必要ないと言われたので、元の日常に戻ります

黒木 楓

文字の大きさ
72 / 72

72話

 あれから数ヶ月後――元ルドロス国は、平和のままだった。

 どうやらライオスは国を乗っ取ってから魔道具によって聖域を完成させたようで、それがモンスター-が狂暴化していない理由のようだ。

 あの後、私達や森の生物や精霊を根絶やしにしようとしたライオスは、ウォルフが仕留めている。

 これからこの国のことは、元ルドロス国の人達が何とかすると考えて、私は普段通り、森の中でハロルドと日常を過ごしていた。

 ウォルフとズビアは時々私達の家にやって来るけれど、敵対する存在が居なくなったことであまり来ていない。

 そして――ある日、いつも通りの日常を送っていると、ハロルドが私に尋ねる。

「エレナさん……これで、よかったのでしょうか?」

「よかったって、どういうこと?」

 これでいいに決まっているけど、ハロルドの発言が気になって尋ねる。

 ハロルドは不安な表情を浮かべながら、話を始めていた。

「この国はライオスの計画通り進んで滅んだ……陛下と殿下が俺に頼んできた時に協力していれば、違う道もあったのかもしれません」

 どうやら……ハロルドは未だに、ディオン達の謝罪の件を気にしているようね。

 あの時もし、ハロルドがディオン達の側についたら、ハロルドの為に私も従っていたかもしれない。

 そうなればライオスの計画も破綻していたはずで、今とは違う未来があり、ハロルドはそれを想像している。

 その迷いを断ち切るため――私は、ハロルドに告げる。

「ハロルド……私はディオンのことが大嫌いだったのよ」

「えっ?」

 やっぱりハロルドは、自らとディオンを未だに比べていたようね。

「こうしてハロルド、ズビア、ウォルフと一緒に居られる日常が一番大事だって……私は、この三年間で気付けたわ」

 不要だと言われてもこの国に残ったのは、この日常が大切だったから。

「私は――ハロルドのことが大好きよ」

 未だにディオンと比べてしまうハロルドに対して、私は再び本心を籠めて告白する。 

 これからハロルドと恋人になり、そして夫婦になったとしても……根本は変わらない。 

 この関係、この日常がずっと続いていくことが――私の望みだった。

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

ベールを上げた新郎は『君じゃない』と叫んだ

ハートリオ
恋愛
結婚式で新郎に『君じゃない』と叫ばれたのはウィオラ。 スピーナ子爵家の次女。 どうやら新郎が結婚する積りだったのは姉のリリウム。 ウィオラはいつも『じゃない方』 認められない、 選ばれない… そんなウィオラは―― 中世ヨーロッパ風異世界でのお話です。 よろしくお願いします。

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

婚約破棄? ありがとうございます。やっと本当の人生が始まります

たくわん
恋愛
婚約破棄された令嬢がすべきことといえば、泣くか、喚くか、復讐を誓うか——らしい。 リーナ・フォスター公爵令嬢がしたことは、荷造りだった。 「冷たくて人を愛せない」と王太子に切り捨てられた夜、リーナは一度も振り返らずに王城を出た。向かった先は辺境の荒れ地。目的は薬草の栽培と薬品事業の立ち上げ。前世の記憶から温めてきた、誰にも言えなかった計画の実行だ。 リーナはそこで不器用だが誠実な騎士ヴァルターと出会う。一方、残された王太子とその新しい婚約者は、少しずつ、静かに、取り返しのつかない方向へと歩んでいたーー。

文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる── 侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。 だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。 アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。 そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。 「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」 これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。 ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。 4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。

【結婚式当日に捨てられました】身代わりの役目は不要だと姉を選んだ王子は、隣国皇帝が私を国ごと奪いに来てから後悔しても手遅れです。

唯崎りいち
恋愛
結婚式当日、私は“替え玉”として捨てられた。 本物の姉が戻ってきたから、もう必要ないのだと。 けれど—— 私こそが、誰も知らなかった“本物の価値”を持っていた。 世界でただ一人、すべてを癒す力。 そして、その価値を知るただ一人の人が、皇帝となって私を迎えに来る。 これは、すべてを失った少女が、本当に必要とされる場所へ辿り着く物語。

夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです

藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。 理由は単純。 愛などなくても、仕事に支障はないからだという。 ──そうですか。 それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。 王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。 夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。 離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。 気づいたときにはもう遅い。 積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。 一方で私は、王妃のもとへ。 今さら引き止められても、遅いのです。