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四章 十三歳の旅立ち
(21)盛り過ぎた
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私はへイン兄さんが教えてくれたことを思い出しながら、熱心に言葉を続けた。
「さすがにここの結界は無理かなって思うけど、実は普通の結界をすり抜けるのは得意です! 魔法も少し使えます! 方法を勉強をさせてもらえば、結界をはり直したりする仕事もできるようになると思います! あとは……えっと……あ、そうだ、幼い頃から山を走り回った農家育ちだから、体力には自信あります! それから、あ、そうだ、僕はランダル出身です!」
「農家育ち……ランダル出身……か」
大男は私の頭から手を離して、その手でいかつい顎を撫でる。無精ヒゲが硬い手のひらとこすれてざらざらと音を立てていた。
「……ボウズの度胸といい、魔力があるらしいことといい、正直悪くないと思うがな。さすがに子供に魔獣の世話はさせられねぇな」
今、さらっと言ったけれど、やっぱり魔獣の飼育施設のようだ。
野生の魔獣は恐ろしい害獣だ。でもうまく飼いならせば、馬や牛のかわりに重い荷物を運ばせたり、究極の番犬にしたりとなかなかに役に立つらしい。都ではそれを実用化している、と言う真偽不明の噂は村でも聞いていた。ただの噂だろうと笑う大人は多かったけれど、どうやら本当だったようだ。
ますますわくわくする。
ここでは、どういう魔獣を飼育しているのだろう。
私は期待を込めて大男を見上げる。壁のような大男は、短い髪をがしがしとかき乱した。
「やっぱりだめだ。子供を働かせるには危険すぎる」
「僕はもう子供ではありません! これでも十六歳なんです!」
とっさに私は大胆な嘘をついた。
大嫌いな嘘をついてしまったけれど、背に腹は代えられない。
……でもやっぱり、さすがにこの年齢詐称は苦しかったようだ。本当はまだ十三歳な上、年齢より幼く見える小柄な私が十六歳なんて、表向きは平気な顔をしているけど、じわじわと羞恥が胸にくる。盛りすぎはよくないな。ほとんど犯罪だった。……反省。
一方、大男さんはといえば、私がとんでもない事を言い出したので、虚を突かれたように目を大きく見開いた。
怖い顔だ。
でも、なんとも微妙な表情だ。
大きな口を何度か開いていたけれど、言葉にならないようでその度に口を閉じている。ますます乱暴に頭を掻き、何度もうなっていた。
やがてその葛藤が終わり、大男は太い腕をぐぐっと組んで真上から私を見下ろした。
「……ボウズ、十六歳というのは間違いないな?」
「はい!」
私は気合いを入れてうなずいた。
大男はもう一度うなったようだったけれど、腕組みを解いて私の頭をぽんぽんと叩いた。
「俺はここの責任者をやっているスラグだ。個人的にはすぐに雇ってもいいんだが、相手は魔獣だからな。ここにいる魔獣たちと顔合わせをして、あいつらの反応を見てから決めるぞ」
「はいっ!」
「さっそくご対面とするか。ボウズの名前は?」
「……ターグです!」
一瞬悩んだけれど、私はそう名乗った。
ターグというのは、ヘイン兄さんの牧場で一番気の荒い馬の名前だ。私を何度も振り落とした憎き馬の名前をなぜ名乗ってしまったのか、自分でもよくわからないけれど、名乗ってみると悪くない気がした。
一方、スラグさんは私が作ってしまった一瞬の間で偽名とわかっているようだ。でも、何も言わなかった。
こうして私は、まず魔獣たちと顔合わせをすることになった。
魔獣という存在は、個体差がとても大きい。外見も持っている能力も、全く同じものはいないくらいだと聞いている。性質もそれぞれで、人間を見ればとりあえず噛みつきたくなる魔獣もいれば、おとなしい飼い猫のふりをして子供に撫でられて喜ぶ魔獣もいる、らしい。
すべてヘイン兄さんに聞いた話だから、それが本当かどうかも実はよくわからない。
でもとにかく、ここにいる魔獣が私が知っている黒狼とは大きく違っているのだろうということはわかる。私は緊張しながらスラグさんの後について結界をくぐった。
結界を抜ける瞬間、私は結界の断面に目を奪われた。外から見るとレース編みのように見えていたけど、ただ単純に地層のように重なっているのではなくて、内側から外側へ、外側から内側へ、あるいは中央から花びらが開くように魔法の糸が編まれていた。縦横無尽に見えるけれど、美しい秩序が保たれている。
なんてきれいな魔法なんだろう。
つい足を止めて見上げてしまった私は、少し離れたところで待ってくれていたスラグさんの面白そうな視線で我に返った。慌てて小走りに追っていくと、スラグさんはニヤリと笑い、頭をがさりと撫でて大股で先を歩いた。
「さすがにここの結界は無理かなって思うけど、実は普通の結界をすり抜けるのは得意です! 魔法も少し使えます! 方法を勉強をさせてもらえば、結界をはり直したりする仕事もできるようになると思います! あとは……えっと……あ、そうだ、幼い頃から山を走り回った農家育ちだから、体力には自信あります! それから、あ、そうだ、僕はランダル出身です!」
「農家育ち……ランダル出身……か」
大男は私の頭から手を離して、その手でいかつい顎を撫でる。無精ヒゲが硬い手のひらとこすれてざらざらと音を立てていた。
「……ボウズの度胸といい、魔力があるらしいことといい、正直悪くないと思うがな。さすがに子供に魔獣の世話はさせられねぇな」
今、さらっと言ったけれど、やっぱり魔獣の飼育施設のようだ。
野生の魔獣は恐ろしい害獣だ。でもうまく飼いならせば、馬や牛のかわりに重い荷物を運ばせたり、究極の番犬にしたりとなかなかに役に立つらしい。都ではそれを実用化している、と言う真偽不明の噂は村でも聞いていた。ただの噂だろうと笑う大人は多かったけれど、どうやら本当だったようだ。
ますますわくわくする。
ここでは、どういう魔獣を飼育しているのだろう。
私は期待を込めて大男を見上げる。壁のような大男は、短い髪をがしがしとかき乱した。
「やっぱりだめだ。子供を働かせるには危険すぎる」
「僕はもう子供ではありません! これでも十六歳なんです!」
とっさに私は大胆な嘘をついた。
大嫌いな嘘をついてしまったけれど、背に腹は代えられない。
……でもやっぱり、さすがにこの年齢詐称は苦しかったようだ。本当はまだ十三歳な上、年齢より幼く見える小柄な私が十六歳なんて、表向きは平気な顔をしているけど、じわじわと羞恥が胸にくる。盛りすぎはよくないな。ほとんど犯罪だった。……反省。
一方、大男さんはといえば、私がとんでもない事を言い出したので、虚を突かれたように目を大きく見開いた。
怖い顔だ。
でも、なんとも微妙な表情だ。
大きな口を何度か開いていたけれど、言葉にならないようでその度に口を閉じている。ますます乱暴に頭を掻き、何度もうなっていた。
やがてその葛藤が終わり、大男は太い腕をぐぐっと組んで真上から私を見下ろした。
「……ボウズ、十六歳というのは間違いないな?」
「はい!」
私は気合いを入れてうなずいた。
大男はもう一度うなったようだったけれど、腕組みを解いて私の頭をぽんぽんと叩いた。
「俺はここの責任者をやっているスラグだ。個人的にはすぐに雇ってもいいんだが、相手は魔獣だからな。ここにいる魔獣たちと顔合わせをして、あいつらの反応を見てから決めるぞ」
「はいっ!」
「さっそくご対面とするか。ボウズの名前は?」
「……ターグです!」
一瞬悩んだけれど、私はそう名乗った。
ターグというのは、ヘイン兄さんの牧場で一番気の荒い馬の名前だ。私を何度も振り落とした憎き馬の名前をなぜ名乗ってしまったのか、自分でもよくわからないけれど、名乗ってみると悪くない気がした。
一方、スラグさんは私が作ってしまった一瞬の間で偽名とわかっているようだ。でも、何も言わなかった。
こうして私は、まず魔獣たちと顔合わせをすることになった。
魔獣という存在は、個体差がとても大きい。外見も持っている能力も、全く同じものはいないくらいだと聞いている。性質もそれぞれで、人間を見ればとりあえず噛みつきたくなる魔獣もいれば、おとなしい飼い猫のふりをして子供に撫でられて喜ぶ魔獣もいる、らしい。
すべてヘイン兄さんに聞いた話だから、それが本当かどうかも実はよくわからない。
でもとにかく、ここにいる魔獣が私が知っている黒狼とは大きく違っているのだろうということはわかる。私は緊張しながらスラグさんの後について結界をくぐった。
結界を抜ける瞬間、私は結界の断面に目を奪われた。外から見るとレース編みのように見えていたけど、ただ単純に地層のように重なっているのではなくて、内側から外側へ、外側から内側へ、あるいは中央から花びらが開くように魔法の糸が編まれていた。縦横無尽に見えるけれど、美しい秩序が保たれている。
なんてきれいな魔法なんだろう。
つい足を止めて見上げてしまった私は、少し離れたところで待ってくれていたスラグさんの面白そうな視線で我に返った。慌てて小走りに追っていくと、スラグさんはニヤリと笑い、頭をがさりと撫でて大股で先を歩いた。
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