灯びの系譜ー静寂なる闇に芽吹くもの

武内れい

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第4章:鏡に映る心の影

78、それでも、あなたを守りたい(後半)

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 森の秘密基地にたどり着いたとき、私の胸には静かな安堵とともに、少しの緊張が混じっていた。ここは、私たちが自分たちの手で築き上げた、小さな希望の砦。
 昔はただの荒れ地でしかなかった場所が、今は森の中の隠れ家として、仲間の居場所になっている。

 枝葉の隙間から差し込む木漏れ日は、柔らかな光となって周囲を包み込み、風がざわめく音がどこか優しく感じられた。倒れた大木の切り株を囲んで積み上げた石のベンチや、苔むした地面に置かれた簡素なテーブルには、日々の暮らしの痕跡が残っている。
 ここで過ごす仲間の笑い声や、時折聞こえるささやき声が、私にとって何よりの安らぎだった。

 テーブルの前にはフィリックスが座っていた。彼は地図を広げ、周囲の動きを冷静に見つめている。赤銅色の髪が夕日の光を受けて光り、彼の琥珀色の瞳はいつもより柔らかい光をたたえていた。
 冷静沈着な彼が、ここでは少しだけ肩の力を抜いているように見えた。

 その隣ではカリセールが小さな野花を摘み、テーブルの上にそっと置いていた。彼女の赤茶色の髪が風に揺れ、穏やかな笑顔が辺りの空気を明るくしている。
 いつもは感情の波が激しいけれど、今の彼女はこの場所がもたらす静けさに身を委ねているようだった。

 私たちの横で、小さな銀髪のイザベルがクレヨンを握って夢中で絵を描いている。彼女はまだ3歳。言葉はまだうまく話せなくて……。淡いブルーの瞳はどこか儚げで、純粋そのものだった。

「わたち、まもるの。」イザベルが私の手をぎゅっと握りながらつぶやく。その言葉には幼さと真剣さが混じり合っていて、私は思わず微笑んだ。

 ベンチの反対側にはニコラが座っていた。栗色のくるくるした髪が太陽の光に柔らかく輝き、彼の大きな緑の瞳は周囲を穏やかに見つめている。
 彼はいつもどこかのんびりしていて、その穏やかな存在がみんなを和ませてくれている。

 遠くからはセリオンの落ち着いた声が聞こえてきた。彼は風の魔法の練習をしている。風に乗って葉が舞い、セリオンの手のひらからそっと風が流れ出ている。
 彼の翡翠の瞳は澄んでいて、静かな情熱を秘めている。

「この基地が、こんなにあたたかくなるなんて……」私は思わずつぶやいた。

 最初にここを見つけたのはレオだった。あの頃は廃れた空き地で、倒れた木と枯れ葉が散らばるだけの場所だった。けれど私たちは少しずつ手を加え、石を運び、苔を植え、椅子や机を作った。
 いつしかここは、ただの隠れ家ではなく、私たちの絆を育む場所になっていた。

「みんなでいるって、こういうことなんだって、少しずつわかってきたの。」私がそう言うと、ルーカンが微かに笑った。

「ここでなら、少しだけ自分をさらけ出せる気がするよ。」

 レオも頷く。彼は普段は少し照れ屋で、素直な気持ちを表に出すことが少ないけれど、この基地の空気は彼を少しだけ変えていた。

「みんな、ここに来てくれてありがとう。」

 その時、森の小道から聞こえる足音。イザベルが嬉しそうに顔を上げた。

「みんな、きたよ!」

 ミナたちを待っていたのは、フィリックスをはじめとする仲間たちの温かな視線だった。私たちは一つの輪となり、ここでの時間を共有する。

 私はそっと口を開いた。

「みんなに話さなきゃいけないことがあるの。」

 フィリックスが静かにうなずいた。

「宮乃のことだね。」

 私は深呼吸し、できるだけ落ち着いた声で伝えた。

「宮乃はね、長い黒髪で、細身の女性。澄んだ青い瞳をしている。彼女は、幼いころから倫と一緒に育ってきたって言ってた。」

 レオの目が細まり、何かを思い出すように眉をひそめた。

「幼なじみみたいなものか。」

「そう。倫は、宮乃の名前を知ってる。幼い頃からのことを話してくれた。」

 私は言葉を選びながら続ける。

「でも、倫は自分で全部背負ってしまう人なの。私たちに守らせてくれない。自分の弱さを見せることも、甘えることもほとんどない。」

 ルーカンが目を細めた。

「守る側でいようとするのは、彼の責任感からだろうね。」

「そう。だから見るのが時々、苦しい。守りたいのに素直になれないから。」

 イザベルが小さな手を差し伸べて、私の手に触れた。

「わたちも、まもるの。」

 彼女の無垢な言葉に、胸が熱くなった。

 フィリックスがそっと話を引き継ぐ。

「倫は自分の中に多くのものを抱えている。僕たちができるのは、ただ見守り、少しずつ支えることだけかもしれない。」

 カリセールが優しく微笑んだ。

「でも、みんなで支え合えば、きっと変わっていける。」

 私は深く頷いた。風が木々を揺らし、私たちの決意を優しく包み込むように感じられた。

 この森の秘密基地は、私たちの絆の証。守るべきものがあるからこそ、ここでまた新しい一歩を踏み出すのだと、胸に誓った。
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