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第2部 「教会送り」追求編
残酷な事実を知る
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大司教の顔から穏やかさが消え、真顔になる。
彼の体は俺から見てもハッキリとわかるぐらい震えていた。
「い、今、何と……?」
「「教会送り」のペナルティについてです……。
俺達は寿命を取られているのですか?」
「そ、組織の者から説明は――いや、なかったから今聞かれているのか。
……なんということだ!」
大司教は目を見開いたまま立ち上がる。
しかし、起きたばかりで体がついていけていないのか、すぐにベッドに座り直した。
そしてそのまま両手で頭を抱えてしまった。
あまりの狼狽ぶりに、だんだん不安になってくる。
「え、あの……」
「これは一大事だ!まさか「教会送り」を管理している組織が代償を教えていないとは!!」
「フン、どうやらお前は大変なことを聞いてしまったようだな」
魔王がからかうような声で言う。
2人の態度も相まって、不安が広がる。
「やっぱり聞いちゃいけないことだったんですかね……」
「お前は気になっていたのだろう?ならば遠慮せずに聞けば良い。
説明しない者に責任があると思うぞ」
魔王が言うと変に説得力があるのがモヤモヤした。
申し訳なさから大司教を見ていられなくなって、キョロキョロを周囲を見回すと右側にある大きな扉が目に入った。
そしてふと考えつく。
(あれ?そういえば部屋の外が静かだ。
俺達が侵入したところをみた人がいるかもしれないのに)
そっと魔王をつつくと、明らかに機嫌が悪そうに睨んでくる。
「なんだ?」
「部屋の外、静か過ぎません?」
「確かにな。だが、ここは大司教の部屋だ。
そう簡単に入れぬように強力なバリアでも張っているのだろう」
「解くのに時間かかってるんですかね?」
「我が知るか」
短く答えると、魔王は大司教に視線を戻した。
てっきりバカにしているのかと思ったが、魔王の表情は真剣で思わず見つめる。
(何を考えてるんだ?同情?まさかな……)
大司教はしばらくの間ボソボソと呟いた後、顔を上げて俺を見た。
焦燥しきっていて、眠りについていた時よりも酷い顔色だ。
「……君の言う通り「教会送り」の代償は寿命だ。
送られる度に寿命を1年分頂いているのだ」
「その、取られた寿命は……」
「最高管理者である私の寿命に追加されている。
そのおかげで、200年も生き延びているのだ」
(マジかよ……。ザルド達と立てた予想は当たってたわけか)
「しかし、この失態をどう詫びたら良いものか……。
そもそも詫びたところで許してもらえるとは……」
俺も困惑しているが、1番取り乱しているのは大司教だった。
しきりに目を泳がせている。
しばらく、何ともいえない奇妙な空気にが広がる。
どちらか一方が攻撃してきそうなぐらいピリビリとした雰囲気になっていないだけマシなのかもしれないが、
いたたまれない気持ちになってきた。
ふと、大司教が俺をジッと見つめる。
一瞬眉間にシワを寄せた後、静かに口を開いた。
「……青髪の少年君、名は何と言う?」
「カルムです」
ハッキリ答えると大司教は大きく頷いた。
そして真剣な顔つきになって口を開く。
「カルム君……君に残酷な事実を伝えなければならない」
「俺にですか?」
「ああ。本来なら教えてはならないことだ。
しかし、君達は危険を犯してまで司教達の過ちを私に知らせてくれた。
謝意を込めて、伝えよう」
静かな、けれど圧のある声に背筋がピンと伸びた。
何かとんでもないことを言われそうな気がして唾をのみこむ。
大司教は俺の目を見て、重々しく言い放った。
「君は……次に命を失えば、永遠の死を迎える」
彼の体は俺から見てもハッキリとわかるぐらい震えていた。
「い、今、何と……?」
「「教会送り」のペナルティについてです……。
俺達は寿命を取られているのですか?」
「そ、組織の者から説明は――いや、なかったから今聞かれているのか。
……なんということだ!」
大司教は目を見開いたまま立ち上がる。
しかし、起きたばかりで体がついていけていないのか、すぐにベッドに座り直した。
そしてそのまま両手で頭を抱えてしまった。
あまりの狼狽ぶりに、だんだん不安になってくる。
「え、あの……」
「これは一大事だ!まさか「教会送り」を管理している組織が代償を教えていないとは!!」
「フン、どうやらお前は大変なことを聞いてしまったようだな」
魔王がからかうような声で言う。
2人の態度も相まって、不安が広がる。
「やっぱり聞いちゃいけないことだったんですかね……」
「お前は気になっていたのだろう?ならば遠慮せずに聞けば良い。
説明しない者に責任があると思うぞ」
魔王が言うと変に説得力があるのがモヤモヤした。
申し訳なさから大司教を見ていられなくなって、キョロキョロを周囲を見回すと右側にある大きな扉が目に入った。
そしてふと考えつく。
(あれ?そういえば部屋の外が静かだ。
俺達が侵入したところをみた人がいるかもしれないのに)
そっと魔王をつつくと、明らかに機嫌が悪そうに睨んでくる。
「なんだ?」
「部屋の外、静か過ぎません?」
「確かにな。だが、ここは大司教の部屋だ。
そう簡単に入れぬように強力なバリアでも張っているのだろう」
「解くのに時間かかってるんですかね?」
「我が知るか」
短く答えると、魔王は大司教に視線を戻した。
てっきりバカにしているのかと思ったが、魔王の表情は真剣で思わず見つめる。
(何を考えてるんだ?同情?まさかな……)
大司教はしばらくの間ボソボソと呟いた後、顔を上げて俺を見た。
焦燥しきっていて、眠りについていた時よりも酷い顔色だ。
「……君の言う通り「教会送り」の代償は寿命だ。
送られる度に寿命を1年分頂いているのだ」
「その、取られた寿命は……」
「最高管理者である私の寿命に追加されている。
そのおかげで、200年も生き延びているのだ」
(マジかよ……。ザルド達と立てた予想は当たってたわけか)
「しかし、この失態をどう詫びたら良いものか……。
そもそも詫びたところで許してもらえるとは……」
俺も困惑しているが、1番取り乱しているのは大司教だった。
しきりに目を泳がせている。
しばらく、何ともいえない奇妙な空気にが広がる。
どちらか一方が攻撃してきそうなぐらいピリビリとした雰囲気になっていないだけマシなのかもしれないが、
いたたまれない気持ちになってきた。
ふと、大司教が俺をジッと見つめる。
一瞬眉間にシワを寄せた後、静かに口を開いた。
「……青髪の少年君、名は何と言う?」
「カルムです」
ハッキリ答えると大司教は大きく頷いた。
そして真剣な顔つきになって口を開く。
「カルム君……君に残酷な事実を伝えなければならない」
「俺にですか?」
「ああ。本来なら教えてはならないことだ。
しかし、君達は危険を犯してまで司教達の過ちを私に知らせてくれた。
謝意を込めて、伝えよう」
静かな、けれど圧のある声に背筋がピンと伸びた。
何かとんでもないことを言われそうな気がして唾をのみこむ。
大司教は俺の目を見て、重々しく言い放った。
「君は……次に命を失えば、永遠の死を迎える」
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