、切札の杖で確実に勝てると思っていたようで、それは私達も同じだった。

 普通なら無理だと確信している……私、ウォルフ、ズビアは諦めていた。

 そして――唯一諦めていないハロルドのお陰で、私達は助かり、ライオスに打ち勝つことができていた。

 理解できない表情を浮かべるライオスに、私は告げる。

「私達がそれ以上に凄いからよ……この森に住んでいるのは、ここが私にとって一番安全だからだもの」

「な、何を言っている?」

「精霊の加護、大地の魔力の巡り……それを全て理解して、世界で一番ここが安全だと確信したから住んでいるのよ」

 魔力を使い過ぎて気分が高揚しすぎている私は、思わず語る。

「それでも、ライオスの集めていた力はとてつもなかったから……本来なら森の破壊に成功して、ライオスが勝っていたわ」

「そ、そうだ! 私はお前達の戦力を完全に理解した上で乗り込んだというのに、どうして……」

 ここが世界で一番安全だと確信していても、ライオスの戦力はとてつもなかった。
 
 普通に決戦になれば負ける可能性はあったけど……私が勝つと確信している理由を、ライオスに対して告げる。

「私が勝てたり理由は――ハロルドにあるわ」

「なんだと!?」

「この国で味方になってくれる人は一切居ない……ウォルフとズビアは契約しているからで、本心から心を通わせる人が居なければ、あの杖の攻撃で私の精神は間違いなく押し潰されていた」

 そんな中――ハロルドだけは、私の帰りを待っててくれていた。

 照れ隠しで知らないフリをしていたけど……聖女の騎士になりたい理由も、私の傍に居たいからだと理解している。

 そこまでしてくれる人が傍に居て、必ず私を守ってみせると魔道具を駆使しているのだから……私も迷いを断ち切って、ハロルドに全てを委ねることができる。

 私の聖魔力を全て受け取り、魔道具を駆使したハロルドは――ライオスの杖による攻撃を受け流すことができていた。

あなたにおすすめの小説

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

ベールを上げた新郎は『君じゃない』と叫んだ

ハートリオ
恋愛
結婚式で新郎に『君じゃない』と叫ばれたのはウィオラ。 スピーナ子爵家の次女。 どうやら新郎が結婚する積りだったのは姉のリリウム。 ウィオラはいつも『じゃない方』 認められない、 選ばれない… そんなウィオラは―― 中世ヨーロッパ風異世界でのお話です。 よろしくお願いします。

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

婚約破棄? ありがとうございます。やっと本当の人生が始まります

たくわん
恋愛
婚約破棄された令嬢がすべきことといえば、泣くか、喚くか、復讐を誓うか——らしい。 リーナ・フォスター公爵令嬢がしたことは、荷造りだった。 「冷たくて人を愛せない」と王太子に切り捨てられた夜、リーナは一度も振り返らずに王城を出た。向かった先は辺境の荒れ地。目的は薬草の栽培と薬品事業の立ち上げ。前世の記憶から温めてきた、誰にも言えなかった計画の実行だ。 リーナはそこで不器用だが誠実な騎士ヴァルターと出会う。一方、残された王太子とその新しい婚約者は、少しずつ、静かに、取り返しのつかない方向へと歩んでいたーー。

文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる── 侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。 だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。 アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。 そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。 「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」 これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。 ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。 4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。

【結婚式当日に捨てられました】身代わりの役目は不要だと姉を選んだ王子は、隣国皇帝が私を国ごと奪いに来てから後悔しても手遅れです。

唯崎りいち
恋愛
結婚式当日、私は“替え玉”として捨てられた。 本物の姉が戻ってきたから、もう必要ないのだと。 けれど—— 私こそが、誰も知らなかった“本物の価値”を持っていた。 世界でただ一人、すべてを癒す力。 そして、その価値を知るただ一人の人が、皇帝となって私を迎えに来る。 これは、すべてを失った少女が、本当に必要とされる場所へ辿り着く物語。

夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです

藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。 理由は単純。 愛などなくても、仕事に支障はないからだという。 ──そうですか。 それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。 王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。 夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。 離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。 気づいたときにはもう遅い。 積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。 一方で私は、王妃のもとへ。 今さら引き止められても、遅いのです。