GPTであそぼ

鹿又杏奈\( ᐛ )/

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すずちゃんのJK生活

第2話:はじまりの鐘

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「ぜえ、はあ……あと……ちょっと……!」

私はスカートの裾を片手で押さえながら、敷石で舗装された坂道を全力で駆け上がっていた。慣れないローファーの底が石畳を打つたび、足に鈍い衝撃が返ってくる。それでも、私は止まらなかった。止まるわけにはいかなかった。

頬を撫でる風は春の香りを孕んでいて、どこか甘く、優しいのに――いまの私には、ただ冷たいだけだった。

坂の脇に連なる並木道には、すでに新入生らしき生徒は整列して見えていた。
皆、しっかりと整った制服に身を包み、落ち着いた表情で談笑している。姿勢も声も洗練されていて、彼らの足元に揺れる影さえ、どこか凛として見えた。

そんな光景の中で、ただ一人。

私は息を切らし、肩を上下させながら、必死に走っていた。

(あの謎の“メガネ”のせいだ……!)

心の中で叫ぶ。怒りというより、呆れに近い叫びだった。
私が今朝遭遇した、あの謎の異空間。
唐突に現れては一方的に話しかけ、意味も説明もないまま、得体の知れない“能力”を押しつけてきた――自称“貪食の付与者”、喋るメガネのバンブー。

(本当に夢じゃなかった……よね?)

私は走りながら、右手を軽く握ってみる。
その掌の奥。何かがある。何も見えないけれど、確かにそこに“何か”が宿っている。

“持っている”と感じる。説明のできない存在感が、手の内からじんわりと滲んでくる。

わからない。正体も、意味も、価値も、危険性も。
でも今は――そんなことを考えている暇すらない。

「……遅刻したくない!」

それだけを胸に、私は石畳の坂を駆け抜けた。

髪が乱れても、スカートがめくれそうになっても、構っていられない。
入学式は、一度きり。
十年越しの夢の第一歩を、こんなかたちで台無しにはしたくなかった。

だから、私は正門を駆け抜けた。
駆け抜けながら、心の中でメガネに毒づく。――全部あいつのせいだ。



◆ 講堂

グリフィンチ学園の入学式は、その一歩を踏み入れた瞬間から、私の常識を軽く超えていた。

天井は驚くほど高く、そこから降り注ぐ自然光は、繊細なステンドグラスを通して七色に揺れていた。まるで天上から舞い降りる祝福の光のようで、息を呑んだ。壁一面には、由緒ある紋章や校旗が厳かに飾られ、見る者すべてに「ここは特別な場所だ」と無言で語りかけてくる。

まるでどこかの王族の即位式に招かれたような、そんな錯覚すら覚えた。

私は受付を済ませ、案内された列に向かって歩く。
どこかふわふわとした足取りだった。現実感がないのに、歩くたびに制服の生地が揺れ、革靴の感触が足に伝わってくることで、ようやく「これは夢じゃない」と思えた。

案内されたのは、講堂の中央――前列に近いエリアだった。
胸の内でそっと呟く。

(ここが、1年G組……)

グリフィンチ学園の中でも、成績上位者だけが集められる特別クラス。
選ばれし者たちが集う場所。私が目指した、夢の終点であり、新たな始まりとなるであろう場所。

周囲にはすでに何人かの生徒が着席していた。
一人ひとりの所作が丁寧で、振る舞いに品があり、漂う空気そのものが整っている。

自分が“外部生”であることが急に際立って見えた。
場違いなんじゃないか、という不安が、じわじわと広がる。

(でも……私はここに来たかった。自分で決めたんだ)

私は制服の胸元にそっと手を置き、呼吸を整える。
心臓の音が、少しだけ静まった気がした。

──そのときだった。

「──生徒会長、入場」

アナウンスが講堂全体に響いた瞬間、空気が変わった。

ざわついていた声が、潮が引くように静まり返る。
全員の視線が、同じ一点に向けられた。

そして、扉が開いた。

その光の中から姿を現したのは、一人の青年だった。
その存在だけで場の温度が変わったような、強い引力を持った人だった。

まっすぐに伸びた背、無駄のない歩き方、品のある制服の着こなし。
目立とうとせずとも、すべての視線が自然と集まってしまうような威厳。
でも、不思議と圧迫感はない。柔らかさと凛々しさが同居していて、その在り方はまるで絵画の中の人物のようだった。

「……きれい……」

自分でも驚くほど素直に、声がこぼれた。

数歳年上のはずなのに、彼の背中には“完成された何か”が宿っているように見えた。
ただ見つめているだけなのに、胸がざわつく。動悸とは違う、もっと深い場所の揺れ。

一瞬、彼の視線がこちらを向いたように思えた。

いや、たぶん違う。
目が合ったわけじゃない。なのに、なぜか胸の奥が射抜かれたような気がしたのは、きっと私の気のせい。

──続いて、もう一人の生徒が壇上に上がった。

「新入生代表、1年G組 乃斗楓」

名前が呼ばれた瞬間、講堂がまた静かにざわめく。
そして彼女が姿を見せた瞬間、私は息を呑んだ。

「……!」

髪は絹糸のように滑らかで、光を受けて淡く揺れていた。
目元は涼やかで、表情には緊張も恐れもなく、むしろ気品と誇りがにじんでいた。

制服のリボンすら、彼女がつけるとまるで舞台衣装のように映える。

その堂々たる立ち姿、そして、静けさを震わせるような力強い声――

(……高嶺の花だ)

気づけば、そんな言葉が心に浮かんでいた。

美しさも、聡明さも、佇まいも。
努力も、育ちも、すべてを感じさせる“完成された何か”。

眩しくて、羨ましくて、でも嫉妬ではない。
それはただ、“すごい”という感情だった。

壇上の彼女の視線が、一瞬、客席へと向けられた。
まっすぐで、揺るがない目。

目が合ったわけではないのに、なぜか目を細めてしまう。
その光がまぶしかったから。

(……すごいなあ)

きっと、私なんかとは違う場所に立っている人。
きっと、友達になれるような距離じゃない。

でも、憧れる。心から。

私は静かに、心からの拍手を送った。



◆ 式の終わり

厳かに式が進み、やがて生徒たちは整然と列をなし、講堂を後にする。

私もその列に加わりながら、ふと前方に目をやる。
すると、斜め前を歩く一人の青年の後ろ姿が目に入った。

──生徒会長さんだ。

背中越しでも感じられる、静かな気品。
ゆっくりと歩くその一歩一歩に、誰にも真似できない落ち着きがあった。
無駄のない所作に、自然と目を奪われる。

ふいに彼が誰かに向けて、柔らかく微笑んだ。

その瞬間、近くにいた女子生徒が、小さく声を漏らす。

(……分かる)

たったそれだけで、場の空気が変わる。
たったそれだけで、胸がふわっと浮き上がる。

彼に惹かれる気持ちなんて、きっと私だけじゃない。
でも、だからこそ私はそっと、自分の胸に手を置いた。

(少しでも、近づけるように──)

私はまだ、この学園に来たばかりの外部生。
名前すら知られていない、“誰でもない”存在。
だけど、この場所で私自身の物語を築いていくと、そう決めた。

そのためにここへ来たのだから。
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