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第四章:祭りと畑のレシピ
65、伝統という宝物(前半)
しおりを挟む夕暮れ時、農家の縁側に座っていると、オレンジ色の光がゆっくりと庭を染めていった。
田島のおじいさんとおばあさんは、昔の農業の話をゆったりと語り始めた。
「昔はな、電気なんてなかったんじゃ。夜は提灯の明かりだけで、家族みんなで火のそばに集まったもんじゃ」
おじいさんの声は、少し震えながらも温かかった。
私は、その言葉を聞きながら、ふと自分のスマホや電気の明かりが当たり前の生活を思い浮かべた。
(電気がない生活なんて、想像できないな)
「そうじゃろう。しかし昔はそれが普通だった。水をくむのも、足踏みポンプや水車を使っての手作業。体を使わんと、家も畑も守れんかった」
おばあさんもゆっくり語る。
私は、台所で使う水が蛇口から流れるのが当然と思っていたけど、昔はどうやって飲み水を確保していたんだろうと考えた。
「その時代の子どもたちは、どんな暮らしをしていたんですか?」
私が聞くと、おじいさんはにっこり笑って答えた。
「子どもは畑の手伝いもしながら、自然の中で遊び、川で魚を捕ったりしてのびのび育ったもんじゃ。テレビやゲームはないから、みんなでお話をしたり、歌を歌ったりしてな」
奏汰も「今とは全然違うんだね」と感心している。
「昔は学校も今ほど便利じゃなかった。遠くの学校まで歩く子も多かったし、学用品も揃えるのが大変じゃった」
おばあさんの話に、私は自分の教科書や文房具が当たり前のように揃っていることを思い返した。
「農作業も機械なんてほとんどなかった。草を刈るのも、田んぼを耕すのも、手と足でやっていたんじゃ」
おじいさんの話を聞きながら、私は畑の泥や土にまみれながら作業したことを思い出した。
「でもな、そうした苦労があったからこそ、今の便利な生活がある。先人たちの知恵や工夫が今につながっているんじゃよ」
おばあさんの言葉に、心がじんわり温かくなる。
私は友達に目を向けた。みんなも真剣な表情で話を聞いている。
「ねえ、みんな。今の生活は当たり前じゃないってこと、もっと知っていかないとね」
私がぽつりと言うと、奏汰がうなずいた。
「うん。だからこそ、僕たちが作るお菓子も、大切にしていきたいね」
おじいさんは「昔ながらの味や作り方も、守っていかんといけん。伝統は宝じゃ」と語った。
私はノートを開いて、その日の話をメモした。
〈昔の生活で使われていた手作り味噌の簡単レシピ〉
・大豆 300g(前日から水に浸しておく)
・塩 80g
・麹(こうじ)200g
①大豆を柔らかくなるまで煮る。
②煮た大豆をつぶし、麹と塩を混ぜ合わせる。
③よくこねて、容器に詰め、ラップをして暖かい場所に置く。
④1ヶ月ほど熟成させると味噌になる。
「昔の味噌づくりは大変だったけど、体と心が繋がっていたんだね」
夕暮れの風がそっと頬をなでる。
私たちは、昔の暮らしと今の自分たちをつなげて考え、食べ物や生活の大切さを改めて感じた。
その日の学びは、きっとこれからの生活やお菓子作りにも生きていく。
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