灯びの系譜ー静寂なる闇に芽吹くもの

武内れい

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番外編:光と鎖の狭間で

7、閉ざされた扉の前で(前半)

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 初めてエリダヴォン邸の門をくぐった日の空は、どんよりと曇っていた。
 石造りの門は威圧的で、両側に立つ巨大な石像が無言のまま私たちを見下ろしている。
 門を潜ると、屋敷の全貌が目に入った。
 どこまでも広がる敷地に建つその屋敷は、想像を超える巨大さだった。

 屋根は重厚な瓦で覆われ、まるで要塞のように堂々と空にそびえ立つ。
 外壁は白く塗られているが、長い年月に汚れ、薄汚れた灰色がかった色になっていた。
 窓の数は数え切れず、日差しを取り込むはずのガラスは重たく、まるで冷たい壁の一部のように見えた。
 そのすべてが、まるで生気を失った巨大な生物の皮膚のように感じられて、私は思わず身震いした。

 整然と刈り込まれた庭園の木々は整いすぎていて、まるで人形のように硬直している。
 枝の揺れる音も、どこか遠くの悲鳴のように聞こえた。
 静けさが重くのしかかり、呼吸をするのも忘れそうになる。

「ここが……」

 私一人で、この重く冷たい屋敷に足を踏み入れたのだ。
 迎えに出てくれたダリアンは、温かく優しい笑顔を向けてくれた。
「緊張しなくていいよ。今日はただ挨拶に来ただけだから」

 彼の言葉に少しだけ気持ちが落ち着いた。

 案内された応接間は落ち着いた色調で、重厚な家具が並び、外の光が柔らかく差し込んでいた。

 そこに、少年が座っていた。

 案内されたのは応接間。
 豪華で重厚な家具が並ぶ広間だが、光は控えめで、カーテンに遮られた窓から差し込む日差しはぼんやりと薄暗い。
 その中で、ひとりの少年が椅子に座っていた。

 倫――
 紹介されたその少年は、私を見つめた。
 だがその目は、どこか深く遠くを見ているようで、まっすぐ私を見ているのに心が通わない。
 その表情には、人としての温度は感じられなかった。

「はじめまして」
 私は声を震わせながらも挨拶をした。

 彼はじっと私の目を見つめ、ゆっくりと媚びるような笑みを浮かべた。
 その笑みは、どこか複雑で、大人たちに気に入られようとしてきた彼の必死さを感じさせた。

 次の瞬間、彼はそっと手を伸ばし、私の頬に触れた。
 その指先は冷たく、繊細だった。

 彼の視線は離れず、じっと私を見つめている。

 そして、彼の唇がゆっくりと私の頬に重なった。

 その感触に私は一瞬動けなくなり、心臓が激しく打った。

 慌てて一歩後ろに下がった。

「な、何を……?」

 私の声は震え、言葉にならなかった。

 そのとき、ダリアンが慌てて私たちの間に割って入った。

「やめろ、倫! それ以上はダメだ!」

 彼は私の腕を掴み、すまなさそうに謝った。

「本当に申し訳ない、君には申し訳ない」

 だが、彼の視線が私からダリアンに向けられた冷たいものに変わったのを私は感じた。

 そのとき倫の指がダリアンの首筋を這い、そっと引き寄せる。

「チュッ……」

 唇が絡み合う音が静かな部屋に響く。
 倫の唇は柔らかく、しかし執拗にダリアンの唇を吸い、深く押し込んでいく。

 ダリアンは一瞬たじろいだが、やがて身を任せるように体を預け、手が倫の背中を抱きしめた。
 その腕は力強く、首に絡みつくように巻きつき、二人の距離は完全に密着した。

 倫の吐息が荒くなり、ダリアンの喉元に熱い息を吹きかける。
 その視線は鋭く、ダリアンの目をしっかりと捉え、挑発するように光った。

 私はその異様な熱気に圧倒され、息を呑み、身体の震えを感じた。

 その場の空気は一気に張り詰め、私は耐えきれずに部屋を飛び出した。
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