GPTであそぼ

鹿又杏奈\( ᐛ )/

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すずちゃんのJK生活

第29話 資料棟の亡霊

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週末、午後六時。
文化祭準備で賑わう校舎の喧騒とは裏腹に、資料棟の前はひっそりと静まり返っていた。
赤く染まりゆく夕焼けの中、蝉の鳴き声だけが、妙に粘りつくように耳に残る。

「……じゃ、行こうか」
紅葉先輩の小さな合図で、私たちは裏手の搬入口から資料棟へと足を踏み入れた。
重たい鉄製の扉が軋む音が、妙に耳に残る。

封鎖直前の資料棟は、前回よりも湿気を帯びていた。
床に染みた雨の跡、古書のカビ臭、天井からぽたぽたと落ちる水音。
この建物全体が、何かを腐らせながら呼吸しているような、不気味な生命感に満ちていた。

「……また“いる”のは?」
一郎くんが目を閉じ、探索に集中する。

「……下だ。前回よりも、もっと地下に近い。正確には、“本来存在しない層”に何かが棲んでる」
「階層そのものが曖昧」と彼は言った。普通の建築ではあり得ないはずの“異空間”だという。

「じゃあ、行くしかないね」
優凜さんが苦笑しつつ、腰の鞄から折りたたまれた金属の板を取り出す。
変形して現れたのは、二枚の半月状の刃を重ねた斬撃特化型の新兵器だった。

「小鈴ちゃん、大丈夫?」
「はい。……来るって分かってたから、準備はしてきました」
私は頷き、《貪食》の球体を呼び出す。足元に浮かび上がる黒い球体は、不思議と静かに脈動していた。

だけど。
その静けさの裏で、胸の奥に妙な感覚があった。
“誰かに見られている”。そんな感覚が、ひっそりと背中にまとわりつく。

(……まさか)

「紅葉先輩。外の見張りは?」
「都斗にお願いしてる。楓は今日、コーチ依頼で別校舎に缶詰。接触リスクはゼロのはず」

先輩は即答した。でも、私の中の違和感は拭えなかった。
“見られたくない存在”が、逆にこちらを見ている――そんな気がした。

資料棟の奥、封鎖対象の階段を私たちは慎重に下りていく。

地下は、建物の本来の設計とは明らかに異なっていた。
コンクリートの壁の間に、無機質な廊下と金属の扉。
消毒液に似た化学臭が鼻を刺し、人の気配を拒絶するような冷たさが空間を満たしている。

「……部屋じゃない。これ、完全に“増えてる”」
一郎くんが低く告げる。その声に、皆が一瞬で身構えた。

「誰かが意図して造ったわけじゃない。でも、構造に“悪意”がある」
一郎くんの眼鏡が淡く青白く光り、《探索》が空間を読み取っていく。

「いた……!」
彼が指差したその先、空間の奥にそれはいた。

――白いもふもふのような存在。だが、異様に巨大で、体表は不自然に脈動していた。

「ケサランバサラン……じゃない」
「似せてるだけ。あれは“擬態”。しかも、敵意を持ってる」
紅葉先輩が目を細め、即座に警戒体勢を取る。

その言葉と同時に、もふもふが口のような裂け目を開いた。
黒い影がそこから溢れ出し、空間に広がっていく。

「来る……っ!」
紅葉先輩が手を掲げ、空間に光の糸を編み上げる。《転移》による迎撃だ。

「一郎、構造分析!」
「了解、《探索》──」
眼鏡の光が強まる。数秒後、彼は短く叫んだ。

「表層は囮! 本体は中央にある小さな“目”だ、そこを狙え!」

「優凜さん!」
「了解っ!」

双刃を手に、優凜さんが前に出る。
その身軽な動きと共に、黒い影を切り裂く刃が唸る。
弾ける粒子の飛沫。それを防ぐように、《貪食》が私の前に浮かぶ。

「小鈴ちゃん、今っ!」
「……喰らえ──っ!」

《貪食》が核に突進する。
“目”のような構造に触れた瞬間、白煙がぶわっと立ち上がった。

「やった……?」

だが次の瞬間、床がぐらりと揺れた。

壁の一部が崩れ、中から這い出してくる“何か”。
人の形だが、目も口もない。全身が粘液に覆われた、歪な“模造品”。

「影の残りかすで造られた“人形”か……っ!」

紅葉先輩が《転移》で間合いを詰め、攻撃の軌道を逸らす。
その隙を突き、私の《貪食》が叩き込まれる。濁った音。
そして、ぐずぐずと崩れ、黒い人形は灰となった。

「……終了、かな」
一郎くんが深く息を吐く。辺りは静寂に包まれる。

「ただの“模倣”だった。ケサランバサランに似せて、こっちを油断させたのかもね」

紅葉先輩が床の破片の中から、一枚の紙片を拾い上げる。
古い記録。裏に焼け焦げた文字で書かれていた名は――《黒酒》。

「黒酒の一族が……ここで何を?」

その名前を目にした瞬間、小鈴の中でまた一つ謎が生まれた。



任務は無事に終わり、封鎖は予定通り行われた。
事件は誰にも知られず、裏文芸部だけが知る“亡霊”として、闇に葬られることになる。

けれど、私の胸の奥に残る違和感は消えない。

――《貪食》が反応したこと。
――黒酒の名。
――そして、あの夜、資料棟の屋根から確かに感じた“視線”。

(まだ、終わってない。何かが……始まろうとしてる)

夏が、静かに終わろうとしていた。
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