【R18】一目惚れされた俺！恋人は俺だけに甘いスパダリだった！

# 3ー記憶ー

　その雄介からのメールに、望は小さくため息をついた。

　もしかしたら、「仕方ないだろ。俺たちは忙しい仕事をしているんだから……」とでも、自分に言い聞かせようとしているのかもしれない。
　忙しさは言い訳にはならない――そう分かっていながらも、心のどこかで納得してしまう自分がいる。

『ホント、暇がある時にな。だってさ、お前と非番が合う日が少ないからさ。そりゃ、俺だってたまにはお前と会いたいと思ってるんだからよ』

　望は雄介にそう返信を打ち、送信ボタンを押した。
　その直後、もう一度、深く息を吐き出す。

　久しぶりの恋人からのメールに、本来なら嬉しいはずなのに。
　それと同時に、どうしようもない寂しさが胸の奥からこみ上げてくる。

　今まで連絡もなく、半分以上――恋人の存在を忘れかけていた。
　けれど、こうして再びメールが届いたことで、忘れかけていた記憶が鮮やかに蘇る。
　だからこそ、余計に恋人に会いたいという気持ちが大きくなってしまったのかもしれない。

　再び望がため息をついたその時、携帯が震えた。
　画面には、すぐに新しいメッセージが表示される。

『今日、今から空いてへんか？　明日は休みやから、食事でもどうかな？　って思うたんやけど？』

「……へ？」

　その内容に、望は思わず声を上げてしまった。
　今まで重く沈んでいた胸の中が、一気に晴れ渡ったような感覚。
　視界のすべてがクリアになっていく。
　現に、望は目を大きく見開き、呆然と画面を見つめていた。

　――そりゃ、好きな相手からのお誘いメールだ。
　嬉しさで声が漏れてしまうのも、当然だろう。
　たとえ明日が仕事であっても、恋人からの誘いを断る理由など、あるはずがない。

『ああ、明日は俺も休みだし、構わないぜ』

　望はすぐにそう返信を打った。
　いつも仕事終わりには疲れた顔をしている彼だが、今の望は違う。
　画面を見つめるその表情には、明らかに光が差している。
　まるで長い一日分の疲れが、一瞬で吹き飛んだようだった。

　そんな望の様子を見て、部屋の掃除をしていた和也が、ちらりと顔を向ける。

「なーんだ……その緩みっぱなしの顔はさ。まさか、恋人からのお誘いメールが来たとか？」

　和也はニヤニヤと笑いながら、望のお腹を肘で軽く突く。

「え？　あ、うるせぇな……」

　図星だったのだろう。
　望の頬には、にやけたような笑みが残り続けていた。
　いくら隠そうとしても、表情は裏切る。

　恋人からのメールが嬉しくないはずがない。
　だが、流石の望も、和也にはそんな浮かれた自分を見せたくはなかった。
　それでも、どうしても笑みが抑えきれず、頬がゆるむ。
　――まるで春の陽だまりみたいに、心が温かくほどけていく。

「ほらほら、さっさと仕事を終わらせて帰るぞ！」

　照れ隠しのように声を張り上げ、望は手元の書類を片付け始めた。
　その動きが、どこかいつもより軽やかに見えたのは、きっと気のせいではなかった。