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すずちゃんのJK生活
第8話 帳面の秘密
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◆ 放課後・裏文芸部 秘密拠点にて
夕陽が窓を染め、校舎の影がゆっくりと伸びていく頃。文芸部の奥、壁の一部に隠された通路を抜けた先にある裏文芸部の拠点。古びた書棚と最先端の装置が同居する、不思議な空間。
その静かな空気の中で、私は胸の奥がじわりと熱くなるのを感じていた。
──そこへ、ふいに静けさを裂くように、黒酒くんの声が聞こえた。
「……さっきの話、全部聞いちゃったんだ」
驚いてそちらを見ると、彼は少しうつむき加減で、でもちゃんと私たちの方を向いていた。
どうしてここに……? 秘密の通路は誰でも見つけられるような場所じゃないのに。
乃斗先輩も目を細めて、一瞬身構えたように見えた。
でも黒酒くんは動じた様子もなく、静かに扉を閉めると、ゆっくりこちらへと歩いてくる。
「ごめん。本当はノートを取りに戻っただけだったんだ。でも、音がして……声が聞こえて……気がついたら、聞き入ってた」
選ぶように、でも誤魔化すでもなく、真っ直ぐに言葉を重ねていく。私には、それが嘘じゃないことがすぐにわかった。
「……どこまで、聞いたの?」
乃斗先輩の問いに、黒酒くんは少しも躊躇わずに答えた。
「ケサランバサランのこと、異能力のこと、裏文芸部っていうこの部屋のこと、そして……楓さんのことも」
その言葉に、空気が一瞬止まったように感じた。私は息を飲み、乃斗先輩の表情をそっと窺う。けれど、怒りや焦りの色はなかった。
むしろ黒酒くんの方が、ほんのわずか、口元を緩めてみせた。
「実は、僕も異能持ちなんだ。……言っても信じないと思ってて、黙ってたけど」
えっ……と、私の口から声が漏れた。
あの無表情で、ちょっと怖いくらいだった彼が? 異能を?
「僕の家は……代々、異能を持ってる家系なんだ。“探索”っていう、特定のものを見つけ出す力。派手でもないし、戦いに使えるようなものじゃないけど、ずっと一緒に生きてきた」
語るその声は落ち着いていて、でも不思議と誇らしげだった。
「それと、代々の異能の記録を残してるんだ。当主に伝わる帳面に、変化や使い方、いろんな観察記録を書いてきた。それを……持ってきた」
彼が鞄を開けて取り出したノートは、古びていて、角も擦り切れていて、それだけで重みを感じた。
乃斗先輩が慎重に受け取り、ページをめくる。その指先に、私の視線も自然と吸い寄せられてしまう。
「すごい……これは本物だ。インクが滲んでる箇所もあるけど、確かに異能の記録だ。文体も、時代を感じさせる……」
「保管状態はよくなかったけど、読めるところは多い。能力の反応や応用の兆し、それに、異能者同士が接触した記録も少しだけある。手がかりにはなると思う」
黒酒くんの声を聞きながら、私は、あの日“貪食”という力を押しつけられた自分を思い出していた。
わけもわからず力を手に入れて、誰にも話せずに、不安だけが募っていた。
でも、ここにはそれを記した“記録”がある。誰かが向き合った痕跡が、ちゃんと残されている。
(もしかしたら……私も、この力と向き合えるかもしれない)
その思いが、自然と口を開かせていた。
「……私も、手伝っていい?」
黒酒くんはちょっと驚いた顔をして、でもすぐに、照れくさそうに笑った。
「もちろん。むしろ、君がいないと足りないと思う」
「俺も加わる」
乃斗先輩の言葉は、静かだけどしっかりしていて、まっすぐだった。
「記録ってのは、ただ残されてるだけじゃ意味がない。読み取ろうとする意思が必要だ。だから、俺たちが“読む”んだ」
先輩のその言葉に、私は小さくうなずいた。
黒酒くんも、ただのクラスメートから、少しずつ輪の中に入ってきている。そんな感覚が、胸の奥にじんわりと灯った。
夕陽が、部屋の隅々までじわりと染めていく。
書類の端、ノートの罫線、そして三人の影までもが、赤く柔らかな色に包まれていた。
その古い帳面の中にあるのは、まだ知らない世界。
でも、その世界へ向かうための道筋が、たしかにここにある。
──これがきっと、“裏の物語”の始まりなのだ。
夕陽が窓を染め、校舎の影がゆっくりと伸びていく頃。文芸部の奥、壁の一部に隠された通路を抜けた先にある裏文芸部の拠点。古びた書棚と最先端の装置が同居する、不思議な空間。
その静かな空気の中で、私は胸の奥がじわりと熱くなるのを感じていた。
──そこへ、ふいに静けさを裂くように、黒酒くんの声が聞こえた。
「……さっきの話、全部聞いちゃったんだ」
驚いてそちらを見ると、彼は少しうつむき加減で、でもちゃんと私たちの方を向いていた。
どうしてここに……? 秘密の通路は誰でも見つけられるような場所じゃないのに。
乃斗先輩も目を細めて、一瞬身構えたように見えた。
でも黒酒くんは動じた様子もなく、静かに扉を閉めると、ゆっくりこちらへと歩いてくる。
「ごめん。本当はノートを取りに戻っただけだったんだ。でも、音がして……声が聞こえて……気がついたら、聞き入ってた」
選ぶように、でも誤魔化すでもなく、真っ直ぐに言葉を重ねていく。私には、それが嘘じゃないことがすぐにわかった。
「……どこまで、聞いたの?」
乃斗先輩の問いに、黒酒くんは少しも躊躇わずに答えた。
「ケサランバサランのこと、異能力のこと、裏文芸部っていうこの部屋のこと、そして……楓さんのことも」
その言葉に、空気が一瞬止まったように感じた。私は息を飲み、乃斗先輩の表情をそっと窺う。けれど、怒りや焦りの色はなかった。
むしろ黒酒くんの方が、ほんのわずか、口元を緩めてみせた。
「実は、僕も異能持ちなんだ。……言っても信じないと思ってて、黙ってたけど」
えっ……と、私の口から声が漏れた。
あの無表情で、ちょっと怖いくらいだった彼が? 異能を?
「僕の家は……代々、異能を持ってる家系なんだ。“探索”っていう、特定のものを見つけ出す力。派手でもないし、戦いに使えるようなものじゃないけど、ずっと一緒に生きてきた」
語るその声は落ち着いていて、でも不思議と誇らしげだった。
「それと、代々の異能の記録を残してるんだ。当主に伝わる帳面に、変化や使い方、いろんな観察記録を書いてきた。それを……持ってきた」
彼が鞄を開けて取り出したノートは、古びていて、角も擦り切れていて、それだけで重みを感じた。
乃斗先輩が慎重に受け取り、ページをめくる。その指先に、私の視線も自然と吸い寄せられてしまう。
「すごい……これは本物だ。インクが滲んでる箇所もあるけど、確かに異能の記録だ。文体も、時代を感じさせる……」
「保管状態はよくなかったけど、読めるところは多い。能力の反応や応用の兆し、それに、異能者同士が接触した記録も少しだけある。手がかりにはなると思う」
黒酒くんの声を聞きながら、私は、あの日“貪食”という力を押しつけられた自分を思い出していた。
わけもわからず力を手に入れて、誰にも話せずに、不安だけが募っていた。
でも、ここにはそれを記した“記録”がある。誰かが向き合った痕跡が、ちゃんと残されている。
(もしかしたら……私も、この力と向き合えるかもしれない)
その思いが、自然と口を開かせていた。
「……私も、手伝っていい?」
黒酒くんはちょっと驚いた顔をして、でもすぐに、照れくさそうに笑った。
「もちろん。むしろ、君がいないと足りないと思う」
「俺も加わる」
乃斗先輩の言葉は、静かだけどしっかりしていて、まっすぐだった。
「記録ってのは、ただ残されてるだけじゃ意味がない。読み取ろうとする意思が必要だ。だから、俺たちが“読む”んだ」
先輩のその言葉に、私は小さくうなずいた。
黒酒くんも、ただのクラスメートから、少しずつ輪の中に入ってきている。そんな感覚が、胸の奥にじんわりと灯った。
夕陽が、部屋の隅々までじわりと染めていく。
書類の端、ノートの罫線、そして三人の影までもが、赤く柔らかな色に包まれていた。
その古い帳面の中にあるのは、まだ知らない世界。
でも、その世界へ向かうための道筋が、たしかにここにある。
──これがきっと、“裏の物語”の始まりなのだ。
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