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第四章:祭りと畑のレシピ
64、田島さんの畑(後半)
しおりを挟む夏休みが近づくある日、学校の先生から特別な話があった。
「みんな、来週は地域の農家さんのお手伝いに行くよ。普段の生活とは違う体験をして、自然や食べ物の大切さを学びましょう」
教室はざわついた。私も、友達の奏汰やいぶきも、少しドキドキしながらもわくわくした気持ちで聞いていた。
「え、なんでそんなことするの?」
いぶきが小声で言った。
「お菓子を作る材料って、農家さんの畑や牧場から届くから、まずその大元を知ることが大事なんだよ」
先生がにっこり笑って教えてくれた。
私はすっと納得した。そうか、毎日食べているお菓子やごはんは、土や農家さんの手間があってできるんだ。
その日の放課後、奏汰と話した。
「農家さんの手伝いって、実はお菓子作りの勉強にもなるんだね」
「そうだね。土や野菜のことを知ったら、もっと素材を大事にできるし、自分の作るものも変わるかもしれない」
そんな話をしながら、私たちは翌日を楽しみにしていた。
そして、ついに畑に向かう日が来た。
広い空の下、太陽がじりじりと照りつけている。長靴をはき、手袋をつけて、畑に一歩踏み入れると、土のにおいと夏の緑の香りが鼻をくすぐった。
「こんにちは! 今日からよろしくね」
農家のお母さんが笑顔で迎えてくれた。
「ことりさん、奏汰さん、来てくれてありがとう。今日はいろんな野菜を収穫してもらうわよ」
私は緊張しつつも「よろしくお願いします!」と元気に返事をした。
畑にはトマト、ナス、キュウリ、ピーマンなど夏野菜が色とりどりに実っていた。
「このトマトはね、毎日ひとつずつ、傷がないか丁寧にチェックしているの」
お母さんの話を聞きながら、私はトマトの茎をそっと手に取り、赤く熟した実を見つけた。
「わあ、ぷっくりしてておいしそう」
ハサミでヘタの部分を切ると、手に甘い香りが伝わってきた。
泥や虫、強い日差しの中で育てられた野菜は、スーパーで見るものよりも生命力に満ちているように感じた。
「畑に来るまでは、ただ野菜が好きなだけだったけど、こうして育てる大変さを知ると、もっと大切に食べたいなと思う」
奏汰も「素材を知ることで、料理やお菓子作りのイメージも変わる気がする」と話した。
お母さんは「収穫した野菜は、なるべく早く調理したほうがおいしいのよ。保存も工夫がいるの」
「トマトは冷やしすぎると味が落ちるから、風通しのいい場所に置くのがいいの。ナスは濡れた新聞紙に包んで冷暗所へね」
私は必死でメモを取った。
「お母さんの工夫を知ると、自分でも作ってみたくなるね」
「うん、家に帰ったらお母さんと一緒に料理してみる!」
畑で汗をかきながらも、泥まみれになりながら、私たちは笑い合った。
学校に戻れば、友達に「農家での収穫楽しかったよ」と話すと、興味を持ってくれた。
夏休みの自由研究の題材にする子もいるらしい。
今回の体験は、私の料理やお菓子作りの気持ちをもっと強くさせてくれた。
土と太陽と水の力で育つ野菜、そのひとつひとつに農家さんの知恵と愛情が詰まっている。
私もその気持ちを受け止めて、これからの学びにつなげていきたい。
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